第8話を観て
永田 さあ、観ました!
西本 よろしくお願いします!
糸井 おもしろかったですね。
ふたり おもしろかったですねぇ。
糸井 もう、なんていうんでしょう、
サーキットレースのようなめまぐるしさ?
永田 動く、動く。
西本 進む、進む。
糸井 いま、あらためてここで観おわった瞬間、
なんと3人そろって
トイレに行っちゃいましたからね。
永田 ええ。これまでになかったことです。
西本 また、都合よく、
弊社の小便器は3つありまして。
奥が糸井さん、真ん中が永田さん、
そして手前がぼくと。
糸井 そんなに詳しく
連れションのフォーメーションを
説明することないでしょう。
西本 ちなみに背後から見た場合ですと、
左から糸井、永田、西本の順番です。
糸井 そんなに詳しく
連れションのフォーメーションを
説明することないでしょう。
永田 ともかく、しゃべる前にまずはトイレ!
と言いたくなるほど濃密な回だったと。
糸井 そういうことですね。
西本 ちなみに、最初にトイレに行ったのは糸井、
やや遅れて、永田と西本が‥‥。
ふたり 連れションの話はもういい!
西本 失礼しました。
糸井 まあ、すごい回でしたね。
だって、序盤にいきなり
クライマックスがありましたからね。
永田 関係者一同勢ぞろいの中、
鉄平が自分の出生を問いただす場面ですね。
糸井 日曜日の放送のときに、家であの場面を観てね、
「おおおおおーー」と思って、ふと時計を見たら
まだ15分しか経ってなかったんだよ。
だって、あれ、推理小説なら、
探偵が犯人を言い当てるようなシーンだぜ?
永田 「今日、みなさんにお集まりいただいたのは
 ほかでもありません!」と名探偵が言うような。
西本 そして「いったい何事ですの?」と貴婦人が。
糸井 「事件は物取りの犯行ということで
 解決済みじゃないのかね」と医者が。
永田 居間の古時計がボーンボーンと鳴り‥‥。
西本 一同がゴクリとつばを飲み込むなか‥‥。
糸井 ヒゲの熱血警部が「わかったぁっ!」と。
永田 そりゃピンポイントに金田一じゃないですか。
西本 そして泣き崩れるのは、
犯人ではなく、なぜか母親!
糸井 呆然と立ちつくす大介に、
ヒゲの熱血警部がガチャリと手錠を!
永田 しない、しない。
西本 そして翌日、万俵家に平和な朝が‥‥。
糸井 汽車に乗り遅れそうな名探偵が、
風呂敷包みを抱え、ぼさぼさ髪を振り乱し、
ふけを飛ばしながら家を飛び出していく‥‥。
永田 だから、それはただの金田一でしょう。
糸井 と、いうような場面ですよ! あれはっ!
永田 長いよ。
西本 長いよ。
糸井 まぁ、ともかく、たいへんな15分間でしたよ。
永田 なんか、前にもありましたよね、
こういうふうに序盤にいきなり
クライマックスが来るような回が。
西本 たぶん、観てる人がチャンネルを変えないように
早い時間でひとつ山場をつくるという
方法をとっているんじゃないでしょうか。
永田 あ、なるほどね。
ふつうなら終わりごろに来る山場を
あえて15分ごろに持ってくる。
糸井 つまり、このドラマでは、
15分に45分があるんです。
西本 なにがなんやら。
永田 なにがなんやら。
糸井 つまり、このドラマでは、
15分に45分があるんです。
永田 2回言ってもだめです。
糸井 あっ、違うか、
「このドラマには45分が二度ある」
のほうがいいか。
永田 それなら納得、ですけど、
2回言っちゃだめですよ!
西本 つまり、このドラマには、
45分が二度あるんです!
糸井 おまえが言うな。
永田 おまえが言うな。
西本 ところで永田さん、
冒頭の15分でいきなり泣いてましたね。
糸井 え、そうなの?
