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第8話を観て |
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永田 |
さあ、観ました! |
西本 |
よろしくお願いします! |
糸井 |
おもしろかったですね。 |
ふたり |
おもしろかったですねぇ。 |
糸井 |
もう、なんていうんでしょう、
サーキットレースのようなめまぐるしさ? |
永田 |
動く、動く。 |
西本 |
進む、進む。 |
糸井 |
いま、あらためてここで観おわった瞬間、
なんと3人そろって
トイレに行っちゃいましたからね。 |
永田 |
ええ。これまでになかったことです。 |
西本 |
また、都合よく、
弊社の小便器は3つありまして。
奥が糸井さん、真ん中が永田さん、
そして手前がぼくと。 |
糸井 |
そんなに詳しく
連れションのフォーメーションを
説明することないでしょう。 |
西本 |
ちなみに背後から見た場合ですと、
左から糸井、永田、西本の順番です。 |
糸井 |
そんなに詳しく
連れションのフォーメーションを
説明することないでしょう。 |
永田 |
ともかく、しゃべる前にまずはトイレ!
と言いたくなるほど濃密な回だったと。 |
糸井 |
そういうことですね。 |
西本 |
ちなみに、最初にトイレに行ったのは糸井、
やや遅れて、永田と西本が‥‥。 |
ふたり |
連れションの話はもういい! |
西本 |
失礼しました。 |
糸井 |
まあ、すごい回でしたね。
だって、序盤にいきなり
クライマックスがありましたからね。 |
永田 |
関係者一同勢ぞろいの中、
鉄平が自分の出生を問いただす場面ですね。 |
糸井 |
日曜日の放送のときに、家であの場面を観てね、
「おおおおおーー」と思って、ふと時計を見たら
まだ15分しか経ってなかったんだよ。
だって、あれ、推理小説なら、
探偵が犯人を言い当てるようなシーンだぜ? |
永田 |
「今日、みなさんにお集まりいただいたのは
ほかでもありません!」と名探偵が言うような。 |
西本 |
そして「いったい何事ですの?」と貴婦人が。 |
糸井 |
「事件は物取りの犯行ということで
解決済みじゃないのかね」と医者が。 |
永田 |
居間の古時計がボーンボーンと鳴り‥‥。 |
西本 |
一同がゴクリとつばを飲み込むなか‥‥。 |
糸井 |
ヒゲの熱血警部が「わかったぁっ!」と。 |
永田 |
そりゃピンポイントに金田一じゃないですか。 |
西本 |
そして泣き崩れるのは、
犯人ではなく、なぜか母親! |
糸井 |
呆然と立ちつくす大介に、
ヒゲの熱血警部がガチャリと手錠を! |
永田 |
しない、しない。 |
西本 |
そして翌日、万俵家に平和な朝が‥‥。 |
糸井 |
汽車に乗り遅れそうな名探偵が、
風呂敷包みを抱え、ぼさぼさ髪を振り乱し、
ふけを飛ばしながら家を飛び出していく‥‥。 |
永田 |
だから、それはただの金田一でしょう。 |
糸井 |
と、いうような場面ですよ! あれはっ! |
永田 |
長いよ。 |
西本 |
長いよ。 |
糸井 |
まぁ、ともかく、たいへんな15分間でしたよ。 |
永田 |
なんか、前にもありましたよね、
こういうふうに序盤にいきなり
クライマックスが来るような回が。 |
西本 |
たぶん、観てる人がチャンネルを変えないように
早い時間でひとつ山場をつくるという
方法をとっているんじゃないでしょうか。 |
永田 |
あ、なるほどね。
ふつうなら終わりごろに来る山場を
あえて15分ごろに持ってくる。 |
糸井 |
つまり、このドラマでは、
15分に45分があるんです。 |
西本 |
なにがなんやら。 |
永田 |
なにがなんやら。 |
糸井 |
つまり、このドラマでは、
15分に45分があるんです。 |
永田 |
2回言ってもだめです。 |
糸井 |
あっ、違うか、
「このドラマには45分が二度ある」
のほうがいいか。 |
永田 |
それなら納得、ですけど、
2回言っちゃだめですよ! |
西本 |
つまり、このドラマには、
45分が二度あるんです! |
糸井 |
おまえが言うな。 |
永田 |
おまえが言うな。 |
西本 |
ところで永田さん、
冒頭の15分でいきなり泣いてましたね。 |
