糸井 |
河野さんには、いいお仲間がいるんですね。
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河野 |
「な? やっぱり何とかなったろ?」って。
「だから、理屈じゃねぇんだよなぁ」って。
情熱さえあればどうにでもなる‥‥
みたいなこと言ってるアホばっかりで(笑)。
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糸井 |
西條剛央さんと話したときにも感じたけど、
「ビジョン」と「動機」だなぁ、やっぱり。
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河野 |
地震のあと、われわれが最初にやったのは
「生命の保全」です。
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糸井 |
はい。
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河野 |
次に「仲間の会社80社、1社も潰すな」と。
とりあえず
すべての金融機関のフリーダイヤルをコピーして、
避難所を回り、
同友会の会員だろうがなんだろうが関係なく
経営者全員に配りまくったんです。
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糸井 |
ほう。
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河野 |
つまり、経営者自身が、
直接電話しなきゃ止まんないんですよ。
「フリーズしてくれ」と。
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糸井 |
止まんないというのは‥‥お金か!
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河野 |
そうです。
金融機関からの資金流出を止めたんです。
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糸井 |
はー‥‥。
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河野 |
出を止めて、キャッシュをストックする。
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糸井 |
アホだけじゃないじゃないですか!(笑)
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河野 |
いやいやいやいや、もうそこは。
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糸井 |
‥‥つまり、リアルですもんね。
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河野 |
まずは「米が抜けてく穴」に「栓」しなきゃと。
そのあとも、
「雇用調整助成金って制度があるぞ」
とか、
「雇用調整助成金って、3ヶ月経たないと出ない。
その間の給料のキャッシュストックがないなら、
一時休業という手があるぞ」
とか、
社会保険労務士を呼んできて、勉強会をしました。
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糸井 |
被災地の中で勉強会?
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河野 |
ええ。
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糸井 |
なんにも無くなった状態で‥‥。
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河野 |
だって、自動車学校ですもん。
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糸井 |
あ、そうか。教室があるんだ。
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河野 |
学校、便利ですよ。
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糸井 |
いちいちみごと!(笑)
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河野 |
もう、みんな必死だから
超モチベーション高いんですよ。
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糸井 |
社会保険労務士の先生まで連れてきて。
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河野 |
ま、そいつも仲間なんで
「ヤマちゃん、ヤマちゃん」みたいな。
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糸井 |
社会保険労務士のヤマちゃん。
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河野 |
「ヤマちゃん、
わっかんねぇんだけどさ」みたいな。
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糸井 |
さっきの保健所の話といい、
これまでのお話って、
ぜんぶ、河野さんたちが地元で培ってきた
「仲間」や「信用」を元にしてますね。
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河野 |
まぁ、そうですね。それがないと。
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糸井 |
はじめて会う人どうしだったら
こんなにスムーズには、いかないよなぁ。
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河野 |
地元のハローワークに
「4月1日から事業を再開するんだけど、
当面、お醤油をつくることも
売ることもできないから、
まずはボランティアを事業内容として
賃金を払おうと思う」
みたいな相談をしたことがあったんです。
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糸井 |
ええ。
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河野 |
そういう場合は、
さっきの雇用調整助成金は出るのか聞いたら
「出ない」と。
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糸井 |
ボランティアじゃダメなんだ。
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河野 |
でも、その時点では決めてたんで
「いいや、それで給料払うわ」って言って
うちの総務課長が手続きに行ったら、
「はい、八木澤商店さん、
ボランティアをしていた期間については
休業していたことにしましょう」と。
つまり、休業中は休業保障が出るんです。
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糸井 |
なるほど!
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河野 |
「八木澤さん、給料全額払うんでしょ?