永田 はい、ついにポロリといっちゃいました。
糸井 たしかにすごい場面でしたけど、
泣かせるような感じじゃなかったと思いますが。
なにに泣いたの?
永田 ええとね、どこに泣いたというわけじゃなく、
その‥‥「圧」で。
糸井 「圧」で。
永田 ええ。
いつもドラマを観てポロリといくときは、
いいセリフとか表情とかがトリガーになって
泣いちゃうんですけど、今回は、
テンションと緊張感の「圧」でポロリと。
糸井 大きい音にびっくりしたみたいなことだね。
永田 に、近いですね。
ドーン、ドーンという「圧」で
うわぁ、という感じで。
西本 たしかに木村さんと北大路さんの
かけあいはすごかったですね。
永田 うん。「圧」が来ました。
西本 ぼくは例によって泣きませんでしたが、
木村さんが泣く演技には、
ものすごく引き込まれました。
木村さんの顔をこんなに真剣に
集中して見つめたのは、
はじめての経験かもしれません。
永田 よかったです。ここは、ぜひ、
「キムタク、かっこええなぁ」と
ベタに言っておきたいです。
糸井 ふつうの感想じゃないか!
西本 いや、でも、わかりますよ。
「木村拓哉さん」じゃなく、
あえて、お茶の間目線で「キムタク」と。
永田 そうそう。
西本 最後の方のシーンで
夕暮れっぽいところでの
顔のアップもかっこよかったですよ。
暗くてほおもこけた感じで。
永田 うんうん。
西本 「キムタク、かっこええなぁ」
永田 「キムタク、かっこええなぁ」
糸井 だから、それじゃ、ふつうの感想じゃないか。
西本 いや、ふつうじゃないですよ。
ドラマを観てね、いい年した男がね、
「キムタクかっこええ」なんてね。
永田 そうです、ふつう、言えません。
三十路の半ばも過ぎたような男が
真っ正面から
「キムタクかっこええ」なんて。
糸井 言えますよ。
ぼくは、15年前から言ってますよ。
西本 デビュー当時からSMAPを観てきた
糸井さんはふつうじゃないんですよ。
糸井 え? そうなのか?
「かっこええ」と言えてた
オレがふつうじゃなくて?
永田 「かっこええ」と言えないふつうのぼくらが
ふつうに「かっこええ」と言うんですから、
「キムタク、かっこええなぁ」は
ふつうの感想じゃないんですよ。
糸井 なんだかよくわからなくなってきた。
西本 だいたい、どっちの立場でも
「かっこええ」と言ってるんだから、
なにも問題はないじゃないですか。
糸井 それもそうか。そうなのかな。
永田 もういっぺん説明しましょうか?
糸井 もういい、もう、なんでもいい。
ええと、なんの話でしたっけ?
西本 冒頭の15分がすごかったと。
糸井 そうでした、そうでした。
永田くんが涙したと。
永田 涙つながりというわけではありませんが、
あの場面、木村さんと北大路さんの目が
どんどん潤んであふれていくという
涙のグラデーションはすごかったですね。
糸井 迫力ありましたねぇ。
永田 滝の映像以外はアナログテレビで
十分だと思っているぼくですが、
さすがにハイビジョンは違うなと思いましたよ。
西本 ‥‥永田さん、鉄道も格別なんですよ。
永田 滝と鉄道の映像以外はアナログテレビで
十分だと思っているぼくですが、
さすがにハイビジョンは違うなと思いましたよ。
糸井 あの目の潤みを永田さんちのテレビで観たら、
「ざっと泣いてるな」ということになりますよね。
永田 そうです。「ざっと泣いてる」です。
吹石さんの頬に涙のあとがあることなんかも
たぶん、わからなかったんじゃないでしょうか。
糸井 つまり、滝と、役者の涙は
ハイビジョンで観るに限ると。
永田 ええ、まさに。
西本 ‥‥糸井さん、鉄道も。
糸井 つまり、滝と、鉄道と、役者の涙は
ハイビジョンで観るに限ると。
永田 ええ、まさに。
西本 まさに、まさに。
糸井 冒頭の15分については、
そんな感じですかね。
永田 いえ、あとひとつ!
