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第3話を観て |
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永田 |
はい、こんにちは! |
西本 |
たったいま、
3人で第3話を観おわりました! |
糸井 |
みんな、イノシシのことばかり言うなよ! |
永田 |
まだなんにも言ってないじゃないですか。 |
糸井 |
前略。イノシシの話はもういいだろ! |
西本 |
まだしてませんって。 |
糸井 |
じゃあ、どういうイノシシならいいんだよ! |
永田 |
うるさい、うるさい。 |
糸井 |
まぁ、最初に済ませておきましょうか。 |
西本 |
イノシシの話を。 |
糸井 |
そうそう。 |
永田 |
もう、あれは、わざとじゃないですかね。
この、「一億総つっこみ時代」に
ある種のサービスとして。
ほら、企画のプレゼンなんかでもさ、
わざと隙をつくったりするなんて言うじゃない? |
西本 |
イノシシと将軍と肖像画については
どんどんつっこんでくれたまえ、と。 |
永田 |
そうそう(笑)。 |
糸井 |
というかね、あのイノシシは
どういうイノシシだったらよかったのかね。 |
永田 |
どういうイノシシと言われても‥‥。 |
糸井 |
だろう?
きみたちはさっきから、
「あのイノシシの動きは不自然だった」と言うが。 |
西本 |
言ってませんが。 |
永田 |
言ってませんが。 |
糸井 |
きみたちは、イノシシを見たことがあるのかね?
草むらから突進してくるイノシシを
その目で見たことがあるのかね? |
西本 |
ありませんが。 |
永田 |
ありませんが。 |
糸井 |
じゃあ、不自然だと言う資格はないだろう! |
西本 |
言ってませんが。 |
永田 |
言ってませんが。 |
糸井 |
しっかし、あれは不自然だったなぁ。 |
ふたり |
こらこらこらこら。 |
糸井 |
あと、あの場面で見過ごせないのは、
「リポビタンD」成分が入っていたことですね。 |
永田 |
そうそうそう、そっちのほうが印象深い。 |
糸井 |
うん、むしろ男子部的な注目としては
イノシシより、リポビタンDですよ。 |
西本 |
(ライフルの弾を投げながら)
ファイトーーー! |
永田 |
(受け取った弾を込めて撃ちながら)
いっぱぁぁぁーーーつ! |
糸井 |
あのリズムは明らかに
「ファイト、一発!」だよね。 |
永田 |
「ファイト、一発!」です。 |
西本 |
ワシのマークの大正製薬です。 |
永田 |
ラッパのマークの正露丸です。 |
糸井 |
逆にいえば、いかに日本人のなかに
「ファイト、一発!」のリズムが
しみこんでいるかということですね。 |
永田 |
ええ。あのシーンを観た7割くらいの人が
リポビタンDのCMを思い出したことでしょう。 |
西本 |
おそるべし、大正製薬。 |
糸井 |
大正製薬はいまから「ファイト、一発!」の
イノシシバージョンをつくるべきですね。 |
西本 |
あのイノシシを流用して。 |
永田 |
「イノシシを流用」(笑)。 |
糸井 |
というか、あのイノシシは、
生イノシシなんですか? |
西本 |
「生イノシシ」(笑)。 |
永田 |
部分的には生なんじゃない? |
糸井 |
「部分的には生」(笑)。 |
永田 |
CGっぽくはなかったですよねぇ。 |
糸井 |
つくりもののようにも見えるけど、
なんか、ほら、
ヘアデザインが荒れてたじゃない? |
ふたり |
「ヘアデザイン」(笑)。 |
糸井 |
だから生かなと思ったんだけど。
なにがいけないのかな?
動き? 大きさ? 距離感? |
永田 |
ま、ともかく、総合的にいうと
「祟り神のオモチャ」みたいでしたね。 |
糸井 |
言い得て妙すぎますね、それは。 |
西本 |
で、あのイノシシが、
第1話のオープニングに出てた
雪山のイノシシなんでしょうね。 |
永田 |
ああ、1年後に同じ場所で
手負いのイノシシと再会。 |
糸井 |
じゃなくて、息子かもよ?
