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第7話を観て |
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永田 |
はい、今週もよろしくお願いします。 |
西本 |
よろしくお願いします! |
糸井 |
よろしくお願いしまーす。 |
永田 |
にしもっちゃん、
ちょっと聞いてください。 |
西本 |
なんすか、なんすか。 |
永田 |
いまにしもっちゃんが
録音機材を取りに行ってるあいだにね、
糸井さんがコーヒーをこぼしたんだよ。
しかも、見事に、自分の股間に。 |
西本 |
まじっすか。 |
糸井 |
‥‥‥‥。 |
永田 |
もうね、なんかね、
オリーブグリーンのズボンの股間に
コーヒーのしみがダラダラっとできて、
いやぁ〜な感じのこぼれ方なのよ。 |
西本 |
そりゃみっともないですね。 |
糸井 |
‥‥‥‥。 |
永田 |
でね、いい年して、
股間にコーヒーをこぼすもんじゃありませんよ、
とぼくは言ったわけですよ。 |
西本 |
言いたくもなりますね。 |
永田 |
そしたらね、なんと糸井重里、
軽く逆ギレしつつ言い訳として
こんなことを言うんですよ。
「オレは、昔からコーヒーを
股間にこぼす男なんだ!」と。 |
西本 |
わははははははは。 |
糸井 |
‥‥‥‥。 |
永田 |
意味わかんないでしょ?
で、さらに続けて、
「昔、うちの事務所にいた石井も、
オレのことを周囲に話すときには
『ああ、糸井ですか、ええ、
よく股間にコーヒーを
こぼしはる方ですよ』
と言ってたもんだ‥‥」なんていう、
わけのわからん昔話まではじめるんですよ。 |
西本 |
百歩譲ってそれが事実だとしたら、
昔もいまも変わらずずっと
股間にコーヒーをこぼし続けている
男だということですよね。
どんな社長ですか、それは。 |
糸井 |
‥‥‥‥もう、すっかり乾きました。 |
永田 |
そういう問題じゃないでしょ。 |
西本 |
そういう問題じゃないでしょ。 |
糸井 |
ドラマの話をしなくていいんですか。 |
西本 |
今週はおもしろかったです! |
永田 |
うん! おもしろかった! |
糸井 |
急にテンションが変わりますね。 |
永田 |
糸井さんの股間の話をしてる場合じゃないですよ。 |
西本 |
ええ、糸井さんの股間はどうでもいいんです。 |
糸井 |
股間そのものの話をしていたわけじゃないだろう。 |
永田 |
今週はお話がうねりましたねー。
すごい展開でした。 |
西本 |
いやー、ホントにすごかった。
正直、ぼくはこのドラマを少しなめてましたよ。 |
糸井 |
ふたりがそんなに声をそろえるなんて
けっこうめずらしいですね。 |
西本 |
糸井さんはおもしろくなかったんですか? |
糸井 |
いや、おもしろかったですよ。
ただ、ちょっとふたりの勢いに押されて‥‥。 |
永田 |
股間にコーヒーこぼしてるから出遅れるんですよ。 |
西本 |
股間にコーヒーこぼしてるから出遅れるんですよ。 |
糸井 |
股間の話は終わったはずだろう! |
永田 |
逆ギレ。 |
西本 |
逆ギレ。 |
糸井 |
出遅れたぶんを取り戻すべくしゃべりますが、
今週はほんとにおもしろかったですね。 |
永田 |
いや、ほんとうに。いよいよ動きはじめましたよ。 |
西本 |
ええ、もう、ぐらぐらですよ。 |
糸井 |
これまでは序章だといわんばかりにね。
今週は何話目? 7話か。 |
西本 |
むしろ「ドラマは7話まで観ろ!」と
言いたくなるくらいですよ。 |
永田 |
いえてる。「太いドラマは7話から!」。 |
糸井 |
野球も7回からだしね。 |
西本 |
ああ、それはいいたとえだ。 |
永田 |
野球を観にきて
6回の裏で帰る人がいますか? |
糸井 |
思えばぼくは前々回で、
「ここから鉄平が勝つとしたら、
4回が終わって7対1で負けてる試合を
ひっくり返すおもしろさが待ってるぞ」
と言ったじゃないですか。 |
ふたり |
そうだった、そうだった。 |
糸井 |
序盤の何話かが、動かなかっただけに、
来てますよね、揺り戻しが。 |
西本 |
来てます。 |
永田 |
先週今週と揺り戻してますよ。
だから、ここまで観てた人は
ナイス娯楽ファンですよ。 |
糸井 |
観るのやめちゃった人もいるんだろうね。 |
永田 |
そうそうそう。
いちばん最初の回で糸井さんも言ってましたけど、
つっこみどころの多いドラマですからね、
うまく楽しめなくなってしまった人は
もったいないことをしました。 |
西本 |
いるんだろうなぁ。
将軍とイノシシと肖像画で
観るのやめちゃった人とか。 |