片づけておかなきゃいけない問題が
あの場面にはありましたよ。
ふたり なんですか、なんですか。
永田 女将からの手紙の最後の部分が
きちんと映ってたんですよ!
糸井さん、けっきょく最後の部分は
「イノシシ」じゃなかったじゃないですか。
西本 そうだった、そうだった。
糸井 さっき、3人で録画を観てたとき、
手紙の「万俵敬介」という文字が
アップになったところで
永田さんがわざわざ振り返って
ぼくをにらみましたからね。
「イノシシじゃないぞ!」と。
永田 いや、きっと、ぼくだけじゃないですよ。
このページを読んでいる多くのみなさんが、
あの場面で強く突っ込んだはずですよ、
「おい、糸井! イノシシじゃないぞ!」と。
西本 というよりは、あの場面の直前、
「あなたのお父さんは‥‥」のところで
「『イノシシです』と言え!」と
念じたはずですよ。
永田 どっちにしろ、先週の糸井さんの
「イノシシ発言」さえなければ
みんなもっとドラマに集中できたはずです。
糸井 いや、でも、女将の手紙には
「‥‥だと思います」と結んであったわけだからね。
イノシシの可能性もないわけじゃないですよ。
永田 そう、言い逃れすると思ったんだよなぁ。
西本 「万俵敬介だと思います」
というだけだから、父親は敬介じゃなく、
イノシシかもしれないと。なるほど。
永田 納得すんなよ。
糸井 あとさ、「敬介」と呼ばれる
イノシシがいる可能性だって
なきにしもあらずでしょう。
永田 まだ言いますか。
糸井 つまり、雪山のイノシシは、
あの一帯では「主(ぬし)」と呼ばれる
ボスイノシシでさ。
西本 「ボスイノシシ」(笑)。
永田 「ボスイノシシ」(笑)。
糸井 地元の人いわく、
「あのイノシシは万俵家でいえば、
 敬介さんのようなものだね」と。
永田 ていうか、手紙では名字ついてましたから。
「万俵敬介」って、上手な字で、
はっきり書いてありましたから。
西本 いや、だからね、永田さん、
あの山一帯がそもそも、
万俵家のキジ撃ちの場所として有名なんですよ。
いわば、「万俵家の山」なんですよ。
永田 にしもっちゃんは
また、そっちに行っちゃうのかよ。
糸井 「万俵家の山の主」ということで、
イノシシについたあだ名が「万俵敬介」。
永田 ふははははは。
西本 だいたい、池の鯉に「将軍」なんていう
あだ名がついてるくらいですからね。
糸井 そうそう、なくはないよ、
イノシシに「万俵敬介」は。
永田 じゃあ、なに?
女将の手紙の中にある
「万俵敬介だからではないかと思います」は、
「万俵敬介(イノシシ)ではないかと思います」
ということなの?
糸井 そうなんだけど、実際の手紙には
「(イノシシ)」の部分がなかったので、
みんなが、あたふたしてるんだよ。
西本 「敬介なのはわかったけど、
 どっちの敬介なんだ!」と。
永田 ふははははは。
じゃあ、鉄平の、あの
「ぼくの父親は、誰なんですかっ!」も‥‥。
西本 「大介なんですか? 敬介なんですか?」
ということではなく。
糸井 「人間なんですか! イノシシなんですか!」と。
永田 ふははははははは。
西本 だいたいね、自分の祖父の血液型なんて、
わざわざ病院で調べなくても
わかってるでしょう。
糸井 ってことは、鉄平が調べたのは
イノシシの血液型だったんですね。
永田 A型だったのかよ、あのイノシシ。
糸井 意外に几帳面です。
西本 ええ、几帳面です。
永田 ていうか、なんで病院に
あのイノシシのカルテがあるんですか。
糸井 7年前の大ケガで。
西本 あのときはひどかった。
永田 もーーー。あっ! 違うよ!