糸井 |
え、そうなの? |
永田 |
はい、ついにポロリといっちゃいました。 |
糸井 |
たしかにすごい場面でしたけど、
泣かせるような感じじゃなかったと思いますが。
なにに泣いたの? |
永田 |
ええとね、どこに泣いたというわけじゃなく、
その‥‥「圧」で。 |
糸井 |
「圧」で。 |
永田 |
ええ。
いつもドラマを観てポロリといくときは、
いいセリフとか表情とかがトリガーになって
泣いちゃうんですけど、今回は、
テンションと緊張感の「圧」でポロリと。 |
糸井 |
大きい音にびっくりしたみたいなことだね。 |
永田 |
に、近いですね。
ドーン、ドーンという「圧」で
うわぁ、という感じで。 |
西本 |
たしかに木村さんと北大路さんの
かけあいはすごかったですね。 |
永田 |
うん。「圧」が来ました。 |
西本 |
ぼくは例によって泣きませんでしたが、
木村さんが泣く演技には、
ものすごく引き込まれました。
木村さんの顔をこんなに真剣に
集中して見つめたのは、
はじめての経験かもしれません。 |
永田 |
よかったです。ここは、ぜひ、
「キムタク、かっこええなぁ」と
ベタに言っておきたいです。 |
糸井 |
ふつうの感想じゃないか! |
西本 |
いや、でも、わかりますよ。
「木村拓哉さん」じゃなく、
あえて、お茶の間目線で「キムタク」と。 |
永田 |
そうそう。 |
西本 |
最後の方のシーンで
夕暮れっぽいところでの
顔のアップもかっこよかったですよ。
暗くてほおもこけた感じで。 |
永田 |
うんうん。 |
西本 |
「キムタク、かっこええなぁ」 |
永田 |
「キムタク、かっこええなぁ」 |
糸井 |
だから、それじゃ、ふつうの感想じゃないか。 |
西本 |
いや、ふつうじゃないですよ。
ドラマを観てね、いい年した男がね、
「キムタクかっこええ」なんてね。 |
永田 |
そうです、ふつう、言えません。
三十路の半ばも過ぎたような男が
真っ正面から
「キムタクかっこええ」なんて。 |
糸井 |
言えますよ。
ぼくは、15年前から言ってますよ。 |
西本 |
デビュー当時からSMAPを観てきた
糸井さんはふつうじゃないんですよ。 |
糸井 |
え? そうなのか?
「かっこええ」と言えてた
オレがふつうじゃなくて? |
永田 |
「かっこええ」と言えないふつうのぼくらが
ふつうに「かっこええ」と言うんですから、
「キムタク、かっこええなぁ」は
ふつうの感想じゃないんですよ。 |
糸井 |
なんだかよくわからなくなってきた。 |
西本 |
だいたい、どっちの立場でも
「かっこええ」と言ってるんだから、
なにも問題はないじゃないですか。 |
糸井 |
それもそうか。そうなのかな。 |
永田 |
もういっぺん説明しましょうか? |
糸井 |
もういい、もう、なんでもいい。
ええと、なんの話でしたっけ? |
西本 |
冒頭の15分がすごかったと。 |
糸井 |
そうでした、そうでした。
永田くんが涙したと。 |
永田 |
涙つながりというわけではありませんが、
あの場面、木村さんと北大路さんの目が
どんどん潤んであふれていくという
涙のグラデーションはすごかったですね。 |
糸井 |
迫力ありましたねぇ。 |
永田 |
滝の映像以外はアナログテレビで
十分だと思っているぼくですが、
さすがにハイビジョンは違うなと思いましたよ。 |
西本 |
‥‥永田さん、鉄道も格別なんですよ。 |
永田 |
滝と鉄道の映像以外はアナログテレビで
十分だと思っているぼくですが、
さすがにハイビジョンは違うなと思いましたよ。 |
糸井 |
あの目の潤みを永田さんちのテレビで観たら、
「ざっと泣いてるな」ということになりますよね。 |
永田 |
そうです。「ざっと泣いてる」です。
吹石さんの頬に涙のあとがあることなんかも
たぶん、わからなかったんじゃないでしょうか。 |
糸井 |
つまり、滝と、役者の涙は
ハイビジョンで観るに限ると。 |
永田 |
ええ、まさに。 |
西本 |
‥‥糸井さん、鉄道も。 |
糸井 |
つまり、滝と、鉄道と、役者の涙は
ハイビジョンで観るに限ると。 |
永田 |
ええ、まさに。 |
西本 |
まさに、まさに。 |
糸井 |
冒頭の15分については、
そんな感じですかね。 |
永田 |
いえ、あとひとつ!
