ジョージ |
たまにうちの社員がね、
僕のことで、すごい叱られることがあるの。 |
ノリスケ |
誰から? |
ジョージ |
お客さんから。取引先とか。 |
つねさん |
社長を社長と思ってないとか? |
ジョージ |
そうなの。
何で社長が自分の鞄を持ってるんだとか。
お前ら一緒にいて何で社長の鞄を
持ってやらないんだとか。 |
つねさん |
彼らの思う「社長」には
鞄持ちがいるってことだね。 |
ジョージ |
そう。 |
ノリスケ |
それこそ駅前シリーズよねえ。
それねえ、男女のマナーで言えば、
ホテルでも旦那が先に歩いて
奥さんが後から荷物持ってついてくるのは
どうかと思うけど、
社長の鞄のことを言われるのは
ちょっと困るわね。 |
ジョージ |
でもそういう人がいるんだよ。
それで、逆に言うとね、
社長になったらそういうことを
しなくてすむんだって思ってる人が
いるということなの。 |
ノリスケ |
あらあ。自分で鞄は持たなくていいと。 |
ジョージ |
社長なんだから、自分の荷物を持つより
大切なことをしなきゃいけないだろうって
言う人がいるのよ。 |
ノリスケ |
もっともらしいことをおっしゃるのね。
荷物を持ってる場合じゃないだろと。 |
ジョージ |
社長に荷物を持たせてるような会社は
本当にいい仕事はできないとかって
言うんだよね。 |
ノリスケ |
はあ。勝手なこと言うね。 |
つねさん |
旧態依然とした。 |
ジョージ |
他人はね、勝手なことを言うのよ。
そういうふうな考え方とか
そういうのが当たり前と思ってる社長が
今までうちの会社にいたっていうのも
あれなんだけどね。 |
つねさん |
あははは。ダディ? |
ジョージ |
おもしろいのがね、社員にとっては当然、
創業者なので大切にしないといけないのよ。
だけど、新しい社長が新しい考え方の方に
向かっていくと、そちらの方を
自然に感じ始めるようになるわけよね。 |
ノリスケ |
うん。 |
ジョージ |
そうすると、今まで鞄持ってもらってるのが
当然だった会長の鞄が
どこかに置き去りになってるとか! |
ノリスケ |
あははは。 |
ジョージ |
行方不明になって見つからなくなったとか!
「誰が持ってるんだ」って。えええ〜〜〜っ? |
つねさん |
「会長持ってないんですか?」みたいな。 |
ジョージ |
そうそうそう。「持ってないんですか?」
「何でワシが持たんといかんのや」
みたいな感じのてんやわんやが起きるの! |
ノリスケ |
ほんとに映画ね!
会長自体を変えるのは難しいからねえ。 |
つねさん |
会長は変わんないよね。 |
ジョージ |
それはね、みなさんにお願いしたの。
会長のことをよろしくお願いしますって。 |
ノリスケ |
臨機応変に。お付きも必要だし。
荷物持ちも必要だし車も要るし。 |
つねさん |
秘書もいるし。 |
ノリスケ |
あの常務時代の秘書の
超優秀な女性スタッフはどうしたの? |
ジョージ |
あ、彼女はうちの裏方になったの。
アンダーグラウンドなの。 |
つねさん |
裏番? |
ジョージ |
そういう感じ? |
ノリスケ |
どういうこと?
会社にアンダーグラウンドがあるって
どういうこと? |
ジョージ |
だってほら。 |
つねさん |
くノ一(くのいち)みたいなの? |
ジョージ |
人間って役割を持ってるわけでしょ?
で、会社の公の役割があるわけよ。
例えば僕は社長として一緒に社員と
お食事をしましょうっていう時には、
その役割に応じて例えば部署単位だとか、
部長単位だとかでしか、
集めて食事はできないわけよね。 |
ノリスケ |
うん。 |
ジョージ |
だけど、そういう集まりで食事をする時には
仕事でしかないわけさ。 |
ノリスケ |
うん。 |
ジョージ |
で、飲んでどんなに盛り上がっても
一番最後締めをする時には、
「じゃあ来月の業績がんばりましょうね」
で終わるんだけど。それはそれだけだと
つまんないでしょ? そうじゃなくて
例えば本当に僕のことが好きで
会社にいてくれてる人とか、
あるいはある仕事が大好きで
会社にいてくれてる人たちの
グループもあるわけさ。
部署ではなくてね。 |
ノリスケ |
うんうん。 |
ジョージ |
実はそのグループ、
その人たちが持っている情報とか
ネットワークの方が、
会社の将来のためには大切なのよね。 |
ノリスケ |
ああ、そういう人がいろんな部署に
点在してるわけでしょ? |
ジョージ |
点在してるの。撒きびしのように
撒かれてるわけよね。 |
ノリスケ |
うん。そういうことだね。 |
ジョージ |
で、たまにその撒きびしを知らずに踏んで、
大怪我する子も出るわけよ。
で、そういう裏っ側の、例えば組織でいうと
‥‥どう言うのかな、普通の組織って
繊維みたいなもので、縦糸と横糸じゃない。 |
ノリスケ |
うんうん。 |
ジョージ |
で、どんなにそれを頑丈に織り上げても
裏地がついてないと洋服にならないんだよね。 |
つねさん |
あ、そういうことか。 |
ノリスケ |
うまいことおっしゃる(笑)。 |
つねさん |
ますます弁が立つようになった。 |
ジョージ |
そう。裏地には縦糸も横糸もないのよ。 |
ノリスケ |
化学繊維みたいなね。 |
ジョージ |
でね、うちの会社の
裏地の中心になってるのが例の彼女なの。
今回僕が社長になることによって
彼女は役職から解いたの。 |
ノリスケ |
ほお。 |
ジョージ |
もう自由に野を歩きなさいと。
遊牧民よ。あるいは
地に潜りなさいみたいな感じ? |
つねさん |
彼女がほんとうは水戸黄門なわけね。 |
ジョージ |
そんな感じだね。
助さん格さん持ってるからね、あの女。
カッカッカみたいな感じ。
で、すっごい働きをしてくれていて! |
ノリスケ |
どんなことなさるの? 彼女は。
あんまり具体的に言えないかもしれないけど。 |
ジョージ |
あの部署のあの子とあの子は
ものすごくクサってて、
何でクサってるかっていうと
あの上司が無能だからですよとかって
言ってくれるの。 |
ノリスケ |
ああ、冷静にね。 |
つねさん |
オブザーバーとして。 |
ジョージ |
それを聞いて、そうなのかなと思って
いろんな人にカマかけるの、僕は。
どう? 最近どう? って。
あ、ほんとにそうだったんだっていうと、
もう僕は今、人事権持ってますんで。 |
ノリスケ |
あはははは。 |
ジョージ |
いきなり部署が変わったりとかするの。
それはね、すごくありがたい。 |
つねさん |
しゅげえ。 |
ジョージ |
あとガス抜きもできるしね。 |
ノリスケ |
聞いて聞いて、って。お互いに。 |
ジョージ |
ほんとにきれいに織られた生地であれば、
どんなにテレンテレンになっても
裏地を交換してやれば
新しい洋服になったりするからね。
そういう役割なの。彼女は。
そういうのはちょっと楽しんでやってます。
|
こんどジョージさんの会社に
見に行ってこよう。
来週につづきまーす。 |