── |
昭和16年に
廻船問屋を創業されたとのことですが、
その後、
水産加工業にも進出されたんですよね。
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純夫さん |
はい。
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和枝さん |
気仙沼は、もう、サンマがとにかくね。
私たち「サンマ様」と呼んでるくらい。
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── |
サンマ様!
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和枝さん |
サンマ様が獲れたら、神棚に上げて拝みます。
それくらい、大切にしているんです。
ですから、斉吉商店の水産加工も
サンマを使った商品からはじまったんですよ。
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── |
「金のさんま」という佃煮ですよね。
これって、いつごろから‥‥。
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和枝さん |
ええと、10‥‥。
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純夫さん |
もう20年になるんでないか。
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和枝さん |
あ、そうだ。20年ですね。
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純夫さん |
「たれ」が20年だから。
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和枝さん |
そして「あれ」が22歳だから。
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── |
すみません、あの、
「たれ」と「あれ」というのは‥‥。
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和枝さん |
うちの長男が22歳で、
「金のさんま」っていうサンマの佃煮を
炊いている
「かえしだれ」と、同い年なんです。
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── |
かえしだれと、息子さんが、同い年。
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純夫さん |
水産加工をスタートさせたとき、
サンマの佃煮からはじめたんですけど、
それを炊くときの「たれ」を
濾して、新しいのを継ぎ足して‥‥という
「かえしだれ」のやりかたで、
ずーーーっと、使い続けて来たんです。
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── |
それを22年間、毎日毎日。
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和枝さん |
はじめのうちは
週に1回、月に2回というような
ペースだったんですけど、
最終的には、ほぼ毎日、炊いてました。
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── |
秘伝の「かえしだれ」なんですね。
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純夫さん |
鰻屋さんが大切にする「たれ」と同じで、
「金のさんま」を炊くために、
ずっと大事に
切らさないようにして、やってきました。
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── |
具体的に「かえしだれ」というのは
どういうものなんですか?
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純夫さん |
醤油や砂糖や酒をあわせた「たれ」で
サンマを炊くんですが、
そのときに、
サンマからもエキスが染み出てきますね。
で、炊き上がったあと煮汁を濾しとって
決まった濃度に煮詰めて、
毎日、専用の容器に保管しているんです。
で、次に「金のさんま」を炊くときには
新しく合わせた「たれ」に、
その「かえしだれ」を加えて炊くんです。
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── |
なるほど、なるほど。
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和枝さん |
そうすると、
新しく合わせた「たれ」だけでは
絶対に出ない、
まろやかさやコクが出てくるんです。
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── |
安く大量につくろうと思ったら
添加物を加えたりするんでしょうけど。
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和枝さん |
旨味調味料みたいなものだとか、
何とかエキスだとか、
まぁ、いろんなものがあります。
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── |
斉吉さんでは、スタートのころから
そういった添加物を使わないと、決めて。
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和枝さん |
でも、そんなえらそうに
「私たちは添加物を使いません!」って
言ってたわけじゃなくて、
こうするのが、ふつうだろうなと思って。
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── |
あ、そうなんですか。
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和枝さん |
もともと水産加工だったんじゃないので、
廻船問屋のときに
船主さんにご飯を出していたことの延長から
はじまっていますから。
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── |
ははー‥‥なるほど。
斉吉さんのホームページを拝見しましたが、
だから今でも
どちらかというと業務用っぽくない、
家庭にありそうな鍋で、炊いてるんですか。
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和枝さん |
はい、鍋ひとつから炊いています。
とにかく、
ふつうにおうちにあった調味料で
炊きはじまったんです、
斉吉商店の「金のさんま」は。
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和枝さん |
でも、それだけだと、
やっぱりコクが出なかったんですよね。
‥‥これが「かえしだれ」です。
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── |
おお、この液体が、22年間の結晶!
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和枝さん |
このふたりが、たれ担当大臣です。
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── |
そんな担当大臣まで任命されて!
