永田 |
たったいま、3人で第26回を見終わりました! |
糸井 |
お疲れさまでした! |
西本 |
お疲れさまでした! |
糸井 |
さあ、今日はどこから話しますか? |
永田 |
まずは日曜日の話からしないといけないです。 |
糸井 |
どういうことですか。 |
永田 |
先週、ぼくらは3人で約束しましたよね?
日曜日8時の本放送は、
我慢して観ないでおいて、
月曜日に3人で録画を観ようと。
そしてすぐに話し合おうと。 |
糸井 |
ええ、そうです。
がんばって我慢しましたよ。 |
永田 |
ぼくもです! |
西本 |
‥‥‥‥。 |
永田 |
ところが、ですよ。 |
糸井 |
えっ、まさか? |
西本 |
‥‥‥‥。 |
永田 |
こちらにいらっしゃいます西本さん、
今朝、ぼくに会うなり、
なんて言ったと思います? |
糸井 |
西本さんはなんと? |
永田 |
「観ちゃった」、と。 |
糸井 |
「観ちゃった」!
約束はどうなったんですか! |
西本 |
‥‥‥‥いや、しかたないんです。 |
永田 |
どういうことですか! |
西本 |
日曜日、我が家の夕食は
美味しいカレーだったんです。 |
糸井 |
は? |
西本 |
永田農法のタマネギとじゃがいもを使った、
とっても美味しいカレーだったんですよ。
もう、つくってるときから、
いいにおいがしてたんですよ。
でね、「できたよ」って言うじゃないですか。
食卓に座るじゃないですか。
そしたら、『新選組!』がはじまったんですよ。 |
糸井 |
奥さんが観ようとしてつけたわけ? |
西本 |
というか、当たり前の流れとして、
「カレーできたよー、
『新選組!』はじまったよー」って。
で、はじまってるから、観ちゃったと。 |
永田 |
「観ちゃった」じゃないだろう!
3人で観る約束はどうなったんだよ! |
糸井 |
ひどい話ですねえ。 |
永田 |
それと対称的な、
我が家の日曜日の状況を
話してもいいですか? |
糸井 |
どうぞどうぞ。 |
永田 |
先週も言ったように、ぼくはいままで
妻からさんざん「『新選組!』を観ろ」
と言われてたわけですよ。
で、ようやく先週観て、
「やっぱ、おもしろかったわ!」
ってなったわけじゃないですか。
すると、妻は当然、
「じゃあ、今週はいっしょに観れるね」
って言うわけじゃないですか。
ところがぼくは、「いや‥‥ごめん」と。 |
ふたり |
わはははははは。 |
永田 |
「わけあって、いまここでは観れんのだ」と。
妻は当然、「なんじゃそりゃ!」と。 |
糸井 |
じゃあ、奥さんだけが観てたわけですか。 |
永田 |
そうです。ぼくは別室で暇つぶしです。 |
西本 |
わははははははは。 |
永田 |
なんでそんなにたのしそうなんですか。
反省してください。 |
糸井 |
順番としていうと、
ぼくも日曜日の話をしなきゃいけないですね。 |
ふたり |
どうぞどうぞ。 |
糸井 |
ぼくはまず夕方、床屋に行きましてね。
帰ってきてから、テレビをいじってたんですよ。
最近、デジタル有線にしたもんですから、
いろいろ調整してたんですよ。
で、たまたまNHKハイビジョンにしてみたら
『新選組!』がやっているんですよ。 |
永田 |
ああ、ハイビジョンで。 |
糸井 |
そうです。夕方の6時ごろですよ。
総合テレビで8時から放送がありますよね。
で、6時台にやってるわけだから、当然、
「これはいつかの再放送だな」
と思って、ぼんやり観てたんですよ。
そしたらですねえ‥‥それ、
いま観た第26回だったんですよ。 |
永田 |
ああ。 |
西本 |
へえ。 |
永田 |
‥‥‥‥ええっ!!! |
西本 |
じゃ、観ちゃったんですか!!! |
糸井 |
‥‥‥‥結果的に。 |
永田 |
なんスか! それ!
