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第1話と第2話を観て |
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糸井 |
ごぶさたしてます。 |
永田 |
おひさしぶりです! |
西本 |
よろしくお願いします! |
糸井 |
こうして、テレビドラマを観たあとに
3人でしゃべるのは久しぶりですね。 |
永田 |
『タイガー&ドラゴン』以来? |
西本 |
いや、正月特番の『新選組!!』、
土方歳三のスペシャル以来ですね。 |
永田 |
あ、あれが最後か。
じゃあ、ほんとに1年ぶりですね。 |
糸井 |
1年ぶりに男子部の雑談をはじめるにあたり、
ひとつ、言っておきたいことがあります。 |
西本 |
うかがいましょう。 |
永田 |
うかがいましょう。 |
糸井 |
みなさんはどうかわかりませんが、
じつは、ぼくは、ずっと!
この「ほぼ日テレビガイド」を
やる機会を待ってました! |
ふたり |
わはははははは! |
糸井 |
いや、本当ですよ。 |
永田 |
なんでまた? |
糸井 |
つまりね、テレビを観て、
それについてムダ話をするということをね、
なにか新しいドラマがはじまるたびに、
「これはできるだろうか?」
「あれはどうだろうか?」と。 |
ふたり |
わははははははは! |
糸井 |
いや、本当ですよ。 |
永田 |
それは、どういうことですか?
意外にくせになるということ? |
糸井 |
というよりね、
やっぱり、いいドラマじゃないと無理なんですよ。
ドラマを1話観てね、それについて
男3人がムダ話をできるようなものは
そうそう、ない。 |
西本 |
それについて雑談できるということが
最上級のほめことばであると。 |
糸井 |
そうそうそうそう。
だからね、ここ1年、
新しくドラマがはじまるたびに
いちいち「これはできるかな?」と。 |
永田 |
そんなこと、いままで
ひと言もいってなかったじゃないですか。 |
糸井 |
ぼくがいままでにあなたがたに
全部を語ったことなどありますか? |
永田 |
ありません! |
西本 |
ありません! |
糸井 |
でしょう? おそれいりましたか? |
永田 |
ほめてません! |
西本 |
むしろ苦情です! |
糸井 |
人知れずぼくは
いろいろと考えていたわけですよ。
つまり、水面下でこなしてる仕事?
シャドーボクシングならぬ、
シャドーワーク? |
永田 |
エアーギターならぬ、
エアーワーク? |
糸井 |
エアーワーク、エアーワーク(笑)。
ドラマを観ながら、こう、
エアー雑談をね。エアー座談会をね。
「このドラマでやったら
ほかのふたりはどうしゃべるかな」とかね。 |
西本 |
「このドラマだと
永田がまったく興味をもたないから
ちっとも話が広がらないな」とか。 |
永田 |
「このドラマだと
西本が自分の話をしゃべりすぎるな」とか。 |
糸井 |
ずばり、そのふたつに尽きます。 |
ふたり |
あいたたたたた。 |
糸井 |
そんなときにはじまったのが
『華麗なる一族』ですよ! |
永田 |
ようやく番組のタイトルが出たよ。 |
西本 |
長くなりそうですね、今回も。 |
糸井 |
TBS開局55周年特別企画ですよ。
原作、山崎豊子ですよ。
ヤマトヨですよ。
ヤマトヨ、トヨエツですよ。 |
永田 |
トヨエツ、関係ないじゃないですか。 |
西本 |
トヨエツ、関係ないじゃないですか。 |
糸井 |
そういう、
気合いの入ったドラマがはじまる、と。
で、じっくりと初回を観てね、
自分なりにエアー座談会をやってね。 |
永田 |
エアーテープを回して。 |
糸井 |
そうそう。 |
西本 |
エアー永田と
