第6回
はじめは通行人として出演。
はじめは通行人として出演。
糸井 |
石坂さんがドラマに出はじめた 次の年の昭和三四年が、 美智子妃殿下のご成婚で、 それを見るための テレビを買いそこなった人は、 いつ買ったらいいか、 タイミングがつかめない…… ぼくのうちは、 そういう家だったんですよ。 |
石坂 |
そうそう。 あの時はみんな、 はずみで買っちゃったんだよね。 うちもそうです。 だから最初にぼくが出演した頃って、 うちにはテレビないですよ。 いつも力道山の試合を見せてくれる家があって、 その家の友達に 「今日、テレビに出るんだ」と言っておくの。 帰りがけに寄って 「どうだった?」というと 「……うーん、出てるかどうか、 わかんなかったなぁ」 「あそこのところの喫茶店で、 誰かうしろに座ってなかった?」 「……座ってた! 座ってたよ! わかったわかった!」 |
糸井 |
生放送でビデオもなくて、 テレビも家にない。 その友達がビデオがわりか。 |
石坂 |
そう。 友達に 「わかんなかったよ」 と言われたらもう終わり。 通行人って、 ひとつの場面だけじゃないんです。 喫茶店にいるお客さん役があり、 ヘンな芝居小屋の百姓のお客さん役があり、 大店の外をウロウロしているやつの役とか、 だいたい四つぐらいの場面には 出なきゃいけなかった。 通行人と値段が同じものでは、 アメリカのドラマの収録の 「ガヤ」っていうのがあったんです。 アメリカのドラマを放送するときには、 生放送で効果音を入れていて……。 もともと、メインの吹き替え役者さんの 「それは違うと思うよ、メイスンくん」 みたいな声はテープに録音してあるんだけど、 バックでガヤガヤ言ってるやつらは、 当日出しなの、あれ。 それを「ガヤ」と言いました。 |
糸井 |
(笑)生放送で、うしろで 「そうだよそうだよ!」 「あんなやつぁ、縛り首だ!」 とかいうんだ? |
石坂 |
そのとおり。 それが「ガヤ」っていわれていました。 「いいぞ! いけー!」とか騒いだ後、 静かにするシーンがむずかしいんです。 マイクの音量が入ったまま シーンが変わるから。 ぼくはそれもやっていました。 通行人よりむずかしいの。 ちょっと器用な人は、 声を変えてくださいなんて言われていて……。 |
糸井 |
それで、四〇〇円もらうんだ? 学生さんにしてはいい額でしたか? |
石坂 |
そうでもなかったよ。 その頃は、 渋谷から自由ケ丘あたりまでの 電車の運賃が二十円で…… 銀座線しかありませんでしたから、 浅草まで行っても二十円だったけど。 |
糸井 |
今、それが二〇〇円ぐらいだから、 今でいう四千円ぐらいのイメージかなぁ? |
2015-05-05-TUE
タイトル
テレビという神の幼年期。
対談者名 石坂浩二、糸井重里
対談収録日 2004年12月
テレビという神の幼年期。
対談者名 石坂浩二、糸井重里
対談収録日 2004年12月
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