ノリスケ |
つねさんはその体育の先生のMG5みたいな
男と匂いの結びついた記憶はない? |
つねさん |
あ、小学校の時はまったく
男に興味なかったんで。はい。
超〜なかったですよっ。 |
ノリスケ |
吐いて捨てるように言われてしまいました(笑)。
つねさんには男の匂いに関する
ヰタ・セクスアリスがないんですね。 |
ジョージ |
ボクは揺るぎなく一貫してこっち側だからね。 |
ノリスケ |
でも匂いと結びついたのは
けっこう後かもしれないな。
たしかに小学校の時には
そんなこと思わなかったよ。 |
つねさん |
ねえ。でしょ? |
ノリスケ |
ジョージさんは早熟だよ。 |
つねさん |
うん。だってもうその頃は、
やってるんだもん。 |
ノリスケ |
やってるって言うな(笑)。 |
ジョージ |
お化粧したいとは、
いっさい思わなかったけど。 |
つねさん |
ああ、まったくないねえ。 |
ジョージ |
お化粧をしてる女性を見て、
何て素敵なんだろうとは思ってた。 |
つねさん |
ああ。 |
ノリスケ |
してる瞬間? |
ジョージ |
そう。 |
ノリスケ |
儀式的な印象? |
ジョージ |
今までのお母さんとは違うお母さんが
目の前ででき上がるんだよ。 |
ノリスケ |
そうなんだよ。人が変わっていって、
それは外に向けて戦いを挑むような。
りりしいんですよね。お化粧してる母の姿って。 |
ジョージ |
特にうち、商売をやってたから、
ほとんどうちのお袋は商売のようなことは
してなかったんだけれど、
すごく大切なお客さまとかやってくると、
和装になって出ていくの。
もうほんとに朝から美容室に行って、
戻ってくると髪の毛ができ上がってて、
そこから徐々に顔ができ上がっていくわけでしょ?
で、着物を着つけて、
最後に着物の帯のところをタンタンと叩いて。 |
ノリスケ |
お太鼓のところをね。 |
ジョージ |
で、シュッシュってやって出ていくの。 |
ノリスケ |
ああ、音。衣擦れの音ね。 |
ジョージ |
ああ、女なんだなあと思ったよ。
で、お手伝いさんが何人かいたんで、
‥‥嫌な世界よね。
出かけていく時にお手伝いさんが香水を振るのよ。
シュッシュッと。 |
ノリスケ |
へえ、あの、パフパフ? |
ジョージ |
そ! パフパフっていうやつ。
それで、この前マリー・アントワネット見ても
そうだったじゃん。 |
つねさん |
ああ。 |
ジョージ |
香水って自分でつけるものじゃなくて、
人に遠くからつけてもらって。 |
ノリスケ |
くぐるみたいに。 |
ジョージ |
そう。ちょうどいいぐらいに。
それ見ててね、銭形平次が行く前に。 |
ノリスケ |
カンカンって。 |
つねさん |
火打石で。 |
ジョージ |
やるような感じだと思ったよ。 |
ノリスケ |
女性の火打石だよね。パフパフは。 |
ジョージ |
それが公の女として香りをまとって
出ていく時のうちのお袋だったんだよ。 |
ノリスケ |
ああ。 |
ジョージ |
それがね、そうじゃなくて親父とお袋2人で
パーティーとかに呼ばれて出ていく機会が
あったりするの。
そうすると和装じゃなくて洋装でしょ?
ぜーんぶ自分で着て、で、緩やかな感じで
一番最後に香水つけるんだけど、
それは指で塗り込めるのよ。 |
ノリスケ |
へえ。 |
つねさん |
へえ。 |
ジョージ |
あるいは、フラスコの上のふたがあるじゃない。
ガラスのふたをキュッキュッてやって、
ふたごと首筋にこうやって
なすりつけるみたいなね。 |
つねさん |
ほお。 |
ジョージ |
ああ、今日は個人。っていうか、
前者は凛々しくって、
後者は色っぽいお母さん。 |
ノリスケ |
ふーん。 |
ジョージ |
でね、その時に僕は匂いものというのは
指で取ってこうやって
耳の後ろとかに塗るものだなあとか
思ったのかもしれない。 |
ノリスケ |
ふーん。 |
ジョージ |
色っぽいもん。エッチだし。
香りを塗り込めるっていう。
まというっていうのとは違うんだよね。
夜の香水はそういうことだよね。 |
ノリスケ |
ああ、そういうことかもしれないね。 |
|
ジョージ |
それで、海外に行って一番最初に買ったのが、
クリスチャン・ディオールのオー・ソバージュ。 |
ノリスケ |
“野蛮な‥‥”。 |
ジョージ |
“野蛮な水”。 |
ノリスケ |
オー・ソバージュって紳士物? |
ジョージ |
紳士物。 |
ノリスケ |
紳士物なんだ。どうでした?