エアー西本を呼んで。 |
糸井 |
そうそう。 |
永田 |
エアーコーヒーを飲みながら
エアーお菓子をつまんで。 |
糸井 |
そうそう。 |
西本 |
エアー糸井事務所の
エアー和室で。 |
永田 |
エアー港区の
エアー表参道にある。 |
糸井 |
もういい! |
永田 |
で? |
西本 |
どうだったんですか? |
糸井 |
これは‥‥いけるな、と。 |
永田 |
おお! |
西本 |
やった! |
糸井 |
エアー糸井重里が、
ゴーサインを出したわけです! |
ふたり |
それはエアーじゃないだろ。 |
糸井 |
そんなわけではじまるのです、
『華麗なる一族』with
ほぼ日テレビガイドが! |
西本 |
また来週! |
永田 |
終わるな、終わるな。 |
糸井 |
っていうか、ドラマ本編はおろか
まだはじまりの経緯しかしゃべってませんね。 |
永田 |
誰のせいですか。 |
糸井 |
まぁ、いつものことですから
いまさら怒られないでしょう。 |
西本 |
ええ。企画開始から4年目になりますが
だらだらゆるゆるが基本コンセプトです。 |
永田 |
そうそう、このほぼ日テレビガイド、
新シリーズがはじまるときは
新しいお客さんも増えますから、
いつものおことわりを最初にしておきましょう。
えー、このコンテンツは、
読んでおわかりのとおり、
なんの権威もありません。 |
西本 |
驚くほどありません! |
糸井 |
ひとっかけらもないのです。 |
西本 |
よく挙げる例で言いますと、
「あんたは『クイズミリオネア』を
観ないと言ったのに観たじゃないか」とかね。 |
永田 |
「元日にやるのは『箱根駅伝』じゃなくて
実業団の『スーパー駅伝』だぞ」とかね。 |
糸井 |
「『筋肉バトル』が大好きなのに
嫁の実家ではチャンネル権がないため
しかたなく『かくし芸』を観た」とかね。 |
永田 |
「引田天功さんが韓国に行く番組を観たら、
まったく意味がわからなかった」とかね。 |
糸井 |
いや、あれは、本当にわからなかったんだよ。 |
西本 |
その話はもういいです。 |
永田 |
ことほどさように
意義の薄いコンテンツですので、
どうか「くだらない」と
がっかりなさいませんように。 |
糸井 |
どうぞよろしくお願いします。 |
西本 |
また来週! |
永田 |
いや、終わらないんですけどね。 |
糸井 |
いいかげん、はじめましょう。 |
永田 |
しかし、いつもとちょっと違って
今回はやりづらいですよ。
ほら、これまでここで取り上げたドラマって
どこかしら「応援しよう!」みたいな
気持ちがあったじゃないですか。
『新選組!』だって、放送当時は
大河っぽくないとか、視聴率がよくないとか、
いろいろ言われてたりしたし、
『タイガー&ドラゴン』は
「落語、がんばれ!」っていうのがあったし、
『離婚弁護士』は天海(祐希)さん直々に
応援してくださいねーみたいなこと言われたし。 |
西本 |
一方でこの『華麗なる一族』は、
初回放送の視聴率もトップ。
注目度も、今クール中、ナンバーワン。 |
永田 |
そうそう。 |
糸井 |
いや、これは断言できますけどね、
時代はこのドラマに厳しいはずですよ。
初回の視聴率はよかったかもしれないけどね、
いろいろ言われだすに決まってるんです。
なぜかというと、このドラマは
非常につっこまれやすいんですよ。
それは、わかりやすい例でいうと
「この時代にこんなことはありません」
みたいなことでさ。 |
西本 |
ああー、厳しいでしょうね。 |
糸井 |
日本中が時代考証家になったみたいにね。
心のツッコミノートをみんながつけてる感じでね。 |
永田 |
注目が大きければ大きいほど、
そういう声も出やすくなると。 |
西本 |
「まず、キャスティングにもの申す!」 |
