OK! Yeah! ─── 『風が吹けば、桶屋が儲かる』
No.12
風が吹けば、
風車が回ります。
風が吹く度、再生可能エネルギー、
風力発電の有効性と素晴らしさを
テレビマスコミがあおり立てます。
ところが、風が吹きすぎて、
各地で風力発電の風車が吹き飛ばされるという
事故が続発しました。
元来「視聴率さえ良ければ何でもあり」のテレビは
態度を一変。
「近隣住民の安全が脅かされる!
 渡り鳥の渡来を妨げる!!
 自然環境を破壊する元凶だ!」
と風力発電を攻撃するキャンペーンを張り出します。
「これで視聴率はバッチリ!」
と高をくくっていたテレビ局に、
さすがの「お人好しの視聴者」も不信感を抱きます。
これが決定的な「テレビ離れ」につながりました。
スポンサーも次々離反。
仕方なくテレビ局は、制作費のかかる番組は
全て排除との方針を打ち出しました。
いの一番に標的にされたのは、
コストパフォーマンスの悪い報道番組です。
全番組がギャラの安いお笑い芸人だけを起用する
「バラエティーもどき」となります。
かつての本物のバラエティーは
制作現場の熱気が茶の間の大爆笑につながりました。
ところが「もどき」はあまりのつまらなさに、
照明さん、カメラさんはもちろん
フロアーディレクターさんまであくびを漏らす始末です。
こんな物を視聴者が支持する分けもありません。
視聴率は急降下です。
あせった局は局員や出入り業者に
「どんなにつまらなくても現場では大受けしろ!」
と無茶な命令を出しました。
現場スタッフの苦悩を知った、
テレビ局御用達の某霊能者が局員に告げました。
「どんなに受けないネタでも
 これを頭にかぶって番組制作すれば、
 自然に大声を出して笑える」
という「秘策」です。
だじゃれ好きの霊能者は「うけをとる」ための装置として
「おけ」をかぶれ、と言うのです。
温泉など使われる「桶」。
これをスタッフ全員が頭にかぶってスタジオワークすると、
どんなつまらないことでも爆笑出来ると評判になりました。
これが世間の知る所となり、
我が国では一大「桶ブーム」が巻き起こりました。
アベノミクスの失敗で国全体が沈み込んでいた日本では
「桶を頭にかぶるとつまらないことを忘れて元気になれる」
と、人々は争うように「桶」を買い求めたのです。
風が吹いて、巨大な富を手にしたのは「桶や」でした。  梶原しげる(フリーアナウンサー)
 
2013-05-13-MON
このコンテンツのトップへ つぎへ
 
illustration:Toshiyuki Fukuda (c) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN