ジョージ |
そうやって、家に来るのもいいけど、
「来られちゃ困る人もいるんじゃないの?」
って訊いたらね、「いいお客さんだな」
と思ったら、必ず訊くんですって。
「もし今度、お忙しいようであれば、
お宅にお伺いするか、
会社にお伺いして
寸法を取らせて頂きましょうか」って。
そのときに、「いや、困る」って言う人は、
多分‥‥どう言うのかな?
‥‥スーツにだけ興味があって、
他の生活との釣り合いが取れてない人だから、
その人にはあんまり、
それからお勧めしないようにするんだって。 |
ノリスケ |
はー! |
つねさん |
すっごい! |
ジョージ |
なぜかと言うと、他のものを切り詰めて、
無理して何かを買っている人というのは、
どこかで、そういう買い物をしている
自分が嫌いになるから、
あんまりお勧めしないようにするんですって。
でも「来ていいよ」と言う人は、
呼んでもいい家に住んでいるんだろうし、
呼んでもいい会社の個室かなにかで
執務をしている人だから、その人には、
どんどん、どんどん、
おねだりをするんだって。
「おねだりをするのが、おもてなしだから」
って。‥‥んで、おねだり、されたのぉ〜。 |
ノリスケ |
あ、そぉ〜? |
つねさん |
プチ自慢? |
ジョージ |
だいぶ自慢!
‥‥でもね、さすがにね、
「会社に行きましょうか」
って言われたときには、
「会社は困ります」って言ったよ。 |
つねさん |
うん。悪行三昧を知られたくなかった。 |
ジョージ |
っていうか、まだ、僕の会社の中での‥‥ |
つねさん |
あ、そうか。 |
ジョージ |
‥‥働き方っていうのは、
ほんとのトップでなくって。 |
ノリスケ |
まだ、ね。 |
ジョージ |
個室も持ってなくて、普通だもの。
で、彼には、
「ごめんなさい。僕は、
仕事をする人間としての贅沢以上の
贅沢をさせてもらってるから」
って言ったら、
逆に、乗ってしまってね。 |
ノリスケ |
うまいこと言うから、感心されちゃった。 |
ジョージ |
そー。‥‥「あ、そうなんですか。
でしたら、もっと遊び心溢れるスーツ、
作らなきゃいけないですね」とかって。
で、「‥‥うっ、ウン!」とかって言って、
また、ちょっと一つドアが開いた、
みたいな感じ。 |
|
ノリスケ |
あーあ。ちょっと、あなたの物欲、
なりを潜めていたじゃない。
そうすると、向こうもちょっと
寂しそうにしたり、するんじゃないの? |
ジョージ |
んでもね、しっかり、
グリーティングカードのやり取りはするし。 |
つねさん |
あ、そうなんだ?
逃げてるわけじゃないのね。 |
ジョージ |
特に、スーツの会社の人は
もう本社に戻ってしまったんで。
で、エルメスの僕の担当のコは、
違うブランドに引き抜かれて行ったのよ。
で、そのブランドっていうのがね‥‥
さ〜、なんだ?‥‥恐ろしい!
カルティエ! うわぁー!‥‥みたいな。
ハイジュエリ〜! ありゃー。石!!
‥‥みたいな感じ。感じなんだけどね、
カルティエの今年のシーズンもね〜、
時計がいいのよ! |
ノリスケ |
今、時計なんだねー、この人、ね。 |
つねさん |
昨日も雑誌見てたね。 |
ジョージ |
時計がすっごい、いいの!
‥‥あれがね、多分ね、日本に
15本ぐらいしか入んないだろうなぁ、
と思うとね、もう一回電話を
かけてみようかなと思うんだけど、
電話かけるとねー。 |
つねさん |
ウフフフ。かけたら、おしまいだね。 |
ノリスケ |
カルティエはねぇ‥‥。また、ねー。 |
ジョージ |
そー。 |
ノリスケ |
でも、カルティエはあんまり、
ムードとして、洋服やなんかは‥‥、
合わないような気がしますけど。 |
ジョージ |
んー。でもカルティエ、結構、
時計、持ってるのよ、僕。 |
ノリスケ |
あ、そうなんだ。 |
つねさん |
‥‥そうだったっけ? |
ジョージ |
あのね、アメリカに行くときって、
‥‥アメリカ人って、ホントに‥‥!! |
ノリスケ |
ハハハ‥‥ |
ジョージ |
アメリカ人、知らないの。
例えば、ロンドンとかパリとかに行って、
いいホテルにチェックインするときに‥‥
ま、ロレックスはどうでもいいわ。
ロレックスはいいホテルに泊まるための
入場券みたいなもんだから‥‥ |
ふたり |
入場券かよ! |
ジョージ |
ひどいこと言ったかしら? |
つねさん |
いーや、別に。 |
ノリスケ |
いいですよ。 |
ジョージ |
つまり、それは特別でも何でもないんだよね。 |
ノリスケ |
“当たり前”なのね。
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