糸井 |
そうそうそう、そういうやつ。 |
永田 |
ま、ぼくらがそれをまったくやらないかというと
混ぜるに決まってるんですけどね。 |
糸井 |
あれこれ言う楽しみこそが
このコンテンツをやる大きな意義ですからね。
くだらないレベルではしょっちゅう言いますとも。
でも、ものは申さない。 |
西本 |
もの申しません! |
永田 |
もの申しません! |
糸井 |
つまり、もの申さないことによって、
なにかともの申しがちなこの時代に、
風穴を、あけません! |
永田 |
あけないんだ(笑)。 |
糸井 |
風穴あけると、寒いだろ? |
西本 |
わははははは。 |
永田 |
くだらない(笑)。 |
糸井 |
だからそういう風潮に対して、
こたつを入れようじゃないかと。 |
西本 |
時代に、こたつを入れるコンテンツ! |
糸井 |
もの言えば寒い、
あなたの唇をあたためます! |
永田 |
いや、こたつで唇は無理でしょう。 |
糸井 |
そういうことを言ってるんじゃあ、ないんだ! |
永田 |
わかってますよ。 |
糸井 |
わかってるということもわかってますよ。 |
西本 |
わかってるということをわかってるということも‥‥。 |
永田 |
もういい、もういい。 |
糸井 |
まぁ、だからね、
こんな弱点がありながらも
おもしろかったね、とか。
毎週楽しみだね、とか。
気持ち的にはいっしょに作っていこうじゃないかと。
受け手あっての送り手ですよ。
受け手がとんがって目くじらをたてていたら
永遠に成り立ちませんよ。
消費は遅延した生産だとぼくは言ったでしょ? |
西本 |
たしかに言いましたが、
それは吉本隆明さんのパクリだ。 |
永田 |
パクリだ。 |
糸井 |
ぼくの考えの多くの部分は
吉本隆明さんのへたなパクリだと言ったでしょ? |
西本 |
へたなパクリだ。 |
永田 |
へたなパクリだ。 |
糸井 |
つまり、
ドラマ鑑賞はドラマ制作の遅れた形であると。
そういうコンセプトでやればいいじゃんと。
かといって「よいしょ!」とやるんじゃないよと。
こたつだから、ぬくぬくやるよと。 |
永田 |
たまに寝ちゃうよと。 |
西本 |
最後は寝ちゃうよと。 |
糸井 |
ま、長々話してきましたけどね、
そういうわけで! みなさん! |
永田 |
はい。 |
西本 |
はい。 |
糸井 |
ぼちぼちはじめましょうか! |
永田 |
(一同、ずっこける)と書いておきたいところです。 |
西本 |
みなさん、すいません。
でも、今日だけじゃなくて、
いつもこうなんです。 |
糸井 |
とりあえず、第1話のスペシャルと
第2話を観たわけですがね、
ぼくの第1話を観おえての感想は、
放送翌日の「今日のダーリン」にも書きました。
はい、これです。
|
1月15日の「今日のダーリン」より
前々から、テレビの変化していく方向について、
ちょこちょこ考えていたことがありましたが、
この『華麗なる一族』というドラマが、
新しい一歩になるかもしれないですね。
情報量の多い、ハイビジョン画像ならでは演出は、
セリフの数をかなり減らしても、
伝えたいイメージを表現することができます。
映画のカメラワークでもなく、
テレビの映像計画でもない
ハイビジョンドラマのカメラディレクションが、
もう確実に始まっていましたねー。
テレビドラマで、こんなに「引き」のシーンを
いっぱい見たのは、ぼくには初めてかもしれない。
予算の使い方、キャスティング、
ロケのコーディネイト、
あらゆるプランが、
いまの時代の映画以上に見えました。
山崎豊子のタフでおもしろい筋書きがあれば、
これだけのスケールのものは、
テレビ局のドラマとしてつくれるはずだった。
おそらく、そのへんには『24』や『LOST』など、
アメリカの大型テレビシリーズが