9割保障されますから」って。
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糸井 |
はー‥‥。
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河野 |
国は、あとからついてくるんです。
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糸井 |
情熱さえあれば。
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河野 |
アホの、情熱さえあれば(笑)。
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糸井 |
なんて言うんだろう‥‥
まともなことを言ってるってことが通じる、
そのうれしさがありますね。
相手が国であろうがなんだろうが、
人、人、人のつながりで。
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河野 |
ええ。
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糸井 |
いやぁ、恐れ入りました。
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河野 |
われわれアホな連中ですけど、
アホなりに
支援されっぱなしは我慢できないんです。
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糸井 |
‥‥そうですよね。
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河野 |
やっぱり、この国をよくしていくために
役に立ちたいし、
また同じようなことが起こったとき
オレたちに何ができるか。
自分の街であろうが、よそであろうが。
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糸井 |
ええ、ええ。
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河野 |
そのことを、つねに考えていたいんです。
かっこよく言ってしまえば、
それこそが、オレたちが復興する意味であり、
生きる誇りでもあるんです。
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糸井 |
うん、うん。
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河野 |
そして、今回の震災がその機会だすると、
絶好の機会だと思っています。
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糸井 |
なるほど。
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河野 |
だって、今回の地震と津波がなかったら、
糸井さん、
ぜったい八木澤商店のこと知りませんよ?
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糸井 |
うん、知らない‥‥よなぁ。
それは自信を持って、そう言えるわ。
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河野 |
内閣府の人たちも、国連も来ません。
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糸井 |
東北との人やモノの行き来は、
いま、いちばん盛んになってますよね。
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河野 |
そうなんです。
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糸井 |
怪我をした場所なんだけど、
血行はすごくよくなって、ポカポカしてる。
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河野 |
それは、ものすごく重要なことです。
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糸井 |
まわりに見られてるから‥‥というのは
プラスにはたらくでしょうね。
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河野 |
そのとおりです。
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糸井 |
ぼくは、今回の震災が起きたあと
わりと早い段階で
直感的に「東北に仕事をつくるんだ」って
思ったんです。
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河野 |
ええ。
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糸井 |
でも、現地の「第一次産業」というのは
もともと
徐々に衰退していくプロセスだったわけで、
「東北の復興」という言葉には
「元の状態に戻る」以上の「プラスα」が
必要になるじゃないですか。
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河野 |
まさしく、おっしゃるとおりです。
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糸井 |
その「α」の部分って、何なんだろう?
ぼくらが手伝える部分があるとしたら、
そこだろうと思うんだけど。
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河野 |
自分たちで畑も田んぼもやってましたが、
見学に来る学生さんに、
「今日、みんながやってくれた農作業は
平均時給150円だけど、どう?
将来、やってみたい人っている?」
と聞いても、誰一人、手を挙げません。
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糸井 |
‥‥ええ。
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河野 |
だから、その状態に戻すだけでは。
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糸井 |
ダメですよね。
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河野 |
ダメです。陸前高田では
ほとんどの農地が潮を被ってしまっています。
カキ・ワカメの養殖も全滅しているので、
陸前高田の第一次産業は
そこまで含めて「ゼロ」なんです。
観光地だった松林も壊滅していますから、
本当に産業ゼロ基盤で考えられる。
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糸井 |
「考えなければならない」
じゃなく
「考えられる」んですね。
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河野 |
ですから、
第一次産業の「プラスα」を考えることも
とても重要なことなのですが、
私は、まったく新しい産業の創出が急務だと
考えています。
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糸井 |
それは?
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河野 |
いま、この国全体を眺めてみると
もっとも大きい問題は、原子力政策です。
見直さざるを得ないだろう、という意味で。
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糸井 |
‥‥ええ。
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河野 |
であるならば、どこかの誰かが
「代替エネルギー」の開発・生産を産業集約して
確立していかなければならない。 |
糸井 |
つまり、それをやる‥‥?