片づけておかなきゃいけない問題が
あの場面にはありましたよ。 |
ふたり |
なんですか、なんですか。 |
永田 |
女将からの手紙の最後の部分が
きちんと映ってたんですよ!
糸井さん、けっきょく最後の部分は
「イノシシ」じゃなかったじゃないですか。 |
西本 |
そうだった、そうだった。 |
糸井 |
さっき、3人で録画を観てたとき、
手紙の「万俵敬介」という文字が
アップになったところで
永田さんがわざわざ振り返って
ぼくをにらみましたからね。
「イノシシじゃないぞ!」と。 |
永田 |
いや、きっと、ぼくだけじゃないですよ。
このページを読んでいる多くのみなさんが、
あの場面で強く突っ込んだはずですよ、
「おい、糸井! イノシシじゃないぞ!」と。 |
西本 |
というよりは、あの場面の直前、
「あなたのお父さんは‥‥」のところで
「『イノシシです』と言え!」と
念じたはずですよ。 |
永田 |
どっちにしろ、先週の糸井さんの
「イノシシ発言」さえなければ
みんなもっとドラマに集中できたはずです。 |
糸井 |
いや、でも、女将の手紙には
「‥‥だと思います」と結んであったわけだからね。
イノシシの可能性もないわけじゃないですよ。 |
永田 |
そう、言い逃れすると思ったんだよなぁ。 |
西本 |
「万俵敬介だと思います」
というだけだから、父親は敬介じゃなく、
イノシシかもしれないと。なるほど。 |
永田 |
納得すんなよ。 |
糸井 |
あとさ、「敬介」と呼ばれる
イノシシがいる可能性だって
なきにしもあらずでしょう。 |
永田 |
まだ言いますか。 |
糸井 |
つまり、雪山のイノシシは、
あの一帯では「主(ぬし)」と呼ばれる
ボスイノシシでさ。 |
西本 |
「ボスイノシシ」(笑)。 |
永田 |
「ボスイノシシ」(笑)。 |
糸井 |
地元の人いわく、
「あのイノシシは万俵家でいえば、
敬介さんのようなものだね」と。 |
永田 |
ていうか、手紙では名字ついてましたから。
「万俵敬介」って、上手な字で、
はっきり書いてありましたから。 |
西本 |
いや、だからね、永田さん、
あの山一帯がそもそも、
万俵家のキジ撃ちの場所として有名なんですよ。
いわば、「万俵家の山」なんですよ。 |
永田 |
にしもっちゃんは
また、そっちに行っちゃうのかよ。 |
糸井 |
「万俵家の山の主」ということで、
イノシシについたあだ名が「万俵敬介」。 |
永田 |
ふははははは。 |
西本 |
だいたい、池の鯉に「将軍」なんていう
あだ名がついてるくらいですからね。 |
糸井 |
そうそう、なくはないよ、
イノシシに「万俵敬介」は。 |
永田 |
じゃあ、なに?
女将の手紙の中にある
「万俵敬介だからではないかと思います」は、
「万俵敬介(イノシシ)ではないかと思います」
ということなの? |
糸井 |
そうなんだけど、実際の手紙には
「(イノシシ)」の部分がなかったので、
みんなが、あたふたしてるんだよ。 |
西本 |
「敬介なのはわかったけど、
どっちの敬介なんだ!」と。 |
永田 |
ふははははは。
じゃあ、鉄平の、あの
「ぼくの父親は、誰なんですかっ!」も‥‥。 |
西本 |
「大介なんですか? 敬介なんですか?」
ということではなく。 |
糸井 |
「人間なんですか! イノシシなんですか!」と。 |
永田 |
ふははははははは。 |
西本 |
だいたいね、自分の祖父の血液型なんて、
わざわざ病院で調べなくても
わかってるでしょう。 |
糸井 |
ってことは、鉄平が調べたのは
イノシシの血液型だったんですね。 |
永田 |
A型だったのかよ、あのイノシシ。 |
糸井 |
意外に几帳面です。 |
西本 |
ええ、几帳面です。 |
永田 |
ていうか、なんで病院に
あのイノシシのカルテがあるんですか。 |
糸井 |
7年前の大ケガで。 |
西本 |
あのときはひどかった。 |
永田 |
もーーー。あっ! 違うよ!