頭にあるんだと思うのですが、
やっちゃえましたねぇ。
慎重に、第2回以後を観てから
何か言ったほうがいいのかもしれなかったのですが、
思わず、声が出てしまったという感じです。
まだまだもちろん
不確定の要素はいっぱいあるでしょうが、
テレビの業界で
『華麗なる一族』以前と以後、という
言われ方をする番組に、
なるような気がしてなりません。
『白い巨塔』や『大地の子』のことを思えば、
ストーリー的に、
この先つまらなくなることはなさそう、
ということも言えますからねぇ。
『ほぼ日テレビガイド』、ひさびさにやっちゃおうかなぁ。 |
|
永田 |
「やっちゃおうかなぁ」じゃないでしょう。 |
西本 |
「ひさびさにやっちゃおうかなぁ」じゃないでしょう。 |
糸井 |
ごめん、ごめん(笑)。
で、ふたりは、1話と2話を観て、どうでしたか。
まず、永田くんは、このドラマのことを
おそらく、なぁんにも知りませんでしたよね? |
永田 |
はい、あいかわらずの不勉強ですいません。
「木村拓哉さんのすごそうなドラマ」
くらいのことしか知りませんでした。 |
糸井 |
当然、原作も読んでませんね? |
永田 |
むろん、読んでません! |
西本 |
ぼくも読んでません! |
糸井 |
じつはおれもあわてて買ったばっかりでさ。 |
ふたり |
誰も読んでない! |
糸井 |
ま、そういうのもいつものこととして。
どうでしたか。 |
永田 |
はい、まずですね、
ドラマをほぼ観ないぼくですけどね、
この雑談コンテンツを通して
いくつかのドラマを観たことで
ひとつ、学んだことがあるのです。
それをまず言わせてください。 |
ふたり |
どうぞ、どうぞ。 |
永田 |
テレビドラマは、
じつは、1回目がいちばんおもしろくない! |
糸井 |
ああ、はいはい。 |
西本 |
あれだ、なにしろ1回目は
オールキャストの紹介、顔見せと
全体のプロットのイントロになるから。 |
永田 |
そうそうそう。
いろんな人がちょっとずつ意味深に顔を出して、
伏線っぽいものがちりばめられて、
ちっとも話は進まない、というね。 |
糸井 |
いわば、豪華なイントロだけが
2時間近く続くようなものであると。 |
永田 |
はい。
だからね、ふだんドラマを観ないぼくのような人が
「たまにはドラマでも観るか」って
重い腰をあげるように話題のドラマの初回を観ると
「ああ、やっぱりオレ、楽しめないわ」
ってやめちゃうことが多いんですよ。 |
糸井 |
なるほどね。 |
西本 |
そりゃそうですよね。
だって、これだけのキャストがいて、
いちおう全員の持ち味を見せつつ
お話にしなくちゃいけないわけで。 |
糸井 |
まだ誰にも思い入れができてない状態でね。
だから、ドラマの1回目というのは
そもそもつくるのがそうとうむつかしいんだね。 |
永田 |
ええ。ところが、ですよ。 |
糸井 |
ああ、そういうことか。わかった。 |
永田 |
はい。1回目から、引き込むぞ、これはと。 |
西本 |
ぐいぐい来ましたね。 |
永田 |
うん。と、いうのが、まずは初回の印象です。 |
糸井 |
なるほど、なるほど。
にしもっちゃんはどうですか。 |
西本 |
月並みな感想になりますが、
まずはやっぱり、キャスティングがすげえなと。
どこをとっても隙がないと。 |
糸井 |
うん。映画じゃ逆に無理だろうというくらいの。 |
西本 |
どんどんどんどん、出てくる出てくる。 |
永田 |
ぼくとしては、この企画で観たドラマに
登場したことがある人が
たくさん出ているのがうれしかったですよ。 |
西本 |
『新選組!』からは多いですね。
副長(山本耕史さん)に、
お梅(鈴木京香さん)に、
あと、ひで(吹石一恵さん)‥‥。 |
永田 |
あと、源さん(小林隆さん)!
