糸井 | いま、テレビの番組が 要求されてることというのは、 編成の目から見た 「タイトルと簡単なコメント」です。 そこでいいか悪いかを決められてしまうでしょう。 |
加地 | はい。それは 「企画書づら」がいい、という企画です。 |
糸井 | その中でいちばん強いのは キャスティングの名前です。 だけど、それをやっちゃったら、ね? |
加地 | もういいや、って感じになりますね。 「この番組、ぜったいおもしろいけど、 企画書出しても絶対通んないな」 ということが多いんです。 最近、ほんとうに、そう思う。 |
糸井 | だけど、『アメトーーク!』は 企画を通せてますよね。 それはどうして? |
加地 | いちばん最初は 雨上がり決死隊の勢いのおかげです。 つまり、「次、雨上がりかな?」という、 世間の人気が安定する前のタイミングに ススッと入ることができたからです。 呼んでくるゲストにしても、 最初は女優さんからスタートしたんですよ。 |
糸井 | ああ、なるほど。 |
加地 | ですからさっき糸井さんがおっしゃった そのとおりの方法で(笑)、 キャスティングの名前で 企画書を通したんです。 だけど、いまから振り返ると、 そのタイミングしかできなかったです。 もし1〜2年遅れてたら、 雨上がり決死隊の『アメトーーク!』は できませんでした。 |
糸井 | すばやかったんですね。 |
加地 | すばやかったんです。 雨上がり決死隊のマネージャーも。 |
糸井 | いま、そいつは糸井事務所に いるんですけどね(笑)、それはおいといて。 |
加地 | おいといて。 でも、すばやかったですよ(笑)。 初期の頃、女優さんがふつうに トーク番組のゲストとして来てくれたんですが、 雨上がりもぼくらも、 どう広げていいか、 わかんなかったんです。 |
糸井 | それはきっと、女優さんのほうも、 わかんなかったですよねぇ。 |
加地 | はい。だから全員が 「トーク番組ってなんとなく こんな感じでやってるんじゃない?」 と、ふわふわしたままで 番組が進行していきました。 |
糸井 | 企画を通すための考え方って、 どうしても、必要条件だけを 並べていきがちなんだよね。 だけどそれはほんとうは、 新人の子のやることですから。 |
加地 | 枠だけ作っちゃうんですよねぇ。 例えば、梅宮アンナさんと梨花を呼んで スキャンダルや恋愛について話す企画を やったんですが、 あまり興味のないスタッフとMCがやってるから、 ぜんぜん盛り上がらず‥‥。 こりゃダメだなと思いました。 |
糸井 | 早く芸人さんを呼びたかったんだよね。 |
加地 | そうなんです。 特にMCの雨上がりは。 |
糸井 | 芸人さえ呼べば何とかなるって、 みんながうすうす思ってた(笑)。 |
加地 | まったく、そうなんです。 その頃、みんなでご飯食べながら、 「今度誰呼ぶ?」 という話をしました。 そこで出てきたのが、江頭(2:50)さんです。 |
糸井 | うん(笑)。 |
加地 | 「エガちゃん、ピンで呼ぶ?」 |
糸井 | はははは。 |
加地 | それで、放映10回目で早々に(笑)、 江頭さんにひとりで ゲストに出ていただきました。 |
糸井 | それは、まわりに 「呼んでもいい?」と、 おうかがいする雰囲気になるんですか? |
加地 | それはもう、ノリです。 「エガちゃんが、ピンで、スーツ着て、 ちょこんと座ってたらおもしろくない?」 と言ったらすぐにみんな 乗っかってくれました。 ぼくは年齢が蛍原さんと宮迫君のあいだで、 スタッフにも同世代の人が多いせいか、 おもしろがる部分がすごく似てるんです。 制作スタッフも放送作家も 昔からずーっとやっている、気心知れた、 おもしろいことが似ている人たちですから、 あんまり反対意見のようなものは出ない。 それは、遠慮して出ないという ことではないんです。 |
糸井 | それはホントにいいチームなんですね。 |
加地 | はい。やっぱり、チーム作りって、 すごく大事なんだと思います。 ある意味での「調和」は 大事なんじゃないかなぁ。 |
糸井 | そうでしょうね。 |
加地 | たとえば、ぼくがちょっと 疑問に思っていることは、 ちゃんと問いかければ否定してくれます。 |
糸井 | 昔は、チームを強くするのは 競争させることだ、といわれていました。 |
加地 | 社内でも競争してるところ、 ありましたね。 |
糸井 | いまでもほとんどの人が そう思い込んでるんじゃないでしょうか。 “競争させると、ひとりずつの力が強まる。 そして、ほんとうにつらいときには 誰かの力を借りるようにしよう。” 「最後の最後に力を借りる」という 考え方は理想的です。 だけど、当事者にとっては、 その意味は「競争」という ただそれだけのことになりますよね。 |
加地 | そうかもしれないですね。 |
糸井 | 「ほぼ日」でも、競争はないようにしています。 それはぼくが、競争にはいいことがひとつもないと 思っているからです。 だって、そんなことしたら、 みんな「小見出し」で競争をはじめちゃうと 思うんですよ。 |
加地 | ええ。編成に通るための、 「言い方」の競争ですね。 |
糸井 | そうです。企画書の上での競争です。 |
加地 | まさにそれはぼくらにとって、 視聴率という話につながるんです。 5〜600世帯で調査している、 誤差が2〜3%ぐらいあるらしい、 というところで 0.1%を張り合ったりしてるんです。 しかも、他局と比較するだけじゃなくて 局内で勝った、負けた、やってるでしょう? |
糸井 | めげちゃいますね。 |
加地 | そんなことを求めても しょうもないだけだな、と ぼくは思ってるんです。 |
(続きます) |