じゃあ、我慢したのオレだけじゃないですか!
なんでそんなことになるんですか!
おい、あなたがた! |
糸井 |
いや、オレの場合は罪ないと思うよ。
だって、総合テレビが皮切りだと
思い込んでたんだから。
ハイビジョンでそれより2時間も早く
やってるなんて思うわけないじゃない。 |
永田 |
観てりゃわかるでしょうよ! |
糸井 |
いや、オレもぜんぶ観てたわけじゃないから、
いつかの再放送だろうなあと思って。
あと、観てたらおもしろかったからさ。 |
西本 |
ぼくも、カレーが美味しそうでしたし。 |
永田 |
意味わかんない。
えっ、ちょっと待ってください。
じゃあ、いま、3人で観たわけですけど、
手に汗握って「おおお!」と
思いながら観てたのはぼくひとりなんですか! |
ふたり |
うん。 |
永田 |
かーーーっ。マジかよ。
どうりでおかしいなあと思ったんだよ。
糸井さん、チャンバラやってる
いっちばんいい場面で
エアコンの温度下げたりしてんだもん。 |
西本 |
そうそうそう(笑)。
「そこで席立つか!」ってところで。 |
糸井 |
いやあ、寒かったからさあ。 |
永田 |
‥‥男子部の法度、早くも崩壊。 |
糸井 |
まっ、そんなわけで。 |
西本 |
ええ、ドラマの話をしましょう! |
永田 |
釈然としない! |
糸井 |
第26回はいかがでしたか。 |
西本 |
いや、おもしろかったです。
2回観てもおもしろかったです。 |
糸井 |
あ、それはそうですね。 |
永田 |
ああ、そういうもんですか。
でも、わかるような気がするな。 |
糸井 |
今日はぼく、まずオープニングの
話をしたいんだけど、いいですか? |
ふたり |
どうぞどうぞ。 |
糸井 |
オープニングがすごく好きなんですよ。
タイトルバックの青空、そして白い雲。
あれがねえ、これから起こることの
暗さに対してのね、光なんですよ。
あれを暗い画面にしたら
このドラマは暗過ぎるんですよ。
血しぶきの物語になっちゃうんです。
だって『血風録』っていうくらいですからね。
司馬ちゃんが書いたやつでは。 |
永田 |
司馬ちゃんは失礼です。 |
糸井 |
司馬遼太郎先生は、新選組の物語を
「血の風」と表現したわけですよ。
それくらい、新選組の将来は
血なまぐさいんです。
それがわかっていながらね、
オープニングでは青空と白い雲の下、
一目散に駆け抜けていく若者たち。
これは、三谷さんの意志ですよねえ。
また音楽もいいじゃないですか。
♪ちゃららら〜ちゃららちゃららら〜! |
永田 |
♪ちゃららら〜ちゃららちゃららら〜! |
西本 |
♪ちゃららら〜ちゃららちゃららら〜! |
さんにん |
♪ちゃららら〜ちゃららちゃららら〜! |
西本 |
どっかに『新選組!』の着メロないっすかねえ。 |
永田 |
そういや、吉田戦車先生が
「ジョン・健・ヌッツォ」のエハイクを描いて
大評判になったとき、
ぼくらはちっとも意味がわからなかったんですが。 |
西本 |
いまならわかりますね!
