第2回 ヤマトは我なり。

糸井 最初にうかがった、
救援物資を運ぶチームのことについて、
もうすこしくわしく
お話いただけますでしょうか。
木川 「救援物資輸送協力隊」ですね。
糸井 そう、それです。
その活動は現在も続けられている。
木川 続けています。
糸井 救援物資がちゃんと被災者のみなさんに届くのか、
ということについては、
心配されたり話題になったり
いろいろなかたちで言われていますが、
実際のところはどうなんでしょう。
木川 いや、それはですね‥‥
救援物資をどこにどれだけ送るか、
送った物をどうやって管理するか、
そういう整理整頓が、
できていないケースがやっぱり多いんです。
糸井 ああ‥‥。
木川 災害が起きたときには、
常に同じことが起きているのですが、
救援物資の管理については
地方自治体のかたが仕切るわけです。
多くの場合そのかたには、
ロジスティックスの専門知識がありません。

※ロジスティックス
 経済において、原材料の調達から
 生産・販売に至るまでの物流を
 効率化するための手段のこと。
糸井 そうでしょうね。
木川 その一方で、
救援物資はどんどん来るわけです。
水が来る、食料品が来る、衣類も。
そしてそれらは、
およそ物流の拠点にふさわしくない
体育館であったり、公会堂であったり、
学校であったり、
そういう場所へまずは入れ込まれます。
ところが、
そういう場所は中は広くていいんですが、
出入り口が狭いんです。
救援物資はどんどん来るから、
どんどんそこに入れられていく。
そうするともう、
最初に入れられた荷物は出せなくなる。
糸井 ボトルネックだらけになるんですね。
木川 そう。
必然的に「後入れ先出し」になるんです。
後から来たものを最初に出す。
いちばん最初に入れたものが食料品だったら、
賞味期限が切れてしまいます。
糸井 うーーん‥‥。
木川 ほしい物が
いちばん奥にあるとわかっていても出せない。
それどころか、
奥に何があるのか誰も知らない状況になる。
糸井 簡単にそうなってしまいそうですね。
木川 あとは、これ、
ほんとうにとある避難所で見たんですが、
そこにはひとりも赤ちゃんがいないのに
哺乳瓶と粉ミルクの段ボールが
どーんと置いてあったんです。
それを必要とするところはほかにあるのに、
まったく別のところにいっちゃってる。
糸井 せつないなぁ‥‥。
木川 そういう状況を
ロジスティックスの専門家が仕切ると、
うまく回転がはじまるんです。

たとえば、気仙沼市では、
「ぜんぶヤマトに任せる」
ということになりました。
もう自分たちの手に負えないと。
それで、
大混乱してる状態でぼくらが引き受けて、
2日目には完璧に
「どこに何がいくつあるか」をパソコンに入力し、
その置き場所のレイアウトも完了しました。
糸井 所番地をつけたわけですね。
木川 そう、所番地をつけた。
すると、
歯ブラシ1本とか、長靴一足とか、
ほしい物をすっと出して
お渡しすることができるようになりました。
糸井 たった2日で。
木川 忘れてはいけないのが、
自衛隊の方々の存在です。
ヤマトがその場を仕切ると決まってから、
自衛隊のみなさんがですよ、
ぼくらの支配下に入って、
指示通りに動いてくれたんです。
これはね、ほんとに‥‥
糸井 すごいっ!
もう、立ち上がって拍手したいですよ(笑)。
木川 ひと言の文句もなしに、
われわれの指示で動いてくださる。
自衛隊っていうのはすごいな、と。
糸井 はあー‥‥。

ちなみにそれは、
気仙沼から依頼がきたのが先ですか。
木川 気仙沼が救援物資で大混乱してるというので、
見るに見かねて
「ロジスティックスの専門家を送り込みますよ」
と提案しましたら、
「全面的にお任せします」と。
糸井 そうですか。
気仙沼っていうのは、すごく改革的ですよね。
ぼくらもいま、
やりとりをしている気仙沼の人が多いんですが、
「無から有を生じせしめる」みたいな、
気迫があるんですよ、みなさんに。
木川 すごいですよね、気仙沼は。
糸井 ‥‥ということは逆に、
「それはちょっと」と、
お断りになる市町村もあったわけですか。
木川 ありました。
われわれの善意は受けとめてくださるのですが、
現場の指揮命令権は手放したくない、
そこは自分たちの責任であると。
ご自分たちでがんばられた市町村も
たくさんありました。
糸井 もしもの話なんですが、
その市町村がみんな
「全面的にお任せします」と言ってきたら、
そこに送り込むだけの人材はあったんですか?
木川 ありましたよ。
糸井 うぉっ、かっこいい!
木川 それが500人なんです。
トラック200台、
人員500人で支援体制を組んだ
「救援物資輸送協力隊」がそれです。
糸井 なるほどぉ、
かっこいいなぁ‥‥。
木川 ですから500人はいたんです。
要請があれば500人まではすぐに出しますと。
これまでで、
一度に出た最多は180名なので、
あと300人くらいの余裕があったんです。
糸井 はあーーー、すごいっ!
(つづきます)


2011-08-22-MON