白いシャツをめぐる旅。2020 わたしのマスターピース。 白いシャツをめぐる旅。2020 わたしのマスターピース。
05 構築的で、うつくしく、そして丈夫に。Scye
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英国式のテーラリングを基本に、
吟味された素材を、
ひとのからだの構造や動き方にのっとった
独自のパターンやカッティングで構築。
クラシックでもありモダンでもあり、
どんな細部のつくりにも理由がある。
Scye[サイ]は、そんな服づくりをしている、
デザイナーの日高久代さんと
パタンナーの宮原秀晃さんによる
日本のブランドです。



今年の「白いシャツをめぐる旅」に加わる
Scyeの服は、コットンのプルオーバーシャツと
ベルギーリネンの軽快なパンツ。
東京・千駄ヶ谷にある直営路面店
「サイ マーカンタイル(Scye Mercantile)」で、
営業の保坂譲さんと、プレス担当の山田貴子さんに
お話をうかがいました。



今年、Scyeは20周年を迎えるそうですね、
おめでとうございます!



「ありがとうございます。
じつは10周年のときにもやったんですが、
記念の年ということで、今年つくるものは、
ブランドネームをちょっと変えるんです。
20周年は、ScyeのSの字が、金になります」
(保坂さん)
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2020年にリリースされる商品には、
今年だけのネーム! 特別感がありますね。
そのネームがつく
今年の「白いシャツ」のアイテムは、
プルオーバーシャツと、パンツです。



「今回のアイテムは、コットンとリネン、
それぞれ違う素材ですけれど、
組み合わせて着るのもおすすめなんです。
異素材ですが、どちらもナチュラルな風合いで、
白と黒で、コントラストもすごくいいので、
パキッとキマると思います」(保坂さん)



こちらが、プルオーバーシャツ。
正式名称は
「ウォッシュドポプリン・パフスリーブプルオーバー」。
涼しそうな生地ですね。
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▲Scye ウォッシュドポプリン パフスリーブプルオーバー

 ¥35,200(税込み)
「ウォッシュドポプリンは、
さらりとした肌触りの高密度のコットンです。
高密度の生地って硬くなりやすいんですが、
ワッシャー加工を施すことで、
洗い込んだようなシワ感が出て、
やわらかくナチュラルな風合いに仕上げています」
(山田さん)



やわらかいけれど、ハリもある、
気持ちのいい生地です。
後ろ身頃にたっぷりのギャザー、
袖口がゴム仕立てて、こちらにもギャザー。
このゆったり感がいいですね。
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「そうですね。
ボリュームのあるシルエットですけれど、
ヨークと袖のギャザーがポイントとなり、
見た目にも清涼感があって、
じっさい、軽く、涼しく
着ていただけると思います」(保坂さん)



「昨シーズン、違う素材、
もっとハリ感のあるタイプライターでつくりましたが、
春夏なので、もっとナチュラル感を全面に打ち出して」
(山田さん)



デザイン的にも、肩がかなり落ちていて、
体の線に沿わない、空気感のあるかたち。
気になる体型を気にせずに、
ストレスなく着用できそうです。



「襟はバンドカラーで、
ボタンは、貝ボタンの裏に足がついてるタイプです。
深い光沢がある天然ものの貝を使っていて、
見た目はパッとわからないようなところに
モノ作りのこだわりもちょっと入れてます」
(保坂さん)



首回りがすごくきれいですね。
ちょっと詰まり気味?



「ブランドの方向性として、
襟、胸元はきちっとしたいなというところがあります。
とくに、身頃がわりとゆったりと遊び感が多いので、
ちょっとアンバランス的な要素をミックスしています。
部分的に、抑えるところは抑えて。
ほかのアイテムにもそういうことは言えるんですが、
いろんなところに、Scyeの持ち味が生きています。
ちなみに襟元はすごく重要な部分になるので、
そこのところはしっかり、
シャツ工場さんに作ってもらっているんですよ」
(保坂さん)
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リラックス感のあるかたちですけど、
襟もとのイメージで、印象がかわりますね。
ボタンを1つ開けるのと、閉めるのとでも変わりますし、
ジャケットを羽織ったら、かなりきちんと見えます。
袖のギャザーがかくれるからかな。