ジョン・健・ヌッツォ! |
永田 |
ジョン・健・ヌッツォ! |
糸井 |
オープニングの話を続けていいですか。 |
ふたり |
どうぞどうぞ。 |
糸井 |
つまり、三谷さんは、
彼らの将来にある「陰」に対する「陽」、
「影」に対する「光」を
たくさん用意してドラマに入れてるんですよ。
オープニングはその象徴ですね。
青い空と白い雲で、
こう、踏ん張っているんですよ。 |
永田 |
そして駆け込む先は仁王様のいる門で、
最後は夕日に染まっていくという。 |
糸井 |
暗示してますよね。
ここから先は重くなっていきますから。 |
西本 |
今回のお話も、話は重いんですけど、
暗くならずに観られる仕掛けが
至るところに散りばめられてありましたね。
お話を手紙のかたちで伝えているところとか。 |
糸井 |
手紙! 見事だったね! |
永田 |
重い事実を、妻に向けた手紙のなかでは
あえて明るく、表面的に書くことによって
妻が安心しているっていうつくりで。 |
西本 |
けっきょく、読んでるヨメは笑顔ですからね。 |
永田 |
そうそう。あと、
1話で1日分の出来事を追うっていう
「しばり」から多少外れることが、
手紙のかたちだとOKになるのも
うまいなあと思いました。 |
糸井 |
最後のところの演出も見事でしたね。
重い事実を一回書いておいて、
破って書き直すという。 |
永田 |
あそこはドキッとしましたね。
「こんなことまで手紙に書いちゃうの?」って
観てる側が思った瞬間に「ビリッ!」と。 |
糸井 |
うまいよなあ。 |
永田 |
妻に事実を伝えないあたりは、
『ゴッドファーザー』の
ラストシーンを思い出しました。 |
糸井 |
とにかく、そういう対比を随所に入れてますよ。
最後のチャンバラの場面も
緊迫するムードの裏では
華やかな踊りが交差するように
流れてるわけじゃないですか。 |
西本 |
三味線がだんだん盛り上がっていくとことか、
儚い戦いのBGMとして
よくできてるなと思いました。 |
永田 |
うん。で、踊りとチャンバラの
真ん中で悩んでるのが近藤なんだよね。
踊りを見つつも、土方たちのことを考えてて。 |
糸井 |
ところで、ぼくはちょっと、
あの場面で気になるところもあって。
あの、つい、『離婚弁護士』を観てたときの
クセが残っていることもあって、
そういうところも突っ込まないと
いけないなっていう気持ちがあるんです。 |
永田 |
ああ、なるほど。 |
西本 |
どうぞどうぞ。 |
糸井 |
あの、これだけの豪華キャストを
そろえちゃうと時間をとるのが
すごくたいへんじゃないですか。
だから、芸事とかを訓練するのが
そうとうむつかしいと思うんですよ。
たとえば、優香さんの踊り。
彼女自身はぜんぜん悪くないんですけど、
こう、ひらひらしてる踊り全体を
ふつうに見せるんじゃなくて、
殺陣の迫力と呼応するように、
扇子の動きだけを見せたりしても
よかったのかなと思いますね。 |
永田 |
あっ、それ、ぼくも
まったく同じことを思ってました。
あの、近藤勇が手紙を書くときの手元は
たぶん、誰かが代わりに演じてて、
観てるほうはそれでぜんぜん問題ないですよね。
あれと同じように、玄人の方が
手元だけを演じてくれたらいいのに、って。 |
糸井 |
そうなんですよね。
けっきょく、ヒラヒラしてるなっていう
記号、アイコンで終わってましたからね。 |
西本 |
もっと、こう、アスリートとしての
深雪太夫のよさが出てると。 |
糸井 |
そうなんですよねー。
まあ、細かいことですけどね。
ファンの人はうるさいと
思うかもしれませんが。 |
永田 |
まあ、各自が気になることを
包み隠さず言うあたりも、
この「ほぼ日テレビガイド」の特長ですから。
そのあたりは、『新選組!』編から
ご覧になった方にもご理解いただきたいと。 |
糸井 |
いただきたい! |
西本 |
いただきたい! |
糸井 |
ほめたいところはたくさんあるんですけど、
まず今日はキャスティングの
よさについて話したいですね。 |
西本 |
なんといっても、ささきいさおさん! |
糸井 |
「悪かった」ですねえ〜。 |
西本 |
悪かった悪かった(笑)。 |
永田 |
「早く斬ってくれ!」と思いながら観てました。 |
西本 |
思った思った。 |
糸井 |
あのさ、あの人のように、
「年とってからも二枚目」っていうのは、
キャスティングするときに
すごくむつかしいと思うんですよ。
ところがそれを悪役にして活かしてるんですよね。 |
永田 |
なるほど。二枚目だからこそ、
「斬られてほしい」と思う憎さが
強くにじみ出るっていう。 |
糸井 |
そうそう。 |
西本 |
また、いい色に日焼けしてて。 |
糸井 |
それもまた憎々しい。 |
永田 |
あと、あの表情!
