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ほぼ日事件簿・こんなことでした

第20回(2月2日の暮らし)
ほぼ日事件簿〜天才子役に会ってきた!
その3


(前回までのあらまし)
映画「ペイ・フォーワード」の主役、天才子役としても
知られるハーレイ・ジョエル・オスメントくんに
インタビューをするために、新宿パークハイアットで
待ち合わせをしたROCK西本とシェフ武井。
初のハリウッドスターへのインタビューということで
緊張するシェフ武井であったが、
ROCK西本のもしかして太った衣笠、じゃなかった
むかしとったキネヅカである、
management for 新人芸人のメソッドのお陰で
本番前にはリラックスしてインタビューに望むことが
できたのであった。


一時はどうなる事か? と思われたこのインタビュー。
「それでは皆さん、お入りください。」
という合図と共に、
「うんじゃ、行ってくるね。」
というコメントを残し、ハリウッドスターの部屋に
入っていったシェフ武井。
その姿はもうベテラン記者のようだった。
少し遅れてぼくも部屋に入ってみると。

そこには一人の天使がいた。


やぁ、こんにちは。ぼくがハーレイくんだよ。

いやぁ。これがかっわいいのよ。
ちっちゃくてねえ。
フレンチパーカもさぁ、
「外人だから子供っていっても大きいだろ。」
って思ってMサイズをもっていったんだけど
Mじゃ大きすぎるよなぁ。
っと思った程。
12才って日本でいうと小六でしょ。今年中学だよ。
自分の12才の頃を思い返すと、同級生から
「おまえ、知っとうや?」
といろいろ悪い事を覚え始めた頃。
そんな自分自身の12才を打ち消したく成る程、
純真を絵に書いたような男の子がそこにはいました。
よく芸人世界で「華がある」って言葉を使うんだけど、
彼にはありましたよ。
充分すぎるくらいの華が。

いかん、いかん。
我らのシェフ武井はどこに?
と見渡すと。
居ました。
それも一番ハーレイくんに近いナイスポジションに。
「ようし! シェフ武井、良くやったぞ!」


でかしたぞ!
(もちろん太っている方がシェフ武井です。)


と思っていると通訳の方から
「早速、始めましょうか?」
と声がかかりました。
ここは新人芸人マネージャーの掟その3。
「常に芸人の視界にある場所で見てあげること。」
を実行にかかります。
ただでさえ、本番で不安が高まった時に、
「ぼくだけは聞いてますよ!」
とアピールしてあげることにより、芸人は安心するのです。
さぁ、頑張れ! シェフ武井!

通訳:
じゃ写真撮りながら、話し、しましょう。

いきなり、シェフ武井の隣の女性が手をあげます。
「やられた!」
と思っているとインタビューが始まりました。

他社:
始めちゃっていいですか?
えっと、あの、プロレスがね、好きっていう、
あのー、ケビン・スペイシーさんの役が、
彼が、こう、はしゃいでるの見て驚くのと
同じように、わたしも、あ、こんな面があるんだ、
彼に、ってすごく楽しませてもらったんですけど、
彼自身プロレスは好きですか、あるいは、その、
ポケモン以外に、こう、私生活ですごく
興奮するものはあります?

ハーレイくん:
実生活ではプロレスっていうのは
そんなに興味がないんです。でも、
「ペイ・フォワード」でのあの場面の、
あれぐらいの興奮度は、スポーツでいうと、
バスケットボールとかフットボールを
見ているときに感じます。


他社:
お気に入りのチームとか選手とかありますか?

ハーレイくん:
USA、L.A.レイカーズ、ロサンゼルス・レイカーズ、
これはバスケットボールですね。
そしてフットボールは、
サンフランシスコ・49ナーズです。


う〜ん。さすがハリウッドスター。
子供ながら落ち着いた話ぶりです。
感心しているとシェフ武井が口火をきりました。

武井:
ハーレイくんは、いつもとてもいい作品を選ばれて、
出演してるというふうに見えるんです。
出演作品を選ぶときは、ハーレーくんが自分で、
「この作品に出よう」っていうのを決めるんですか?

この質問は
「二人でも絶対聞きたいよねえ。」
って決めていたんだ。
ぼくらが一番興味があるのは、彼の仕事の選び方ってこと。
これからずっと子役のキャラクターでいくことは
あり得ないだろうし、
彼が人生設計と映画の仕事って事をどう考えているか?
ってことは聞きたかったんだよね。
「ほぼ日」スタッフの中でもテーマの一つである
消費され尽くされないことへのクリエイティブ。

ハーレイくん:
全部自分で決めてるわけじゃないです。
どちらかというと、チームですね。
そのチームというのは、家族です。
特に俳優の父親と一緒に必ず脚本を読んでます。
そして父の意見というのを、僕は、
ほんとに信頼していますので、
最終的には、父の意見を聞きながら、
選ぶようにしています。


彼の父親は俳優さんで、
映画「ペイ・フォーワード」にも出演しているんだよ。
ほう! と思ったのは
「チームで考えている。」ってこと。
こういう世界ってステージママ、パパが幅をきかせる
ってイメージがあるんだけど、
俳優でもある父親が息子へのアドバイスを含めて
考えているってこと。
家族で考えるってことはもう、
それ自体が「子育て」なんだろうなぁ。
と思っているとすかさず、シェフ武井が突っ込んだぞ!

