ほぼ日刊イトイ新聞

この旅も、ことしで4年目。
「ほぼ日」と伊勢丹のみなさん、
シャツメーカーのHITOYOSHIのみなさん、
そして、白いシャツをつくっている
いろいろなブランドのかたがたといっしょに、
「いま、着たいシャツ」を探します。
ことしの取材を通して、
「いいシャツを買うってどういうことだろう」
「ながく着るってどんな意味があるんだろう」
そんなテーマにも、
すこしだけ触れられたような気がします。
また「なんとなく似合わないな」を解決する、
いいヒントも教わってきましたよ。
10回の連載、たっぷりおたのしみください!

その9
ma.to.wa 絹の肌着。

伊勢丹新宿店とは別に、
「ほぼ日」が独自で扱ってきた、
「ma.to.wa」(マトワ)の肌着。
複雑な工程を経てつくられるため、
大量生産ができないアイテムなのですけれど、
社内でもじわりじわりとファンが増え、
今回はアイテム数をぐんと増やしました。

はじめて知るというかたのために
ざっと説明をします。
「ma.to.wa」は、肌着デザイナーの
恵谷太香子さんがプロデュースする、
シルク100%の肌着のブランドです。
パリ・オペラ座で衣装を担当し、
長く肌着を考えてきた恵谷さんが、
日本の「オーガニック素材」の先端を走る
名古屋の豊島株式会社と組みスタートさせました。

「ma.to.wa」は家庭の洗濯機で洗えるシルク。
私たちがもつシルクの印象である
「つやつや・てかてか・つるつる」とはちがい、
とてもやわらかく、
いつまでもさわっていたくなるような
ふわふわ感と弾力があります。
シャツの下で「透けない」ことを考えて、
色はモカ(ヌードベージュ)が基本ですが、
肌うつりがいいグレイや
ネイビー(茄子紺)などの色もそろいます。

シルクは「セカンドスキン」と呼ばれるほど
人の肌になじみのよい素材。
通気性、発散性、吸湿性、保湿性にすぐれ、
静電気を起こしにくく、紫外線から肌を守ります。
冬はあたたかく、夏は涼しく、
常にさらっとして、快適な状態を保ってくれます。
日本ではシルクの原糸がほとんどつくられていないので、
中国で良い原糸を探し、日本で加工をし、編み、
製品づくりをしています。

バレエの衣裳をつくってきた恵谷さんだけに、
立体のパターンがすばらしく、
それが着心地の良さにつながっています。
ストレッチ加工をしているわけではないのに、
やわらかく伸びて肌になじみます。
洗濯表示としては「ネットに入れて」
となっていますけれど、なくても洗えるほど。
乾燥機はNGですが、さっと脱水して、
干せば1時間くらいで乾きますから、
旅行にもぴったりの肌着なのです。

恵谷さん、この1年、
「ma.to.wa」の開発状況はいかがでしたか?

「やわらかいウォッシャブルシルク、
デリケートな素材なので、ミシンで縫うのにも
時間がかかるんですけれど、職人さんの手が慣れて、
1日に仕上げられる数が増えてきました。
それでもまだ、年に1度この
『白いシャツをめぐる旅。』だけでの販売という状況です。
アメリカ、ヨーロッパ、アジアからも
引き合いがあるんですけれど、
まだまだそこまでつくることができない状況です」

わ、ということはほとんど
「ほぼ日」オリジナルなんですね。
じつはチームの女子メンバーから、
「ma.to.wa」のタンクトップをずっと着ていて、
あまりの気持ちよさに、
トップスだけじゃない展開をしたい、
ということで、今回お願いをしたんです。
たとえばドロワースは、
このごろの夏がとても暑いので、
スカートの下だったり、ワンピースの下に
さらっと穿けるものがほしいなという意見があって。

「はい、それで今回はタンクトップのほかに、
ドロワース、キャミチュニック、
リブキャミソール、
そしてメンズのTシャツという展開になりました。
海外のものも日本のものも、
チュニックとかワンピースには裏地が付いておらず、
肌離れがよくなくて、
足のあいだにワンピースが入ってしまう。
そこでインナーに着ていただいて、
見えてもおかしくないようなシンプルなものを
作ってみようと考えたものなんですよ」

清涼感のある色を選びました。

では個別に解説をしていきましょう。
まずはタンクトップ。
アイスグレーとネイビー(茄子紺)の2色があります。

▲ma.to.wa シルクのタンクトップ。

「シルク100%という素材は、
呼吸をしている素材なので、
年間通して、いいんですけど、
今回は春夏ということもあって、
清涼感のあるグレーをピックアップしました。
ネイビー(茄子紺)も、私たちの肌との相性を考えたもの。
顔うつりもきれいなんですよ。

