── 「オ・ト・ナ」の件はひとまずおくと、
今日は、新しい写真集の『のと』について
うかがいたいと思って来たんです。
そうだったんや。もう、なんでも話せるよ。
どうぞ、お願いします。写真も撮るのね。
── はい、もしよろしければ。
あ、チョコパイどけますか。
── いえ、別に大丈夫です。
いいの?
── いいです。
ふつう、すっごいどけてくる人ばっかりやよ。
カメラマンさんって、ほとんど。
── 梅佳代さんの場合は、
写ってたほうがおもしろそうなので。
わたしも絶対、どかさんけどね!
チョッキ系の人とか、けっこうどけてくるよ。
── チョッキ系というのは、
そういう格好をしたカメラマンさんのこと?
そう。

で、チョッキ系の人って
ちょっとでもナナメ上のほうを見た瞬間とか、
「バチバチバチバチーッ!」て
なんか、1000枚くらい連写で撮ってくる。
── ナナメ上を見ただけで、1000枚も。
「そのまま、そのまま」って言うからね、
ジッとしとくと
「バチバチバチバチーッ!」って。

「あのぅ」と思ってカメラのほう向くと
絶対、ピタって止まるの。
── 連写が。
だから、あんまり動かんとったら、
それはそれで
「緊張しないでください」とか言われたり。
── 撮られるほうも、大変なんですね。
すこしでも「それはそうと」的な顔すると
「バチバチバチバチーッ!」て。
で、結局、メッチャブスな写真が載るんや。
── そんなことないと思いますが(笑)。
撮影で絶対にやらされることがあって
そのポーズは、
カメラを持たされて、こうして写されるの。
── へぇー‥‥遠くを見やる的な。
なんでですかね?
わかんない。あれ、なんでなんだろう?

5000枚くらい連写してるんじゃないかって
思うときもある(笑)。
── そんなに撮ったら
あとで1枚を選ぶのが大変でしょうね。
わ、ヤバい、批判してるんじゃないよ?

わたし、本物のカメラマンさんを
批判してるんじゃないよ?
── 梅佳代さんは
本物のカメラマンじゃないんですか(笑)。
ヤバい、ヤバい、ヤバい。干される。
── おもしろいだけだから平気だと思います。
あ、ごめん、ぜんぜん話が進まんくって。
で、なんだっけ?
── えーと、『のと』の話をしたいんですが‥‥、
まだ能登の大使はやってるんですか。
「能登町ふるさと大使」のことね。やってる。
── たしか大使の名刺、
持ってらっしゃいましたよね。ピンク色の。
そうそう。

「佳代ちゃんがピンク好きって言うから、
 ピンクにしたわいや」
っつぅピンク色の。
── 具体的には何してるんですか?
「都会に行って
 名刺配るだけでいいんや」って言われてる。

あとは、町長と対談したりとか。
── 町長と対談してるんですか(笑)。
あと、猿鬼マラソンのゲストに呼ばれて行ったり。
── さるおに‥‥?
猿鬼マラソン(猿鬼歩こう走ろう健康大会)には
こんど、ゲストで呼ばれていくんやけど。
── そういう大会があるんですね。
おととしが、丸山(和也)弁護士で
去年が、よしもと芸人の「ぶんぶんボウル」で
ことしが、わたし。
── それはゲストの流れですか。
丸山弁護士、ぶんぶんボウル、わたし。
── 最新作の『のと』を拝見して思ったのは
梅佳代さんって
そんな「能登」が好きなんだろうなあという
ことだったんです。
ああー、そうねえ、好きっていうか‥‥。
わたし、じつは、能登の生まれなんです。
── ええ、知ってますよ(笑)。
だから「ふるさと大使」もやってるんですよね。
それで、能登の写真がいっぱいあったんです。
帰ったときに、いろいろ撮るからね。

わたし的に、いい写真もいっぱいあってんけど
これまでは
わざわざ発表しようとは思ってなかったの。
── そういう「いい写真」を。
そう、でも今回は、
そういう「ふつうにいい写真」をまとめて
つくってみたくなって。

「いい写真の本、出してみよう」みたいな。
── ちなみに「いい写真」というのは‥‥。
なんつぅの、おもしろい系の写真とはちがって
出てくる人の「毒がゼロ」みたいな。
── この子の表情とか、すごいと思いました。
そう、吸い込まれる。


梅佳代『のと』より。

── 2年後の写真も、載ってますよね?
あ、わかった? デッカい釜、持ってるやつね。
── 目でわかりました。

ちなみに
梅佳代さんの写真には「日付」が入ってるから
時間の流れがわかるんですよね。

ちっちゃい赤ちゃんも、だいたい2年たったら
あんな大きなお釜が持てるんだなと。


梅佳代『のと』より。

そうや。すごいねぇ、2年の月日て。
── こういう「おもしろ」じゃない写真を見てたら、
「梅佳代さんって、能登のことが
 好きなんだろうなぁ」と、思ったんです。
はああ。
── ただ『じいちゃんさま』のときみたいに
「被写体へのたっぷりの愛情」
というより、
もっとしっとりした感情‥‥といいますか。
能登は好きです。生まれ故郷として。

でも、
そういう意味では、浅草も好きやし。
── 特別な感情ではない?
わたし、女子高生のころ、
だいすきだったイチロー選手と結婚するために
能登を出ようと思って、
それで、大阪のカメラ学校に行ったんやけども。
── ええ、有名な話ですよね。
だから、結局、能登が好きは好きなんやけど
つまり、ふつうに好きなんやけど、
なんか「故郷を思う」みたいな気持ちは‥‥。
── ないんですか、別に?
‥‥なかったんだけど、写真を集めてみたら、
完全に故郷を思いましたね。
── 思いましたか。
思いました。


梅佳代『のと』より
<つづきます>
2013-07-12-FRI