糸井 |
今回は、将軍もイノシシもカマキリもなく、
肖像画一本にしぼりましたよね! |
永田 |
ていうかね、
ドラマに引き込まれた状態で観るとね、
あの肖像画はよくできてますよ! |
糸井 |
そこまで言いますか(笑)。 |
西本 |
ぼくも同感です。
なんなら「上手に似せてある」くらいの
感想を抱きましたよ。 |
糸井 |
このドラマに限らず、あらゆる娯楽作品は
その世界に観客を取り込むことによって
あばたをえくぼに変える性質を持ってますからね。 |
永田 |
というか、
そのミラクルな変質を味わうことこそが
娯楽をたのしむ醍醐味じゃないですか。 |
西本 |
いえてます。
「坊主好きなら、袈裟まで大好き!」です。 |
糸井 |
あんなに袈裟の文句を言ってたのになぁ。 |
永田 |
ただ、自分が変質してみると、
過去につっこんだ事実が邪魔をしますね。
『デスペラード』が流れると
つい余計なことを考えちゃうし、
肖像画がアップになると、
糸井さんのMiiが頭をよぎるし‥‥。 |
糸井 |
人生ってそういうものですよ。
自分の邪魔をするのは、
いつだって自分なんです。 |
西本 |
なるほど。 |
永田 |
なるほど。 |
糸井 |
自分の邪魔をするのは、
いつだって自分なんです。 |
永田 |
なんで2回言うんですか。 |
糸井 |
しかし、このまま絶賛劇場を続けていると、
コンテンツ的にはつまらなくなりますね。 |
西本 |
じゃ、ぼくが、イヤな目線で語りましょう。 |
永田 |
イヤだなあ。 |
糸井 |
イヤだなあ。 |
西本 |
テーマは「じつは銀平はデカい!」です。 |
糸井 |
どういうことですか。 |
西本 |
ご説明いたしましょう。
高炉を背にして鉄平と銀平が歩くシーン。
あそこ、ふたりが並んで歩いているように見えて、
じつは鉄平のほうが少し前を歩いてるんです。 |
糸井 |
はっはぁー、身長差か。 |
永田 |
遠近法。 |
西本 |
そうです。
ぼくらはたまたま山本耕史さんに
お会いしたことがあるんですけど、
あの人、大きいんですよね。 |
永田 |
うん、大きい、大きい。 |
西本 |
しかし、あそこは鉄平の
兄としての、人間としての
大きさを表さなきゃいけない。
それで、ちょっと前を歩かせてるんです。 |
糸井 |
イヤな見方だなあ。 |
永田 |
イヤな見方だなあ。 |
西本 |
いえ、これからがもっとイヤな見方です!
あの場面、歩くふたりを今度は背後からとらえます。
するとね、さっきまで前を歩いていた鉄平が、
今度はちょっと後ろを歩いてるんです。 |
永田 |
うわーーー、イヤだ! |
糸井 |
オレはこいつと知り合いじゃないぞ! |
西本 |
そこまで言うことないでしょう。 |
永田 |
しかし、それは気づかなかったなぁ。 |
西本 |
あ、その演出だけ切り出すと、
なんか鉄平が小さいように
思われるかもしれませんが、それは違います。
フォローするわけじゃないんですけど、
銀平がデカいんです。 |
糸井 |
じゃ、ついでに爆弾発言しましょうか。
これは鉄平ファンをきっと
怒らせてしまうと思うんですが。 |
永田 |
大丈夫ですか? |
西本 |
大丈夫ですか? |
糸井 |
‥‥コホン。
木村拓哉と糸井重里は、
身長と体重がまったく同じだった時期がある! |
永田 |
うわぁ、これは怒られるわ。 |
西本 |
いっしょにするな、という声が
全国から聞こえてきそうですね。 |
糸井 |
ちなみにぼくが太っちゃったので
体重は変わっちゃいましたが。
いまも身長的には同じはずです。 |
永田 |
じゃあ、逆の場所に爆弾を一発投げて、
ファンの怒りをうやむやにしましょう。
木村拓哉と糸井重里と永田ソフトは、
3人とも身長がまったく同じである! |
糸井 |
わはははははは。 |
西本 |
なにがなんだか。 |
糸井 |
我ら、鉄平トリオです! |
永田 |
鉄平トリオです! |
西本 |
どこをどう解釈したら
その3人がトリオになるんですか。 |
糸井 |
時期と境遇が違っていれば、
3人で古着の貸し借りをする、
なんていうことも可能だったわけですよ。 |
永田 |
そうそうそう。
「これさぁ、着る?」なんつって。 |
糸井 |
「それオレのジャケットじゃん」みたいな。 |
永田 |
「それよりこないだのシャツ返せよ」とか。 |
西本 |
わかった、わかった。 |
糸井 |
我ら、鉄平トリオです! |
永田 |
鉄平トリオです! |
西本 |
だから、なんのどういうトリオなんですか。 |
糸井 |
惜しかったね、にしもっちゃん、
ひとりだけ身長が違って。 |
永田 |
けっこう、くやしいでしょ? |
西本 |
正直に言わせてもらっていいですか?
