── |
丸光食品さんとしては、これから、
どのような復興計画をお持ちなんでしょうか。
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茂さん |
沿岸部にはこだわらず、
一日でもはやく、あたらしい工場を建設して、
以前のような状態に戻したいです。
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── |
なるほど。
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敬子さん |
でもね、わたしたち、震災後はまず
麺の「仕入れ」からはじめたんです。
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── |
仕入れ‥‥というのは、
別の業者さんから麺を仕入れて、販売する?
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茂さん |
そうです。
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── |
そういうことって、やってたんですか?
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茂さん |
やってないです。‥‥やってないんですけど、
わたしが
同業者から麺を仕入れようと思ったきっかけの
できごとがありまして。
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── |
それは?
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茂さん |
気仙沼の市立病院には
全国からお医者さんが応援に駆けつけてこられ、
被災されたかたも
どんどん運び込まれていたんですね。
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── |
ええ、ええ。
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茂さん |
その市民病院の食堂のかたから、
とりあえず「ごはんもの」しか出せないんだけど、
麺類もほしいって
みなさんから言われるんだって話を聞いて。
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── |
そうか、気仙沼の麺類の流通については
丸光さん以外に相談しようがないから‥‥。
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茂さん |
それだけに、申しわけないと思いました。
うちが商品を作れないために、
気仙沼の街に、麺類が、出まわらない。
そこで、すぐに同業者に連絡を取って、
こういう事情で
商品を製造できないんだけれども
何とか協力してくれませんかとお願いしたら
こころよく応じてくれたんです。
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── |
はー‥‥。
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茂さん |
震災後、はじめて麺を配達できた日は、
「ラーメン、再開しましたー!」
とかって言って、
もう、大々的に宣伝してくれて(笑)。
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── |
うれしいですね!
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茂さん |
何百食が、すぐに完売したみたいです。
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── |
求められていたんですね、麺‥‥。
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敬子さん |
それもあるんですが、
私たちも住む場所がなくなってしまって
今、両親と一緒にいますけど、
家族、ぜんぶで8人いるんですね。
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── |
ええ、ええ。
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敬子さん |
1日3回、ご飯を炊けないです、8人分。
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── |
そうか、そういう意味でも、
ごはん以外の選択肢がないってことは
不都合なんですね‥‥。
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茂さん |
ですから、気仙沼の復興のためには
製麺業者としての
社会的な使命も果していかなければならないと
つくづく思いました。
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── |
再建という意味では、
工場はあたらしく建設することはできますけど、
麺をつくってらっしゃる
二代目の栄一さんがご無事だったのが‥‥。
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茂さん |
それはもう、本当に。
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敬子さん |
丸光の麺は、二代目の父が、
夜中の2時から毎日、つくっていましたので。
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茂さん |
季節や気温、湿度しだいで、
大げさな話でなく、その日その日によって
水の分量とかが変わってくるんです。
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敬子さん |
そこを「職人の勘」と、あの「分厚い手」で
つくってきたんです。
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── |
けっして機械では取り替えのきかない、
丸光さんの、かけがえのない財産ですね。
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茂さん |
ことし、父は76歳になるんですけど、
あと10年は頼むよって
お願いしてるところなんです(笑)。
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── |
ちなみに、
スープの味をお決めになってるのは‥‥。
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敬子さん |
それは、わたしです。
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茂さん |
ぼくなんかみたいな男の味覚だと、
どうしても塩っ辛い感じになってしまうんです。
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敬子さん |
わたしには専門知識がないから
主婦感覚で
まず「食べて、美味しいもの」じゃないとダメ。
あとからスープの成分を聞くんですけど‥‥
ま、成分を聞いても、わからないし。
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── |
でも、それって「美味しい」にたいして
いちばん正直な感覚で、
お決めになってるってことですよね。
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敬子さん |
私、もともとラーメン嫌いなんですよ。
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── |
ええっ!