ここでバンとやられたイノシシは
じいさんイノシシで、
息子が鉄平イノシシで。 |
西本 |
あ、なるほど。 |
糸井 |
鉄平イノシシはなぜか
じいさんイノシシにそっくりで。
「おまえはじいさん譲りだね」
なんて言われて育ってるイノシシで。 |
永田 |
意味わかんない。 |
西本 |
ということは、あの草むらには
うり坊がいるわけですね! |
糸井 |
そう。のちの鉄平イノシシ。
それが1年後の雪山でね、鉄平を見つけてね、
「‥‥あいつだ!」と。 |
永田 |
「‥‥いまだ!」と。 |
西本 |
「しかも柳葉はいないぞ」と。 |
糸井 |
「『ファイト!』はいないぞ」と。 |
西本 |
「『一発!』しかいないぞ」と。 |
永田 |
わははははははは。
ていうか、イノシシの話、引っ張りすぎ! |
糸井 |
いや、このドラマ全体が、
イノシシとすごく縁が深いということですよ。 |
西本 |
鉄平の猪突猛進ぶりを表してるのかもしれません。 |
永田 |
あと、干支だしね。 |
西本 |
干支! そうだ! |
糸井 |
いいとこ、つくなぁ。
じゃあ、それでいきましょう。
イノシシについて、男子部の結論としては‥‥。 |
西本 |
干支です! |
永田 |
イノシシ年! |
糸井 |
明けましておめでとうございます! |
西本 |
また来週! |
永田 |
たのむからドラマの話に入りましょう。
ええと、第3話は、どうでした? |
西本 |
まあ、あいかわらず、欣也さんは悪くないと。 |
糸井 |
先週に引き続き。 |
永田 |
うん、欣也さんは今週も悪くなかったね。 |
糸井 |
ああ、そうですか。
おふたりはかなり欣也さんが好きみたいんですね。 |
西本 |
引き込まれちゃいますね。 |
永田 |
ちょっと憎みたいくらいなんですけどね。 |
糸井 |
「欣也、拓哉を殴る」のシーンはどうでしたか? |
永田 |
踏み込んでましたね! |
西本 |
うん、速かった! |
糸井 |
トォン、パァン! とね。 |
西本 |
あれはさすがの鉄平もよけきれないね。 |
永田 |
ジャブだからね。
あそこの欣也さんは、
サウスポースタイルで構えてるのに左でいかない。
出してる右足でさらに踏み込んで、パァン! |
西本 |
古武道の動きなんかにも近いかもしれません。 |
永田 |
ひねらない、ねじらない、ためない。 |
西本 |
ロッテの黒木のフォロスルーですね。
(ロッテの黒木投手の投球をまねながら) |
永田 |
あるいは2002年の桑田さん。
(2002年の桑田投手の投球をまねながら) |
糸井 |
それにくらべると、
山田優さんの平手打ちはまだまだですね。 |
西本 |
あれは、山本さんはわざとよけてないですね。 |
糸井 |
清原選手が内角球をよけずに当たって
ピッチャーをにらみながら
一塁へ歩くようなものですね。 |
永田 |
当たっても痛くないと判断して。 |
西本 |
あれを「当たった当たった、痛い痛い!」
と騒ぐと達川さんになります。 |
糸井 |
おおげさによけて後ろへひっくり返ると
西武時代の金森選手になりますね。 |
永田 |
古い! ていうか、
ビンタひとつで脱線しすぎ! |
糸井 |
「欣也、拓哉を殴る」のシーンに戻りますけどね、
あそこで意外に重要なのは、
欣也さんが平手打ちをするまえに
鉄平が相子に暴力をふるってるところですよ。
いくら問題があるとはいえ、
さわやか鉄平が婦女子に手をあげたというのは
けっこう衝撃でしたね。 |
永田 |
そんなに暴力的だった? |
西本 |
軽く振り払っただけに見えましたけど? |
糸井 |
あっ、それは違いますよ。
あれが暴力に見えないとしたら、
きみたちに「鈴木京香さんは強い女だ」という
先入観があるからですよ。
たとえば、あれがもっと、弱々しい、
細い女優さんだと思ってみてごらんなさい。
あの役を、木之内みどりさんが
やっていると思ってごらんなさい。 |
西本 |
ちょっと古くないっスか。 |
永田 |
うん。ますますわかんなくなりますよ。 |
糸井 |
じゃ、小林麻美にしようか。 |
西本 |
ちょっと新しくなったけど。 |
糸井 |
まだ古いか。 |
永田 |
ていうか、いま、
「糸井重里にとって細い女性」
っていうのが垣間見られましたね。 |
西本 |
いえてる(笑)。
糸井重里にとって、
「細い女優」といえば、
木之内みどりか小林麻美! |
糸井 |
うわぁ、なんだか妙に恥ずかしい(笑)。 |
永田 |
読んでいるみなさんも
「細い女優といえば誰?」というテーマで
いろいろ話し合ってみてください。 |
糸井 |
という話じゃなくて、だね、
あのシーンは今回重要なんですよ。
相子というのは、誰もが疎ましく思いながらも
それをはっきり表現できない女性だったわけでしょ。
それに対して、反射的だったとはいえ
主人公が手をあげるわけですから。
で、その鉄平を、さらに欣也さんが殴る。
いろんな人がちょっとずつ
一線を越えた場面だったんです。 |
永田 |
なるほど、なるほど。 |
糸井 |
この、「肉食」な感じね。
ゴージャスな家でワインを飲んで
「ございますわ」という世界を描けば描くほど、
ああいう「肉食」なところに
コクが出てきますよね。 |
西本 |
ほう、ほう。 |
糸井 |
だって、あの場面ね、
相子を振り払った鉄平に対してあの欣也さんが
「なにをする、てめぇ!」って言いましたからね。
「てめぇ」ですよ?