‥‥‥‥かなり、くやしいです! |
ふたり |
わははははははは。 |
西本 |
オレもみんなと古着の貸し借りがしたかった‥‥。 |
永田 |
ええと、身長の話はこれくらいにしまして。 |
糸井 |
じゃあ、ぼくのほうから、
「小ほめ」をひとつやっておきましょうかね。 |
ふたり |
どうぞ、どうぞ。 |
糸井 |
目にとまったのは、
阪神特殊製鋼の食堂のメニューです。
「すき焼き風鍋」というメニューがありました。
そのメニューはね、いいと思うなぁ。 |
永田 |
へーーー、気づかなかった。
「コロッケ30円」っていうのは知ってたけど。
「すき焼き風鍋」は今回はじめて出たのかな? |
西本 |
今回、食堂に銀平が座ることによって
いつもと違うアングルの画がありましたから、
それではじめて映ったのかもしれませんね。 |
糸井 |
ま、いつからあったか知りませんが、
そのメニューはね、いい思いつきですよ。
あると人気だろうなと思えるし。
「すき焼き風鍋」というのは
どういう料理かな、と、つい考えるし。
おそらく牛丼に近いものだと思うんですよ。
そういう想像が広がるよね。
ブタでやってもいいんだろうけど、
関西だから安くても牛でやるんだろうか、とか。 |
永田 |
神戸ですからね。 |
糸井 |
そうそう。 |
永田 |
あと、「すき焼き」にしちゃうと、
あの大衆食堂にしては
贅沢なメニューになっちゃうから
「すき焼き『風』」にしてあるところが。 |
糸井 |
いいんですよ。
で、それを「鍋」にすることで、
みんなでがんがん食べてる感じが出る。
ひいては、あの食堂そのものが
魅力的に見えるんですよ。 |
永田 |
ついでに想像ですけど、
「すき焼き風鍋」が
突貫工事で疲れている作業員の士気を高めるために
急遽組み込まれた特別メニューだとすると、
それはいい演出ですよね。 |
西本 |
で、それをおごったり、おごられたりすると。 |
糸井 |
それはいいですねぇ。
もしも誰かが仕組んだことだったら
ぜひ「小ほめ」しておきたいですよね。
「自分が脚本家だったら」みたいな目で見ると
そういうところがいちいちおもしろいですね。 |
永田 |
ぼくがその「脚本家だったら」目線で観たのは、
同じく食堂の、ジャンケンのシーンですよ。 |
糸井 |
ほう。 |
永田 |
あの、ぼくは個人的に、
実際のジャンケンを非常にまじめに
真剣に考えてやるタイプなんですけど。 |
西本 |
それっぽいわ。 |
糸井 |
じつにそれっぽいね。 |
永田 |
さあ、ジャンケンだ、となったあの場面、
つくり手としては、どういう展開にするのかなと
反射的に考えたんですよ。
で、まずは、場の盛り上がりを考えると、
初手は「あいこ」するべきだなと。 |
西本 |
バカなことを反射的に考えてますね。 |
糸井 |
AB型はつねに考えている、といいますよ。 |
永田 |
じゃあ、どの手で「あいこ」にするかと考えると、
あそこはふたりともリーダーとして
ジャンケンに臨んでいるんだから、
そこの決意や自覚を、読みや計略抜きで
ギャラリーに見せるべきだと。 |
西本 |
はいはい。 |
糸井 |
はいはい。 |
永田 |
ならば、「グー」だ、と!
