糸井 |
ところで、
高田純次とタモリの違いっていうのは、
どこにあるんですかね? |
タモリ |
なんだかんだいってても、
俺は、薄さが徹底してないんでしょうね。 |
糸井 |
あ、高田純次は、モノホンであると。 |
タモリ |
モノホンなんですかね……。
あれ、厚みをなくそうとか、
目指してないように見えるんだよね。
だからすごいんですよ。
こっちは多少、目指してるところあるから、
ダメなんでしょうね。 |
糸井 |
あぁ。それはね、前に吉本隆明さんの奥さんが、
「ウチのお父ちゃんがいい人だとか
何とかっていうのは、ニセもんだ」
って言うんですよ。なろうとしてなってると。
でも、船大工だったお父ちゃんのお父さんは、
ほんとうだったと。ほんとうにいい人で、
吉本さんはニセもんだって言ってた。 |
タモリ |
あっそ。 |
糸井 |
そのぐらいの違いかもしれないですね。 |
タモリ |
ええ、その違いでしょうね。
高田純次は、あれ、なろうと思ってないですよ。
だから、それはぜんぜん違いますよ、
少しはなろうと思ってるやつとは。 |
糸井 |
(笑)。他にそういう、
すげぇなって思うものっていうのは? |
タモリ |
最近では、やっぱり高田純次ですね。 |
糸井 |
(笑) |
タモリ |
ああいう人が、
ちゃんと成立する分野がないと、
やっぱり社会はおもしろくないですよね。 |
糸井 |
それは、とても
社会が豊かだっていう証明ですよ。 |
タモリ |
証明です。
だからぼくは職人が多い社会が
いちばん健全じゃないかと思うんですけどね。 |
糸井 |
ぼくもそう思う。
だから、落語の中の世界が、
ぼくのマニフェストなんですよ。
あそこには、だいたいアホもいて、
ちょっと強欲なヤツもいて。
ぜんぶ一通り揃ってるんです。
全員、ないと困るなっていう感じで
生きてるんですよ。 |
タモリ |
あぁ。 |
糸井 |
みんなが「いてもいい」っていう状態で、
落語の中では、武士って
ほとんど脇役でしか出てこないですよね。 |
タモリ |
ええ。 |
糸井 |
わからずやのこと言ったり、お上というぐらいで、
一応、上には扱ってますけど……。
あの社会が、ぼくは最高だと思うんですよね。
夫婦で喧嘩して、だいたいおまえ、なんで
あんなヤツと一緒になったんだって聞いたら、
カミサンのほうが、
「だって寒いんだもん」って言ったという。
そういう感じでしょう?
さっきの愛の話にさかのぼれば。 |
タモリ |
そうそう(笑)。 |
|
(つづきます。) |