で、『タイガー&ドラゴン』からは
西田敏行さんと笑福亭鶴瓶さんでしょ。
『離婚弁護士』からは津川雅彦さん。 |
糸井 |
ほんとにそういう見方なんだ(笑)。
じゃ、「あ、お梅だ」と。 |
永田 |
そうですよ。
「お梅がまたお梅の役をしているぞ」と。 |
糸井 |
永田くんって自分の世間の狭さを
うまく利用するタイプだねえ。 |
永田 |
だから、安上がりですよ。
そもそも知ってる人が出てるだけでうれしくなる。
あの、柳葉さんの頭取就任パーティーとか、
楽しかったですよ。
「おお、津川雅彦さんが!」と思ったら、
奥から、西田敏行さんが呼んでる、みたいな。 |
西本 |
あのパーティーのシーンは、西田さんの
「どうでもいいような乾杯の音頭」
がよかったですよね。
「ほにゃららほにゃらら、かんぱいっ!」みたいな。 |
永田 |
津川さんが料亭で扇子をぱちぱちしながら、
とぼけた受け答えをするところもよかったですよ。
「ふむ‥‥ふむ‥‥‥‥ショーがダイを!」 |
糸井 |
「ショーがダイを!」 |
西本 |
「ショーがダイを!」 |
糸井 |
もう、あのへんは全部、時代劇ですよね。 |
永田 |
あ、完全にそうだ。
それはひとつの核心かもしれない。 |
西本 |
マゲなし時代劇。 |
永田 |
まさに、まさに。
風景とか、いちいちたいへんなんだろうな。
あれって、どこで撮ってるんですかね。 |
西本 |
上海じゃないですかね。 |
永田 |
あ、そうなのか。 |
西本 |
オープニングでハザマ自動車から
出てくるところから上海でしょ。 |
糸井 |
だから、ほどよく違和感があるんだよね。
「当時の日本を再現!」っていうマジメさじゃなくて
過剰に雑多で古い感じがする。 |
永田 |
そうか、そうか。
なんか印象が戦後っぽいというか、
デフォルメされた感じがあるのはそれでなんだ。
昭和42年って、ほんとはもっと新しいですよね。 |
糸井 |
新しいビルがにょきにょき建ちだしたころですよね。
だから、建物も、ほんとはあの味はなくて、
もっとつまらない景色だったと思いますよ。
その意味では、つまらない方向をさけて
時代劇感やロマンを過剰に取り込んでるんじゃないかな。 |
永田 |
うん。ナイスフィクションですよね。 |
糸井 |
かといってまったくウソじゃないしね。
馬場先門、つまり丸の内あたりの古い建物とか、
東京駅を思い浮かべてもらうとちょうどいいですけど、
あの味は、ありましたから。
そのあたりのデフォルメは時代劇的な装飾ですよね。
ほとんどの時代劇がそうじゃないですか。
史実では小さいお寺も大きくつくっちゃったり、
カタナやまげも記号として扱ってたり。
そのあたりは、判断ですよね。 |
永田 |
そのへんの混ざり方がおもしろいですよね。
いまっぽい場所でもあるし、
うそっぽい場所でもある。
いまと地続きの時代劇というか。
実際にそのへんが混ざってるのが
いまの上海なのかもしれない。 |
西本 |
だから、
時代劇を京都で撮ることがふつうになっているように
昭和劇は上海で撮ることに
なりつつあるんじゃないですか。 |
糸井 |
そうかもしれないね。 |
西本 |
ちょっと前に広島の原爆をテーマにした
松たか子さんが主演のドラマの番宣でも
あの路面電車が走っていく
同じようなシーンを観ましたし。
あれもTBSだったかな。 |
永田 |
あるいは、もうちょっとしたら、
太秦の映画村とか江戸村があるのと同じように、
「昭和村」みたいなものができるのかもしれない。 |
糸井 |
『三丁目の夕日』だとセットとCGでしょ。
そのCGの使い方というのは
みんな大喜びなんだよ。
ぼくの好きな『キング・コング』のCGも