やっぱり、あの一族の
「上流の仮面」を一枚はぐだけで
肉をがつがつ食らうような
生々しい部分が現れるんですよ。
それが表現されると、奥行きが出ますよね。 |
永田 |
なるほど‥‥とは思うのですが、
あの、すいません、あの場面、
「なにをする、てめぇ!」なんて言ってました? |
糸井 |
言ってましたよ。
そのすごみにぼくはしびれたんですよ。 |
西本 |
すいません、ぼくも聞き逃してました。 |
糸井 |
しっかりしてくださいよ。 |
永田 |
でも、糸井さん、2対1ですよ? |
糸井 |
え、言ってない? いや、言ってたよ、
「なにをする、てめぇ!」って‥‥あれ? |
西本 |
巻き戻して観りゃいいんですよ。
いま、録画を観たばっかりなんですから。
(巻き戻して確認)
|
糸井 |
‥‥‥‥。 |
西本 |
「なにをする、鉄平!」ですね。 |
永田 |
「なにをする、てめぇ!」じゃなく。 |
糸井 |
‥‥‥‥お先に失礼します。 |
ふたり |
こらこらこら。 |
糸井 |
まぁ、でも、ぼくの言いたいことは
わかります、よね? |
永田 |
はい、わかります。 |
西本 |
あの一族の肉食な感じ、
生々しさがこのドラマの醍醐味です。
それは、間違いありません。 |
糸井 |
「てめぇ」とは言ってませんでしたが、
そういうことだと思うんですよ。 |
西本 |
それが、凝縮されていたのが
あの平手打ちの場面だったと。 |
糸井 |
そういうことですね。 |
永田 |
また別の細かい話になりますけど、
この場面は立ち位置が絶妙ですね。
手前から鉄平、大介、相子、その向こうにお母さん。
鉄平の右側に早苗、二子。
この「V字」が見事に人間関係を表してます。 |
糸井 |
ああ、そうですね。
こうして観なおしてみると、
関係がよくわかるように
意図して配置されてるのがよくわかりますね。 |
永田 |
はい。
で、じつはぼく、今回、ここで観たのが
ハイビジョンでの初鑑賞だったんですよ。 |
西本 |
お、ハイビジョン元年。 |
永田 |
そうなんですけどね、
やっぱり、こういう場面で
ハイビジョンの力を思い知らされたというか。
とくに、鉄平、大介、相子の
3人が手前から奥へ並んでいるときの
立体感がすごいというか。 |
糸井 |
でしょう?
滝だけじゃないでしょう? |
西本 |
鉄道だけじゃないでしょう? |
永田 |
うん。奥行きとか、すごい。
3人のうちの誰のどの部分に
ピントが合っているか、ということに
すごくつくり手の意図を感じるんですよ。 |
糸井 |
そうそうそう。
だから、つくるほうがたいへんだというのは
そういうところなんだよね。 |
永田 |
決めなきゃいけなくなりますからね。
どこに合わせるか。どこをぼかすか。 |
糸井 |
ひとまわり違うディレクションが
また必要になってくるんですよね。
でも、考えてみれば映画では
それはすでにやっているわけで。 |
西本 |
この場面にしても、
最終的な映像のできあがりを考えて、
ああいう立ち位置にしてるんでしょうし。 |
永田 |
たいへんだなぁ、それは、ほんとうに。 |
糸井 |
さらに話を広げると、おもしろいのは
銀平がこのV字に含まれてないことですよ。 |
西本 |
V字の緊迫がピークに達したところで
「ずいぶんな騒ぎですね」と現れる。
で、V字のどちら側の線にも加わらず。 |
永田 |
ああ、なるほど。
そう考えると、このシーンは味わい深いなぁ。 |
糸井 |
序盤でしたが、今回の山場でしたね。 |
西本 |
で、もうひとつの見せ場が
大阪の支店を集めて欣也さんがひと演説ぶつ、
あの場面になるのかな。 |
永田 |
うん、あそこは、おもしろかった。
なんといっても各支店長が
悩みの深い、いい顔をしてた。 |
西本 |
各支店のノルマアップはすごかったですね。
18億が25億に! 50億が60億に!