だって、風呂場の回想シーンに出てくる足は
人間の足じゃないですか!
イノシシが父親なら、あれは
イノシシの足じゃないといけない。 |
西本 |
いや、永田さん、それは違う。
あんた、なんにもわかっちゃいないよ。
あのシーンのカメラアングルが
妙に低い位置からなのを覚えてますか?
つまりあれは‥‥‥‥イノシシ目線なんですよ。 |
糸井 |
わはははははは! |
永田 |
あはははははは! |
糸井 |
おもしろいなぁ、それ(笑)。 |
永田 |
じゃあ、あの場面では、
じいさんがイノシシ連れてるんだ! |
糸井 |
そりゃお母さんも驚くよな。 |
西本 |
びっくりしますよ。
風呂入ってたら、素っ裸のじいさんが
イノシシ連れて入ってくるんですから。 |
永田 |
非常識すぎるよ、じいさん。 |
糸井 |
あと、きっとイノシシは
土足だから汚いよな。 |
永田 |
風呂場に土足のイノシシはイヤですね。 |
西本 |
だから、お母さんとしては
びっくりするやら、汚いやらで。 |
糸井 |
そりゃ、気を失ったりもするわな。 |
西本 |
記憶も飛ぶっちゅうもんですよ。 |
永田 |
あ、でもさ、そのあとのカットでは、
浴槽の中のお母さんを
上からのぞき込むような視点になるよ? |
糸井 |
それはさ、ほら、イノシシだって
急にお湯に入るとびっくりするじゃない?
だから、じいさんがイノシシを、
こう、肩にかついで‥‥。 |
西本 |
わはははははははは! |
永田 |
ふはははははは、くだらない! |
糸井 |
こんな話をずっとしてて、いいんですか? |
永田 |
ダメです。 |
西本 |
ダメです。 |
糸井 |
ダメですよね。 |
永田 |
ええと、なんの話をしてたんだっけ。 |
西本 |
冒頭の15分ですよ。 |
糸井 |
こんだけしゃべって
まだ15分しか経ってないのか! |
ふたり |
誰のせいですか! |
糸井 |
ちょっと巻きを入れて行きましょう。
要するに、関係者全員に
「万俵家の亡霊」の謎が明かされたということで
いよいよ材料がそろったわけですね。
大介の明らかなウソも重なって、視聴者的には
「鉄平、がんばれ!」という動機が固まったと。 |
永田 |
おっしゃるとおりです。 |
西本 |
「鉄平、がんばれ!」です。 |
糸井 |
ここからは永田さんが以前に想像したとおり、
サスペンス仕立てになってきましたね。
つまり、ここからどう逆転するのか?
という、筋としての純粋な楽しみ。 |
永田 |
法廷へなだれ込んだ展開も
視聴者的にはわかりやすくなりましたよね。
あのままだと「勝つ」という決着を
どうつけるかがよくわからなかったんだけど、
裁判という白黒つける場所に移ったことによって
はっきり決着がつきますから。 |
西本 |
以前は、銀平や大亀専務の口を借りて
ゲームっぽく見せてましたが、
ここからは裁判の形をとることによって
ドラマをわかやすく見せていく、と。 |
糸井 |
その意味では、法廷ものの映画が
ヒットする理由もわかりますよね。 |
永田 |
こんがらがった問題に結果を出す場ですからね。 |
西本 |
実際の裁判は長くかかったりするけど、
ドラマとして切り取るぶんにはキャッチーだと。
「ほぼ日」でも、最近、
『それでもボクはやってない』の周防監督との対談や
「阿曽山大噴火さんと裁判に行こう!」という
裁判コンテンツをふたつやりましたけど、
どちらも人気がありました。 |
糸井 |
しかも、このドラマの展開としては、
真実は鉄平側にあるんだけど、
大介に勝つのはそうとうむつかしそうだぞ、
というふうにしてあるわけですよね。
つまり、「どう勝つんだ?」というのが
より強調されていくわけです。
なにせ、大介には大顧問弁護団がいるんでしょうけど、
原告は鉄平と萩原聖人の二人ぼっちですからね。 |