だって、風呂場の回想シーンに出てくる足は
人間の足じゃないですか!
イノシシが父親なら、あれは
イノシシの足じゃないといけない。
西本 いや、永田さん、それは違う。
あんた、なんにもわかっちゃいないよ。
あのシーンのカメラアングルが
妙に低い位置からなのを覚えてますか?
つまりあれは‥‥‥‥イノシシ目線なんですよ。
糸井 わはははははは!
永田 あはははははは!
糸井 おもしろいなぁ、それ(笑)。
永田 じゃあ、あの場面では、
じいさんがイノシシ連れてるんだ!
糸井 そりゃお母さんも驚くよな。
西本 びっくりしますよ。
風呂入ってたら、素っ裸のじいさんが
イノシシ連れて入ってくるんですから。
永田 非常識すぎるよ、じいさん。
糸井 あと、きっとイノシシは
土足だから汚いよな。
永田 風呂場に土足のイノシシはイヤですね。
西本 だから、お母さんとしては
びっくりするやら、汚いやらで。
糸井 そりゃ、気を失ったりもするわな。
西本 記憶も飛ぶっちゅうもんですよ。
永田 あ、でもさ、そのあとのカットでは、
浴槽の中のお母さんを
上からのぞき込むような視点になるよ?
糸井 それはさ、ほら、イノシシだって
急にお湯に入るとびっくりするじゃない?
だから、じいさんがイノシシを、
こう、肩にかついで‥‥。
西本 わはははははははは!
永田 ふはははははは、くだらない!
糸井 こんな話をずっとしてて、いいんですか?
永田 ダメです。
西本 ダメです。
糸井 ダメですよね。
永田 ええと、なんの話をしてたんだっけ。
西本 冒頭の15分ですよ。
糸井 こんだけしゃべって
まだ15分しか経ってないのか!
ふたり 誰のせいですか!
糸井 ちょっと巻きを入れて行きましょう。
要するに、関係者全員に
「万俵家の亡霊」の謎が明かされたということで
いよいよ材料がそろったわけですね。
大介の明らかなウソも重なって、視聴者的には
「鉄平、がんばれ!」という動機が固まったと。
永田 おっしゃるとおりです。
西本 「鉄平、がんばれ!」です。
糸井 ここからは永田さんが以前に想像したとおり、
サスペンス仕立てになってきましたね。
つまり、ここからどう逆転するのか?
という、筋としての純粋な楽しみ。
永田 法廷へなだれ込んだ展開も
視聴者的にはわかりやすくなりましたよね。
あのままだと「勝つ」という決着を
どうつけるかがよくわからなかったんだけど、
裁判という白黒つける場所に移ったことによって
はっきり決着がつきますから。
西本 以前は、銀平や大亀専務の口を借りて
ゲームっぽく見せてましたが、
ここからは裁判の形をとることによって
ドラマをわかやすく見せていく、と。
糸井 その意味では、法廷ものの映画が
ヒットする理由もわかりますよね。
永田 こんがらがった問題に結果を出す場ですからね。
西本 実際の裁判は長くかかったりするけど、
ドラマとして切り取るぶんにはキャッチーだと。
「ほぼ日」でも、最近、
『それでもボクはやってない』周防監督との対談
「阿曽山大噴火さんと裁判に行こう!」という
裁判コンテンツをふたつやりましたけど、
どちらも人気がありました。
糸井 しかも、このドラマの展開としては、
真実は鉄平側にあるんだけど、
大介に勝つのはそうとうむつかしそうだぞ、
というふうにしてあるわけですよね。
つまり、「どう勝つんだ?」というのが
より強調されていくわけです。
なにせ、大介には大顧問弁護団がいるんでしょうけど、
原告は鉄平と萩原聖人の二人ぼっちですからね。
西本 鉄平の相棒としての弁護士に
萩原聖人さんというのは
ナイスキャスティングでしたね。
永田 そうそう、よかった。
ふたりの関係が「昔からの親友」っていうのも
観る側としては応援しやすいですよね。
頼りないけど、信頼はできるという。
糸井 それについてはひとつ小さな情報がありますよ。
かつて萩原聖人さんと木村くんは
『若者のすべて』というドラマで競演してるんです。
そのときは、主演が萩原聖人だったんですけど。
永田 へええ。
糸井 もう10年以上前かな。
萩原聖人さんを高倉健とするならば
木村くんが鶴田浩二くらいのいい感じで
ふたりが競演しているんですよ。
だからというわけじゃないとは思いますが、
おつなキャスティングだと思いますね。
西本 あのふたりが事務所で
相談しているシーンはよかったですね。
ほんとに昔なじみという感じで。
糸井 けど、あの事務所にかかっていた
「義を見て為さざるは勇無きなり」というのは、
弁護士事務所の標語としてはどうなのかな?
