バブー&とのまりこの パリこれ! 住んでみてわかった、パリのあれこれ。
2003年、フランスに単身で渡り、 現在はパリを拠点にヘアメイク&フォトエッセイストとして 活躍しているとのまりこさんが、 愛犬のバブーくん(アイルランド出身)を相棒に、 パリ暮らしのちょっとびっくりな出来事や、 へぇ〜っと感心する習慣などなど(*)をお届けします。 *もちろんすべてのフランス人やフランス全土に共通しないこともあります。 週に1回、でも気まぐれにもっと更新するかも? すてきな写真とともに、おたのしみください。 Amusez-vous bien!

 
とのまりこさんと バブーくんのプロフィール
 




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パリの建物は、外壁を
勝手に壊してはならない?!

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パリの建物は、外壁を
勝手に壊してはならない?!

バブー

みなさんボンジュ~ル。
先週は、パリで最後になるかもしれない
高層ビル「トライアングル塔」についての
コラムだったけれど、
今日はその高層ビルのお話の真逆をいく
建物にまつわるお話だよ。

 

パリの美しいこの景観、保たれているのには秘密がある?!

 

パリの街を歩いていると
たまに「えっ、これどういうこと?!」
と驚く工事現場に遭遇することがあるよ。

古い建物の外側だけが
巨大な鉄骨にガッチリ支えられて、
中身がすっぽり空っぽになっている
不思議な光景。

 

毎週仕事に向かうので通るこの通り。
先ほどの写真の通りから角を曲がってすぐのところ。
こんな「壁だけ!!」景色が長いこと続いています。

 

とのまりこ
初めて見た人だとまるで
映画のセットかと思ってしまうような、
壁だけがぽつんと立っていて、
中身が丸ごとなくなっている光景。

これ、『ファサード主義』という
パリならではの建築手法なのです。
パリには19世紀のオスマン都市計画から続く
厳格なルールがあって、
パリの美しい街並みを守るために
「建物の外壁は勝手に壊してはならない」
という鉄の掟があるのです。

 

倒れてきやしないか、通るたびにヒヤヒヤする工事現場。
この薄っぺらい部分だけ残すのです。
フランスの色々な部分を信用していないので、
この工事現場を通るときはいつも
本気で駆け足して通り抜けています(苦笑)。

 

バブー
便も中身は古いままだと、とっても不便だよね?!
150年以上前の建物って、間取りがとても狭かったり、
建物にエレベーターがなかったり、
断熱性が最悪だったり。

そこで編み出された
究極の妥協案がこれだよ。
「外壁の壁(=歴史)だけを残して、
内側(=不便な構造)は全部解体して、
最新の建物内部を埋め込む!」
外観はパリの美しい景観のままね。

とのまりこ
技術的にもすごくて、古い石壁が倒れないように、
外側から巨大な鉄骨でガッチリ挟み込んで固定して、
その状態で内側を慎重にくり抜くのです。

少しでも計算を誤ったら、
歴史的な石壁が崩壊して巨額の罰金になるので、
普通の建築よりもはるかに費用がかかる
「贅沢な工事」になるそう。

バブー
この「外観を変えてはいけない」って
厳しいルールは、
個人の一軒家にも容赦無く適用される
ことがあるんだよ。

パリの郊外に住むボクたちの友達の
エピソードがまさにそれで。
家の断熱性を上げるために
外壁に断熱材を入れる工事をしようとしたら
(ちょっとだけ壁が厚くなるくらいね)、
Bâtiment de France
(バティモン・ドゥ・フランス)、
つまり政府直属の建設保護機関から
クレームが入って、
工事が6ヶ月も止まっちゃったんだ!

とのまりこ
最終的には市から許可がおりて
工事は無事に完了したそうですが、
自分の一軒家の家の断熱工事をするために
ストップがかかり、戦い、
半年もかかるというのがフランスのリアルです。

 

 

これがパリ郊外の友人の家。断熱剤を入れることで
家の壁の厚さが少しだけ変わるというだけだったのに、
8ヶ月も工事がストップさせられた、厳しい外見主義。
外から見える窓枠の飾りなども
すべて工事前と同じにしてあるそうで、
家の色も赤系と決まっているので、この色なのだそう。

 

フランスでは
『建物の外側、つまり、通りに面した景観は
社会みんなの共有財産』という思想が、
大きなビルの工事でも、
郊外の一軒家の断熱工事でも、
一貫して流れているのです。
自分の家なのに、自分だけのものじゃない
ってことなのです。

 

こちらは「カンヌ映画祭」で盛り上がっている
カンヌにある友人の別宅。
こちらももともとオリジナルはオレンジ色の
建物だったそうですが、
街での色の指定が決められてしまい、
クリーム色系に外側を全部塗り替えたのだそう!

 

バブー
実はパリジャンたちの間でも、
このファサード主義には賛否両論なんだって。

賛成派は
「伝統とモダンを両立させる
素晴らしいアイディアだ!」と。
反対派は
「外見だけ本物で中身はハリボテの
ディズニーランドみたいだね」と。

どちらの意見もなんとなくわかるよね?!
パリの街を歩いていて、
壁だけが鉄骨で支えられている
工事現場を見かけたら、
「あ、中身をくり抜いているんだな」
って思ってみてね♪

パリの街の景色、こんな執念で
守られているんだね。
それではみなさん、今週もステキな1週間を!

 

街の美しい外観を保つための厳しい決まり。
住んでいる人は大変だね!

 

 

 

 

*とのまりこさんの本*


「シンプルシックで心地よい暮らし
パリの小さなアパルトマンで楽しむおうち時間」
出版社 : 世界文化社
発売日 : 2021/5/29

 

 

※この連載を再編集し、
 書き下ろしも入れて新潮文庫になりました。
 こちらをぜひご覧ください!(2015年8月出版)

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バブーくんは日本滞在時に、お店にいます。

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illustration:Jérôme Cointre