西本 |
鉄平の相棒としての弁護士に
萩原聖人さんというのは
ナイスキャスティングでしたね。 |
永田 |
そうそう、よかった。
ふたりの関係が「昔からの親友」っていうのも
観る側としては応援しやすいですよね。
頼りないけど、信頼はできるという。 |
糸井 |
それについてはひとつ小さな情報がありますよ。
かつて萩原聖人さんと木村くんは
『若者のすべて』というドラマで競演してるんです。
そのときは、主演が萩原聖人だったんですけど。 |
永田 |
へええ。 |
糸井 |
もう10年以上前かな。
萩原聖人さんを高倉健とするならば
木村くんが鶴田浩二くらいのいい感じで
ふたりが競演しているんですよ。
だからというわけじゃないとは思いますが、
おつなキャスティングだと思いますね。 |
西本 |
あのふたりが事務所で
相談しているシーンはよかったですね。
ほんとに昔なじみという感じで。 |
糸井 |
けど、あの事務所にかかっていた
「義を見て為さざるは勇無きなり」というのは、
弁護士事務所の標語としてはどうなのかな? |
西本 |
鉄平の仕事場にも
技術がどうのこうのという標語がありましたね。 |
糸井 |
あちこちでテーマを掲げがちなドラマですね。 |
永田 |
でっかい話をびゅんびゅん飛ばしながら
進めていかなきゃいけないドラマですから、
ああいうところで人物の説明を補足しておく、
ということでしょうか。 |
西本 |
みなさん、今日出てきたこの人は、
儲からなくても正義のために戦う弁護士ですよ、
ということですね。 |
糸井 |
「綿貫専務(生えぎわ派)」と同じですね。 |
永田 |
「(生え抜き派)」です。 |
西本 |
ぼくは日銀派ですけどね。 |
永田 |
いちいち言う必要もありませんが、
それは「ニシモトタカシ」だ。 |
糸井 |
日銀派の三雲頭取は、今回、よかったですね。 |
永田 |
よかったですね!
阪神銀行が融資してないことを知ったときは、
目の大きさが倍くらいになってましたよ。 |
西本 |
ふだんクールなぶんだけ、
感情の起伏が見えると効果が大きいんですね。 |
永田 |
あの「‥‥わたぬきクンっ!」
っていうのが、すごくよかったなぁ。 |
糸井 |
うちの西本もああやって叱ってほしいですね。 |
永田 |
「‥‥にしもとクンっ!」 |
糸井 |
「‥‥にしもとクンっ!」 |
西本 |
なんでぼくが怒られるんですか。 |
糸井 |
すごく重要な会議とかで
自分の話をはじめたりしたんじゃないですか? |
永田 |
イベントの収支報告のはずが、
いつの間にかFC東京の話になってたりしてね。 |
糸井 |
「‥‥にしもとクンっ!」 |
永田 |
「‥‥にしもとクンっ!」 |
西本 |
じゃあ、一世風靡時代に、
柳葉さんが勝俣さんをたしなめるときは‥‥。 |
糸井 |
「‥‥かつまたクンっ!」 |
永田 |
「‥‥かつまたクンっ!」 |
西本 |
「‥‥かつまたクンっ!」 |
糸井 |
脇役つながりでいうと、
西本さんが注目している武田鉄矢さんは
いつも安定してオッケーですね。 |
西本 |
ええ。これまでは失礼ながら、
武田鉄矢さんというと「金八先生」しか
イメージがなかったんですが、
このドラマで、すごい役者さんなんだと
あらためて思い知らされました。
今回でいうと、大介から
「弁護士に連絡しろ!」
みたいなことを言われたときに、
ちゃんと小走りするようなところがいいんですよ。 |
永田 |
抜け目ないんだけど、誠実なんだよね。
ああいう人たちが脇を固めてることで、
大介という人の強さが強調されている。
いいように使われている銭高専務が
何も言えずに従ってるのもわかりますよ。 |
西本 |
西村さんは、ああいう役をやらせるといいですねー。 |
永田 |
なにがすごいって、あの、目の死にっぷり!