のど仏が演技してるんじゃないかと
思いましたよ。 |
糸井 |
わはははははは。 |
西本 |
加えてあの声ですから。 |
糸井 |
「ええい、下がれ下がれ!」ってところな。 |
永田 |
ほんと、憎かった! |
西本 |
あの人は出演者の中で唯一、
主題歌を歌い上げる力を
持っている人ですからね。
『宇宙戦艦ヤマト』『ゴレンジャー』と
歌い上げてきた人ですから。
きっと、ジョン・健・ヌッツォが倒れたら、
あの人がピンチヒッターで歌うんですよ。 |
永田 |
意味わかんない。 |
糸井 |
これは『離婚弁護士』のときにも
感じたんですけど、ドラマの、
キャスティングっていうものに対する意識って
すごくアップしてきてるんじゃないかなあ。
「ま、そいつでいいんじゃない?」
っていうふうな決め方じゃないよね。
台本書くくらい本気ですよね。 |
西本 |
今回新登場したふたりの
キャスティングもよかったですね。 |
糸井 |
軍師役の八嶋さんとかね。
「こっちが値踏みしてるんだ!」ってね。 |
永田 |
あ、『トリビア』の人だ。 |
糸井 |
もうひとりのほうの、
「印象が薄い」っていう個性もよかった。
面接試験はおもしろかったよね。
あれも、光と影の対比で、
「光」として入れてるんだと思うけど。 |
西本 |
キャスティングでいうと、
今回新登場っていうわけじゃないですけど、
「故郷にいる近藤勇のヨメ」としての
田畑さんはいいですよね。 |
永田 |
あ、「追いガツオ」の人だ。 |
西本 |
‥‥あんた、ほんとに人の名前覚えないな。 |
永田 |
いや、ほんとごめんなさい。
でもぼく、あの人は「追いガツオ」で
「おいおい」言ってたころから好きでしたよ。
朝の連ドラの主役になったときには
「それみたことか」と誇らしく思いましたもん。 |
糸井 |
「追いガツオ」はともかく、
田畑さんのヨメ役はいいところをついてるよね。
妙にお化粧させない役割で、
すごくいい存在感じゃないですか。
「この人は、京の血なまぐさいことを
なんにも知らないほうがいいんだ」
って思わせる品と落ち着きがありますよね。 |
永田 |
いいですよね。今週のお話も、
最後にあの人のあの声で
手紙が読まれて締められることで
どんだけ救われてるか。 |
西本 |
あと、ぼくが贔屓にしている
オダギリジョーは今週もかっこよかったですよ。 |
糸井 |
オダギリジョーは体を鍛えてますね。 |
西本 |
ああ、すごかったですね。
拷問を受ける場面、
筋肉の構造が見事でしたね。
さすが『仮面ライダー』を経由して
新選組に入っただけはあります。 |
永田 |
でも新選組のメンバーを演じてる人たちって、
「剣が強い」っていう意識で
ぼくらは観てるから、着物がはだけたときに
身体がガリガリだったら困りますよね。 |
糸井 |
その意味では、いまの時代って
メイクと同じくらい
役者のボディーづくりが必要になりますね。 |
永田 |
あ、なるほど! |
西本 |
山本太郎さんもいい身体してましたね。
あの人の槍の構えは、つねにあれですか? |
糸井 |
あの「おっとどっこい天秤棒」
みたいな槍の構えね(笑)。
完全にアイコン化してますよね。 |
西本 |
ええ。きらいじゃないです。 |
永田 |
ぼくが中学生だったら絶対マネしますね。
掃除の時間にほうきを肩にかついだりして。 |
糸井 |
モップ抱えてプレスリーの
マネするようなもんだよね。
新選組のなかで、あの人だけ
「様式美」があるんですよね。
|
西本 |
ええ。きらいじゃないです。 |
永田 |
キャストの話はきりがないから
また追々話していくとして、
ほかの切り口でなにかありますか? |
西本 |
あの、先週、糸井さんが
「照明がすごいから観ておくべし!」
って言ってたので、
そこをチェックしていたんですが。 |
糸井 |
照明すごいでしょ!