アップ分だけで高炉の足りない金額に
軽く達してしまいますよ。 |
永田 |
あれは総預金額の順位を上げるための
ノルマアップだから、
高炉の融資とは関係ないでしょ。 |
糸井 |
ぼくはあそこに関しては
ずっと考えているんですけど、
どういうマジックを使ったら
あんなに預金高を増やせるんですかね? |
永田 |
え? |
西本 |
え? |
糸井 |
徹夜して心臓が止まるほどがんばると
お金が増えるという時のがんばり方って
具体的には何を意味するんですかね。
選挙運動みたいに行脚なの?
田植えの手伝い?
土下座をしてお願いすれば
「かわいいやつだ、預金してやろう」
ということになるっていうことなんでしょうかね。 |
永田 |
まぁ、要するに、そういうことじゃないですか。 |
西本 |
門前払いをされても何度も通えば、みたいな。 |
糸井 |
うーん、そうかぁ‥‥。
でも、どうがんばったからどう増えた、
というのを、現代人としては
もうちょっと観たかったなぁ。 |
西本 |
ビジネスのからくりというか、
欣也さんの経営者としての手腕みたいなものを。 |
糸井 |
そうそう。 |
永田 |
大阪万博があるから道路ができて、
道路をつくるために農地が国に買い上げられて、
農家に入った大金を預けてもらうために
銀行の人たちががんばる、じゃダメですか? |
糸井 |
時代劇だとすれば、OKなんですけどね。
現代劇だと、なにか方法を知りたくなりますね。 |
永田 |
ということは、すんなりおもしろがれたぼくは
時代劇として観てるんだな。
うん、言われてみるとそうかもしれません。 |
糸井 |
どうもぼくは現代の目線が入るんですよ。
こと、経営やお金に関しては、とくに。 |
西本 |
現代目線というよりは「社長目線」なのかも。 |
糸井 |
そうなのかなぁ。
にしもっちゃんはどうなんですか。
時代劇? 現代劇? |
西本 |
ええとですね、複雑です。
とくに、あの銀行の場面では
むちゃくちゃ複雑な気持ちです。 |
永田 |
複雑? |
糸井 |
どういうことですか。 |
西本 |
基本的には永田さんと同じように
時代劇として楽しんでると思うんですけど、
あの支店長が死ぬところで
とんでもなく複雑な気持ちになりました。
というのは、ほら、ぼくの父親は銀行員で
けっこう早くに死んでしまいましたから。 |
永田 |
わぁ、おい、こら、ちょっと。 |
糸井 |
そういう、にしもっちゃんからすると、
「欣也さんは悪くない」とは
言えなくなるんじゃないですか? |
西本 |
はい、言えません。
現代に引き戻されると、悪い人ですよ。
だから、矛盾しまくりなんですよ、自分の中で。
なんか、うちの親父の葬式のときも
あんな感じでしたし。 |
永田 |
わぁ、だから、そんな深い話を
こんなくだらない場所に持ち込むなよ。 |
西本 |
いや、これがちょっと似てるんだわ。
だから、ほんとのこというと、
欣也さんが悪くないとは言えない。
欣也さんは、3P以外も悪いかもしれない。 |
永田 |
重い事実と3Pをいっしょに語るなよ。 |
西本 |
いや、でも、ほんとに。 |
糸井 |
つまりね、おおざっぱにまとめるとね、
この『華麗なる一族』っていうのは
セミ時代劇であって、観る人の視線によって、
時代劇とも現代劇ともとらえられるわけですよ。
それが、このドラマのいちばんの特長であり、