そしたら、実際のふたりも
「グーであいこ」でしたから、
うん、よし! と思いました。 |
糸井 |
ああ、でも、それはわかりますね。
つまり両方とも握り拳を見せたわけです。
で、つぎの展開も明らかに意図がありましたね。
鉄平が銀平に訊いて、「チョキ」だと。
相手は握り拳からの変わり身で「パー」。 |
西本 |
銀平の才を見せた形になりました。 |
永田 |
才もそうですし、あそこは、
鉄平と銀平が取り戻した
つかの間の絆の象徴だと思うんですよ。
あのふたりが健全に手を組むと
きっと物事はうまくいくんだろうな、という。 |
糸井 |
だけど哀しいかな、
その絆は長くは続かない‥‥
ということだね。 |
永田 |
そしてさらに言わせてもらうと、
「ドラマのなかのジャンケン」って
おもしろいなぁと思うんですよ。
あの、『MOTHER3』にも
重要な場面でジャンケンが出てきますけど。 |
糸井 |
「ギー、チェキ、ぺー」ですね。 |
永田 |
そうです、そうです。
誰かが何かの物語の中にジャンケンを出すときは、
そこにはつくり手の意図が入らざるを得ないんです。
というのは、役者さんに任せたりすると、
ジャンケンが思った結果になることはあり得ないので、
「こっちがグーで、そっちはパー」というように
絶対に細かく手を指定しなきゃいけない。 |
西本 |
ずいぶんジャンケンで引っ張りますね。 |
糸井 |
引っ張りすぎじゃないかな。 |
永田 |
すると、おもしろいことに、
現実の世界においては
筋書きなき運の象徴であるところのジャンケンが、
ドラマの中ではつくり手のコンセプトと意図、
つまり筋書きの象徴となってしまうわけですよ。 |
西本 |
わかった、わかった。 |
糸井 |
わかったからそれくらいにして。 |
永田 |
現実の世界においては
筋書きなき運の象徴であるところのジャンケンが、
ドラマの中ではつくり手のコンセプトと意図、
つまり筋書きの象徴となってしまうわけですよ。 |
糸井 |
なんで2回言うんだ! |
西本 |
それがやりたかったんだな。 |
永田 |
と、いうわけです。
じゃ、にしもっちゃんの番。 |
西本 |
あ、オレですか。
じゃあ、ぼくからは
「小ほめ」と「つっこみ」の両方の意味で
「神戸経済新聞」を挙げておきましょう。 |
永田 |
あ、わかった(笑)。 |
糸井 |
え、どういうこと? |
西本 |
神戸経済新聞、詳しすぎです! |
永田 |
社内報なみの詳しさです! |
糸井 |
なになに、どういうこと? |
西本 |
なんと一面トップ記事で
「綿貫専務またも昇進ならず」と! |
永田 |
どんだけ有名人なんだ、綿貫専務! |
糸井 |
へぇー、そうでしたか。
それはぜんぜん見えてなかったなぁ。
そりゃたしかに詳しすぎる。 |
西本 |
社内報でも「昇進ならず!」とは書けませんよ。
いうならば裏社内報ですよ、
大同銀行総務部の有志が発行する
インディーズ社内報。 |
永田 |
ま、要するにあれは、綿貫専務の
「現状だとままならないぞ」という未来を
わかりやすく見せてるんだと思うんですが。 |
糸井 |
だとすると、それも大介たちがリークしたのかもよ。 |
西本 |
芥川元東京支店長がそこまでリークするんですか。 |
永田 |
ちょっと待て、責任をとって左遷されたのに、
左遷先からまたそんな細かいことをリークするのか。 |
糸井 |
いや、だから、ブログ感覚でさ。 |
永田 |
「ブログ感覚」(笑)。 |
西本 |
「ブログ感覚」(笑)。 |
糸井 |
それを機に社員のブログが
上司からチェックされるようになったりしてね。 |
永田 |
ていうか、昭和にブログないですから。 |
西本 |
ともあれ、神戸経済新聞は
いまいちばん読みたい新聞ですね。 |
永田 |
あれさ、記事もいちいち
ちゃんと書いてあるんだよね。
高炉爆発を伝えるところも
「ドーンという音がして‥‥」みたいに
それっぽいことが書いてある。 |
糸井 |
永田くんがスタッフなら
あの記事まるごと全部書くよね。
天声人語みたいな場所までね。 |
永田 |
書きます、書きます。 |
西本 |
「もう、書かなくていいから!