目の光の強さとか!
な? オレが言ったとおりだったろ?
読者の方々もきっと照明のすごさに
注目してくれたに違いない。 |
永田 |
あ、その話、編集でカットしちゃいました。 |
糸井 |
なにーーっ! なんで、あんなに
いいこと言ったのにカットするんだ! |
永田 |
長すぎるんですよ! 先週の原稿、
何ラインあったと思ってるんですか! |
西本 |
まあまあ、ふたりとも。 |
永田 |
そういうわけですので、
いまいちどお話しください。 |
糸井 |
何度でも話してやるさ。
このドラマって、いわば、
日本のイケメンたちが勢ぞろいじゃないですか。
その豪華キャストで、新選組という
「ああと思えばこうすべきだし、
こうと思えば、ああなってしまう」
みたいな、揺れ動くものを表現しているんです。
そのときに、イケメンたちを照らす
照明っていうのはすごく重要で、
実際、ものすごいことをやってるんですよ。
光と影を表現する役者さんたちに、
文字通り光と影を与えて、
ドラマの「揺れ」を表現してるんです。
これはねえ、誰がどうしてるのか知りませんが
見事ですねえ。 |
永田 |
たしかにアップになったときの
顔の陰影とかすごかったなー。 |
糸井 |
香取くんの目玉の光とかすごいでしょ。 |
西本 |
ああ、潤んでますね。
ぎらぎらしてますよね。 |
永田 |
ちょっと爬虫類っぽい感じの
すごみがありましたよ。 |
糸井 |
あれはどうやってるんだろうね?
「そこまで光を入れるの?」っていうような、
ぎりぎりのところまでやってますよね、きっと。
あれは後に種明かしを知りたいですね。
遠景の絵もすごいんですよ。ようするに、
セットを組んで撮ってるわけだけど、
そんなにでかいセットを
組んでいるわけがないんで、
そこに立体感を与えるのは照明なんですよ。
あのライティングは、つまり、
彫刻を作っているんですよ。
あれはねえ、スタッフロールで名前を調べて
拍手したいですね。すばらしい。
「光」と「影」の矛盾のなかに
立ちのぼる立体感、ですから。 |
永田 |
「光」の部分で
ぼくがすごくいいなと思ったのは
沖田総司と八木ひでがふたりで
おにぎりを食べる、
あのラブコメのような場面。
あのふたりのアップはよかったなあ。
なんてキレイな顔なんだろう、と思った。 |
西本 |
ああ、そこそこ!
ぼくもそこがよかった!