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敬子さん |
嫌いというか、そんなに食べないほう。
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── |
それでよく、製麺業者さんのお嫁さんに‥‥。
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敬子さん |
たまーにラーメン屋さんには入りますけど、
つゆを最後まで飲んだことなんて、ないし。
でも、うちのだったらぜんぶ飲めるんです。
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茂さん |
つまり、自分が飲めるスープをつくったんです。
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── |
なるほど、なるほど。
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敬子さん |
だから、東京のデパートの催事などに行くと
ふだんはラーメンを食べない
ご年配のかたに、けっこう人気があるんです。
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── |
栄一さんが麺をつくり、
敬子さんがスープの味をたしかめて、
茂さんが全体を統括して‥‥
本当に、
ご家族の手づくりでやってこられたんですね。
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茂さん |
そうやってつくってきたうちの商品を、
また、ぜひ紹介したいんです。
地元の商材を使って、他のと差別化をはかって
やってきました。
これからもその延長線上で
気仙沼の復興に貢献できると思っていますから。
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── |
はい。
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敬子さん |
丸光食品は、かならず再建します。
いま、仮にですけど、
11月1日オープンと目標を決めているんです。
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── |
11月1日、ですか。
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茂さん |
というのも、11月1日と2日に
東京ビッグサイトで展示会が開かれるんです。
それに持っていく商品を、つくりたくて。 |
── |
おお、すごい明確な目標!
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茂さん |
工場も設備もデータもすべてなくしましたけど、
培ってきた技は、
身体にしみついておりますので
絶対になんとかなると、信じています。
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敬子さん |
さいわい、
袋の版などは印刷屋さんに残ってますから、
麺さえつくれれば、
また、震災前とおなじ商品はできるんです。
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── |
ぜひ、全国の待ち望んでるファンに‥‥。
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オトヤ |
手伝わせてください!
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敬子さん |
え?
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茂さん |
はい?
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── |
オトヤさん?
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オトヤ |
自分、ラーメン大好きなんで、
もし、そういう催事で人手が足りなかったら、
呼んでもらって大丈夫なんで。
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敬子さん |
ほんとですか。
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茂さん |
お仕事は、大丈夫なんですか?
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オトヤ |
大丈夫っす。
いまお話を聞いてたら、海鮮ふかひれラーメン、
超食べたくなっちゃったんで。
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敬子さん |
じゃあ、ぜひ、お願いします。
ふたりきりなので、いつも人が足りないんです。
ふだんはどこですか、東京ですか。
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── |
おお、具体的な打ち合わせが(笑)。
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オトヤ |
自分、いつもは表参道なんで。
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敬子さん |
じゃ、ビッグサイトのときは連絡しますから!
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茂さん |
おいおい‥‥。
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オトヤ |
いや、大丈夫です。ぜひ、電話してください。
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── |
たぶん「オトヤの突撃お手伝い」的な
コンテンツが、できるんじゃないかと。 |
敬子さん |
交通費と夜ごはんくらいは、出させていただきます。
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オトヤ |
いや、そんな必要ないです。
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── |
じゃあ、報酬は現物とか?(笑)
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敬子さん |
あ、ラーメンなら、いくらでも。
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オトヤ |
自分、ラーメンさえいただけるんなら、
それでもう、ぜんぜん大丈夫なんで。
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敬子さん |
ほんとですか? 本気で電話しますよ?
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茂さん |
だ、だいじょうぶですかね‥‥? |
── |
あ、オトヤさんなら、大丈夫です。
‥‥でも、敬子さんって
本当に魅力的なかたなんですね(笑)。
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敬子さん |
アラ、うれしい。
でも最近、子どもを学校に送りに行くと
「ひとしくんのママって
自衛隊なの?」って聞かれるんですよ。
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── |
自衛隊?
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茂さん |
これが、迷彩の柄が好きなんですよ‥‥。
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── |
な、なるほど、お洋服の趣味として。
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敬子さん |
「ヒトシ君のママって自衛隊なの?」
「うん、知らなかったの?」とか。
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── |
はー‥‥。
|
敬子さん |
「ヒトシ君のママ、自衛隊なんだってー!」
「うん、そうだよー!」って(笑)。 |
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<おわります> |