糸井 | テレ朝の番組って、なぜだが 同じ匂いを感じますよね。 それは、ほかの局にも言えることなんだけど‥‥。 つまり、テレ朝の番組をほかの局でやったら 『アメトーーク!』も『ロンドンハーツ』も そうとう違うものになる気がするんです。 |
加地 | そうですね、 局のイメージって、 すごく影響あると思います。 例えば、『ロンドンハーツ』で いろんな企画を考えるとき、 「『ロンハー』っぽくないな」 といって却下することもよくあるんですが、 「これはフジテレビっぽいから」 ということもあります。 |
糸井 | あ、やっぱりそうなんですね。 |
加地 | はい。 フジテレビならおそらくいけるだろうけど、 うちでこの企画をやったら お客さんは戸惑うだろうな、と 想像できるときがあるんです。 |
糸井 | できあがったものが 「チャンネル違う」感じに なっちゃうんですね。 |
加地 | そうです。出演者にも演出側にも 違和感があると思います。 ほんとうにそういう番組を やりたいんだったら、 そのままでは他局に見えてしまうところを どうやってテレビ朝日でやればいいのか、 その部分をかなり 考えなくてはいけないと思います。 |
糸井 | それをちゃんと守ってくれるおかげで、 視聴者からすると、 チャンネルを合わせたときに 「この店に来たなぁ」 という気分を感じることができます。 それによって、それぞれの局が 棲み分けができている部分も ありますよね。 |
加地 | そうですね。 |
糸井 | みんな、テレビや芸能ということになると、 一色に考えちゃうところがありますけど、 映画でも、例えばオーストラリアには、 『クロコダイル・ダンディー』という 違う味を出すものがあるんだし。 |
加地 | そう。そして、インド映画はインド映画。 やっぱり最後に 踊ってもらわないとダメです(笑)。 |
糸井 | そういうことをテレ朝が 芸人さんたちの出演する番組で 守ってきているような‥‥。 |
加地 | そうかもしれないですね。 もちろん、 誰か売れっ子を引っ張ってきて 特番で視聴率取って、という欲も どこかにはあるんでしょうけれども‥‥。 |
糸井 | 出演者の顔ぶれでササッと 視聴率を取ろうということのほうが どちらかというと 自然な流れではあるんでしょう。 だけど、加地さんのような人たちは、 気をつけているんですよね。 だって、それは国際化するだけのことだから。 |
加地 | そうなんです。 やっぱり、パ・リーグはパ・リーグの 盛り上げ方というものがありますから。 |
糸井 | そうだね。 芸人さんたちは、しょっちゅう いろんなメディアの敷居をまたぐから、 そのことを知ってますね。 それぞれのメディアを使い分けられる人は、 いつまでもおもしろいことができます。 関根(勤)さんなんて、ホントに それができる人ですし、 タモリさんだって、 タキシード着て司会する日もあれば、 お昼の顔として画面に映る時間もあるし、 『タモリ倶楽部』の顔もある。 あの『タモリ倶楽部』という番組は、 タモリさんがロケで下町に行ったときに 「俺はタモリだぞ」という顔に見えちゃったら、 もうおしまいですよね。 |
加地 | そうですね。 『タモリ倶楽部』は、番組を取り囲む タレントさんの起用や テーマ設定がとてもうまいんですね。 タモリさんひとりだと すごいオーラが出てしまうので、 そのぶん、小規模な匂いをさせて 中和させている、 何とも言えない妙があります。 |
糸井 | シチュエーションを徹底的に 「ここで大丈夫でしょうか」というところに 設定しているでしょう? これは成り立たないタイトルだろう、 というところを成り立たせるのが 番組としての最後の仕上げですよね。 |
加地 | そのとおりです。 |
(続きます) |