西本 鉄平の仕事場にも
技術がどうのこうのという標語がありましたね。
糸井 あちこちでテーマを掲げがちなドラマですね。
永田 でっかい話をびゅんびゅん飛ばしながら
進めていかなきゃいけないドラマですから、
ああいうところで人物の説明を補足しておく、
ということでしょうか。
西本 みなさん、今日出てきたこの人は、
儲からなくても正義のために戦う弁護士ですよ、
ということですね。
糸井 「綿貫専務(生えぎわ派)」と同じですね。
永田 「(生え抜き派)」です。
西本 ぼくは日銀派ですけどね。
永田 いちいち言う必要もありませんが、
それは「ニシモトタカシ」だ。
糸井 日銀派の三雲頭取は、今回、よかったですね。
永田 よかったですね!
阪神銀行が融資してないことを知ったときは、
目の大きさが倍くらいになってましたよ。
西本 ふだんクールなぶんだけ、
感情の起伏が見えると効果が大きいんですね。
永田 あの「‥‥わたぬきクンっ!」
っていうのが、すごくよかったなぁ。
糸井 うちの西本もああやって叱ってほしいですね。
永田 「‥‥にしもとクンっ!」
糸井 「‥‥にしもとクンっ!」
西本 なんでぼくが怒られるんですか。
糸井 すごく重要な会議とかで
自分の話をはじめたりしたんじゃないですか?
永田 イベントの収支報告のはずが、
いつの間にかFC東京の話になってたりしてね。
糸井 「‥‥にしもとクンっ!」
永田 「‥‥にしもとクンっ!」
西本 じゃあ、一世風靡時代に、
柳葉さんが勝俣さんをたしなめるときは‥‥。
糸井 「‥‥かつまたクンっ!」
永田 「‥‥かつまたクンっ!」
西本 「‥‥かつまたクンっ!」
糸井 脇役つながりでいうと、
西本さんが注目している武田鉄矢さんは
いつも安定してオッケーですね。
西本 ええ。これまでは失礼ながら、
武田鉄矢さんというと「金八先生」しか
イメージがなかったんですが、
このドラマで、すごい役者さんなんだと
あらためて思い知らされました。
今回でいうと、大介から
「弁護士に連絡しろ!」
みたいなことを言われたときに、
ちゃんと小走りするようなところがいいんですよ。
永田 抜け目ないんだけど、誠実なんだよね。
ああいう人たちが脇を固めてることで、
大介という人の強さが強調されている。
いいように使われている銭高専務が
何も言えずに従ってるのもわかりますよ。
西本 西村さんは、ああいう役をやらせるといいですねー。
永田 なにがすごいって、あの、目の死にっぷり!
