糸井 |
九州の屋台では、
友だちだとか仲がいいとかっていってるけど、
あの、結局の話、
お互いが子分を作ろうとしてるんです。
「友だち」じゃないんです(笑)。 |
タモリ |
そう。 |
糸井 |
犬とかとおんなじですよ(笑)。 |
タモリ |
ほんとその通りですよ。
ヒエラルキーが好きなんですよね。
博多の人間が必ず言うのが、
「おお、あいつ? ああ、俺が面倒見た」って。
必ず言うんですよ、面倒見たって。 |
糸井 |
(笑)そう、「面倒見た」、ある。
あれってお互いが言ってるんですよね。 |
タモリ |
ええ。 |
糸井 |
なんなんでしょうかねぇ? |
タモリ |
で、「面倒を見る」ってことが、
もう、生き甲斐なんですね。
生きる目標が「面倒見」ですから。
「おまえ、面倒見るだけの
経済力も人格も、度量もないだろう」
っていうやつも、面倒見たがるんですよ。 |
糸井 |
(笑)わかる。 |
タモリ |
だから、そんなヤツに面倒見られた日にゃ、
あなた、一生言われますからね(笑)。 |
糸井 |
そうですよねぇ。 |
タモリ |
あれは博多の町中だけです。 |
糸井 |
あ、そうですか。 |
タモリ |
あの、山笠のヒエラルキーが、あるんですよね。
秀吉が決めた街割が未だに残ってますから。
いまだに、山笠やってる人がもう、
とにかくいちばん頂点なんです、町内のね。 |
糸井 |
それを、守り切ってきたんだ。 |
タモリ |
そこは町内会長以上にもう、
町でいちばん偉い人なんですよ。
それからずーっと何とかっていう役目があって、
子どもまであるんですよ。 |
糸井 |
じゃ、昔、長谷川法世のマンガとか、
あったじゃないですか、『博多っ子純情』。 |
タモリ |
はいはいはい。 |
糸井 |
あのへんっていうのは、
そのへんを描いてるんだ。 |
タモリ |
そのへんを描いてますね。 |
糸井 |
長谷川法世さんは博多だったのかなぁ。 |
タモリ |
博多、町中ですね、あれ。 |
糸井 |
あ、じゃ、ずばりなんですね。
タモリさんとかは、新興住宅地の子なんですか? |
タモリ |
そうなんです、郊外。 |
糸井 |
じゃあ、九州成分はタモリさんには、
ないも同然なんですか?
まったく逆じゃないですか。その姿からすると(笑)。 |
タモリ |
福岡グループは、あの、意外と鷹揚です。 |
糸井 |
他にどんな方がいらっしゃいますか? |
タモリ |
えーと、博多町中グループだと
長谷川法世、小松方正、小松政夫、えー、あと、
甲斐バンドの甲斐くんとか、小林よしのりとか。 |
糸井 |
(笑)なんとなくわかる……。 |
タモリ |
女性でいうと、生田悦子、小柳ルミ子……。 |
糸井 |
スラスラ出ますね。 |
タモリ |
ええ。それが、まあ、博多地区です。
で、福岡地区になると、俺、米倉斉加年、
それから、え、チャゲ&飛鳥……。 |
糸井 |
みんな、なんかラクな感じですね。
特にチャゲ&飛鳥とか。 |
タモリ |
他も、まあ、かなりいますけどね。 |
糸井 |
北九州とか筑後になると、
もう別なんですね、また。 |
タモリ |
ええ、北九州は、草刈正雄、
高倉健、中尾ミエとか、そういうグループ。 |
糸井 |
なんか強気な、ますらおぶりなものがありますね。 |
タモリ |
ありますね。それから、えー、
筑後グループはチェッカーズ、松田聖子、
それから陣内、それから田中健と、
あと、そういう、大川栄策とか。 |
糸井 |
少しイナカな臭いがしますねぇ。 |
タモリ |
ええ、ちょっとイナカなんですね。
それから、筑豊炭坑グループっつうのが、
井上陽水、西川峰子というね。筑紫哲也さんとか。 |
糸井 |
(笑)反則に走りそうな。 |
タモリ |
ええ、つかこうへいとか、そういうのが。 |
糸井 |
もう、テロリストグループですね。 |
タモリ |
筑豊グループも
けっこう鷹揚なんですけどもね。
ま、井上陽水みたいなのがいるから。 |
糸井 |
ああ、なんにもしたくないっていうねぇ。
井上陽水って、
「ただ、ラクしたい、
そのためには命を捨ててもいい」
みたいなお方だから。 |
タモリ |
(笑) |
糸井 |
博多だけが、特に九州成分が強いんだ? |
タモリ |
博多だけはすごいですよ。セクト主義ですよ。 |
糸井 |
で、その、他の地方なのに博多の真似をして、
「九州とは」っていってる人も、
混じってるってことですかね、どうも。 |
タモリ |
そうですね。 |
糸井 |
葛飾区なんかにいるけど、
神田の生まれよ、って言ってるみたいな。
あのパターンだ。 |
タモリ |
ええ。 |
|
(つづきます。) |