ほぼ日手帳成功物語。
ある意味で世界一の手帳をつくるバカたち。

第八回 夜のミーティング〜その3

ほぼにちわ。あややです。
ほぼ日手帳のほぼ全てが決める怒涛の夜ミーティング。
このコンテンツでは
手帳の全体の構成と1日ごとのページの中身まで
決まったところまでをお伝えしました。
これで「ほぼ日手帳」の中身はほぼできたも同然。
でも、これだけで終わらないのが「ほぼ日手帳」。
既存の手帳にも後ろの方に
地下鉄路線図とか、国際通貨単位とか、
そういう情報が載っているページがついていますよね。
それと同じように、“ほぼ日手帳”にも
後ろに“おまけ”のページなるものをつけよう、
ということになっていたのです。
はたして、“おまけ”ページとは
いかなるページなのでしょう・・・・。
本日はそのお話をしまーす。


●テーマは何せ“Only is not lonely”だからね。

そもそも「ほぼ日手帳って欲しいですか?」
というアンケートを読者のみなさんにお願いしたとき、
(アンケートをご存知ない方はこちらをどうぞ)
“ページいっぱいの円周率”が
一番人気があったんです。

でも、人気があったことは確かなのですが、
ひとつ気になることが・・・・
もしかして、『(笑)』みたいな人気なんじゃないか、と。
だって、みなさんのアンケートには
必ずと言っていいほど、
「ページいっぱいの円周率気に入りました。(笑)」
とか、
「円周率、最高っすね〜(笑)。」
とか、最後になぜか『(笑)』がついてたんですもの。

それに対し、darlingは
「(笑)でいいのよ。
 みんなが知らない分だけ
 円周率が書いてあったら
 それだけでうれしいじゃん」

たしかに。実際に使えるかどうかは別として、
円周率が千桁もあったら、
それだけでわたくし(あやや)なんて
友達とかに、自慢しまくっちゃうもんねー。

さらに、darling、
「だってさー、ほんとにふだん必要なものを
 真面目に考え出したら、
 『実はない』ってことになるよ。
 ほんとに必要なものがちょっとで、
 円周率的にまぬけでびっくりするようなものが
 たくさんの方が面白いよ。
 テーマは何せ“Only is not lonely”だからね」

そう、もう読者のみなさんは
今までの経験上、
この後の展開が読めると思いますが、
darlingのこの一言で
完全におまけページの“色”というヤツが決まりやっした。
でも、みなさんからのアンケートにも
「ほぼ日ならではの面白い手帳が欲しいです」
って意見がけっこうあったんですよね〜。
(ちょっと言い訳)


●“何回見ても笑える漫画”って!?

夜のミーティングも早くも4時間近く経過しています。
こういう長いミーティングって
だんだんみんな疲れてきて、
全体に空気がどんよりしてきたりするんですよね。
でも、この日は何時になっても
なぜかみんなハイテンション。
というより、むしろ時間が経つにつれて
テンションは上昇の一途。
もうこうなると、誰にもとめられません。
もう「何でも来いっ!!」みたいな、
半ば投げやり、いえ、
とにかくみんな超乗り乗りだったんです。

テーマが“おまけページ”になってから、
最初に口火を切ったのは、
徹夜明けでナチュラルハイのdarling。
いつものように、突然、叫びました。

「“何度見ても笑える漫画”ってどうだろ?」

はい?
“何度見ても笑える漫画”ってことは、
何回読み返しても笑える漫画ってことですよね・・・

それあったらすごい!!
そんな漫画あったら読んでみたーい!!

さらに、darling
「しかも、“何回見ても面白い漫画(自作)”
 ってタイトルなの。
 つまり自分で書く!
 笑いのツボって人それぞれ違うじゃん。
 だから、みんなそれぞれに
 自分のツボを刺激するような漫画を書けば、
 イヤでも笑う!」
 
ふむふむ。
何回見ても笑える漫画(自作)かあ。
たしかに自分で書けたらすごく面白いんだろうけど、
でも、わたくし(あやや)にはちょっと難しいなあ。
だって、わたくし(あやや)は、
自慢じゃないけど、絵の才能ゼロ!
そんな面白い漫画なんて書けません。
そんな私のような人にとって、
そのページは“私、才能ないんだわー”って
思い知らされるページになっちゃいます!!