デコルテのカッティングとか、
アームホールのくりなどはいままで通りです。
着心地のよさはもちろん、
ちらりと見えても繊細な印象になるように気を配っています。
脇縫いがないのでストレスフリーなのも、
いままでと同じです。

▲ma.to.wa シルクのドロワース。

「ワイドパンツの下にはいていただいても
邪魔にならないぐらいのつくりになっています。
股上が長いように見えるんですけど、
この素材は横伸びはしますが縦伸びをしないので、
しゃがんだときにずるっと落ちてこないように、
わざと長めになっています。
それも立体的にデザインをしていますから
穿き心地は抜群にいいですよ。
このリラックス感のあるドロワースと、
タンクトップやチュニックの上下で
寝間着にしていただくのもおすすめです。
とくに寝ているときは動きますから、
履き心地の悪いパンツだと落ちてくるのが、
これは身体の動きに馴染むようなパターンになっています。
ウエストの部分にはやわらかいゴムを使い、
生地でくるんでいるので、ゴムでかぶれることもありません。
Lなら男性のズボン下、
ビジネス・アンダーにも充分いけます。
ちなみにヨーロッパの人はドロワースを直で穿きますが、
下にショーツを履いていただいてもいいですね。
裾はひざ下くらいまであります」

ちなみにこのドロワース、
前・後ろがわかりにくいのですが、
穿いたときに左側内側に洗濯ネームがつきますから、
それでご判断くださいね。
立体裁断なので、前・後ろを逆にすると
ちょっと穿き心地が変わっちゃいますから。

▲ma.to.wa シルクのリブキャミソール。

「とてもよく伸びるリブ編みのキャミソールです。
細いナイロンのレースをつけました。
リブにしたのは、よりフィット感を出すためです。
女性らしいエレガンスさ、フェミニンな感じを、
シャツではなく肌着で出していただこうと考えました。
ストラップは、うすいゴムを生地でくるんでいますから、
かゆくなることはありません。
ふつう金具のアジャスターがつきますが
これに関しては無くても着られるだけの
じゅうぶんなストレッチをもたせています。

裾はメローっていうミシンがけ。
着る前はクルクルとなっていますけれど、
着たらぴったりします。
ほぼ、縫い目があたらないように、
一番細い始末にしています。

色は、外からは着ていることを
意識させないモカ(スキニーベージュ)と、
ネイビー(茄子紺)の2色をつくりました」

▲ma.to.wa シルクのキャミチュニック。

「タンクトップと同じ、フライスという素材です。
かたちは、すこし裾の広がったAライン。
Aラインにするため、脇は縫い目があります。
フレアになっているので、
ふんわり、すとーんと、きれいなラインです。

ストラップは、ゴムを生地でくるみ、
さらに金具もつけ、最大7センチくらいの
丈の調整が出来るようになっています。

胸もとはV字。
着た時にやわらかな印象になるような
カッティングにしています。
デコルテがきれいに見えるのが特徴です。
色はモカ(スキニーベージュ)とネイビー(茄子紺)です」

▲ma.to.wa シルクのメンズTシャツ。

恵谷さんに一気に解説をしていただきました。
さらに「白いシャツをめぐる旅。」では
メンズのシルクの肌着もつくりました。
今回のシャツは麻の薄手ですから
(その話は次回くわしくお伝えします)、
透けて見えないために、
「ma.to.wa」のモカ(スキニーベージュ)はぴったりです。
しかも、暑い時期「こそ!」のシルクです。
汗をかいてもすぐ乾き、また冷えにくい。
暑過ぎるということもありませんよ。

昨シーズンまでの「ma.to.wa」の
メンズTにくらべると、
胸元のV字をやや深めにしています。
ボタンを2つ開けたい、というときに、
見えないようにするくふうです。

このTシャツもやはり立体裁断。
肩の丸みの部分のはぎは、前に。
袖山をちょっと高くして、
手を挙げたときも裾がついてこないようになっています。
縫い目なしの丸胴なのでストレスフリーです。
「肌着にしては、自分の感覚的にはちょっと高め‥‥」
そうなんです。そうなんですけれど、
ハッキリ、これはオススメですよ、おしゃれ男子!

さて次回は、2型つくったメンズシャツについて。
伊勢丹メンズの凄腕バイヤー佐藤巧さんと、
HITOYOSHIの松岡さん、大坪さんといっしょに
つくりました。

2018-05-20-SUN