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ほぼ日事件簿・こんなことでした

第4回(2月24日・木曜日の暮らし)
今回のほぼ日事件簿は
穏やかな午後にあったちょっとした事件


ほぼ日スタッフ“われらバカの子組”が
のんびり遅い昼ご飯を食べてたのどかな昼下がり、
ピンポーンとインターホンが鳴ったんです。
いつものように電話の一番近くに座ってる西田が
受話器を取ると、なにやら騒がしいおばちゃんの声。
それも方言まじりでほとんど聞き取れない日本語。
でもなんとなく聞くところによると
「花はいらんかね」みたいな話しなんです。

たまにしつこいセールスとかあやしい人が
おしかけて来たりすることもあるから
まずは2階の窓から下をのぞいてみると、
ガラガラ転がせるカゴに入ってるお花が見えて、
その横に農家からそのまま出てきちゃったような
ちっちゃなおばあちゃんがひとり。



とりあえずほかの3人も呼んで
2Fの窓からみんなで顔を出してみると
そのおばあちゃんは
わたしたちを見上げておっきな声で言いました。
「春がきたど!!」
春がきたぁ?
その声にいままで食後でまったりしていたはずの
わたしたちは大爆笑。

なぜかこうゆう時に一番いい動きをするもぎカエル部長が
「ちょっと花ひとつ買ってみようぜ」などと言い出し、
グッドマンさんと一緒にすばやく玄関へ、
ここで金さんはというと、相変わらずのんびりと
まだ窓際にいるじゃないですか。
何してるのかと思ったらおばあちゃんに
「ねぇ、花じゃなくて食べ物はないの?」
なんて聞いてるんですよ、
この人やっぱり花よりダンゴなんですねぇ。

みんなが玄関先に集合すると
「安くするから買えや〜」とおばあちゃん。
鉢植えのお花をカゴから取り出しながら、
「これはジャスミン、こりゃええよ〜」
「ムラサキの花が好きな人はこれだわ、
 今咲いて、来年もまた咲くんじゃけんのー」
「黄色い花は東に置いて商売繁盛」とセールストーク。

でもおばあちゃんたら、
テレビなら字幕スーパーが出るくらいのすごい方言で
半分くらいは何言ってるのかわからないんですよね。
これもなんとなく聞くとこによると
「商売は素直にやらにゃぁ駄目だわ」っていうのが
おばあちゃんの商売のモットーらしく、
これは長もちするからいいとか、
あんまり長もちしない花は駄目だとか
そんな話しをしてくれているようす、
それでけっきょくのところは
「おばちゃんの持ってくる花に悪いものはない」
ってことだと理解しました。



その横でお花になんてちっとも興味のない金さんは
カメラを持ってウロウロしながら
「おばちゃん、これ持ってどっから来たの?」と質問。
「千葉の我孫子だど」
「我孫子のどこよ?」
「布佐だべ、布左知ってんのか?」
「だって、オレ千葉の鎌ヶ谷だから近く、近く」と
得意になっておばあちゃんとしゃべりだし、
おかげでおばあちゃんが何者なのか
だんだんとわかってきました。

どうやらこのおばあちゃん、この辺には
おっきくてピカピカの家が多いからってことで、
千葉からわざわざ鉢植えの花を持って来て
売って歩いてるらしいんです。
そんなおばあちゃんの敵はオートロックの
マンションと横文字らしいんだけど
うちはマンションでもないし、横文字もないから
おばあちゃんにも気軽にピンポンできたんですねぇ。

そしてあれやこれやとお花を見たあげくわたしたちは
「黄色の花は東に置いて商売繁盛じゃわ」と
おばあちゃんが言っていた
「黄色の花の鉢」を買うことにしました。
お値段は¥3500、そこを¥500まけてもらって
¥3000のお買い物。



でもね、よく考えたらわたしたちって、
安いからって黄色のお花を買ったわけでもないし、
かといってお花が欲しかったってわけでもないんですよね。
どうやらあのちっちゃなおばあちゃんのパワーに
圧倒されて気がついたら黄色い花の鉢を
手にしてたってとこでしょうか。
それにしても、田舎のおばあちゃんのパワー、
なんだかすごいと思いません。
ただのおばあちゃんなのにあのパワー、
あなどれませんよねっ。

「春がきたど!!」のひとことで、
私たちのハートをつかんだおばあちゃんが去ってすぐ、
急に北風が強くなって、雪が降ってきた。
おいおい。

2000-02-26-SAT

TORIGOOE
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