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河野 |
はい、クリーンエネルギーの開発です。
グリーン・ニューディールの
原子力抜き版を、陸前高田でやりたい。
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糸井 |
ははー‥‥。
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河野 |
国の政策や特区ができるのを待っていたら、
ぜったいに遅いと思うんです。
だから、われわれ産業人が
これまで、ずっとやってきたやりかたで。
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糸井 |
それは‥‥。
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河野 |
中小企業家同友会をつくったときも
「この指とまれ」でやったんです。
つまり、いままでは
陸前高田の町のなかだけでやってきた
「この指とまれ」を
世界に向けて、呼びかけていきたい。 |
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糸井 |
なるほど。
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河野 |
それを実現させていくためには、
きちんとビジョンを示さなければならない。
賛同してくれる企業や
大学の研究室などの起業支援施設の誘致も
必要になってくるでしょう。
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糸井 |
ええ。
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河野 |
これと同時進行で
われわれ微生物に関係する産業人が力を合わせ、
微生物によって
放射性物質を無害化できないか、
放射性物質に対する
耐性菌を生み出すことができないか、
研究を進めたいと思っています。
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糸井 |
ほう‥‥。
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河野 |
これは、震災前のことなんですけれども、
釜石の微生物研究所が
うちの「もろみ」を預かっていてくれて。
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糸井 |
震災後、見つかったんですよね。
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河野 |
実は、うちの醤油のアミノ酸のなかから
抗がん剤に使えそうな組成のものが
検出されたりとか、していたんですね。
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糸井 |
へぇー‥‥。
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河野 |
おそらく乳酸菌の一種だろうとの
ことなんですが、
菌が特定できれば、理学的に使えると。
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糸井 |
そうなんですか。
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河野 |
その研究をしてくれていた先生は
北里大学の研究所が壊れてしまったために
失職しちゃったんですが‥‥。
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糸井 |
ええ、ええ。
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河野 |
でも、たまたま私が出ているテレビを見て、
「自分もがんばらなきゃ」と
大学に嘆願して
「もう1年、研究させてほしい」と。
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糸井 |
おお。
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河野 |
いや、それがね、かっこよかったんですよ。
がれきのなかから
コンピューターと発電機を抱えて出てきて。
「先生、今、何の研究やってるんですか?」
って聞いたら
「微生物で、放射性物質を無害化する研究」
って。
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糸井 |
うん、うん。
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河野 |
「この先生を守らなきゃだめだ」と思って
ラジオで話したんです。
そしたら、たまたま文科省の人が聞いてて、
電話で「八木澤さんに、協力します」って。
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糸井 |
はー‥‥。
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河野 |
で、私が具体的に
「北里大学に
笠井宏朗先生っていう先生がいて‥‥」
と話したら、
「あ、そっちはもう手を打ちました」と。
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糸井 |
これも西條剛央さんの話と同じなんだけど
今って、情熱を持ってはたらきかければ
いろんなことが
ものすごいスピードで繋がって行きますね。
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河野 |
オレたちアホな連中のアイディアですけど、
それに賛同し、
手を貸してくれる人たちは、アホじゃない。
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糸井 |
でも、この「今ならいける」という感じは
どのくらい続くと思いますか?
たとえば、2年とか3年とか‥‥。
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河野 |
そんなに猶予はないでしょう。
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糸井 |
もっと短い?
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河野 |
この国の方針、
つまり「予算が出るまで」だと思います。
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糸井 |
‥‥ようするに、来年の3月?
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河野 |
はい。だから、今のうちに
どんどん、積極的に情報を発信していこうと。
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糸井 |
じゃあ、今は「やりたいこと」だったり
「やらなきゃならないこと」を
「どれだけ思いつけるか」という場面ですね。
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河野 |
今、八木澤商店では、西日本の大学生を4人、
インターンシップとして受け入れています。
期間は2週間なのですが、
その間に
「この壊滅した陸前高田の町で
1年以内に起こせる事業のビジョン」を
文章にまとめてもらうんです。
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糸井 |
うん。
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河野 |
それは「事業計画」になっていなくてもいい。
具体的に、こうこうこういった事業で
雇用を生み出すという
思いつきやアイディアのレベルでいいんです。
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糸井 |
なるほど。
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河野 |
そういった若者たちが、
合計3グループ、陸前高田にやってきます。
うちだけじゃなく、
ヒゲのオヤジのところにも行きます。
保健所から「予定」で営業許可証をもらってきた
橋詰社長のところにも行きます。
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糸井 |
うん、うん。
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河野 |
そのなかで、具体性を帯びていると思えるものを
われわれで揉んで、
これはいけるとなったら、もう2週間来てもらう。
つまり、起業家を育成するんです。
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糸井 |
陸前高田で。
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河野 |
創業資金は内閣府から出ます。
これを活用しない手はない。
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糸井 |
いちばん活用できる場所でもあるし。
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河野 |
西日本から来た大学生が
1年後、陸前高田で起業するんです。
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糸井 |
大実験場、になりますね。
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河野 |
ええ、陸前高田を、そうしていきたい。
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糸井 |
ずっと、見てますよ。
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河野 |
アホなりに、やってみますんで(笑)。 |
|
<おわります> |