ああいう使い方なんだよ。 |
永田 |
このドラマでもCGはけっこう使ってますよね。
しかも、わかりやすくモノをCGにするんじゃなくて
演出として仕上げに使う、みたいな感じの。 |
糸井 |
ドラマや映画のCGって
「つくり手が何をつくりたいのか?」
っていうことを露骨に表すんですよ。
だって、こういうものがあるといい、って思うから
それをCGで表現するわけでね。
意図しないCGなんて出来上がらないですから。
だからCGって、技術を観るものじゃなくて、
考えや意図を観るものでもあるんですよ。
そこに気づくと、緊張感がありますよ。 |
永田 |
なるほど、なるほど。 |
糸井 |
でも、あの、万俵家の邸宅は
実際に建てたらしいよ? |
永田 |
え? あの洋館を? |
西本 |
緑山スタジオに? へえ、そりゃすごい。 |
糸井 |
もちろん、
完全に建てたわけじゃないだろうけど。
美術さんが大がかりなセットを組むよりも
大工さんがふつうに組んだほうがほうが早い、
みたいなことなんじゃないかな。 |
西本 |
と、いうことは
洋館のうしろで『SASUKE』をやっている
可能性もあるわけですよね。 |
永田 |
万俵家のうしろで『SASUKE』が(笑)! |
糸井 |
本番中にすごく騒がしい声が聞こえたりしてね。 |
西本 |
「『SASUKE』、うるさいぞ!」とか。 |
永田 |
「誰か『SASUKE』を黙らせろ!」とか。 |
糸井 |
「『SASUKE』の水しぶきが
万俵家のバーまで飛んできたぞ!」とか。 |
ふたり |
それはないわ。 |
糸井 |
せいぜい壁までか。 |
永田 |
そういう問題ではなく。 |
西本 |
あとは、撮影の空き時間に木村拓哉さんが
ちょっと『SASUKE』に挑戦してみたりとか。 |
糸井 |
あの鉄工所のヘルメットかぶったまんまでね。
「ちょっとやらせて」って。 |
永田 |
「あの、ぐるぐるのところが
難しいんでしょ?」とか言って。 |
西本 |
で、それを見た山本耕史さんが、
静かに闘志を燃やしたりしてね。 |
永田 |
また練習しちゃうんだ(笑)。
鍛えちゃうんだ。 |
西本 |
もう、ドラマが終わるころにはムキムキですよ。
筋肉、こんな、ポンプアップして。 |
糸井 |
ドラマの後半になるにしたがって、
銀平がどんどんたくましく! |
ふたり |
わははははは。 |
糸井 |
ええと、なんの話でしたっけ? |
永田 |
CGとかセットの話でしたっけ? |
糸井 |
ま、ともかく、初回はそういう感じで
いろんな手法を取り混ぜつつ
パノラマの世界観をバーンっと見せましたよね。
「この世界観で観てくださいね」っていう
アピールでもあるよね、あれは。 |
西本 |
あの、銀行で北大路欣也さんが
上からのぞいているシーンがあるじゃないですか。
あれ、ふつうのドラマの規模じゃないですよね。 |
糸井 |
ああー、すごかったねぇ。 |
永田 |
すごかった、すごかった。
で、こういうたとえがいいのかどうか
よくわからないんですけど、
ぼくは、あの銀行の場面とか、高炉を見上げる場面で、
ゲームの演出を思い出したんですよ。 |
糸井 |
あ、なるほどね。
群衆のシーンとかで力を見せる、みたいなことで。 |
永田 |
そうなんです。
CGが進化したあとの
大作ゲームのオープニングって
ああいう感じですよ。
冒頭に度肝を抜くサービスというか。
音楽も、歌劇風というか、過剰な感じで。 |
糸井 |
そういえば、音楽も
『新選組!』の人じゃなかった? |
西本 |
そうです。三谷作品ではお馴染みの
服部隆之さんです。 |
糸井 |
そのへんは完全にわざと、というか