そんなところ誰も読まないから!」
って言われながらね。 |
永田 |
ある程度まですごくマジメに書いて、
後半のところまで読むと
ちょっとふざけてたりしてね。
そういうの、好みです。 |
糸井 |
こう、記事と記事の合間にある、
ちょっとした広告とかも
いちおう、つくっておきたいですね。
「ケドリス、新発売!」みたいな。 |
西本 |
なんですか「ケドリス」って。 |
糸井 |
なんだかわかんないけど、
「ケドリス」っていう商品の
広告があったらいいじゃないか。 |
永田 |
「あらゆる関節痛に効く! ケドリス」みたいな。 |
糸井 |
そうそうそう(笑)。
「砂浜うさぎ」みたいなものとかね。 |
永田 |
「信州銘菓 砂浜うさぎ」 |
西本 |
そんな神戸経済新聞です。 |
永田 |
今日の一面は綿貫専務です。 |
糸井 |
どうでもいいですけど、
綿貫専務が登場するとき、
いちいち名前のうしろに
「(生え抜き派)」って出るのが
妙におもしろいですよね。 |
永田 |
高須相子がムードたっぷりに登場するときに
必ず「(執事)」って出るのも、味わい深いですよ。 |
糸井 |
でもさ、「(執事)」はいちおう職業だけど、
「(生え抜き派)」ってなんなんだよ。
そんな職業はないでしょう。 |
西本 |
日銀派のぼくもそれはおかしいと思います。 |
永田 |
あれは「ニシモトタカシ」だっただろ。 |
糸井 |
せっかく鶴瓶さんなんですから、
「(生えぎわ派)」というのはどうですかね。
M字の生えぎわでお馴染みの、という意味で。 |
永田 |
くだらない。 |
西本 |
くだらない。 |
糸井 |
「綿貫専務(生えぎわ派)」。 |
永田 |
おかしくない。 |
西本 |
ちょっといいですね。 |
永田 |
どうして、にしもっちゃんは
すぐそっちにいっちゃうんだ。 |
糸井 |
「綿貫専務(生えぎわ派)」。 |
西本 |
ふははははは。 |
永田 |
あははははは。あー、もう! |
糸井 |
あとさぁ、鶴瓶さんが欣也さんからもらった
副頭取にするっていう念書は、あれでいいの? |
永田 |
あ、そうそうそう。
あれ、もらった瞬間に鶴瓶さんが
「これは、なんのつもりですねん!」
とかって怒るのかと思ったら、
あっさり受け取っちゃうし。 |
糸井 |
なんか、名刺の裏に
「千客万来、商売繁盛」
みたいなのが書いてあるだけでさ。 |
永田 |
ぜんぜん違いますけどね。 |
西本 |
要するにあれは伏線でしょう?
たぶん、鶴瓶さんは、副頭取にはなれないんですよ。
で、「ここに念書があるんでっせ!」
と逆ギレしたときに‥‥。 |
永田 |
そんな名刺がどうして念書なんですか、と。 |
糸井 |
「千客万来、商売繁盛」
と書いてあるだけじゃないですか、と。 |
永田 |
書いてあることばは
ぜんぜん違うんですけどね。 |
西本 |
あなたを副頭取にするなんて言ってませんよ、と。 |
糸井 |
お客さんがいっぱい来て、
商売が繁盛したらいいなぁって
書いてあるだけじゃないですか、と。 |
永田 |
ややこしくしないでくださいよ、話を。 |
糸井 |
ほんとにそう書いてあったたらおかしいのになぁ。
「この念書を見なはれ!」って
怒った鶴瓶さんが名刺を出したとき、
そこに‥‥「千客万来、商売繁盛」。 |
西本 |
ふははははは。 |
永田 |
あははははは。あー、もう! |
糸井 |
それを知って、大同銀行の生えぎわ派は
「話が違う」と大騒ぎになるんですよ。 |
永田 |
生えぎわ派、鶴瓶さんだけじゃないんだ! |
糸井 |
そりゃぁ、もっといるでしょう。 |
西本 |
ちなみにぼくは日銀派ですけどね。 |
永田 |
もういいって。 |
糸井 |
でもさ、柳葉さんとの駆け引きからはじまった
大同銀行の吸収という策略を、
鶴瓶さんという弱い人を突くところまでもってきた、
この一連の流れというのは
ものすごくうまく描けてたよね。 |
西本 |
あーー、そうですね。 |
永田 |
けっきょく、決断の部分に
いちいち「私怨」や「私情」がからむから、
ムリっぽい交渉が成立するのにも納得できるし、
同時にそれが弱みになるという構造も
生まれるんですよね。 |
糸井 |
もっというと、ドラマのあちこちで
「性」とか「動物くささ」とかを表現することで、
私怨や私情という感情的なことで物事が決まることに
説得力をもたせているんです。
実際の社会でもそうだと思うんですよ。
データとマーケティングもあるけど、
「わしはあいつが嫌いなんや」
というのは覆せないんですよ。 |
西本 |
最後は生理的な部分、感情が決める、と。 |
糸井 |
それが山崎豊子さんの世界観なんじゃないですかね。
戦国武将の物語なんかも同じですよね。 |
永田 |
あ、まさにそうだ。 |
糸井 |
戦略や策略も醍醐味ですけど、
その裏に感情が動くからこそドラマになるんでね。
婿取り、嫁取りみたいなことだってそうですよ。 |
西本 |
今回、鉄平の妹が嫁に行くというのも、
ドラマの流れとしてはよかったですよね。 |
永田 |
うん。あの歯がゆさが見事。 |
糸井 |
「女はたまにウソをつくの」
というセリフは、よかったですねー。 |
ふたり |
よかった、よかった。 |
糸井 |
「ウソをつく」というのが
二重構造になってるんですよね。
あれは、味わいとかコクじゃなくて、
スパーンときれいに抜けるよさでした。
こう、二遊間をきれいに割るヒットというか。 |
永田 |
ポテンヒットでもホームランでもなく。 |
糸井 |
そうそうそう。 |
西本 |
単打だけど、きっちり打点はついてるみたいな。 |
糸井 |
大きなドラマのまわりを
ああいうセリフが彩ってくれると
全体が豊かになりますよね。 |
永田 |
今週のお話がおもしろかったのは
そういう「細かいよさ」の影響もありますね。 |
西本 |
「小ほめ」とか「中ほめ」が
たくさんあったような気がします。 |
糸井 |
それはそうと、にしもっちゃん、
毎週恒例の「長谷川京子ほめ」はいいんですか? |
西本 |
いっときましょうか。
ぼくにとって今回は‥‥
まさに「長谷川京子ナイト」でした! |
糸井 |
またその切り口か。 |
永田 |
こないだは
「長谷川京子デー」って言ってましたよ。 |
糸井 |
「長谷川京子ファッションショー」
っていうのもあったな。 |
西本 |
なんといっても特筆すべきは
登場シーンにおける桃色のカットソー。 |
永田 |
コンシャスな。 |
西本 |
ええ。コンシャスです。
しかも、よく見たら、なんだか胸のあたりに
カットが入ってるじゃないですか!
