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さて、じゃあ、まとめとして、
いま、タバコをやめようとしている人に
伝えるとしたら、どんなことを? |
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まずは、ニコチンという黒幕ですね。
禁煙は難しいんじゃなくて、
あなたに難しいって思わせてるのが
ニコチンなんだってことです。 |
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あとは、禁煙を、
漠然と「難しい」で済ませるんじゃなくて、
具体的なこととしてつかんでいくべきですよね。
たとえば、肺が真っ黒になるとか、
癌になるっていうことが、ひょっとしたら、
健康に毎日を過ごしている人には
ピンとこないかもしれない。
でも、要するにそれは、
空気と肺の細胞の接地面積が
小さくなってるってことでしょう。
それは、おそらく、息苦しい。
そういうことがイメージできたほうが、
禁煙にかぎらず、毎日のいろんなことが
うまくいくでしょうね。 |
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禁煙ができると、コントロールがよくなります。
いわば、人生の制球力がよくなります。
生きるコントロールがよくなる。
コントロールがよくなると、
歳をとって球速が落ちてきても
ちゃんと試合をつくれるようになります。
ただ、コントロールだけに気をつけてると、
だんだんいい子になっちゃう自分が、
たまに、ちょっとさみしくなるんだよ。 |
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そこにできる隙間みたいなものを
なに埋めるかなっていうのが、
またちょっとおもしろいところでね。
たとえば、歌だったり、森だったり。 |
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そう(笑)。
「オレには、そういうものは要らないよ」
って言う人だっていると思うよ。
「タバコ吸ってれば、ぜんぶ済むから」ってね。
それはもう、しょうがないっていうか、
それでいいなら、いいと思う。 |
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でも、タバコをやめたぶんだけ、
なにか新しいものが自分の世界に
入ってくると思うと、いいですよね。
タバコ代の440円が浮く、
っていうだけじゃなくて。 |
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あらためて訊きますけど、
糸井さんは、禁煙できたんですよね。 |
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よくさ、しばらく禁煙して、
「もういつでもやめられますから」って
言いながら、やめた人として
ときどき吸う人がいるでしょ? |
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だからダメだとは言わないんだけど、
少なくとも、ちょっとウソがあるよね。
だから、なんだろうなぁ、
自分が基本的に
だらしない人間であるっていう注釈は
100パーセントつけておきたいんだけど、
それでも、信用できる人だと
言われる人でありたいと思うんです。 |
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そういうことを、
すごく正直にことばにするとしたら、
いま、ぼくは、
吸わずにいられるっていう状況にいる、
っていうぐらいなのかなぁ。 |
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ちなみに、いままで言ったことを
台無しにするようで愉快なんだけど、
この7年のあいだに、
1本だけ吸ったことがあるんだよ、オレ。 |
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知ってます(笑)。
わざわざ報告してくれましたもんね。
なんか、どこかから
ひょいっと昔のタバコが出てきて。 |
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そう(笑)。
で、どうなんだろうと思って。
ずっと興味があったんだよ。
その、吸いたいというわけじゃなくて、
「吸うとどうなるんだ?」って。 |
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そのへんが糸井さんらしいなぁ(笑)。
でも、ぜんぜんダメだったんですよね。 |
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そう、気持ち悪くなった(笑)。
ひと口ふた口吸って、すぐ消した。
あの1回は、ある意味で、
その後の励みにさえ、なってますね。
吸ってもあれだよ、って思えるから。 |
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でも、糸井さんから
「ちょっと吸ってみたんだよ」
って聞いたときは
ひっくり返るかと思いましたよ(笑)。 |
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そうですね。
なんていうか、たぶん、好きだったタバコを、
面倒くさいからやめたんだと思うし、
これからも吸わないだろうと思うのは、
もうあんな面倒くさいことは
経験したくないっていうのが正直な気持ちです。
吸うのも、やめるのも、面倒くさい。
やめたのにまた吸いはじめるっていうのは、
もう、最高に面倒くさい。 |
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なんか、いろいろ忘れてるなぁ。
きっと、もっといろんなことを言えたんだろうね、
禁煙しようとしてる最中はさ。
まぁ、ともかく、ぼくの奥の手は、
「おっぱい理論」ですから、
それさえ、言えればOKなんですけどね。 |
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ちょっとすごいですよ、この、奥の手は。
(分厚い紙の束をドサッと机に置く)
これです。 |
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つまり、7年前の原稿です。
こんな量になってたって知ってます? |
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1ヵ月半、毎日書いてます。
そのあと、不定期になって、
けっきょく2ヵ月続いてます。 |
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はははははは。
最初のころは、
吸いたくなったら書くことにしていたみたいで
1日の文章量がすごく長いんですけど、
だんだん短くなっていくんです。 |
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いや、これ、奥の手どころじゃないね。
びっくりだよ‥‥。 |
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これをつけようと思ったときの
気持ちを覚えてます? |
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まぁ、本にしようと思ったというか、
かならずなにかになると思ったからだろうね。 |
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糸井さん、喘息の治療のときに、
日記をつけてたことが役だったって
おっしゃってましたね。 |
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それもおなじです。
なにかをはじめたりやめたりするときは
変化を語るだけでおもしろい。 |
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(ところどころ拾い読みしながら)
‥‥‥‥おもしろいねぇ。
「日記つけてるから吸わずに済んでる」
って言い方してるわ。
いや、記録ってすごいな。
残しとくもんだねぇ。 |
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でも、ここまで忘れてるとは思いませんでしたよ。
見せたら「あー、あれか!」って
なるのかと思ってた。 |
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いや、まったく覚えてないよ、オレ。
読んでると、たしかに
自分の文章だなってわかるんだけど。
いや、ここまで自分のやったことを
キレイに忘れてることってないかもしれない。 |
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たぶん、糸井さんの状態が
ちょっとふつうじゃないでしょうから。 |
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そうだねぇ。
「ガムを噛みすぎて、口の中が傷だらけだ」だって。 |
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いや、まいったな。
これは、永田くんに送ってたの? |
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そうです。
コンテンツにしようっていうことで、
ふたりで進めていたので、
ぼくにあてて毎日送ってたんです。 |
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結果的には、そうですね。
どこにも出せなかったので。 |
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へぇーーー。覚えてない。覚えてない。
ここまで覚えてないっていうのは、すごいなぁ。
こんなこと、あるんだね。まいった。 |
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で、ちょっと相談なんですけど、
これをどうしようかと。 |
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それこそさ、当時やろうとしていたことに沿って
電子書籍みたいなものにしたら?
タダか、500円くらいで。 |
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あ、まさにそう考えてたんです。
タダっていうのもあるかなと。 |
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そうねぇ。
でも、タバコ代くらいもらったほうが
おさまりがいいかもしれないよ。 |
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ああ、タバコ代っていうのはいいですね。
440円? |
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なんか、それに近い、きりのいいところで。
「出さなかった禁煙の本」としてね。
この対談のおわりのところで、
オマケみたいにして出したら? |
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(おしまい。そして‥‥) |
2010-10-19-TUE |