おもしろいところであり、
つっこまれやすいところであり。 |
永田 |
そうですね。
だから、今回、現代劇よりで観た糸井さんは
お金のからくりみたいなところが気になって、
時代劇として観たぼくはまったく大丈夫で。 |
西本 |
両方が入り交じってしまったぼくは、
自分の中で矛盾してしまったと。 |
糸井 |
いや、たいへんな苦労だと思いますよ。
観る側の気持ちなんて
人によって違うのはもちろん、
そのときどきで変わりますからね。
つくる側が観る側に
「ここはこっち目線で観てください」
なんて言うわけにいきませんから。 |
永田 |
セットを昭和にすればいいっていうわけではなく。 |
糸井 |
複雑な構造を引き受けざるをえないんですね、
こういうセミ時代劇は。
まあ、でも、観る側の勝手な希望としては、
その入り交じる独特の感じでもって
楽しませてほしいですよね。せっかくですから。
あっちへ行ったりこっちへ来たりの
揺り戻しでわくわくしたいというか。 |
永田 |
あ、「入り交じる楽しみ」で思い出しました。
イーグルスですよ。 |
糸井 |
あ、あれは、まさにそうですね。
時代劇で知ってる曲が流れるという違和感。 |
永田 |
そうそうそうそう。
ピアノのメロディーが聞こえた瞬間に
「あれ? 知ってるぞ?」と。 |
糸井 |
「♪デーースペラーードー」 |
永田 |
「♪ホワイ・ドンチュー〜」 |
ふたり |
「♪ほにゃほにゃほにゃ〜」 |
西本 |
ぜんぜん歌えてないじゃないですか。 |
糸井 |
あれは、鉄平のテーマなのかね。
くじけそうになったときに流れるというか。 |
西本 |
イーグルスはちょっと疎いんですが、
どういう曲なんですか。 |
永田 |
こう、アウトローな人に対して
メッセージを送るような歌ですよ。 |
西本 |
鉄平、のびのびやれよ、みたいな歌ですか。 |
糸井 |
いや、もうちょい哀しげな訴えなんだよ。
「♪デーースペラーードー」 |
永田 |
「♪ホワイ・ドンチュー〜」 |
ふたり |
「♪ほにゃほにゃほにゃ〜」 |
西本 |
だから、まったく歌えてませんって。 |
永田 |
あの歌は邦題がよくないんだよな。
『ならず者』っていうんですよ。
おかげで、いろんなところであの曲が流れるたびに
ぼくの頭には「ならず者」っていう文字がバーンと‥‥。 |
糸井 |
邦題はともかくとして、
あそこの鉄平と芙佐子の場面には
ほかにもまだ語りたいことがありますよ。 |
ふたり |
どうぞ、どうぞ。 |
糸井 |
まず、傘。あの傘は、いい傘だね。 |
西本 |
あっ、それ思った!
うわー、自分だけだと思ったのに。 |
永田 |
ぜんぜん思わなかった‥‥。
いい傘? ものがいいってこと? |
糸井 |
うん。いい傘だと思うよ。
水のはじきもよかったし。
万俵家の持つ傘、という感じがしたね。
和光じゃないかな? |
西本 |
ええ、あれはよさそうな傘でした。 |
永田 |
あそこは『ならず者』で頭がいっぱいだったな。 |
糸井 |
そして、もうひとつ。
あの、稲森いずみさんが窓から
鉄平に声をかける場面がありましたよね。
あそこ、稲森さんが引っ込んだあとで、
しばらくガラス窓だけが映るんですよ。 |
永田 |
ん? それがなにか? |
糸井 |
なんにもない窓を、しばし映すなんて、
度胸のいることだと思いませんか?