「長谷川京子ナイト」です! |
糸井 |
わかった、わかった。 |
永田 |
ちなみに今週は
長谷川京子さんよりも、
鈴木京香さんが透けてましたよ。 |
西本 |
はい。でも、相子の「透け」は悪の象徴ですから
透けてる色が「黒」でしたね。 |
糸井 |
うまいこと言うなぁ。 |
永田 |
うまいこと言うなぁ。 |
西本 |
あの「透け」は、ジャンケン以上に
仕組まれたものだと思いますよ。 |
糸井 |
服装ということで広げますけど、
ここのところ、とくに先週今週と、
ものすごく服装を自由にしましたよね。
時代とかTPOとかに縛られずに、
「その人に似合うように」って
シフトしているような気がするんですよ。
つまり、時代劇の衣装としてではなくて、
いいね! っていう服に。
とくに女性は思い切りよくどんどん着替えるし。 |
西本 |
なるほど、なるほど。 |
糸井 |
女優さんの服もひとつのお楽しみですよね、
っていうふうになってると思うんです。
ところが、そんなふうに着飾る女優さんのなかで、
ひとりだけ仲間に入れてもらえない人がいるんです。 |
永田 |
どなたでしょう。 |
糸井 |
多岐川裕美さんです! |
西本 |
ああ、それは、しかたない! |
永田 |
ここのところ、ずっと浴衣です! |
糸井 |
そういう役だとはいえね、
多岐川さんご自身はきっと、
残念に感じてると思いますよ。 |
西本 |
まわりのみんながどんどん
オシャレになってるわけですからね。 |
永田 |
きっと楽屋口かなんかに、
ほかの出演者の衣装がずらーっと並んでるんですよ。 |
糸井 |
「長谷川京子さま」、ずらーーっ。 |
西本 |
「山田優さま」、ずらーーっ。 |
永田 |
ところが、「多岐川裕美さま」のところには‥‥。 |
西本 |
浴衣がぽつんとひとつだけ‥‥。 |
糸井 |
しかも、病人の浴衣ですから、
ノリがぱりっと効いてるわけでもなく。 |
西本 |
浴衣のかたわらには、
小道具の酸素マスクがぽつんと‥‥。 |
糸井 |
でも、メイクは手がかかってますよ!
このドラマの「病人メイク」は
たいへんクオリティーが高いですから。 |
永田 |
稲森いずみさんも、出番のわりに
水色のカーディガン的なものが多いですね。
やっぱり万俵家の贅沢さはないということで。 |
西本 |
けっこう着替えてはいるんですけどね。 |
永田 |
でも、ずっと水色。 |
糸井 |
「着替えても 着替えても 水色」 |
永田 |
それは、
「わけいっても わけいっても 青い山」? |
西本 |
なにがなんやら。 |
糸井 |
肝心の、高炉大爆発とかについて
触れなくていいんですかね。 |
西本 |
たいへんな事件でしたけど、
予告編ですでに知っていたぶん、
心構えができてましたよね。 |
永田 |
というか、最近の予告編は、
少しネタバレしすぎじゃないですか?
あの爆発、予告編になかったら
きっとめちゃめちゃびっくりしましたよ。 |
糸井 |
いや、永田くん、
その手のひらの返し具合はどうかと思うよ。
こないだは「予告編がおもしろい!」って
言ってたじゃないですか。 |
永田 |
ああ、そうか、そうですね。
いや、おもしろいのは間違いないんですが。 |
糸井 |
予告編だけ観て
「来週の長谷川京子は白いブラウスだ!」
なんてたのしんでたわけでしょう? |
永田 |
たしかに。
あ、それで思い出しました。
先週、ふっこと鉄平の恋愛沙汰を
取り上げておいてよかったですね。 |
西本 |
あの幸せな家庭があるのに
ふっこになびいたら
鉄平の株ががた落ちだぞと言っていたら‥‥。 |
永田 |
いかなかったですよね!