ハイビジョン放送の情報量と
大画面テレビの解像度をもってしても
目がまったく輝いてません。 |
糸井 |
銭高は来週、重要な役どころになりそうですね。 |
永田 |
裁判サスペンスものとしては
鍵になってくる人物ですよね。 |
西本 |
例の帳簿が、どこでどう使われるかも気になります。 |
糸井 |
あと、「千客万来、商売繁盛」の名刺もね。 |
永田 |
だから、そうは書いてないんですって。 |
西本 |
しかし、一週間経つと、
名刺の裏に本当はどう書いてあったかを
まったく思い出せませんね。 |
永田 |
‥‥ほんとだ。 |
糸井 |
じゃあ、もう、いいじゃないか、
「千客万来、商売繁盛」で。 |
西本 |
そうっすね。 |
永田 |
そうっすねじゃないだろう。 |
糸井 |
そういや、ブラウスはどうでしたか。 |
永田 |
あ、そうだ、ブラウスやっとこう。 |
西本 |
ずいぶん扱いがぞんざいですね。
「長谷川京子さんの衣装の
微妙な透け具合などを通して
演出の傾向を探るコーナー」と
きちんと説明してくださいよ。 |
糸井 |
そんなにたいしたものじゃないだろ。 |
西本 |
さて、今週の長谷川京子さんは、
念願の白透けが復活いたしました!
いや、ファンとしてはうれしいかぎり! |
糸井 |
これのどこが「演出の傾向を探る」なんだ。 |
永田 |
「念願の白透け」(笑)。
念願だったのか。 |
西本 |
念願ですよ。待望ですよ。 |
永田 |
溜飲を下げたと。 |
西本 |
下げました、下げました。
下がりっぱなしです。 |
糸井 |
「溜飲を下げる」を
そんなふうに使っていいのかな。 |
西本 |
むしろ「溜飲を下げる」の
活用例文として採用してほしいくらいです。 |
永田 |
「西本が、長谷川京子さんの
白いブラウスを見て、溜飲を下げる」 |
西本 |
これは、例文として正解ですね。 |
永田 |
ええ、男子部的には正解です。 |
糸井 |
そうなんですか。 |
西本 |
問1。「溜飲を下げる」を使って、短い文章を作れ。 |
永田 |
「西本が、長谷川京子さんの
白いブラウスを見て、溜飲を下げる」 |
西本 |
正解ですね。 |
永田 |
ええ、男子部的には正解です。 |
糸井 |
溜飲を下げるかどうかわかりませんが、
長谷川京子さんは
「私は万俵鉄平の妻です!」
と、さかんに言うね。 |
永田 |
言いますね。 |
西本 |
くり返し言いますね。 |
糸井 |
お決まりのセリフを
トレードマークのように使うのもいいですけど、
あそこはもうちょっと別の方向に
揺らせてもよかったかと思いますね。
弱きになった鉄平を叱りとばすとかね。 |
西本 |
そう、あの場面、ぼくは
長谷川さんが鉄平を一発ビンタすると
思ったんですよ。 |
永田 |
そりゃやりすぎじゃない? |
西本 |
いや、それくらいあってもよかったですよ。 |
糸井 |
ブラウスファンとして。 |
西本 |
そう。白いブラウスがひらりと揺れてね。
なんならスローモーションですよ。
それも別カットで3回くらい。 |
糸井 |
「パァン!」「パァン!」「パァン!」と。 |
西本 |
「パァン!」「パァン!」「パァン!」と。 |
永田 |
なんでそんな格闘ゲームのKOシーンみたいな
演出にしなきゃいけないんだよ。 |
糸井 |
ま、この人はやっぱりそれを言うんだな、
というのも、説得力があっていいですけどね。 |
西本 |
「私は万俵鉄平の妻です!」というところから
ブレない人なんだな、ということで。 |
永田 |
うん、うん。
事実、ぼくはそんなふうにとらえて観てましたよ。 |
糸井 |
じゃあ、もう、ああいうお決まりのセリフは、
経営理念の標語みたいに、
筆で書いて額縁に入れちゃえばいいんじゃないか。 |
永田 |
「私は万俵鉄平の妻です!」っていう額縁ですか。 |
西本 |
わはははははは。 |
糸井 |
もうそれを持って登場すればさ、
視聴者にも親切だろう。 |
永田 |
でも両手がふさがっちゃいますよ? |
西本 |
そういう問題ですか。 |
糸井 |
じゃあ、背中に背負っちゃうとかさ。
あ、風船に書いて、それが背後に
プカプカ浮いてればいいか。 |
西本 |
わはははははは。 |
永田 |
それならいいか。 |
西本 |
それならいいのか。 |
糸井 |
つまり、「(生えぎわ派)」と同じ効果ですよ。 |
永田 |
「(生え抜き派)」ですけどね。 |
西本 |
ぼくは日銀派ですけどね。 |
永田 |
そりゃ「ニシモトタカシ」ですけどね。 |
糸井 |
その人物の個性を際だたせるために
くり返し使われるセリフを風船に書いておけば、
途中から見た人もわかりやすいじゃないですか。 |
永田 |
じゃあ、銀平の風船には
「兄さんにはとてもかないませんよ」と。 |
糸井 |
そうそう(笑)。 |
西本 |
山田優さんの風船には
「この家はどうなっているのです?」と。 |
糸井 |
そうそう(笑)。
もうさ、番組プレゼントもさ、
原作本をプレゼントするんじゃなくて
それぞれの出演者の吹き出し風船を
プレゼントすればいいと思うんだよ。 |
永田 |
そういうおもしろ妄想はさておき、
あの原作本プレゼントのナレーションまで
倍賞千恵子さんにやらせるのは、どうなんですか。
あのしっとりしたトーンで
「発送をもって発表にかえさせていただきます」
とまで言わせることはないでしょう! |
糸井 |
あれはさ、西本みたいな調子のいいADがいてさ、
「倍賞さん、すみません!」
とかお願いしちゃったんだよ、きっと。 |
西本 |
本編のナレーション収録のときに、
スタジオのガラスの向こうから
「すんません、倍賞さ〜ん!
