ほぼ日事件簿 |
小野田寛郎さんのテレビ番組を見て。 糸井重里です。 『実録・小野田少尉 遅すぎた帰還』というテレビ番組を、 ぼくは、ぜひ見ましょうと紹介しました。 いくつか理由はあるのですが、 小野田寛郎さんという人の、 どういったらいいんだろう、無形文化財みたいな魅力を、 みんなに伝えたかったという気持ちが、まず第一でした。 いま、「ほぼ日」で 『法隆寺へ行こう!』という連載をやっていますが、 その「法隆寺」や、 法隆寺をつくった、昔むかしの無名の大工さんたちを なんとか伝えたかったのと同じように、 「こんな人がいるんですよ」と、 知って欲しかったのでした。 そして、もうひとつが、戦争というやつのことです。 銃器や火器がたえず煙をあげているのが、 一般的な戦争のイメージかもしれませんが、 そうでない時間のほうが、 激しい戦闘の何万倍もあるわけですよね。 その、戦争中ではあるけれど、何も起こってない時間。 何も起こってないようで、平和ではない、戦争の時間。 そういうものが、小野田さんの物語のなかには、 出てこざるを得ないわけで、 そいつを、いつも「ほぼ日」を読んでくれる人たちと、 いっしょに感じたいなぁと思ったのでした。 で、よかったら見ての感想をください、と記したら、 メールをたくさんいただきました。 同じような意見がたくさんありますので、 たくさんのカットも含め編集させていただいて、 ここにご紹介させていただきます。 感想を送ってくださった方々、すいません。 そして、ありがとうございました。
いちばん最初に届いたのが、 この「きよみ」さんのメールでした。 ぼくも、「理由」を探しすぎると消えてしまうものが、 たくさんあると思っています。 「理由」を探し当てなくてもわかることがあるのに、 「理由」にとらわれてしまうと、わからなくなってしまう。 そういうことが、あると、ぼくも思います。
「息ができた感じです」に、共感しました。 いまの小野田さんにお会いしたら、 もっと「息ができた感じ」になりますよ。 あ、そうだ。 『小野田自然塾』に参加したhsさんから、 追加のメールが届いたんです。 これ、長いんですが、紹介させてください。 「希望」ということばを感じると思いますよ。
先にまだまだいろいろあるのだから、 いま何をしようか、やることはいっぱいある。 小野田さんの姿勢には、 希望とか未来とかを感じるんですよねぇ。
おなじ時代に、小野田寛郎さんがいる。 そういう思いは、ぼくにも、 なんともありがたい実感として、ありました。 なんでしょうか、それこそ、 大きな樹木に触れたような感じ‥‥。
この方は、その前の段落で、 「人には流されて生きる自由もありますが、 自分の社会的役割を全うする、 筋を通す自由もありますよね」と書いてます。 小野田さんに、あらためてそう訊いてみたい気もしますね。
あのドラマのつくり方は、どうも、 そのあたりにテーマを持ってきていたように思えますね。 中島みゆきさんの曲を重ね合わせるというのは、 すばらしいひらめきだなぁと感じました。 なんだか、小野田さんと、中島みゆきさんには、 なんだかなんとなくですが、似たものを感じるのです。
たぶん、ぼくの年齢に近い方だと思います。 「自分のしていることが空しいと感じたら」 たしかに、なにひとつ出来ないです。 小野田さんが帰ってきたあの時代は、 世の中を「空しい」が覆っていたようにも思えます。 不思議な逆説ですけど。
実は、ぼく自身も、当時は、 そう思っていたのでした。 しかも、その頃には、 「横井さんは一兵卒だけれど、 小野田は命令を下す側の士官だ。 戦争の犠牲者ではなく、戦犯ではないか」 というような発言も、聞えていたんです。 そう軽々しく言った人は、言っただけで済みますが、 言われた人は、それで運命がまた変わっちゃうわけです。 そういう状況もあって、小野田さんは ブラジルに渡ったのだと思いますけどねぇ。
あの「何ひとつありませんでした」という断言は、 ほんとうにすごいと思うのです。 まったく、質問者にも、世間にも、 一切の妥協をしない小野田寛郎という人を、 よく表しているなぁ、と、思います。 「何ひとつありませんでした」と、 あのジャングルから出てきてすぐに、日本で、 表現できる人って、すごい。
たくさんの考察の結語のようにして、 以上のように書かれていたのですが、 ぼくも、「小野田さんが洒落男で良かった!」と、 つくづく思います。 そのことが、とても大事なことなんだと、 いまの小野田さんの笑顔を目にすると思えてくるのです。 さて、こんなところにしておきます。 メールをくださって、掲載されてなかった方、 自分の言いたかったことでない部分を掲載された方、 ほんとうにもうしわけありませんでした。 また、こういった企画、やると思うんです。 そのときも、どうか懲りずにご協力くださいませ。 ありがとうございました。 |
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2005-08-19-FRI
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