鉄平、えらいぞと思いました。 |
糸井 |
『デスペラード』とともに、
ふっこにいくのかなと思いきや
「ごめん」でしたね。
いわゆるひとつの逆デスペラード状態! |
西本 |
なんですか、それは。 |
糸井 |
「♪ぎゃ〜く、デースペラ〜ド〜」 |
永田 |
ムリがある、ムリがある。 |
糸井 |
「ぎゃく」を入れるタイミングがむつかしいな。 |
西本 |
ともあれ、鉄平は、
「妻以外を愛する」という
万俵家の血を断ち切ったようだ、と。 |
永田 |
ある意味、鉄平も
じいさんの亡霊と戦っている、と。 |
糸井 |
じいさんのマシュマロ問題が
今週はまた具体的に描かれてましたね。 |
西本 |
永田さんが
「あのじいさんがいちばん悪い」
と怒っていたやつですね。 |
永田 |
いや、だって、そうですよ。 |
糸井 |
「公家の女の肌は白くてマシュマロのようだ」 |
永田 |
そりゃ北大路欣也も怒るっちゅうねん。 |
西本 |
怒るっちゅうねん。 |
糸井 |
今週の欣也さんは
また見応えがあったねぇ。 |
西本 |
鉄平に「いなくなってほしい」と
言っちゃったシーンはすごかったですよ。 |
永田 |
舞台っぽくなったよね、あそこだけ。
目を閉じて天を仰ぐところとか。 |
西本 |
「ああ!」ってね。 |
糸井 |
いや、万俵大介劇場でしたよ、あそこは。 |
永田 |
あの北大路欣也さんの顔には、
「TVウォッチャーの逆襲」を連載してる
我らが荒井清和先生も反応されてまして、
このような作品を仕上げてくださってます。
読んでない方、もったいないのでお読みください。
|
糸井 |
いいですねぇ(笑)。 |
西本 |
あの顔は得意中の得意だよなぁ、荒井先生。 |
永田 |
まさか銀平も登場するとは思いませんでした。 |
糸井 |
じいさんの肖像画を荒井先生に
描いてもらうというのはどうだろう。 |
永田 |
あの肖像画はあれでいいんです! |
西本 |
もう我々は一周して肯定派です! |
糸井 |
そ、そうですか‥‥。
しかし、あのじいさんは不思議な人ですね。
あれだけ「怒るっちゅうねん」なことをしても
どうやらみんなに好かれていたらしい。 |
永田 |
けっきょく、
全部を隠してるというのもすごいですよ。
鉄平の出生だって、けっきょく、
よくわからないということになってるでしょう?
お母さんも「気がついたら‥‥」って
言ってたわけですから。 |
糸井 |
それらしく描かれているけれど、
真相は藪の中ということになってますね。 |
西本 |
少なくとも、大介とお母さんにとっては。 |
永田 |
ふっこ問題については、
多岐川さんの告白によって
いちおうはっきりしましたけど、
鉄平はまだぎりぎりグレーですね。
あっ、違うわ。鉄平問題も、
多岐川さんの手紙ではっきりしたんだ。
じいさんの子だってことが。 |
糸井 |
いや、はっきりしてませんよ。
だって、最後の肝心のところは
読まなかったじゃないですか。 |
永田 |
え? |
西本 |
え? |
糸井 |
「あなたのほんとうのお父さんは‥‥」
のあとは読んでないでしょ。 |
西本 |
鉄平は「ウソだっ!」と絶叫してましたが。 |
糸井 |
何に対して「ウソだっ!」かは、わかりません。
「あなたのほんとうのお父さんは、
‥‥‥‥イノシシなんです」
かもしれないでしょ。 |
西本 |
わははははははは。 |
永田 |
それで思わず鉄平が「ウソだっ!」と。 |
西本 |
わははははははは、
そりゃウソだと思うわ。 |
永田 |
「あなたのほんとうのお父さんは、イノシシなんです」 |
西本 |
「‥‥ウソだっ!」 |
糸井 |
いわゆる『里見八犬伝』的な展開? |
永田 |
そりゃ鉄平も怒るわ、
自分だけ父親がイノシシだったら。 |
糸井 |
大介も愛せないよなぁ、
イノシシの子だったら。 |
西本 |
あっ! ということは、
いまラストシーンっぽく思われている
雪山で相対するイノシシは‥‥。 |
永田 |
鉄平の、じつのお父さん! |
糸井 |
「じつの」(笑)。 |
西本 |
「じつの」(笑)。 |
永田 |
数奇な運命とはこのことです。 |
糸井 |
ていうかこんな話ばかりしてていいんですか。 |
西本 |
ダメです。 |
永田 |
ダメです。 |