あの、流れでお願いしたいんですけど
プレゼントのナレーションも
そのままいいっスか!」と。 |
糸井 |
倍賞さんも人がいいから、つい、
「声のトーンは変えない方がいいですよね」
とか言ってね。
「抽選で50名様に(あのトーンで)」と。 |
西本 |
「ああ! いいっスね!
『50名様に』いただきました!
じゃあ、そのまま、つぎ、
『発送をもって発表にかえさせていただきます』
に行きましょうか。
もう、テスト本番で行きましょう!」 |
永田 |
なんて失礼なADだ! |
糸井 |
「‥‥にしもとクンっ!」 |
永田 |
「‥‥にしもとクンっ!」 |
西本 |
また柳葉さんに怒られちゃったよ。 |
糸井 |
あとは、まあ、印象に残った場面でいうと、
津川さんの「まだ大きな石がふたつ足らん」ですよね。
あれですぐに「2億くれ」だと伝わるっていうのは、
そういう世界があるって想像すると愉快ですよね。
通な人たちの奇妙な会話っていうかさ。 |
永田 |
あれでほんとに石ふたつ
送っちゃったらおかしいですけどね。 |
西本 |
大介に「石をふたつ用意してくれ」と言われて、
武田鉄矢さんが「さっそく手配します」と小走りに。 |
糸井 |
で、石を送りつけられた津川さんが、
「にぇーーーー、まいったネ!」と。 |
永田 |
わははははは。
津川さんのあの口調って、ほんとにおかしい。 |
西本 |
もしくは「石ふたつ」と言われたあの場で大介が
「なるほど、ということは
2億円ということでよろしいですね?
確認させていただきますと、
そちらの口座に振り込まれたあと
領収書はいかがされますでしょうか?
収入印紙の代金は2億とは別で
つけさせていただいたほうが
よろしいでしょうか?」と、
オトナ語ですらすらと。 |
永田 |
大介がオトナ語を使うのはイヤだなあ。 |
西本 |
あの顔でオトナ語はギャップがありますね。 |
糸井 |
最近、大介のあの険しい顔を見るたびに
荒井先生の似顔絵がよぎって困ってるんだよ。 |
永田 |
じゃあ、今週も
荒井先生の大介をご紹介いたしましょう。
「TVウォッチャーの逆襲」その130より。
|
糸井 |
わはははははは。 |
西本 |
大介をいじるにしても、
どうしてロックを歌うことになるのか‥‥。 |
永田 |
そのあたりの常人にはうかがいしれぬ複雑さが
荒井作品の真骨頂です。 |
糸井 |
そういえば、大介って、AB型だったんですね。 |
西本 |
永田さんと同じですよ。 |
永田 |
まあ、そうですけど。 |
糸井 |
あと、AB型でいうと、
たしか谷村新司さんがAB型ですね。 |
永田 |
どうしてピンポイントに谷村新司さんなんですか。 |
西本 |
つまり、万俵大介、谷村新司、永田ソフト、と。 |
糸井 |
その3人か。 |
永田 |
「その3人か」って言われても。 |
西本 |
鉄平トリオならぬ、
ABトリオですね! |
永田 |
してないから。
そんなトリオ、結成してないから。 |
糸井 |
いや、ABブラザーズだ! |
永田 |
意味わかんない。 |
西本 |
じゃあ、中山ヒデちゃんも
そこに入れちゃいましょう。 |
糸井 |
そうするか。 |
永田 |
「そうするか」じゃなくて。
あと、中山ヒデちゃんがデビュー当時に
組んでたコンビの名前がABブラザーズだって
説明しないとなにがなんだか‥‥。 |
西本 |
つまり、メンバー的には、
万俵大介、谷村新司、永田ソフト、中山秀征と。 |
糸井 |
その4人か。 |
永田 |