何でオー・ソバージュにしたの? |
ジョージ |
ええと、パリのメゾンが初めて出した
紳士物の香水なんだよ。
それまでなかったんだよ、だから。 |
ノリスケ |
ああ。どんなものかなあと。 |
ジョージ |
男性がつけてもいい香水はあったけど、
ただ男性のためだけに作った香水は
なかったっていうね。
で、アフターシェーブローションはあった。
それまでに。で、オー・ソバージュの
アフターシェーブローションもあって、
でもね、オカマとはいえね、まだ高校2年。 |
ノリスケ |
え? そんな早かったの? |
ジョージ |
高校2年と3年の間くらいかな。
そうすると化粧品屋さんとかデパートに行って
香水を買う行為って‥‥。 |
ノリスケ |
それは敷居が高いよ。 |
つねさん |
高そうだね。 |
ジョージ |
しづらいんだよね。
だけど、アフターシェーブローションください、
っていうのは。 |
ノリスケ |
言えるね。 |
ジョージ |
男の子だから。 |
つねさん |
うん。 |
ジョージ |
で、オー・ソバージュの
アフターシェーブローションを使ってたんだけど、
それはそれで満足してたの。よい匂い。
シトラスフローラルで大好きだしね。
しかもちょっと床屋さんっぽい匂いがして、
それで気に入っとったんだが。 |
ノリスケ |
ふふ。急になんで年寄りっぽい言葉に。 |
つねさん |
たまに出るよね。 |
ジョージ |
それで1回帰ったのよ、日本にね。
それでしばらくして大学に入って
もう1回行って、その時にはちょっと、
まあ、アバンチュールな。 |
ノリスケ |
アバンチュールな滞在を。 |
ジョージ |
当時、クラブを転々として、
ま、ディスコですが。
花のディスコの時代なんですよ。
で、行くとすっごいいい匂いがするの。
自分がいつもつけてたような
匂いのはずなのに、
ものすごいいい匂いがするの。 |
ノリスケ |
うん? うん。 |
ジョージ |
当時向こうではレズビアンの女の子と
いつも一緒にいて、
パーティーとか男女同伴じゃないといけないんで、
彼女と一緒に行ってダンスとかしてると、
彼女からすっごいいい匂いがするんだよね。
で、何使ってるの? って聞いたら
オー・ソバージュを使ってるって。 |
ノリスケ |
へえ。 |
ジョージ |
え? 僕もそうだけど匂いが違うって言ったら、
これはパルファムだからって。 |
ノリスケ |
ああ。 |
ジョージ |
ああ、そうなんだ。
オーデコロンやパルファムは
匂いが違うんだって。 |
ノリスケ |
段階があるから。
アフターシェーブ、シャワーコロン、
オーデコロン、オードトワレ、パルファム。 |
ジョージ |
で、使わせてもらったらやっぱり素敵で。
じゃあ、お土産に買って帰ろうと。
ドキドキしながらオー・ソバージュをね。
相手の人も「アフターシェーブ
ローションですか?」って聞くから、
「いや、パルファムかオーデコロンが欲しい」
って。 |
ノリスケ |
初めての。 |
ジョージ |
そう。 |
ノリスケ |
もう性的なイメージがあるから
買うのもドキドキしちゃうのね。 |
ジョージ |
ほんとドキドキする(笑)。 |
つねさん |
するよね、確かに。 |
ノリスケ |
いけないものを買ってるような気になるんだよね。 |
つねさん |
そうそう。
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