ハイビジョン放送の情報量と
大画面テレビの解像度をもってしても
目がまったく輝いてません。
糸井 銭高は来週、重要な役どころになりそうですね。
永田 裁判サスペンスものとしては
鍵になってくる人物ですよね。
西本 例の帳簿が、どこでどう使われるかも気になります。
糸井 あと、「千客万来、商売繁盛」の名刺もね。
永田 だから、そうは書いてないんですって。
西本 しかし、一週間経つと、
名刺の裏に本当はどう書いてあったかを
まったく思い出せませんね。
永田 ‥‥ほんとだ。
糸井 じゃあ、もう、いいじゃないか、
「千客万来、商売繁盛」で。
西本 そうっすね。
永田 そうっすねじゃないだろう。
糸井 そういや、ブラウスはどうでしたか。
永田 あ、そうだ、ブラウスやっとこう。
西本 ずいぶん扱いがぞんざいですね。
「長谷川京子さんの衣装の
 微妙な透け具合などを通して
 演出の傾向を探るコーナー」と
きちんと説明してくださいよ。
糸井 そんなにたいしたものじゃないだろ。
西本 さて、今週の長谷川京子さんは、
念願の白透けが復活いたしました!
いや、ファンとしてはうれしいかぎり!
糸井 これのどこが「演出の傾向を探る」なんだ。
永田 「念願の白透け」(笑)。
念願だったのか。
西本 念願ですよ。待望ですよ。
永田 溜飲を下げたと。
西本 下げました、下げました。
下がりっぱなしです。
糸井 「溜飲を下げる」を
そんなふうに使っていいのかな。
西本 むしろ「溜飲を下げる」の
活用例文として採用してほしいくらいです。
永田 「西本が、長谷川京子さんの
 白いブラウスを見て、溜飲を下げる」
西本 これは、例文として正解ですね。
永田 ええ、男子部的には正解です。
糸井 そうなんですか。
西本 問1。「溜飲を下げる」を使って、短い文章を作れ。
永田 「西本が、長谷川京子さんの
 白いブラウスを見て、溜飲を下げる」
西本 正解ですね。
永田 ええ、男子部的には正解です。
糸井 溜飲を下げるかどうかわかりませんが、
長谷川京子さんは
「私は万俵鉄平の妻です!」
と、さかんに言うね。
永田 言いますね。
西本 くり返し言いますね。
糸井 お決まりのセリフを
トレードマークのように使うのもいいですけど、
あそこはもうちょっと別の方向に
揺らせてもよかったかと思いますね。
弱きになった鉄平を叱りとばすとかね。
西本 そう、あの場面、ぼくは
長谷川さんが鉄平を一発ビンタすると
思ったんですよ。
永田 そりゃやりすぎじゃない?
西本 いや、それくらいあってもよかったですよ。
糸井 ブラウスファンとして。
西本 そう。白いブラウスがひらりと揺れてね。
なんならスローモーションですよ。
それも別カットで3回くらい。
糸井 「パァン!」「パァン!」「パァン!」と。
西本 「パァン!」「パァン!」「パァン!」と。
永田 なんでそんな格闘ゲームのKOシーンみたいな
演出にしなきゃいけないんだよ。
糸井 ま、この人はやっぱりそれを言うんだな、
というのも、説得力があっていいですけどね。
西本 「私は万俵鉄平の妻です!」というところから
ブレない人なんだな、ということで。
永田 うん、うん。
事実、ぼくはそんなふうにとらえて観てましたよ。
糸井 じゃあ、もう、ああいうお決まりのセリフは、
経営理念の標語みたいに、
筆で書いて額縁に入れちゃえばいいんじゃないか。
永田 「私は万俵鉄平の妻です!」っていう額縁ですか。
西本 わはははははは。
糸井 もうそれを持って登場すればさ、
視聴者にも親切だろう。
永田 でも両手がふさがっちゃいますよ?
