タモリ先生の午後。
こんな職員室があればいい。


糸井 そろそろ、タモリさんの次の仕事?
対談は、どこで終わってもいいんですけど、
あの……最近、こういう本を出したんですよ。
『オトナ語の謎』っていう。
タモリ はい。
糸井 学生のときは使わないのに、
社会人になったら使うっていう言葉を、
全部こう、社会人から集めたんです。
タモリ おもしろそうだね。
糸井 これ、タモリさんよろこぶと思う。
持ってって下さい。
タモリ はいはい。

(読む)

「さくっと」っつうの、最近聞くんだけど、
これもわっかんねぇんだよね(笑)。

「そこんとこ、あの、さくっと」って。
どうやればいいんだろうと思う。
何だろう、あの「さくっと」って。
糸井 まあ、薪割りでいくと、
一発で割れるようにっていうような感じですよね。
タモリ そういうことですか?「さくっと」。
糸井 薪割りでいえばね(笑)。
タモリ 「短時間で簡単に」っていうことですか。
わっかんないよな、これ、「さくっと」っていうのは。
糸井 そういう単語が、ほとんど全部出てると思います。
タモリ ほぉー。
糸井 後半部分では、あの、松田聖子の
「赤いスイートピー」もオトナ語になおすとか。
そういうバカなことも(笑)。
役に立ちますよー、これは。
タモリ あー、そう。

(読む)

「ごめんなさいする」っつうのもあるの?(笑)
よく集めましたね。
糸井 学生は絶対に「午後イチ」って
いわないですからね、たとえば。
タモリ あぁ、「午後イチ」。
糸井 学生同士で「午後イチ」とはいってないですよね。
そんな言葉が山ほどあるんですよ。
タモリ あるなぁ……。ここ最近は、
「〜でよろしかったでしょうか?」っつうのが、もう!
糸井 (笑)はははははは!
タモリ ものすごい頭くるんですよ。ピンポーンって来て、
「森田様のお宅でよろしかったでしょうか?」
それ、なにそれ?

「よろしかったでしょうか?」っつうのは、
俺がなんか、俺発で頼んでたり
行動を起してたりするんだったらわかるけど、
いきなり来て、
「森田様のお宅でよろしかったでしょうか?」
って……。
糸井 「〜のほう」のパターンですよね。
コーヒーのほう、お届けして‥‥。
タモリ ああ、そうそう。
コーヒーのほう、お下げしてよろしいですか?
糸井 あらゆるものに方角をつけるみたいな(笑)。
タモリ こちら、コーヒーのほうって、
なんだかな、あれなぁ。
糸井 「千円からお預かりいたします」とかね。
タモリ ああ、あれもおかしい。
「焼きそばになります」
なってるから持ってきてるんだろう、って。
糸井 そうそうそう(笑)。
そういうの、ぜんぶぐらい出てますよ、これ。
タモリ この「やぶさかではない」もあるね。
ちょっと面白いなって使ってたんです。
ラジオで
「いかがなものかと」
って、使ってたんだよね(笑)。
糸井 「いかがなものか」ね。
うん、俺は不満だぞっていう言葉(笑)。
タモリ そうそう。
でも、ものすごい責任持って
異を唱えちゃいないんだよね。

(読む)

「大明神」なんて言わないでしょ、これ(笑)。
糸井 言います、言います。
タモリ え、言います? 会社で?(笑)
糸井 会社の夜とかですよね。
タモリ 大明神……。
糸井 関西からも、投稿がありますから、
関西ならでは、っていう感じのものも混じります。
タモリ ああ、そうなんですか。いや、おもしろいね、これ。
糸井 これだけね、よくあったと思いましたよ。
タモリ あるねぇ!
糸井 ええ。主婦も学生も
使ってないんですよ。いわゆるオトナしか。
タモリ オトナしか。学生は使わないもんね。
糸井 学生は真似して使ってるかな?「マキで」とか。
ちょっと嬉しいでしょ?
これ、一冊になるって(笑)。
タモリ 「ご高覧下さい」なんて、今は……(笑)。
糸井 言うんです、言うんです。
メールのケツのほうに書いてあったりするんです。
タモリ 「失念しました」も言う?(笑)
糸井 言うんですよ。
タモリ へぇー。
糸井 だから、タモリさんがいかにね、
会社から離れてるかってことがわかりますよ。
言葉は現役ですよ、これ。
あの、芸能界だと、「森田選手」とかって
言い方があるじゃないですか。
タモリ ああ、言う言う!(笑) なにが選手なんだ。
糸井 なんの選手なんだ?みたいな。
これ、ぜんぶ生きてるんですよ、今。
タモリ へぇ……。
ジャンボ尾崎の口癖で、いいのがあったな。
素振りとか見て、
「うん、まだこっちの人間のほうがいいね」
って(笑)。
糸井 「人間」も『オトナ語の謎』の中に入ってますね。
タモリ 入ってる?
やっぱり。
糸井 「わたくしどもの人間をやりますので」とか、
「差し向けますので」とか。
タモリ あー、やっぱ言うんだ「人間」って。
糸井 ええ。「人間」は、
中川家の人がすごく気に入ってましたね。
「人間が気に入った!」とかいって(笑)。
タモリ 「人間」っつうんだよね、ジャンボは。
糸井 なんなんでしょうねぇ。
タモリ 「まだこっちのほうの人間が上手いね」
……あんたも人間だよねぇ。
こっちの犬のほうがいいね、
っつうなら話はわかるけど。
糸井 わからないんですよ。
いっぱい使ってるうちに、
もうそれで回ってるんですよ、社会は。
タモリさんは、たぶん会社生活をしていないから。
タモリ いや、サラリーマンやってましたからね。
糸井 でも短いでしょう?
タモリ え、短いですね。
糸井 ね。こんなのを憶えないうちに辞めてるでしょ?(笑)
タモリ そうね。
糸井 だから、会社で見せたらみんな知ってますよ、きっと。
タモリ はぁ。(読む)‥‥「お手すき」か。
糸井 うん。あと、ものの頼み方のランクとかね。
「あ、今、ひま?」とか、
「ひまな人?」っていったら、
なんか頼むときじゃないすか。
「今、何してる人?」っていうのもありますね。
タモリ (笑)あるある。
初対面のウェートレスに
こう言った女がいたっていうのね。
「わたし、アルコール系、
 ダメな人じゃないですかぁー」
糸井 あはははは!
タモリ 初対面のウェーターに、
言ってたっつうんだからさぁ。
  (つづきます。)

これまでのふたり
このあとのふたり

2004-01-14-THU

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