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和枝さん |
創業から数えて、3代目ですけれど、
震災の前までは、
このふたりが、たれを見ていました。
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── |
ちなみに、たれ担当大臣の職務としては
どういったような‥‥。
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和枝さん |
先ほども言いましたように、
かえしだれの濃度が高くなっていくと
味が変わってしまうので、
毎日、
たれを決まった濃さに保つ仕事です。
サンマを炊いたたれには
いろんな固形物が浮かんでくるので、
それを取ってあげて、濾して。
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純夫さん |
そうやっているうちに、斉吉のみんなの
「かえしだれ」に対する意識も
だんだん、高まっていったんですね。
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── |
ええ、ええ。
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和枝さん |
で、あるときに、うちの工場のマネージャーが
そんなに大切なたれなのに
こんな、ただのバケツに入ってたら
何かあったときに持ち出せないじゃないか、と。
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── |
なるほど。
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和枝さん |
そこで、その及川というマネージャーが工夫して
これは震災前の写真ですけど、
こうやって、リュックサックに入れていたんです。
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── |
つまり、担いで逃げられるように。
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純夫さん |
真空パックで冷凍したかえしだれを、
リュックに入れた状態で
冷凍庫の入口に
つねに置いておくというスタイルで
備えていたんです。
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── |
なるほど。
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純夫さん |
そうは言いながらも
本当にここまでの災害が来るとは‥‥。
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和枝さん |
思ってない。
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純夫さん |
思ってないからな。
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和枝さん |
思ってなかったの、本当に思ってない。
このたれを持ち出なければならないような
災害がくるなんて、
ぜんぜん、夢にも思っていなかったんです。
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── |
で‥‥たれは、持ち出せたんです‥‥か?
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和枝さん |
はい。
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── |
よかった!
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和枝さん |
まず、今度の地震が起こったとき、
及川が、パートさんたちを逃がしたんです。
その後に、リュックを持って出たんです。
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── |
でも、あれだけの地震で
よく実際に持ち出しましたよね‥‥。
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純夫さん |
本当に、そうなんです。よくも持ったと。
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和枝さん |
で、持ち出したリュックは
梶原という、うちの別の者が保冷車に積んで
逃げたんですけど、
梶原、津波に追いつかれて、
保冷車ごと、流されてしまったんですよ。
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── |
えっ‥‥。
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和枝さん |
でも、さいわいなことに
梶原は流されている車から抜けだして。
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── |
助かったんですか!
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純夫さん |
ええ、流されながらも、無事でした。
保冷車の荷台が空の状態だったので、
プカプカ浮いたみたいで、
機を見つけて、泳いで逃げたんだと。
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── |
すごいですね‥‥。
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和枝さん |
でも、たれの入ったリュックは、
そのまま、保冷車と流されてしまって‥‥。
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── |
ああ‥‥。
|
かえしだれを載せたまま流されてしまった斉吉商店の保冷車。 |
純夫さん |
でも、三日後に見つけ出してくれたんです。
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── |
え?
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和枝さん |
震災から三日後に、梶原くんたちが
ガレキのなかから保冷車を探し出して、
リュックを見つけてくれたんです!
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── |
ええ!
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純夫さん |
車が流されていった
だいたいの場所がわかるからーつって、
見つけに行って。
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── |
うわー‥‥。
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和枝さん |
ガレキに埋まってる車をひっくり返して、
荷台を開けて、
リュックを見つけ出してくれたんです。
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── |
すごい!
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和枝さん |
梶原くん、本当に冷静だったんですよ。
自分が保冷車ごと流されてるのに、
抜け出してから
車がどのあたりに、どんなふうに流されていくのか
見てたって言うんですから。
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── |
梶原さん、すごい人ですね‥‥。
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和枝さん |
それで、水が引いたあとに
「車、あのあたりでないかってわかるから
探しに行く」って言って。
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── |
ふつう、探しに行きますかね?