西本 そういう問題ですか。
糸井 じゃあ、背中に背負っちゃうとかさ。
あ、風船に書いて、それが背後に
プカプカ浮いてればいいか。
西本 わはははははは。
永田 それならいいか。
西本 それならいいのか。
糸井 つまり、「(生えぎわ派)」と同じ効果ですよ。
永田 「(生え抜き派)」ですけどね。
西本 ぼくは日銀派ですけどね。
永田 そりゃ「ニシモトタカシ」ですけどね。
糸井 その人物の個性を際だたせるために
くり返し使われるセリフを風船に書いておけば、
途中から見た人もわかりやすいじゃないですか。
永田 じゃあ、銀平の風船には
「兄さんにはとてもかないませんよ」と。
糸井 そうそう(笑)。
西本 山田優さんの風船には
「この家はどうなっているのです?」と。
糸井 そうそう(笑)。
もうさ、番組プレゼントもさ、
原作本をプレゼントするんじゃなくて
それぞれの出演者の吹き出し風船を
プレゼントすればいいと思うんだよ。
永田 そういうおもしろ妄想はさておき、
あの原作本プレゼントのナレーションまで
倍賞千恵子さんにやらせるのは、どうなんですか。
あのしっとりしたトーンで
「発送をもって発表にかえさせていただきます」
とまで言わせることはないでしょう!
糸井 あれはさ、西本みたいな調子のいいADがいてさ、
「倍賞さん、すみません!」
とかお願いしちゃったんだよ、きっと。
西本 本編のナレーション収録のときに、
スタジオのガラスの向こうから
「すんません、倍賞さ〜ん!
 あの、流れでお願いしたいんですけど
 プレゼントのナレーションも
 そのままいいっスか!」と。
糸井 倍賞さんも人がいいから、つい、
「声のトーンは変えない方がいいですよね」
とか言ってね。
「抽選で50名様に(あのトーンで)」と。
西本 「ああ! いいっスね!
 『50名様に』いただきました!
 じゃあ、そのまま、つぎ、
 『発送をもって発表にかえさせていただきます』
 に行きましょうか。
 もう、テスト本番で行きましょう!」
永田 なんて失礼なADだ!
糸井 「‥‥にしもとクンっ!」
永田 「‥‥にしもとクンっ!」
西本 また柳葉さんに怒られちゃったよ。
糸井 あとは、まあ、印象に残った場面でいうと、
津川さんの「まだ大きな石がふたつ足らん」ですよね。
あれですぐに「2億くれ」だと伝わるっていうのは、
そういう世界があるって想像すると愉快ですよね。
通な人たちの奇妙な会話っていうかさ。
永田 あれでほんとに石ふたつ
送っちゃったらおかしいですけどね。
西本 大介に「石をふたつ用意してくれ」と言われて、
武田鉄矢さんが「さっそく手配します」と小走りに。
糸井 で、石を送りつけられた津川さんが、
「にぇーーーー、まいったネ!」と。
永田 わははははは。
津川さんのあの口調って、ほんとにおかしい。
西本 もしくは「石ふたつ」と言われたあの場で大介が
「なるほど、ということは
 2億円ということでよろしいですね?
 確認させていただきますと、
 そちらの口座に振り込まれたあと
 領収書はいかがされますでしょうか?
 収入印紙の代金は2億とは別で
 つけさせていただいたほうが
 よろしいでしょうか?」と、
オトナ語ですらすらと。
永田 大介がオトナ語を使うのはイヤだなあ。
西本 あの顔でオトナ語はギャップがありますね。
糸井 最近、大介のあの険しい顔を見るたびに
荒井先生の似顔絵がよぎって困ってるんだよ。
永田 じゃあ、今週も
荒井先生の大介をご紹介いたしましょう。
「TVウォッチャーの逆襲」その130より。

糸井 わはははははは。
西本 大介をいじるにしても、
どうしてロックを歌うことになるのか‥‥。
永田 そのあたりの常人にはうかがいしれぬ複雑さが
荒井作品の真骨頂です。
糸井 そういえば、大介って、AB型だったんですね。
西本 永田さんと同じですよ。
永田 まあ、そうですけど。
糸井 あと、AB型でいうと、
たしか谷村新司さんがAB型ですね。
永田 どうしてピンポイントに谷村新司さんなんですか。
西本 つまり、万俵大介、谷村新司、永田ソフト、と。
糸井 その3人か。
永田 「その3人か」って言われても。
西本 鉄平トリオならぬ、
ABトリオですね!