あれも、ハイビジョンのなせるワザですよ。
つまり、ハイビジョンの細やかな映像で、
「窓の向こうにすっと消える稲森いずみ」が
きちんと表現できるからこそ、その余韻でもって、
「なにも映ってない窓」を
もたせることができるんですよ。 |
西本 |
はっはぁ〜、なるほど。 |
糸井 |
意味だけを追っているドラマなんかじゃ
あんなカットは絶対に入らないですね。
「誰もいない窓」に時間を割くなんてね。 |
西本 |
その演出が成立するのも、
ハイビジョンの力があればこそだと。 |
糸井 |
そのとおりです。
だから、あの場面を永田くんの家のテレビで観たら、
きっと「あれ?」って感じると思いますよ。 |
西本 |
永田さんちのテレビだと、
「人のいない窓」はただの真っ黒ですね。 |
糸井 |
ええ。つるっと真っ平らです。 |
永田 |
人んちのテレビを
のっぺらぼうみたいに言わないでください。 |
西本 |
あと、あの場面でぼくが思ったのは
「鉄平、錆びるなよ」っていうセリフですね。
どうにもうまいこと言い過ぎな感じで
ちょっと気恥ずかしいというか
ぼくの心の中にいるダウンタウンの浜田さんが
「そんなんいらんねん」と言ってましたよ。 |
糸井 |
誰の心の中にも
浜ちゃんは住んでいるといいますからね。 |
西本 |
ええ。鉄平も関西の出身なんだから
「なにうまいこと言うとんねん!」
と返してほしかったですね、あそこで。 |
永田 |
なんでそこだけ関西弁なんだよ。 |
糸井 |
ということで、まあ、
総合的な感想になりますけれども、
今回のお話というのは、あれですね。
『新選組!』のときに
我々が使っていたことばで言うと‥‥。 |
ふたり |
「道の回」! |
糸井 |
「道の回」ですよねぇ、やっぱり。 |
西本 |
ええ、完全に「道の回」でしたね。 |
永田 |
解説させていただきますと、
我々男子部は、テレビドラマの中で、
ひとつのエピソードをじっくり描く
動きの大きな回を「駅の回」、
いくつかの話の進行を伝えるような
つなぎの回を「道の回」と呼んでいるのです。 |
糸井 |
だから、極端にいえば、
この第3話は視聴率を落とすかもしれないですね。 |
西本 |
でも、来週はすごそうですね。
予告を観た感じでは、「駅の回」かなと。 |
永田 |
なんか、いろんな人が怒ってたもんなあ。 |
糸井 |
いろいろいやなことがありそうだねー。 |
永田 |
こういっちゃなんですけど、
やっぱり、このドラマって、
「不幸があればあるほどおもしろい」というか、
訪れる不幸が観る側の感情を揺さぶるような
ドラマだと思うんですよ。 |
糸井 |
そうですね。
あの「万俵家」という一族に、
いったいなにが起こるのかということですね。 |
永田 |
はい。だから、最初の3話を使って、
ベースとなる万俵家を
描いたんじゃないかなと思うんです。
つまり、来週から不幸がはじまるんだろうなぁと。 |
西本 |
終わってみれば、今回のお話というのは、
「20億円、なんとか集まりました」
というような回でしたからね。 |
糸井 |
だから、派手な映像と豪華キャストで
つい勘違いしそうになりますけど、
ここまでの3話というのは
意外に薄いともいえるんですよ。
ぼくが「もっと肉食な感じを観たい!」
と言ってるのも、それと同じことで。 |
永田 |
そうですね。来週からの展開が楽しみです。 |
糸井 |
あとは、なにかありますかね。 |
西本 |
すいません、
まことに個人的な印象になりますが、
長谷川京子さんのシャツがいつも白で
妙に透けているのが気になってます。 |
永田 |
どういう視点なんだ(笑)。 |
西本 |
なんか、妙にいやらしいんですよねぇ。 |
糸井 |
あ、それはまさに肉食の演出かもしれませんよ。
つまり、あの人が清潔感たっぷりだと
鉄平の肉食な部分が消えすぎちゃうじゃないですか。 |
永田 |
え、じゃあ、
妻の「ちょっと透けてるシャツ」で
鉄平の肉食っぽさを表現しているということ? |
糸井 |
うん。ちょっと獣よりのバランスにするというか。
ほら、鉄平って、主人公だということもあって、
ほっとくと「真っ直ぐな若者」っていう
だけの人になっちゃうでしょ。
やっぱり万俵家の人なんだから、
獣を混ぜておかないとね。
それで、鉄平の妻のシャツは透けるわけですよ。
まぁ、正直、ほんとかどうだか知りませんが、
とりあえずそう観るとおもしろいじゃないですか。 |
永田 |
うん(笑)。 |
西本 |
鈴木京香さんと対比させるとまたおもしろいですよ。
愛人の相子は「胸元を開けた服」
という表現ができますが、
妻の長谷川さんはそういうわけにもいかないから
「白いシャツが透けている」と。 |
永田 |
そういう記号なんですね。
欣也さんの葉巻と同じようなものか。 |
糸井 |
そうそう、あれだけ葉巻らしい葉巻は
なかなかお目にかかれないですよ。
ジャイアント馬場以来ですよ。 |
永田 |
「ジャイアント馬場以来」(笑)。 |
西本 |
「ジャイアント馬場以来」(笑)。 |
糸井 |
まあ、このあたりにしておきましょうか。
なにかしゃべり忘れたことはない?
あれ、イノシシの話ってしたっけ? |
西本 |
しました。 |
永田 |
さんざんしました。 |
(また来週) |
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