フランスではね、例えばカフェで、
自分のテーブル担当じゃない人に声をかけると
「私はあなたの担当じゃないから
あっちにいる彼が来るのを待って。」
と言われたり、
例えば何かのサービス機関で質問をすると
「それは私の担当じゃないからわからない」
と断られたりすることが多くてね。

自分の仕事はここからここまでと
きっちり決まっていて、
その範囲以外のことは、
親切心とかお客様のためだからという理由で
動いてくれることはほとんどないんだ。

例えば日本の百貨店だったら、
どの売り場の誰に
その売り場と全く関係ないことを質問しても、
お客様が解決にたどり着くまで
親切に調べたり教えてくれたりするでしょ？
そういうことがあまりないんだ。

この、
完全なる「分業制」というのでしょうか？
「仕事への割り切り度」というのでしょうか？
は、学校の先生も同じ。

フランスの学校で先生業をしている友人や、
フランスで子どもを育ててきた友人たちに、
「担任の先生と
アシスタントの先生がやることは全く違う」
「アシスタントはあくまでもアシスタント」
「トイレのお世話とか、
漏らしちゃったときのお世話を
担任の先生が見ることはない。
それはアシスタントの仕事」
などなど、色々話では聞いてきたのですが、
最近、息子が通う幼稚園・小学校の撮影で
学校生活に密着し、実際に観察する機会が多く、
思っていた以上の「分業」と「割り切り度」に
びっくりしたのでした。

その中でも今日は幼稚園の話。
幼稚園には大抵、担任の先生と、
アシスタントの先生がいてね、
クラスの人数によって
２人から３人の先生たちが
子どもたちを見ているんだけど、
担任の先生とアシスタントの先生、
役割が違うということがキッパリしていて、
自分の役割以外のことは
見事に手を出さないんだよ。

担任の先生は、時間割に沿って、
その日学ぶことを教えたり、
課題の説明をしたり、
指導したり命令したり、１日を仕切っていく。

アシスタントの先生はそれを見守りながら、
絵を書いたり作業をしたりする時になると
補佐になって、道具を用意したり片付けたり、
子どもの作業を手伝ったりする。
全体に説明したり
声をかけたりということはしない。

トイレの面倒をみたり、
絵の具の作業が終わって
手を洗ったりするときなどの雑務も、
全てアシスタントの先生の仕事。

休み時間に校庭に遊びに出る時に
コートを着るのを手伝ったりするのも
アシスタントの仕事。
担任の先生は準備するように指示したり、
皆を並ばせて校庭に出る順番を決めたりと
全体の司令塔のお仕事に徹していました。

なんとなく日本のパターンだと、
担任の先生とアシスタントの先生がいても、
お互い手が空いている時はお互いを手伝うし、
何か気付いたり必要な時は
自分の役割やクラスを超えたところまで
サポートしたりしますよね？！
（パリにある日本の幼稚園の撮影にも
しょっちゅうお邪魔しているので、
日本スタイルの幼稚園も目にしています。）

どちらもそれぞれの素晴らしさがあるのですが、
（担任は雑務はせずアシスタントに任せて、
司令塔に徹して全体を冷静に見るという
フランススタイルも素晴らしいなと思ったし、
臨機応変に全体のために常に最善を尽くす
日本のスタイルも素晴らしいなと思うのです。）
国によって、仕事の仕方がここまで違うかと、
本当におもしろい！

ちなみに、以前も書いたけれど、
給食の時間は、
担任の先生は面倒見ないんだよ。
給食は給食の仕事の人が面倒を見る。
先生のお昼休みはあくまでも
先生のためのもの。
そこもキッパリしています。

下校時間に生徒たちを送り出したら
残業もなく先生たちもどんどん帰っていくし。
自分の休み時間中は校舎の外でタバコを吸って
くつろいでいるし笑。
日本だったらアウトだなってことも
普通にいっぱい。

子どもを預かる先生という立場、
大変なこともいっぱいあるとは思いつつ、
ガッツリ分業制のフランスの学校の先生。
日本の先生業に比べたら、
ストレスが少なそうだなあ‥‥、
と思わずにはいられませんでした。

＊とのまりこさんの新刊が出版されました＊

「シンプルシックで心地よい暮らし
パリの小さなアパルトマンで楽しむおうち時間」
出版社 : 世界文化社
発売日 : 2021/5/29

※この連載を再編集し、
　書き下ろしも入れて新潮文庫になりました。
　こちらをぜひご覧ください！（2015年8月出版）