永田 してないから。
そんなトリオ、結成してないから。
糸井 いや、ABブラザーズだ!
永田 意味わかんない。
西本 じゃあ、中山ヒデちゃんも
そこに入れちゃいましょう。
糸井 そうするか。
永田 「そうするか」じゃなくて。
あと、中山ヒデちゃんがデビュー当時に
組んでたコンビの名前がABブラザーズだって
説明しないとなにがなんだか‥‥。
西本 つまり、メンバー的には、
万俵大介、谷村新司、永田ソフト、中山秀征と。
糸井 その4人か。
永田 「その4人か」じゃなくて。
ていうかさ、中山ヒデちゃんの血液型は
AB型かどうかわかんないでしょう?
西本 その4人で古着の貸し借りをすると。
永田 合わないから。サイズ合わないから。
糸井 違う。やりとりするのは
古着じゃなくて、血だよ。
4人で輸血をしあうわけだ。
永田 無理だってば。
だって厳密にいうとAB型なのは
オレと谷村さんだけじゃないですか。
大介はAB型だけど、北大路さんはわかんないし。
中山ヒデちゃんは元ABブラザーズっていうだけだし。
糸井 4人でキジ撃ちに行って、
流れ弾が当たったときには
4人で輸血し合うんだ。
永田 無理だから。固まるから。凝固するから。
オレと谷村さん以外、凝固するから。
糸井 こんな話をずっとしてて、いいんですか?
西本 ダメです。
永田 ダメです。
糸井 ダメですよね。
永田 なんの話をしていたか
思い出す気にもなれません。
糸井 つまり、血ですよ!
このドラマは血の物語なんですよ!
万俵家の血をめぐる家族の話なんですよ!
銀平も言ってたじゃないですか、
「家族がお父さんから開放されると思ったのに」と!
西本 おお、戻ってきた!
永田 よくわからないけど、結果オーライ!
糸井 白いブラウスを着た人が
「私はあなたの妻です」と強調するのも、
血統書のない人どうしが
ナイトクラブみたいなところで
ほっぺたをいじったりいじられたりするのも、
万俵家の血のない人たちが
血のまわりで惑う姿なわけですよ。
永田 いいぞ、その調子!
西本 いいぞ、その調子!
糸井 ひいてはそれがドラマの舞台が
昭和43年であるという意味でもあるんです。
平成の現代に血の物語はないでしょう?
家族というものが社会の核として
成立していた時代だからこそ、
このドラマは成立するんです。
総理の甥と縁談がまとまっただけで
一族が安泰だなんて、いまだったら無理でしょう?
永田 あれだけ敵対し合ってるのに、
「子が親を訴えるわけがない」と
みんなが言い合ってたのも
そういう時代背景ならではなんですね。
西本 現代の視線で見ると、
鉄平が訴えるのは自然に思えますからね。
糸井 思えば、『華麗なる一族』の原作が連載された
1970年代のはじめというのは、
家族の神話が崩壊しはじめたころでね、
『ファイブ・イージー・ピーセス』とか、
家族の崩壊をテーマにした作品が
けっこう生まれた時代だったんだよ。
『華麗なる一族』はその潮目を
見事に表しているわけじゃないですか。
血と閨閥にこだわる大介と、家族から出て行く鉄平と。
永田 なるほど。
西本 なるほど。
糸井 いわば、古い時代の血の物語と、
近代の血の物語が対立しているんですよ。
どうですかこのまとめは。
永田 お見事です。
西本 一時はどうなることかと思いました。
糸井 いわば、古い時代の血の物語と、
近代の血の物語が対立しているんですよ。
永田 2回言ってもOKとします。
西本 ああ、そうか、そうか。
「万俵家の亡霊」という物語の元凶も、
それで納得がいきますね。
ようするに、じいさんが、
守るべき血の物語をゆがめちゃったわけだから。
糸井 そういうことですよ。
しかもイノシシまでからんでますから、
種を超えた複雑な血の物語が!
ふたり イノシシの話はもういい!

2007-03-09-FRI