意識的に大河っぽいほうへ寄せてますよね。 |
永田 |
ああ、現代と地続きのよさを残しつつも
現代劇にしたくはないというか、
現代劇に見られるとややこしくなるというか。 |
糸井 |
うん。いくつかの要素に関しては
大河や時代劇に寄せておくほうが
観るほうも落ち着くということですね。 |
西本 |
ナレーションの倍賞千恵子さんも。 |
糸井 |
まさにその役割ですね。
あと、そういう時代劇寄りのところでいうと、
やっぱり、顔ね。役者さんの顔。 |
永田 |
ああ、それも核心のひとつですねえ。
なにしろ、顔がすごいですよ。
もう、「顔面はセットなり」というか。 |
糸井 |
そうそうそう(笑)。 |
永田 |
「キレイ」も「かっこいい」も
「こわい」も全部含めて、顔がすごい。 |
糸井 |
北大路欣也! |
西本 |
北大路欣也! |
永田 |
北大路欣也! |
糸井 |
もいっちょ、北大路欣也! |
ふたり |
北大路欣也! |
糸井 |
と、いうくらいに、
参りましたよ、あの顔には。 |
永田 |
どの役者さんもそうですよ。
顔がすごい。顔が武器。
だって、長谷川京子さんとか、
1話と2話だとあんまりセリフなかったですけど、
ぜひ、画面にいてほしいじゃないですか。
あの顔があってほしい。 |
西本 |
キレイだけど、邪魔をしないんですよね。 |
糸井 |
顔の威力はこのドラマの強さですよねえ。
そういうので、ほかにありますか。 |
西本 |
ぼくが強いなと感じたのは、
ドラマの外側の部分になりますけど、
製作者側の姿勢ですね。
あの、ちょっと業界っぽい、
感じの悪い見方なんですけど、
言っちゃっていいですか? |
糸井 |
感じ悪いなあ。 |
永田 |
感じ悪いなあ。 |
西本 |
北大路欣也さんに鉄平が
「高炉を建てたいんだ」と直談判するとき、
トヨタも日産もホンダも松下も東芝もソニーも
といろんな会社名を挙げていくんですが
あの番組スポンサーはトヨタなんですよ。
そこで競合他社の名前を出してオッケーなんだと。
しかも木村拓哉さんはトヨタのCMやってますし。 |
糸井 |
うわ、本当に感じ悪い。 |
永田 |
業界通だ! |
西本 |
それをスポンサーも含め
オッケーにさせているところに
このドラマの大きさを感じましたね。
あと、業界通ではありません。 |
糸井 |
今回、大手スポンサーが全部入ってるもんね。
にしもっちゃんにしたら
生き生きと動く営業が見えますか? |
西本 |
ええ。上から全部とってますもんね。 |
永田 |
さすがTBS開局55周年特別企画。 |
糸井 |
ていうかさ、
「55周年」って、すごくハンパじゃない? |
永田 |
そうそうそう! |
西本 |
そうそうそう! |
糸井 |
だよなあ。 |
永田 |
そこ、気になったの自分だけかと思ってた。 |
西本 |
いや、「55周年」はハンパだよ。
あと、「じゃあ50周年は何やってたんだろ?」って
すごく気になる。 |
永田 |
なるなる(笑)。 |
糸井 |
「55周年」はひっかかるよなあ。 |
西本 |
松井とかコント55号を出すならまだわかりますけどね。 |
糸井 |
うん。イチローじゃなくて松井だよな。
イチローだと開局51周年になっちゃうからな。 |
永田 |
いつのまにか、ただの背番号の話になってますよ。 |
糸井 |
じゃあ、場をぴりっとさせるために、
厳しいひと言をいいましょうか。 |
西本 |
お? |
永田 |
どうぞ、どうぞ。 |
糸井 |
場をぴりっとさせるために、
厳しいひと言をいいましょうか。 |
永田 |
なんで2回言うんですか。 |
糸井 |
1話と2話をみて感じた、
『華麗なる一族』の弱点を言いましょう!
