── | 「オ・ト・ナ」の件はひとまずおくと、 今日は、新しい写真集の『のと』について うかがいたいと思って来たんです。 |
梅 | そうだったんや。もう、なんでも話せるよ。 どうぞ、お願いします。写真も撮るのね。 |
── | はい、もしよろしければ。 |
梅 | あ、チョコパイどけますか。 |
── | いえ、別に大丈夫です。 |
梅 | いいの? |
── | いいです。 |
梅 | ふつう、すっごいどけてくる人ばっかりやよ。 カメラマンさんって、ほとんど。 |
── | 梅佳代さんの場合は、 写ってたほうがおもしろそうなので。 |
梅 | わたしも絶対、どかさんけどね! チョッキ系の人とか、けっこうどけてくるよ。 |
── | チョッキ系というのは、 そういう格好をしたカメラマンさんのこと? |
梅 | そう。 で、チョッキ系の人って ちょっとでもナナメ上のほうを見た瞬間とか、 「バチバチバチバチーッ!」て なんか、1000枚くらい連写で撮ってくる。 |
── | ナナメ上を見ただけで、1000枚も。 |
梅 | 「そのまま、そのまま」って言うからね、 ジッとしとくと 「バチバチバチバチーッ!」って。 「あのぅ」と思ってカメラのほう向くと 絶対、ピタって止まるの。 |
── | 連写が。 |
梅 | だから、あんまり動かんとったら、 それはそれで 「緊張しないでください」とか言われたり。 |
── | 撮られるほうも、大変なんですね。 |
梅 | すこしでも「それはそうと」的な顔すると 「バチバチバチバチーッ!」て。 で、結局、メッチャブスな写真が載るんや。 |
── | そんなことないと思いますが(笑)。 |
梅 | 撮影で絶対にやらされることがあって そのポーズは、 カメラを持たされて、こうして写されるの。 |
── | へぇー‥‥遠くを見やる的な。 なんでですかね? |
梅 | わかんない。あれ、なんでなんだろう? 5000枚くらい連写してるんじゃないかって 思うときもある(笑)。 |
── | そんなに撮ったら あとで1枚を選ぶのが大変でしょうね。 |
梅 | わ、ヤバい、批判してるんじゃないよ? わたし、本物のカメラマンさんを 批判してるんじゃないよ? |
── | 梅佳代さんは 本物のカメラマンじゃないんですか(笑)。 |
梅 | ヤバい、ヤバい、ヤバい。干される。 |
── | おもしろいだけだから平気だと思います。 |
梅 | あ、ごめん、ぜんぜん話が進まんくって。 で、なんだっけ? |
── | えーと、『のと』の話をしたいんですが‥‥、 まだ能登の大使はやってるんですか。 |
梅 | 「能登町ふるさと大使」のことね。やってる。 |
── | たしか大使の名刺、 持ってらっしゃいましたよね。ピンク色の。 |
梅 | そうそう。 「佳代ちゃんがピンク好きって言うから、 ピンクにしたわいや」 っつぅピンク色の。 |
── | 具体的には何してるんですか? |
梅 | 「都会に行って 名刺配るだけでいいんや」って言われてる。 あとは、町長と対談したりとか。 |
── | 町長と対談してるんですか(笑)。 |
梅 | あと、猿鬼マラソンのゲストに呼ばれて行ったり。 |
── | さるおに‥‥? |
梅 | 猿鬼マラソン(猿鬼歩こう走ろう健康大会)には こんど、ゲストで呼ばれていくんやけど。 |
── | そういう大会があるんですね。 |
梅 | おととしが、丸山(和也)弁護士で 去年が、よしもと芸人の「ぶんぶんボウル」で ことしが、わたし。 |
── | それはゲストの流れですか。 |
梅 | 丸山弁護士、ぶんぶんボウル、わたし。 |
── | 最新作の『のと』を拝見して思ったのは 梅佳代さんって そんな「能登」が好きなんだろうなあという ことだったんです。 |
梅 | ああー、そうねえ、好きっていうか‥‥。 わたし、じつは、能登の生まれなんです。 |
── | ええ、知ってますよ(笑)。 だから「ふるさと大使」もやってるんですよね。 |
梅 | それで、能登の写真がいっぱいあったんです。 帰ったときに、いろいろ撮るからね。 わたし的に、いい写真もいっぱいあってんけど これまでは わざわざ発表しようとは思ってなかったの。 |
── | そういう「いい写真」を。 |
梅 | そう、でも今回は、 そういう「ふつうにいい写真」をまとめて つくってみたくなって。 「いい写真の本、出してみよう」みたいな。 |
── | ちなみに「いい写真」というのは‥‥。 |
梅 | なんつぅの、おもしろい系の写真とはちがって 出てくる人の「毒がゼロ」みたいな。 |
── | この子の表情とか、すごいと思いました。 |
梅 | そう、吸い込まれる。 |
梅佳代『のと』より。
── | 2年後の写真も、載ってますよね? |
梅 | あ、わかった? デッカい釜、持ってるやつね。 |
── | 目でわかりました。 ちなみに 梅佳代さんの写真には「日付」が入ってるから 時間の流れがわかるんですよね。 ちっちゃい赤ちゃんも、だいたい2年たったら あんな大きなお釜が持てるんだなと。 |
梅佳代『のと』より。
梅 | そうや。すごいねぇ、2年の月日て。 |
── | こういう「おもしろ」じゃない写真を見てたら、 「梅佳代さんって、能登のことが 好きなんだろうなぁ」と、思ったんです。 |
梅 | はああ。 |
── | ただ『じいちゃんさま』のときみたいに 「被写体へのたっぷりの愛情」 というより、 もっとしっとりした感情‥‥といいますか。 |
梅 | 能登は好きです。生まれ故郷として。 でも、 そういう意味では、浅草も好きやし。 |
── | 特別な感情ではない? |
梅 | わたし、女子高生のころ、 だいすきだったイチロー選手と結婚するために 能登を出ようと思って、 それで、大阪のカメラ学校に行ったんやけども。 |
── | ええ、有名な話ですよね。 |
梅 | だから、結局、能登が好きは好きなんやけど つまり、ふつうに好きなんやけど、 なんか「故郷を思う」みたいな気持ちは‥‥。 |
── | ないんですか、別に? |
梅 | ‥‥なかったんだけど、写真を集めてみたら、 完全に故郷を思いましたね。 |
── | 思いましたか。 |
梅 | 思いました。 |
梅佳代『のと』より
<つづきます> |
2013-07-12-FRI |