それに対してdarling、
「そうだよな。
 自作だとやっぱ苦しいところあるよなあ。
 それに面白い漫画って世の中にはいっぱいあるもんなあ。
 自作もいいんだけど、
 “何度読んでも笑える4コマ漫画”を
 探してきて、それを載せよう!」


●ギャグ&歌も書き込んでおきたい!!

さらに、ドンドン続きます。
もう大車輪が回転しまくりです。

今度はロック西本の一言からはじまりました。

「“何度読んでも笑える4コマ漫画”があるなら、
 何回見ても笑えるギャグ、っていうのもあるよね。
 “私の好きなギャグ”ってどうよ??
 自分の気に入ったギャグが書き込めるようになってんの」

お気に入りのギャグって言うと、
「ガチョーン」ですか?(古い?)
おやじギャグでもいいし、
とにかくお気に入りのギャグをメモっておいて、
「面白いこと言って」
とか言われたときに、
そのページを開いて、一発そのギャグを言うのね。

この“私の好きなギャグ”に触発されて、
木工用ボンドガールのエンジンがかかります。

「ねえねえ、私さー、ギャグがありだったら、
 好きな歌を書くページっていうのも欲しいんだけど」
 
それもいいかも!!
思い出の曲とか、思わず泣いてしまった
自分で手書きで書き込んで、
そのページをひらく度にジーンとする。
自分だけの世界にひたれるページがあったらうれしいもん。
自分の手書きだったら著作権もいらないし、問題なし!

これに気をよくした木工用ボンドガール、
さらに続きます。

「だったらさー、今年の抱負が書き込める和紙!」

しーん・・・・
そ、それは、あまり必要ないような気が・・・・

「そんな、みんないま1月じゃないからいらないんだよ。
 1月にはぜーったい欲しくなるんだってー」

ならないと思います!(断言)


●見栄をはりたいときのために・・・

あと、手帳に書いておきたいこととかって
他になんかあるかなあ。

鼠穴一、家族を大切にする男、シェフ武井は、
「父の生年月日、母の生年月日とかかな・・・」

ああ、両親の誕生日って意外と忘れちゃいがちかも。
あと、恋人の生年月日とか・・・
だったら、大事な人の生年月日リストなんてあったら
どうかしら?
あっ、でも、それだったら
1日ごとのページのアイコンバーのリボンマークのところに
書いておけばいいんだもんなあ。

何か他にはないかなあ?

そこに、またまたdarlingの唐突なつぶやきが・・・

「急に抱負を聞かれたときとかさー、
 急に『夢は?』とか聞かれたときの
 言い訳集ってどうかね?
 タイトルは“体裁を繕うための1ページ”。
 そんで質問形式で書いてあるのはどう?
 『あなたは抱負とかあるの?』とか」

たしかにあるある、そういうとき!
急に、趣味とか、特技とか聞かれて困るとき。
そういうときって、
とっさに気の利いた答えが出てこないんですよねえ。
それで、後になって
「ああ、こう答えればよかった〜」
なんて後悔することがよくあるわー。
そういう質問をされたときに、
「ちょ、ちょっと待って」
ってパラパラそのページをめくると、
答えに困らない!
これは、すんばらしいわ〜〜。

じゃあ、実際にこのページに
どんな質問があったらいいのかしら。
好きな食べ物、いままでで一番楽しかった思い出とか、
いままでで一番おいしかったもの、とか
いろいろあるよなあ。

そんなぼんやり、考えているあややを尻目に、
鼠穴編集部のみなさんから、ぽんぽん案が出てきます。

darling、
「特技とか困るよね。
 旅にはどこに行きたいか、っていうのもあるよね」

木工用ボンドガール、
「座右の銘とかって聞かれたら困るよ」

通天閣あかり、
「好きな有名人! 私はもちろん、た・く・や」

聞いてないからっ!!

西田店長、
「自分がほめられた言葉!
 ちょっと最近思い出したくても
 思い出せないんだよね〜」

ロック西本、
「父親似?母親似?
 俺、母親に激似!」

シェフ武井、
「誰に似てるって言われる?」

これ、ほんとよく聞かれる〜〜!!
それにしても、自分で“松島菜々子”とか書いて
人に見られたくないわー。
もう誰にも見せられない!
絶対落とせないわ〜〜。

darling
「あっ、あと“俺の捨てた女”っていうのはどう?」

なんで、わざわざ2002年度の手帳に
“俺の捨てた女”とかって、
アケミ30才、サダコ25才とか書いてあるんですか!!
そんな手帳イヤじゃないですかっ!!

西本
「俺、それだったら“藤原紀香”とか書いとこう」

木工用
「私は、ブラッドピットとか書くのか」

ってどうしてそうなるんですか!!
メチャクチャ嘘じゃないですかっ!!
見栄はってどうするんか!!

もう、いいんですか!?
こんなことで!!
ちょっと心配だわー。

それに対し、darling、
「もう、これはある意味、
 自分のことを考えるページなんだよ」

は、はい。そう言われればそうですよね。
たしかに、
なかなか自分を振り返る機会はないからなあ。
そのページを見て、己を知るのかあ・・・
(知れないかもしれない・・・。)


●“絶対見たくないページ”なんていらないっす!

と、ここまでは、とにかく順調、順調。
(と言わせてください!)
いい調子だよー!!
でも・・・このあたりから
本格的に歯車が狂ってきたのです。

それはdarlingの一言からはじまりました。

「怖い顔ってどう?」

はい!?
怖い顔ってどういうことっすか?

「だから、怖い顔が手帳に載ってるの!
 俺で言うと、“赤んぼう少女”なのよ。
 それがページにあったら見たくないじゃん」
 
うわー、怖い。たまみだわ。
って、見たくないページにしてどうするんですか!!
ふつーに見たいページを作りましょうよ。

「いや、だから、
 “開けてはいけないページ”ってタイトルでさ」

“開けてはいけないページ”なんていりませんってば!!

わたしは、このとき、当然
darling以外の全員が
このページに反対してくれるだろうと確信していたのに、
なぜかみなこのページに興味津々です。
そして、この“開けてはいけないページ”の話が
どんどん盛り上がってしまったんです。

シェフ武井、
「ねえねえ、怖い系なら、
 あややが嫌がるのもあるじゃん。
 魚の卵とか、ブツブツがいっぱいある絵!」


ぜーーーったいに、イヤですっ!!!!
そうなんです、わたくし(あやや)は
“びっしり系”のものを見るだけで
もう失神してしまうくらいなんです。

そんな、わたくし(あやや)の気持ちを察して、
darlingがさらに追い討ちをかけます。

「だったらさー、
 ひざ小僧があんまり腫れてるから病院に行ったら、
 中にグリンピースがびっしり詰まってた
 なんてどう?」

うぎゃーーーー!!

シェフ武井、
「ひざにイクラ状のできものがぎっしりとか・・・
 フフフ・・・・」

ひえ〜〜〜。

darling、
「俺、それちょっと好き。」

何でそうなるんですか!!
darlingが好きでもイヤなものはイヤじゃああーーー!!

darling、
「見てはいけないページ。
 それやろうよ。
 いくつかジャンルがあるじゃない。
 あややが嫌がる、びっしり系とかさ。
 あと、ゲジゲジ、足がいっぱいある系。
 怖い顔系とか」

だから、そんなページいらないですからっ。
なんでそうなるんですか!!
ヤダヤダヤダ絶対ヤダっ!!
嫌な手帳になっちゃう。

darling、
「そんで、買ったら真っ先にそのページは
 糊づけしてください!
 ってのりしろがついてるの」

西田店長、
「ゼイタクに紙を使うってことね」

って西田店長!
冷静に分析してる場合じゃないですってば!!
一緒にこの案を何としても阻止しましょうよ。

わたくし(あやや)は、頼みの綱の西田店長まで
何だかちょっと乗り気なのを見て、
もう万事窮すかと思いました。
しかし、神はまだいてくれました。

darlingが一呼吸置いて、言いました。

「ああ、でも女の人はそういうのほんとに
 イヤなんだろうなあ」

うんうん。そうです、そうです。
だって、あややは
びっしりブツブツの絵があるだけで
その手帳全体がイヤになっちゃうもん。
ごきぶりの絵が書いてあるだけでイヤですもん。
いくら糊づけして閉じてあったって
やっぱりヤダ!

darling
「そうだよな。
 やっぱり、これはここで面白がって終わりにしよう」

ほお。よかったー。
もうほんとに心配したわ。
と、ほっとしたのも束の間・・・
まだ諦めきれない男が一人、

シェフ武井、
「だったら、ダウンロードにしたら?
 入れたい人だけそのページをダウンロードして
 手帳にはさむ!」

なんで、わざわざそんなもの
ダウンロードにするんですか!!