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純夫さん |
‥‥行かないと思う。
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和枝さん |
あのガレキ見たら‥‥無理です。
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── |
梶原さんは、それでも。
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和枝さん |
私たちは
気持ちはわがっけど、いいんだよって。
あんたたちが助かったんだから、
それで十分だから、
もういいがら‥‥って話してたんです。
それなのに
「だいたい、わがっから行く」って。
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純夫さん |
行くったって、道ないんですよ。
|
和枝さん |
行くことすら危ないっちゃ、みたいな。
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純夫さん |
ガレキを10メートル越えて行くだけでも
30分かかるような状況でしたから。
それも
ガラスやら釘やらが、いっぱい出てるなか、
よくもまぁ‥‥探し出してくれたと。
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── |
‥‥すごいことです、ほんとに。
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和枝さん |
この人たちです。
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純夫さん |
リュックサックを見つけて
持ち帰ってくれた、うちの男3人衆。
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── |
うわー、宝物を見つけた顔ですね!
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純夫さん |
この「たれ」がなければ
死んでしまうわけじゃないんですけど、
これが無事なら、
もう、すぐにでも「金のさんま」を
炊きはじめることができる。
20年近くやってきて
ようやく、なんとか味も安定してきた
「金のさんま」を
炊きはじめることができるんですよ。
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|
和枝さん |
この人たち、
「早くこれでサンマ炊きましょう!」って
言って、持って来たんですよ。
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純夫さん |
気持ちを奮い立たせてくれる代物です。
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── |
本当に、すごい従業員さんたちですね。
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和枝さん |
斉吉商店には
30人ぐらいの社員がいるんですけど、
これは
私たちの社員自慢だと思って、聞いてください。
たれを保管していたも社員だし‥‥。
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── |
ええ、ええ。
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和枝さん |
私たち、本当に、何もしていないんですから。
ただ
「お客さんから
たれがすごいって褒められたんだよ」って
言っただけで
「だから、災害時第一持ち出しだね」なんて、
そんなことは
ただ口だけ動かしましたけど、
実際に、きちんとパックしてたのは社員です。
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── |
そうですよね。
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純夫さん |
私は、たまたま
地震のときに工場にいたんですけど、
「たれ持でよ」なんて
いっさい、言ってないですから。
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── |
たれの大切さが、
ちゃんとみんなに伝わってたんですね‥‥。
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和枝さん |
しかも、リュックを見つけてくれたのが、
社長の誕生日だったんです。
だから
「社長、誕生日プレゼント!」って言って
持ってきたの、この人たち!(笑)
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── |
‥‥斉吉商店さんの「金のさんま」って、
ほんとうに
きれいな金色に炊き上がると聞きました。
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|
和枝さん |
佃煮って、サンマの皮が剥がれてしまったり、
汚くなったりしがちですけど、
うちの「金のさんま」は
皮がきれいに残って
たれが金色に輝くような色合いになるので‥‥。
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── |
それで「金のさんま」というわけですか。
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純夫さん |
8キロの鍋を、わーっと並べて炊くんです。
これを、おっきい鍋で1回に炊いちゃうと、
皮がきれいに残らないんです。
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── |
手間暇のたまものなんですね。
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和枝さん |
だから、量をたくさん炊くときは、
それを繰り返し繰り返し、
寝ないでサンマを炊くだけの話で。
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── |
‥‥寝ないで。
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純夫さん |
おっきい鍋で一気に炊いてしまったら、
ただの「サンマの佃煮」なので。
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── |
斉吉商店の「金のさんま」じゃなく。
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和枝さん |
でもね、私たちの手から
特別すごい技が出てるとかじゃなくて、
気仙沼で捕れた「さんまの鮮度」と
22年間、積み重ねてきた「かえしだれ」の
それだけなんです、すごいのは。
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── |
はー‥‥。
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和枝さん |
だから、なんか、はじめに
「金のさんま」なんて
なんだか、えらそうな名前を付けてしまって、
ちょっと反省してますけど(笑)。
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── |
ぜひ、食べたいです。
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和枝さん |
わたしたちも、はやくつくりたいです。
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純夫さん |
斉吉の「金のさんま」を
もう一度、みなさんに食べてもらえるよう、
がんばっていきますよ。 |