糸井 |
タモリさんって、絶えず、
「日々を営む」っていうことを優先させますね。 |
タモリ |
ええ。
なんとか生き延びるっていうことが最優先。 |
糸井 |
生存戦略(笑)。 |
タモリ |
ええ。つまりあの、
観念によって生きかたが規制されるっていうのが、
あんまり良くないですね。 |
糸井 |
よくない。 |
タモリ |
正義であるとか、
こうしなければならないとかいうために、
自分の生きかたを規制されるっていうのは、
結局、言葉だけを信じて
生きてるみたいなもんですからね。
お題目になっちゃう。 |
糸井 |
そうですね。
だから、「変態反対」に対抗、っていいながら、
結局は、観念の中に
突入していってしまうわけですよね(笑)。 |
タモリ |
ええ、ええ、そうです。 |
糸井 |
で、どうなるかっていうと、
それはちっとも
楽しくも何ともなくなっちゃう。 |
タモリ |
楽しくもないことなんですよね。 |
糸井 |
人のためにもなんないと思うんですよね。 |
タモリ |
ええ。 |
糸井 |
自分のため以上にね。 |
タモリ |
ええ。 |
糸井 |
80年代の初期の対談でも、
同じようなことを言ってよろこんでますね、
ぼくらは。
※註:『話せばわかるか』という
過去の糸井重里対談集をひもとくと、
確かにタモリさんは、
「俺は全体像にまったく欠けている。
なんか、全体像を持つと不幸ですよね。
こうあるべきとか位置づけると不幸ですよ。
ここまで、どうあるべきで
やってきたわけじゃないからね」
というようなことを話しています。 |
タモリ |
(笑)変わってませんね、ぼくも。 |
糸井 |
まったく変わってませんね(笑)。 |
タモリ |
ええ、変わってません。 |
糸井 |
ただ、ぼく、間で1回変わったんですよ。
みうらじゅんと話してるときに、
「みうら、しあわせって何だと思う?」
って聞いたんですよ。
そしたら、みうらがすっごいもう、
食べてるものを噴き出しそうに、
「な、な、なんてことを言うんだ?」
みたいな感じで、
「糸井さん、そういうの、
考えなくていいって言ったじゃないすか!」
って怒ったんですよ。 |
タモリ |
(笑)怒った? |
糸井 |
でも、40代半ばのころに、1回、
厄年が終わった後ぐらいのときに、
いいんだろうか、と思ったんですよ、ぼく。
あまりにも、その、軸のない生きかたっていう。
だから、タモリさんに
そういうことなかったかなぁと思って、
聞いてみたかったんです、前から。 |
タモリ |
それはね、ないことはないです。 |
糸井 |
ないことはない(笑)。 |
タモリ |
ないことはないです。
ないことはないけど、
俺、その考えが続かないんですよね。
思わないことはないんですけど、
続かないんですね。 |
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(つづきます。) |