武井:
前作にしても、これだけ映画がヒットすると、
「ハーレイくんが出る作品は、必ずヒットにつながる」
というようなふうに、世界中から見られがちですよね。
そういうことに対するプレッシャーはありますか?


この質問もわかるなぁ。
ヒットを約束されるが故のプレッシャー。
ともすれば、妥協したり、安全策をとって
冒険を忘れてしまい、似たようなものを続けることで
つぶれる人って多かったりするよね。
ねえ、ねえ、どうなのよ?


それはねえ。

ハーレイくん:
そういうプレッシャーっていうのは
あんまり感じないんですけれど、
自分としてはやはり、次の作品というのは、
前の作品よりはよくなきゃいけないと思うんです。
それはなぜかというと、前の作品で自分は
いろんなことを学んだはずですから、
それを次の作品に持っていって、
その作品をもっとよくしなきゃいけない。
そういう気持ちっていうのは常に持っています。


うわぁ!
これって大人じゃん。小六じゃないよ!
なんかイチロー選手の発言みたいだよ。
小六のぼくがこんなことは言えるはずもない。
感心してる間も無く、
さらにシェフ武井は進める!
(ほかのインタビュアーがいること、忘れてるよ)

武井:
僕らの行なった「ペイ・フォワード」の試写会で、
最後に拍手が起きたんですね。
これは、日本では、とても珍しいことなんです。
それだけよい作品だったということなんですが、
ということは、ハーレーくんのチーム、
あなたの家族がとてもいいチームであるのと同じように、
きっと現場の、ミミ・レダー監督以下、
みなさんがとてもいいチームだったんじゃないかな、
と思ったんです。で、いいチームだときっと、
白熱した、たとえば演技論だとか、
ぶつかるようなことはあったんじゃないかなと
思うんですけど、そういうことはどうでしたか?


これって本番前まで、「ほぼ日」のチームとしての
ありかたってどうなんだろう?
って話題でず〜っと話していたんだよねえ。
ほら、よく考えてみると、
ぼくらって毎日、同じメンバーが顔を揃えて
「ほぼ日」を更新してるのよ。
それって「ぬるま湯」的なことに陥らないか?
客観的な目を失っていないか?
向上することを忘れて、
現状維持すらも出来ていないんじゃないか?
その為にはぼくらはどういうことを考えていくべきか?
って話していたんだよ。

ハーレイくん:
たしかにすごいチームワークだったと思います。
そして必ずそのチームワークの中には、
摩擦があります。けれども、
その摩擦っていうのは、
非常にポジティブな摩擦なんですね。
つまり、みんながひとつのチームとして、
「ペイ・フォワード」をもっとすばらしい映画にしたい
という気持ちの中で起こる、
ポジティブな摩擦っていうのは、
たしかにこの映画の撮影中にはいっぱいありました。


う〜ん。
やっぱり摩擦かぁ。
大事だよなぁ。
と感心していると約束の30分はとうに過ぎ、
インタビューは終了。無念。
もうちょっと聞きたかったよね。

このあとはフォトセッションの時間となりました。
他の会社からはカメラマンの方がいらっしゃったりしてね、
そういうプロの人たちは、ハーレイくんから
「目線」をもらうのがやっぱり上手なのよ。
ぼくは鉄道写真くらいしか撮ったことないからなぁ。
と思いながらも、シャッターだけは沢山きりました。


こっち! こっち!

フォトセッションも無事終了して部屋をでました。

他社の質問に対しては結構、すらすら答えている彼だけど、
シェフ武井の質問には一言一言選んで話している姿が
印象的でした。
これってぼくらが抱えている悩みをハーレイくんにも
ぶつけてみたんだよねえ。
ああぁっと、最後に、
ちゃんとシェフ武井はフレンチパーカを手渡ししてたよ。
でも英語で「French Perker」ったって、
通じないと思うんだけどな、フランス製じゃないし。

もしかすると、どこかのグラビアでフレンチパーカを
見ることができるかもしれません。
次は誰にインタビューしようかねえ?
ねえ、武井さん?

おわり

映画「ペイ・フォーワード」は
全国松竹、東急系で公開中です。
ペイ・フォーワードについてはこちらをみてね。
http://www.payforward-jp.com/

2001-02-07-WED

TORIGOOE
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