第4回 はたしてぼくらは企画書の競争をしたいだろうか。

糸井 いま、テレビの番組が
要求されてることというのは、
編成の目から見た
「タイトルと簡単なコメント」です。
そこでいいか悪いかを決められてしまうでしょう。
加地 はい。それは
「企画書づら」がいい、という企画です。
糸井 その中でいちばん強いのは
キャスティングの名前です。
だけど、それをやっちゃったら、ね?
加地 もういいや、って感じになりますね。
「この番組、ぜったいおもしろいけど、
 企画書出しても絶対通んないな」
ということが多いんです。
最近、ほんとうに、そう思う。
糸井 だけど、『アメトーーク!』は
企画を通せてますよね。
それはどうして?
加地 いちばん最初は
雨上がり決死隊の勢いのおかげです。
つまり、「次、雨上がりかな?」という、
世間の人気が安定する前のタイミングに
ススッと入ることができたからです。
呼んでくるゲストにしても、
最初は女優さんからスタートしたんですよ。
糸井 ああ、なるほど。
加地 ですからさっき糸井さんがおっしゃった
そのとおりの方法で(笑)、
キャスティングの名前で
企画書を通したんです。
だけど、いまから振り返ると、
そのタイミングしかできなかったです。
もし1〜2年遅れてたら、
雨上がり決死隊の『アメトーーク!』は
できませんでした。
糸井 すばやかったんですね。
加地 すばやかったんです。
雨上がり決死隊のマネージャーも。
糸井 いま、そいつは糸井事務所に
いるんですけどね(笑)、それはおいといて。
加地 おいといて。
でも、すばやかったですよ(笑)。
初期の頃、女優さんがふつうに
トーク番組のゲストとして来てくれたんですが、
雨上がりもぼくらも、
どう広げていいか、
わかんなかったんです。
糸井 それはきっと、女優さんのほうも、
わかんなかったですよねぇ。
加地 はい。だから全員が
「トーク番組ってなんとなく
 こんな感じでやってるんじゃない?」
と、ふわふわしたままで
番組が進行していきました。
糸井 企画を通すための考え方って、
どうしても、必要条件だけを
並べていきがちなんだよね。
だけどそれはほんとうは、
新人の子のやることですから。
加地 枠だけ作っちゃうんですよねぇ。
例えば、梅宮アンナさんと梨花を呼んで
スキャンダルや恋愛について話す企画を
やったんですが、
あまり興味のないスタッフとMCがやってるから、
ぜんぜん盛り上がらず‥‥。
こりゃダメだなと思いました。
糸井 早く芸人さんを呼びたかったんだよね。
加地 そうなんです。
特にMCの雨上がりは。
糸井 芸人さえ呼べば何とかなるって、
みんながうすうす思ってた(笑)。
加地 まったく、そうなんです。
その頃、みんなでご飯食べながら、
「今度誰呼ぶ?」
という話をしました。
そこで出てきたのが、江頭(2:50)さんです。
糸井 うん(笑)。
加地 「エガちゃん、ピンで呼ぶ?」
糸井 はははは。
加地 それで、放映10回目で早々に(笑)、
江頭さんにひとりで
ゲストに出ていただきました。

江頭2:50さん。
糸井 それは、まわりに
「呼んでもいい?」と、
おうかがいする雰囲気になるんですか?
加地 それはもう、ノリです。
「エガちゃんが、ピンで、スーツ着て、
 ちょこんと座ってたらおもしろくない?」
と言ったらすぐにみんな
乗っかってくれました。
ぼくは年齢が蛍原さんと宮迫君のあいだで、
スタッフにも同世代の人が多いせいか、
おもしろがる部分がすごく似てるんです。
制作スタッフも放送作家も
昔からずーっとやっている、気心知れた、
おもしろいことが似ている人たちですから、
あんまり反対意見のようなものは出ない。
それは、遠慮して出ないという
ことではないんです。
糸井 それはホントにいいチームなんですね。
加地 はい。やっぱり、チーム作りって、
すごく大事なんだと思います。
ある意味での「調和」は
大事なんじゃないかなぁ。
糸井 そうでしょうね。
加地 たとえば、ぼくがちょっと
疑問に思っていることは、
ちゃんと問いかければ否定してくれます。
糸井 昔は、チームを強くするのは
競争させることだ、といわれていました。
加地 社内でも競争してるところ、
ありましたね。
糸井 いまでもほとんどの人が
そう思い込んでるんじゃないでしょうか。
“競争させると、ひとりずつの力が強まる。
そして、ほんとうにつらいときには
誰かの力を借りるようにしよう。”
「最後の最後に力を借りる」という
考え方は理想的です。
だけど、当事者にとっては、
その意味は「競争」という
ただそれだけのことになりますよね。
加地 そうかもしれないですね。
糸井 「ほぼ日」でも、競争はないようにしています。
それはぼくが、競争にはいいことがひとつもないと
思っているからです。
だって、そんなことしたら、
みんな「小見出し」で競争をはじめちゃうと
思うんですよ。
加地 ええ。編成に通るための、
「言い方」の競争ですね。
糸井 そうです。企画書の上での競争です。
加地 まさにそれはぼくらにとって、
視聴率という話につながるんです。
5〜600世帯で調査している、
誤差が2〜3%ぐらいあるらしい、
というところで
0.1%を張り合ったりしてるんです。
しかも、他局と比較するだけじゃなくて
局内で勝った、負けた、やってるでしょう?
糸井 めげちゃいますね。
加地 そんなことを求めても
しょうもないだけだな、と
ぼくは思ってるんです。
(続きます)

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2009-10-23-FRI

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