シェフ武井、
「だって、僕、これ好きなんだもーん」

「もーん」じゃないですよ、「もーん」じゃ。
ほんとうに、もう諦めてください!!


●ちょっとは実用的なものも入れたいわ。

はあ、ほんとにちょっと油断すると、
大変なことになっちゃうわー。
まあさっきのことは忘れて気を取り直しましょう。
他に何かありますか?

そこへ、何でもメモする“メモラー”の通天閣あかりが
ちょっとためらい気味に言いました。

「“今年読んだ本”を書き込むところが
 あったらうれしいけどなあ」

たしかに、それは欲しい!!
そういうのを書く場所ってないもんなあ。
メモっておいたら、あとでぜったい役に立つんだけど、
案外、そういうことってしないものです。
それで言ったら、“今年見た映画”っていうのもあるし、
“今年見た舞台・コンサート”なんてのも
あったらうれしいですよねえ。

さらに木工用ボンドガールが、この案をふくらませます。

「そこにおさるのマークがあってさー、
 おさるを塗りつぶすことで
 自分の評価を表わせたりしたら、またよくない??」

なるほどー、
“5つ星”ならぬ“5つおさる”ってことですね〜〜。
それ、いいっ!!
それだったら、無精のあややでも、
塗りつぶす楽しみもあって、ノリノリでメモしちゃう!!


これが“5つおさる”だ!!



●“この手帳についていないもの”を堂々とアピール!

なんか、そろそろおなかいっぱいになってきたわ。
こんなところかしら・・・
ところで、地下鉄路線図、とか
世界地図とか、国際通貨単位とか、
一般的な手帳に載ってそうなものはどうしますか?

これに対し、darlingが大英断を下します。

「もう、そういうものは一切なしっ!
 そんで“この手帳についていないものリスト”
 で掲載する!」

わざわざついていないものをアピールしちゃうんですね。
うん、それだったら文句も言わせない!!

でも、困ったときに必要な電話番号とかはいらないかな?
たとえば、鉄道で忘れ物したときの連絡先とか。
でも、そういうものが必要な人もいますよねー?

darling、
「そういうことじゃないんだよ。
 “ない”ということが、むしろ“ウリ”なんだから、
 ふつうの手帳にあるようなことがあっても
 面白くないもん」

そうだった、そうだった。
どこにでもあることを載せたんじゃ、
このミーティングの意味ないもんね。
最初から最後まで、ぜーんぶ1つ1つがオリジナルだから、
「ほぼ日手帳」なんだよね。
しかも、テーマは“Only is not lonely”だったんだ!!

それに、本当に必要な電話番号なんて、
自分でメモっておけばいいし、
いざとなったら、電話番号なんてすぐ調べられるわ。
そうかー、そう考えたら、緊急連絡先なんて
なくてもいいかも。
手帳のどこかにメモしておけば・・・
そこにすかさずdarling、

「ねえ、本当に必要な電話番号をメモっておけるところを
 作ればいいんじゃないの?」

メモページってことですか?

「ただ単にメモのページじゃなくって、
 ほんとうにこれだけは書いておきたい、
 っていう住所とか連絡先だけ書くの。
 “数の少ない住所録”っていうんだよ」
 
“数の少ない住所録”って、数少なかったら
ほとんど書けないんじゃ・・・・

「だから、書き込む方も真剣なのよ。
 ほんとーに大切なところだけしか書けないから」

よく考えてみると、かく言うわたくし(あやや)も
最近めっきり住所録とか必要な場面がなくなってるなあ。
だって、連絡先だったら携帯にメモリーしちゃうし、
手紙もほとんどメールだもんなあ。


さてさて、
こんなふうに決まっていった「ほぼ日手帳」。
ほんとに欲しくなってきたわー。
darling曰く、
「これだったら紀伊国屋に置いてあっても売れるぜ」
うんうんうん!!!
わたくし(あやや)もそんな気がしてきましたー。
これですべてではないけど、
これ以上は、手元に着いてからのお楽しみです。
あっと驚くページがまだまだあるんですよー。
ふふふっ、ほんとにすごいですよー。

P.S. そうそう、“何回見ても笑える漫画”ですけれど、
  実は、もう既に、ある方に
  書き下ろしていただいてるんです。
  そのある方とは、
  「し」からはじまる、あのお方です。
  答えは、手帳を見てのお楽しみですよー!!

2001-09-13-THU
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