糸井 |
ダメですよね。 |
永田 |
どうでもいいですけど
あの手紙を読むシーンは、
多岐川さんのナレーションに移ってから
鉄平のリップシンクがすごかったですね。
手紙を読むうちに書いてる人の声が
重なってくる場面はよくありますが、
あそこまで読み手の口の動きと
ナレーションが合ってるのははじめて観ました。 |
西本 |
あれは、どっちが合わせてるんだろう。
木村さんが口パクしているのに合わせて
多岐川さんがかぶせているのか、
多岐川さんのナレーションを録っておいて
木村さんが口パクしているのか。 |
糸井 |
同時、っていうのはどうですか。
つまり、演技をしているスタジオの
見えない位置に浴衣姿の多岐川さんがいて
口に合わせて同時にしゃべる。 |
永田 |
そこは浴衣じゃなくていいでしょう。 |
西本 |
ええ。酸素マスクも外しておいてほしいです。 |
糸井 |
ともあれ、あのリップシンクを
どうやって成立させたのかという問題は、
『チンパンニュース』の吹き替えを
どうやっているのかということと
同じような不思議さがありますね。 |
永田 |
あの深刻なシーンに
『チンパンニュース』を重ねますか。 |
西本 |
いいんじゃないでしょうか。
『チンパンニュース』は
番組がはじまる前から
ほぼ日テレビガイド男子部が
追いかけている番組ですから。 |
永田 |
追いかけちゃいないだろうよ。
何年か前の「年末年始テレビガイド」で
たまたま注目したというだけで。 |
糸井 |
それはそうとあの場面、
あんな秘密っぽい手紙を
ふたりの目の前で声に出して読むというのは
ちょっとどうなんでしょうね。 |
永田 |
あれは、あえて
そうしているということじゃないですかね。
席を外そうとしたふたりに向かって
「いや、ふたりも聞いてくれ」という感じで。 |
西本 |
いや、永田さん、それは違う。
あんた、わかっちゃいないよ。
あれはね、昔の女が夜中に突然自宅にやってきて
手紙を手渡されたけれども、
「おれはべつにやましくないぞ」
という妻へのアピールですよ。 |
糸井 |
はっはぁーーー、なるほど! |
永田 |
うわぁ、それだ。
にしもっちゃん、今日は、さえてるわ。 |
西本 |
こうやって、ふたりを前にして、
声に出して読めるくらい
自分にやましいところはないんだ、と。 |
永田 |
長谷川さんが、
ちょっと頬をひきつらせながら
「私は席を外しましょう」と言っても。 |
西本 |
おまえもいろよ、と。
やましくないぞ、と。 |
糸井 |
それで朗読してみた手紙が
くだらない内容だったら
気恥ずかしかったでしょうね。
「昔、あなたにあげたはずのお菓子を
食べてしまってごめんなさい」みたいな。 |
ふたり |
わはははははは。 |
糸井 |
大切なことが後半に書いてあるにしてもさ、
どうでもいい話からはじまってたりするじゃない? |
永田 |
うちの、りかさんみたいな人が
手紙を書いてたらたいへんですよ。
どうでもいい無関係な話が
脈絡なく続くことになりますよ。 |
西本 |
そういう意味では多岐川さんが
わかりやすい文章を書く人でよかった。 |
糸井 |
あと、字がどうにも汚かったりさ。
達筆すぎて読めない、とかさ。 |
永田 |
「このたびは鉄平さんに‥‥‥‥
‥‥の‥‥でき‥‥も? に?
なんだこれ? 読めねぇな」みたいな。 |
西本 |
そういう意味では多岐川さんが
わかりやすい字を書く人でよかった。 |
糸井 |
文章も字もわかりやすくてよかったんですけど、
肝心の手紙の内容は
あなたの父親はイノシシですということですから、
これは、たいへんですよ! |
永田 |
た、たいへんだ! |
西本 |
やましいところはないが、父親がイノシシ!
やましいどころの騒ぎじゃない! |
糸井 |
しかも封筒のなかから
なぜか万俵大介の名刺が出てきてさ、
それを裏返すと「千客万来、商売繁盛」と。 |
永田 |
(爆笑) |
西本 |
ああ、永田さんの好きな世界へ行きましたね。 |
永田 |
ひーー、ダメだ、それは。
わけがわからなさすぎる(笑)! |
糸井 |
「あなたのほんとうの父親は、イノシシです」 |
西本 |
そんで名刺をひっくり返すと「千客万来、商売繁盛」 |
永田 |
もーーやめてくれーーー(笑)! |