「そうですね。
布の分量はあるんですけれども、
素材が薄くて柔らかいので、
ジャケットの下でも袖がモタつきませんよ」
(保坂さん)



ステッチや、端の始末もとてもきれいです。



「ほんとうに細かいステッチワークで。
脇も折り伏せで、細身に仕上げています。
うちの製品、とくに裏が付いてないものでも、
裏返した時にきれいに見えるようにしています」
(保坂さん)



美しさだけじゃなく、
丈夫さ、洗濯してもほつれないという意味でも、
心強いです。



「そうですね、ほつれないですね。
布端が出てるところがないからですね。
洗濯にもしっかり耐えられると思います。
洗濯すると、もっとシワ感が出るので、
それも楽しんでいただければ」
(保坂さん)



アイロンは、きちっとプレスするのではなくて、
スチームだけでもいいくらいでしょうか。



「じゅうぶんだと思います。
ギャザーの部分は、むしろプレスしないほうがいいですよ。
去年ご紹介したリネンタックブラウスも同様で、
お洗濯をして日常着として使っていただくと、
より味が出て行くっていうイメージだと思います」
(保坂さん)
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▲Scye リネンキャロットトラウザー(ブラック)

 ¥29,700(税込み)
さて、こちらはパンツ。
名前は「リネンキャロットトラウザー」です。
キャロットというのは、ニンジン?



「はい。穿いた時のイメージから、
キャロットレッグシルエットって言ってます。
腰まわりはゆったりとしていて、
裾に向かってテーパードで立体感を出して。
ひざ下にダーツをとって、全体に丸みを帯びた
独特のシルエットです」(保坂さん)
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昨シーズンまで、見たことのないかたちです。
あたらしいかたちですか?



「はい、新型です。
ただ、こういったウエストゴムのものは、
最近多いですね。
これは総ゴムで、穿きやすいですよ」
(山田さん)



「股上がひじょうに深くて、
リラックス感満載のパンツです。
アイテムとしてはゆったりとしてるんですが、
部分的にきちんとした仕様にしているところが、
うちらしさかな。
たとえばポケットはしっかりとした仕立てです。
じつはメンズのパンツ工場で縫ってるんです。
ポケットをちゃんとつくりたくて」(保坂さん)



メンズウェアの技術を使って、
つくっているんですね。
ポケットは両脇と、後ろにもふたつありますね。
素材は、リネン。



「定番のタックブラウスと同じ素材、
ナチュラルな風合いのベルギーリネンを使っています。
ポケットのボタンも共布のくるみボタンです。
裏も布でくるんでいるのもポイントです。
4つ穴のボタンは、クロスがけしていますよ」
(保坂さん)
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わ、そんなにちゃんとしたボタンだったら、
うっかりなくしたら、だめですね。



「(笑)じっさい、問い合わせがあるんですよ。
うちの服は、ボタンひとつまでデザインしているので、
古い服のボタンがなくなったから、
いついつのボタン、手配できますかって」
(山田さん)



なくさないように気をつけるのがいちばんですね。
このパンツも、洗うことで、
きっと風合いがどんどん変わっていくことでしょう。
洗濯は家庭でもできますよね?



「大丈夫です。
洗っていくと、ひじょうにいい風合いになります。
リネンは素材的にはすごく強いので、
表情が出てすごく面白くなってくると思います。
ぼくらの思いとしては、
新しいものをどんどん着ていただきたいんですけれど、
反面、長く着ていただきたいという思いもあります。
ブランドとしては難しいところです、ほんとに。
でも言えるのは、昔のものを着てくださっているのを
見ると、すごくうれしいということ。
ぜひ、長く着ていただけるものになりますように」



ありがとうございました、
きっとそうなると思いますよ!



Scye

https://scye.co.jp/
(次回は、英国生まれのJames Mortimer
[ジェームス・モルティマー]を紹介します。)
2020-04-13-MON