あの照明はすごかった。
木陰なのにあのふたりの顔には
自然と光が当たってて、
ふたりが動いたとしても
自然に顔に当たったまま光はズレないし。
最後、バックショットでふたりが
境内から出ていきますが、
あの絵はすごいと思いました! |
永田 |
あそこは場面としてもよかったですよね。
「ごはんつぶつけて」みたいなセリフとか、
横で嫉妬してる中村さんとか、
ベッタベタの展開なんですけど、
糸井さんが言うようにあれは、
陰陽のバランスを取るための対比というか、
「光」としての「ベタ」だと思うので。 |
糸井 |
「影」の部分としては、
土方の番長ぶりと、近藤勇の苦悩ですよね。
とくに土方は輪郭がくっきりしてきてますよ。
とにかく土方が近藤を先回りしていって、
舞台をつくっていく。そのぶん、近藤が悩む。
組織をつくる戦略として、効いてるんですよね。 |
西本 |
あ、土方が近藤のマネージャーとして
すごいなと思ったのは、
内山を斬ることを近藤に提案するとき、
決めのひと言として、
「それくらい内山は百姓が嫌いだ」
って言ったじゃないですか。
「百姓が嫌い」っていう言葉に
近藤が過剰に反応することを知ってて
焚きつけているわけですよね。
あのあたりはうまいなあと。 |
糸井 |
やっぱり王道を通ってこなかった人達の
組織の動かしかたですよね。
いや、すごいよね。 |
永田 |
また、あのふたりが幼なじみだからね。 |
西本 |
そうそう。幼なじみだからこそわかる
「嫌なところ」のツボを利用してる。 |
糸井 |
チャンバラそのものはどうでしたか?
まあ、前作は相手が芹沢鴨だったから
別格だったかもしれませんけど、
ちょっとこう、じれったい感じもありましたね。 |
永田 |
シチュエーションじゃないですかね。
前回は屋内とはいえ、
立ち回れる広さがありましたけど、
今回は、橋があって、
そこにカゴがあってっていう、
あらかじめ窮屈な状況でしたから、
大立ち回りさせるわけにもいかないというか。 |
糸井 |
ああ、なるほどね。
よくとれば刃物を扱うことの恐ろしさは
あのくらいのノロノロしている感じのほうが
ほんとうだとも思うんですよね。早い話が、
長い包丁を持っているわけじゃないですか。
それを振るのはやっぱり怖いですよね。 |
西本 |
あの場面、ささきいさおさんが、
ふつうにカゴから降りてくるあたりが
説得力ありましたね。
従来の悪い役人のパターンって
「あわわ、あわわ」と逃げ腰で
カゴから這って逃げようとしているところを
バッサリっていう感じだったと思うんですけど。 |
永田 |
ああ、『必殺!』シリーズみたいなやつね。 |
西本 |
そうそう。だから、
あそこでふつうにカゴから降りてくることで、
「こいつも剣はそれなりに強いんだな」
って観ているほうは思うというか。 |
糸井 |
基本的に、このドラマで刀を抜くやつは
みんな強いんだっていうとらえ方ですよ。 |
西本 |
あ、なるほど。 |
永田 |
前回と今回のチャンバラを観て思ったのは、
「誰がそいつを斬るのか」ってことに、
きちんと意味があるんですよね。
前回は沖田で、お梅さんとの伏線があったし、
今回のオダギリジョーも
ひどい目に遭わされてて、
最後の最後に飛び出してきますから。 |
糸井 |
ああ、そうだね。 |
永田 |
ただ斬ってるだけだと、ほんとに
殺戮部隊みたいになっちゃうし、
強いやつが斬るんだってことになると、
毎回沖田が斬らなきゃいけなくなる。
だから、斬らせる人に、
きちんと大義を与えてるところが、
つくるのはたいへんなんだろうけど
観てるほうとしてはおもしろいなあと。
「誰が斬るんだ?」っていうたのしみとして。 |
糸井 |
妙に平気な顔して
ただのチャンバラをやっても
しかたがないですからね。
これからはそのあたりにも注目ですね。
なんといっても、これから
いよいよ池田屋にいきますからね! |
西本 |
ええ、来週もたのしみです! |
永田 |
ていうか、来週はどうすんのよ。 |
ふたり |
え? |
永田 |
日曜日に観ていいんですか?
月曜日まで我慢するんですか? |
糸井 |
まあ、そんな固いこと言わずにだな、
観るかもしんないし、
我慢するかもしんないし。 |
西本 |
観ちゃったら観ちゃったで、
まあ、それはそれってことですよ。 |
永田 |
‥‥士道に反するやつらだ。 |