「その4人か」じゃなくて。
ていうかさ、中山ヒデちゃんの血液型は
AB型かどうかわかんないでしょう? |
西本 |
その4人で古着の貸し借りをすると。 |
永田 |
合わないから。サイズ合わないから。 |
糸井 |
違う。やりとりするのは
古着じゃなくて、血だよ。
4人で輸血をしあうわけだ。 |
永田 |
無理だってば。
だって厳密にいうとAB型なのは
オレと谷村さんだけじゃないですか。
大介はAB型だけど、北大路さんはわかんないし。
中山ヒデちゃんは元ABブラザーズっていうだけだし。 |
糸井 |
4人でキジ撃ちに行って、
流れ弾が当たったときには
4人で輸血し合うんだ。 |
永田 |
無理だから。固まるから。凝固するから。
オレと谷村さん以外、凝固するから。 |
糸井 |
こんな話をずっとしてて、いいんですか? |
西本 |
ダメです。 |
永田 |
ダメです。 |
糸井 |
ダメですよね。 |
永田 |
なんの話をしていたか
思い出す気にもなれません。 |
糸井 |
つまり、血ですよ!
このドラマは血の物語なんですよ!
万俵家の血をめぐる家族の話なんですよ!
銀平も言ってたじゃないですか、
「家族がお父さんから開放されると思ったのに」と! |
西本 |
おお、戻ってきた! |
永田 |
よくわからないけど、結果オーライ! |
糸井 |
白いブラウスを着た人が
「私はあなたの妻です」と強調するのも、
血統書のない人どうしが
ナイトクラブみたいなところで
ほっぺたをいじったりいじられたりするのも、
万俵家の血のない人たちが
血のまわりで惑う姿なわけですよ。 |
永田 |
いいぞ、その調子! |
西本 |
いいぞ、その調子! |
糸井 |
ひいてはそれがドラマの舞台が
昭和43年であるという意味でもあるんです。
平成の現代に血の物語はないでしょう?
家族というものが社会の核として
成立していた時代だからこそ、
このドラマは成立するんです。
総理の甥と縁談がまとまっただけで
一族が安泰だなんて、いまだったら無理でしょう? |
永田 |
あれだけ敵対し合ってるのに、
「子が親を訴えるわけがない」と
みんなが言い合ってたのも
そういう時代背景ならではなんですね。 |
西本 |
現代の視線で見ると、
鉄平が訴えるのは自然に思えますからね。 |
糸井 |
思えば、『華麗なる一族』の原作が連載された
1970年代のはじめというのは、
家族の神話が崩壊しはじめたころでね、
『ファイブ・イージー・ピーセス』とか、
家族の崩壊をテーマにした作品が
けっこう生まれた時代だったんだよ。
『華麗なる一族』はその潮目を
見事に表しているわけじゃないですか。
血と閨閥にこだわる大介と、家族から出て行く鉄平と。 |
永田 |
なるほど。 |
西本 |
なるほど。 |
糸井 |
いわば、古い時代の血の物語と、
近代の血の物語が対立しているんですよ。
どうですかこのまとめは。 |
永田 |
お見事です。 |
西本 |
一時はどうなることかと思いました。 |
糸井 |
いわば、古い時代の血の物語と、
近代の血の物語が対立しているんですよ。 |
永田 |
2回言ってもOKとします。 |
西本 |
ああ、そうか、そうか。
「万俵家の亡霊」という物語の元凶も、
それで納得がいきますね。
ようするに、じいさんが、
守るべき血の物語をゆがめちゃったわけだから。 |
糸井 |
そういうことですよ。
しかもイノシシまでからんでますから、
種を超えた複雑な血の物語が! |
ふたり |
イノシシの話はもういい! |