‥‥主演の、木村拓哉さんの! |
西本 |
なんですか! |
永田 |
なんですか! |
糸井 |
顔が小さすぎる! |
ふたり |
わはははははは。 |
糸井 |
もう、残念、惜しいというくらいね、
木村くんの顔は小さいねー。 |
西本 |
いや、たしかに小さいわ(笑)。 |
永田 |
ていうか、ほかがデカすぎるんじゃ‥‥。 |
糸井 |
とくに、あの欣也さんと
向き合うことが多いですからね、
どうしても、分が悪い。 |
西本 |
「顔面セット」とくらべると小道具です。
あの人と向き合うと、
武田鉄矢さんの顔でさえ、小さく思えますね。 |
永田 |
ていうか、武田鉄矢さんの顔って
実際、小さくなってない?
ちょっとしぼんでる感じで。 |
糸井 |
このまま行くとですね、
どこかで人間として小物として
描かれなくてはいけない欣也さんが、
顔のデカさでつねに勝っちゃっているという
困ったことになりはしないかと。 |
永田 |
いや、顔では勝てないでしょう。
あの顔はすごいですよ。
眼鏡のつるをなめるあの場面を観ましたか。
そしてなぜ葉巻があんなに似合うのか! |
糸井 |
加えてあの濃い性豪ぷりもね。 |
西本 |
帯をするする〜っと。 |
糸井 |
あそこは大奥ですよ。 |
永田 |
さらに言うならば、欣也さんは
寝室に何回踏み込まれているんだと! |
糸井 |
わははははは。 |
西本 |
わははははは。 |
永田 |
電話取り次ぐなら、カギかけとけよと。 |
糸井 |
でも、絶えずそんなことしながら
「小が大を飲む」ということを考えてるんだよ。
すごい男だよ。 |
西本 |
あの男に立ち向かう、
小顔の木村さんはたいへんですよ。 |
糸井 |
あとさあ、顔でいうと、
肖像画のじいさんの顔に
威厳がなさすぎませんか。 |
西本 |
言えてる(笑)。 |
永田 |
言えてる(笑)。 |
糸井 |
あの肖像画は、直せるものなら
いまからでも直した方がいいんじゃないですかね。 |
西本 |
でも難しいですよ、あれ。
似せなきゃいけないし、
老人にしなきゃいけないし。 |
糸井 |
そうなんだよね。
でも、肖像画と鯉については
愛情ある突っ込みを入れておきたいですね。 |
永田 |
将軍、デカかったなあ。 |
糸井 |
ま、なにしろ、デカさの目立つドラマですね。 |
西本 |
存在感的にはいまのところ
鈴木京香さんが大きいですね。 |
糸井 |
あの存在はデカすぎるよね。 |
永田 |
いまのところ、
唯一の悪役とさえ、いえますよ。 |
糸井 |
そうですね。
このドラマの特徴として、
悪そうな人はたくさんいるんだけど、
芯から悪い人は意外にいないんですよ。 |
西本 |
欣也さんだって、
エロ以外は悪くないですしね。 |
永田 |
なんだそりゃ。 |
西本 |
融資10%カット問題に関しても
親父として説明たらずなだけで、
「うちも厳しいから、満額回答は無理」
ってことでしょ。ぜんぜん悪くないですよ。
お前も空気読めよってことでしょ。 |
糸井 |
悪いのは、性癖だけだと。 |
西本 |
そうです。エロだけですよ。 |
永田 |
そういうところを
厳密にして申し訳ないんだけどさ、
エロも、全部のエロが悪いわけじゃないよな。 |
西本 |
そうです、そうです。
もう、いってしまえば
「3P」がよくないだけですよ。
もっといえば、
相手が嫌がっているのに3Pはよくない、
っていうことですよ。
逆にいえば、3P以外は悪くないんじゃないか。 |
糸井 |
3P、3P、言うもんじゃありません! |
永田 |
不倫というか浮気は? |
西本 |
悪いですけど、
「悪」というより「問題」でしょ。 |
永田 |
悪いのは3Pだと。 |
西本 |
無理矢理の3P以外は悪くないと。 |
糸井 |
3P、3P、言うもんじゃありません! |
(また来週) |
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