タモリ |
最近、
「人間関係をうまくやるには、
偽善以外にはないんじゃないか」
って思ってるんです。 |
糸井 |
村上春樹さんが、かつてエッセイで、
「僕は親切のことならよくわかる。
愛は消えても親切は残る、
と言ったのはカート・ヴォネガットだっけ」
と書いていたのと似た意味のことですか?
(※ほぼ日註:この発言は、村上春樹さんの
『雨天炎天』(新潮文庫)に載っています) |
タモリ |
あぁ、そうかも。 |
糸井 |
確かに
「ネクタイ締めてればオッケー」
みたいなところは、
タモリさん、じょうずですよね。
これほどネクタイを
じょうずに使っているタレントはいない。 |
タモリ |
そこらへんは、偽善がうまい。 |
糸井 |
様式は、やっぱり、人を助けますねぇ。 |
タモリ |
すべてが、様式ですから……。 |
糸井 |
つまり、偽善って、
形式的な「いい関係」ですよね。
銀行員のお姉さんの制服姿って、
ぼくらはもう大好きなんですけど、
こちらに向けて
「笑ってくれる」じゃないですか。 |
タモリ |
はい。 |
糸井 |
で、着替えて私服になると、
「こんな人だったのか!」と思うんですよ。 |
タモリ |
あれも、偽善なんです。 |
糸井 |
偽善ですよね? |
タモリ |
偽善って、徹底的にやると、
これまた、別のたのしみがあるんです。 |
糸井 |
ぜんぶが偽善だったら、
もう「いい人」ですもんね(笑)。 |
タモリ |
ええ。俺、最近、
「偽善のススメ」って言って、
ぜんぶのスタッフに伝えていて。 |
糸井 |
「もっと偽善しよう」と。 |
タモリ |
うん。
「偽善は善意」とさえ言ってるんですよ。 |
糸井 |
(笑) |
タモリ |
食べるマナーっていうのが
あるじゃないですか。
あれも、偽善の徹底した方法でしょう? |
糸井 |
「今まで
こうやってたほうが
うまくいった」
ってことのエキスですよね。 |
タモリ |
そう、エキス。
食べるマナーを守ることで、人は、
徹底的に偽善を楽しんでるわけですよね。
特に西洋料理なんていうのは……。 |
糸井 |
それとか、日本でも、
箸先を2ミリしか汚さないとか(笑)。 |
タモリ |
それも偽善。
その偽善も、そうやって完全に楽しめば、
いい食事になる。 |
|
(つづきます。) |