ジョージ |
男の臭いのは辛いよね。 |
ノリスケ |
難しいとこなんだよね、これ。 |
ジョージ |
そうなんだよ。で、女の人って
たぶん匂いをずっと使い続けてる人生なんで、
コントロールするのが上手なんでしょうけど、
男ってね、ずーっと真面目に歩んで
やっていた中小企業の経営者が、
50半ばにしていきなりクラブ連れて行かれて
女に狂って、ズンズンいくみたいな感じで
匂いに狂うことがあるのかなあと
思ったりするんだけど。 |
ノリスケ |
不思議。 |
ジョージ |
初めての香水って覚えてる? |
ノリスケ |
覚えてる。 |
つねさん |
自分でつけたってこと? |
ノリスケ |
憧れた匂いが4711(フォーセブンイレブン)。 |
ジョージ |
ポーチュガルでしょ。 |
ノリスケ |
そうそうそうそう。かっこいいじゃない、瓶も。
クラシックで。で、初心者には馴染みやすい
超柑橘系。 |
つねさん |
うん。 |
ノリスケ |
で、若い子がつけても全然おかしくない。
最初はあれでした。 |
ジョージ |
僕、ポーチュガルは割と使ってたことある。
でも途中になって匂いが変わったんだよね。 |
ノリスケ |
あ、そうなんだ。何か急にあれ? っと思って
やめちゃったんだ。そういう理由だったのか。 |
ジョージ |
で、ヨーロッパの人たちって、
基本的にシチュエーションに合わせて
いろんな匂いを使い分けていく方向に向かうから、
基本的に柑橘とフローラルの
匂いだけだったの。
それがアメリカに打って出たんだよ。
アメリカに打って出ると、
アメリカ人って基本的に発情の国民だから。 |
ノリスケ |
ははは。 |
ジョージ |
その中に麝香が混じったの。 |
ノリスケ |
ああ。 |
ジョージ |
それで匂いが変わったの。 |
ノリスケ |
ほんのちょっと入れちゃったんだ。 |
ジョージ |
いいなあ、基本的に発情の国民って
いいかもしれない。 |
ノリスケ |
僕、匂い好きなので、
香水の匂いっていう以上に
匂いというものがわりと好きなので、
鼻づまりの時が悲しいの。 |
ジョージ |
ああ、匂えなくなるとね。 |
ノリスケ |
そう。ちょっと寂しいんだよね。
嫌な匂い、だとか思うのも含めて、
匂ってない状況っていうのが寂しいなあと思って。 |
つねさん |
ああ、そうね。昔あったね、そういう小説。 |
ノリスケ |
そうだっけ? |
つねさん |
スメル男って。あったよ。 |
ノリスケ |
あ、原田宗典さんか。 |
ジョージ |
でも、匂うものと香水は
別のものだっていうのを知らない時代が
ずっと長かったよ。 |
ノリスケ |
「匂うものと香水は別もの」。 |
ジョージ |
昔、男の匂いって整髪料と
アフターシェーブローションしかなかった時代が
長かったから。 |
つねさん |
ああ。 |
ノリスケ |
ああ、床屋さんの匂い? |
ジョージ |
そう。それで資生堂系の男の匂いで、
MG5から始まって。 |
ノリスケ |
ああ。 |
ジョージ |
エロイカ、バルカン、ブラバス。 |
ノリスケ |
あのちょっと苦い。 |
ジョージ |
苦い匂い。 |
ノリスケ |
全部あれだったね。 |
ジョージ |
うん。小学校の時の体育の先生がね、
MG5の匂いがしててね。 |
つねさん |
萌えたの? |
ジョージ |
そう。ちょっとドキッとしたことがあって。
で、自分も使ってみたいわけ。
ところが床屋さんにはMG5が置いてあるのに、
子供には使ってくれないんだよ。 |
ノリスケ |
そりゃそうだ。 |
つねさん |
ああ、そりゃそうだ(笑)。 |
ジョージ |
で、隣のおじさんがそれを
振りかけてもらえるとね、ううううってね。 |
ノリスケ |
いいなあ。お持ち帰りできない!
みたいな気分だね(笑)。 |
ジョージ |
で、中学校くらいの時か、
MG5使ってもらえて、
でも自分がつけると気持ち悪いんだよね、
あれって。 |
ノリスケ |
近いとね。 |
ジョージ |
重苦しーい匂いなんだよ。 |
ノリスケ |
体臭のない少年には、
ただその匂いだけがしちゃうから。 |
つねさん |
ああ、そうか。 |
ジョージ |
そうなのよ。 |
ノリスケ |
強すぎるんだろうね。 |
ジョージ |
だけど、懐かしい匂いだよ。洗練されてない。
だって、MG5の広告ってさあ、
草刈正雄だったんじゃなかったかな?
要は鉄棒運動をしたり、陸上競技をしたり、
汗をかいた人が、その汗の匂いを抑えるイメージ。 |
ノリスケ |
ああ。 |
つねさん |
マンダムがチャールズ・ブロンソン。 |
ノリスケ |
あれ、男っぽい。 |
ジョージ |
で、男臭さから始まって、たぶん男臭さって
けっして悪い匂いではなくて、
マンダムは男臭さをよい香りに転換するための
道具だったのね。
今、あれやったら絶対ダメでしょうね。
今、男臭さの中に価値はないから。 |
ノリスケ |
ああ。 |
ジョージ |
だってみんなが無臭の方に向かっているから。
で、ああ、男臭さの世界なんだって思ってたら、
マルチェロ・マストロヤンニが
バルカンのコマーシャルをやったの。 |
ノリスケ |
マストロヤンニ。イタリア男が。 |
ジョージ |
そう。で、あれ、コクのある男の
枯れた匂いの方向だよね。
で、確かにバルカンを買うと、
ちょっと違うんだよ。
中学生高校生には手が出ない匂いだったりするの。 |
ノリスケ |
無理でしょうね。
バルカンっていう名前もそう、
バルカン半島?
ルーマニアとかあっちの方?
ちょっとわかりにくいイメージよねえ。
「バルカン超特急」とか。 |
つねさん |
ああ、バルカン砲じゃねえのね。 |
ノリスケ |
バルカンほうって何? |
つねさん |
えへへへ。タツノコプロ作品のなかで‥‥
あ、いいです。すみません(笑)。 |
ジョージ |
トレンチコートを着た、
「ひまわり」でシベリアの方に
行ってしまった後の
マルチェロ・マストロヤンニのようなものが、
ちょっとソフトフォーカスの映画の
1シーンのようになってバーってあって。 |
ノリスケ |
ふんふん。 |
ジョージ |
で、最後に「(低い声で)バルカァ〜ン」って
終わりなんだよ。 |
ノリスケ |
「バルカァ〜ン」って‥‥、
そんなにオカマっぽくは
言ってなかったような気もしますけどね。 |
ジョージ |
へへへへへへ。そう。
つねさん、全然知らないでしょ?
興味も何もなかったでしょ? |
つねさん |
うん。ないないない。 |
ノリスケ |
でも、年齢的には覚えてるはずだよ。 |
つねさん |
あ、そりゃ覚えてるけど。
|