「芸術にかける度合いが レベル違い?!」
友人ファミリーの娘ちゃんが、 パリにある 「Conservatiore national supérieur d’art dramatique」 =「フランス国立高等演劇学校」 (フランス語も日本語も長くて難しい!)を 卒業したので、卒業公演を見に行ってきたよ。
「高等」とつくので ボクたちにとっては紛らわしいけど、 大学卒業資格が得られる国立の演劇学校。
フランスには全国に 13の国立の演劇学校があるのだけど、 どれも受験を突破するのさえ超難しい 素晴らしい学校。 その中でもパリにあるこの学校が トップオブザトップの最難関なんだよ。
▲パリ9区にあるフランス最難関の国立高等演劇学校。 1,000人以上が受けて受かるのは毎年たった30人。
日本で演劇専攻の大学卒業というと、 まだまだ俳優の卵ちゃんで これから花咲くか咲かないか 誰にもわからない、という世界。
全く関係ない世界に進む人も たくさんいますよね。 専門学校に至っては、 お金を払えば入れるところが多いし、 生徒の本気度がみなそれぞれで全然違うし、 実力あるものだけが選ばれ入り、 そこでその実力を最大限に磨いて 世に羽ばたいていく、 という場所かといったら、 正直かなり違う‥‥。
私自身が小さな頃からその世界に憧れ、 実は大学に通いながら 専門学校まで卒業したりしたので、 その内情とレベルの違いはよくわかり、 フランスの国としての 芸術へのお金のかけ方と、 若者たちの実力にもうただただ仰天でした。
▲ベートーヴェン、ベルリオーズ、ショパン、リストなどがコンサートをしたとか、 ナポレオンが聞きにきていたとかそうそうたるメンバーの名前が連なる 由緒ある建物の中の劇場。
このパリのの国立高等演劇学校、 毎年だいたい1,000人くらいが受験して (しかも本気で目指している レベルの高い人たちがね。) 3次試験を突破して 受かるのはたった30人。 この30人に対し、 だいたい1人年間5万ユーロ(約625万円)の 教育費がかけられているんだって。
それを3年間だから、 なんと約1,800万円。 1人に対してだよ! 国が1,800万円もかけて演劇人を育成する。 さらに親の収入によって 奨学金も出るようで、 友人の娘ちゃんは、 年間1,000ユーロ(約12万5,000円)の 奨学金。 そして学校に交渉して 月400ユーロ(約5万円)の生活費まで 出してもらえていたんだって!
在学中に外国の同じような学校に 短期留学するときは、 また別に必要な生活費が支給され、 クリスマスとかには お小遣いまで支給されたらしい。
どんだけ~!!! (詳細は覚えていないそうですが、 友人の娘ちゃんが3年間の在学中 学校に支払わなくてはいけなかったのが 約75,000円くらいだけだったそう。)
▲ルイ14世の時代、王立声楽・朗読学校だったという フランスの文化遺産に指定されている建物で学ぶエリート学生たちの生活って どんななのでしょう?!
一体、国が学生1人に対して どれだけのお金を費やしてくれるのかと 感心しかしませんが (ただ、本当に実力ある者しか入れない学校、 学生とはいっても すでに子役の頃から活躍している 超有名人や、在学中に賞をとるような人も 各学年いるそうで、 「学生」レベルが違うことは確か。)
さらにさらに、 この学校を卒業した後は3年間、 卒業生が仕事を受けた演劇や プロジェクトに関する給料の支払いは 国がしてくれるんだそう。
つまり、 『雇う側がただで卒業生を雇える =若手を起用しやすい環境』 となっているのだそう。
▲卒業公演といっても、もう完全にプロの舞台を見ているようなクオリティ。
エリート教育主義の国フランス。 国のためになりそうな子たちには 徹底的にお金を使うよ。 これは、今日の演劇の分野だけでなく、 各分野で。 エリート主義、 つまりそれは階級社会でもあり (日本とは比べ物にならないくらいの階級社会)、 素晴らしい面とそうでない面、 両方出てくる話ではあるのだけど。
とにかく芸術的な分野を こんなにも国がお金をかけて 支えているからこそ、 この芸術大国が出来上がっているんだなと ちょっぴりうらやましく思います。
※この連載を再編集し、 書き下ろしも入れて新潮文庫になりました。 こちらをぜひご覧ください!(2015年8月出版)
2020-09-29-TUE