第5回 競争してきた筋肉を使って 協調しろよ、と 今度は言ってるんだ。

糸井 お笑いの芸人さんたちだって、
最近は、お笑いの学校出身者たちが
育ってくるようになってきているから、
おんなじ要素があるんじゃないかな?
加地 そうですね、発想が
点数のようなことになってきちゃってて。
糸井 画面に出られるか出られないか、
どこかで余計に点数稼いだな、
みたいなことについては、競争だととらえてる。
加地 いまの若手の芸人さんたちは
多少その面があるでしょうね。
糸井 それなのに、加地さんは
その人たちをそうじゃないかたちで
使ってるじゃないですか。
加地 はい。
糸井 競争で作ってきた筋肉で
「協調しろよ」と言ってるわけでしょう?
これは、ぼくは
理想的だと思うんだ。
加地 (笑)
糸井 『アメトーーク!』に出てる芸人さんたちは
他の人を褒める力があるんですよ。
加地 ホントのホントは、
悔しいはずですけどね。
糸井 そうですね、悔しさも
上手に表現しながらやってる。
自分以外のよいところを感じて、
それを潰さないで立てるというのは、
自分がそこから何かを得られるということです。
それは、すごく大変なことだと思います。
加地 そうですね‥‥
やっぱり、チームプレイなんですよね。
糸井 すごいですよ、あの劇団。
加地 ははは、そうだ。
『アメトーーク!』は、劇団ですね。
糸井 劇団ですよ。
いつも出てるタイプの芸人さんが
みんなを補ったり走らせたりしてる。
加地 はい、そうですね。
糸井 そこで、雨上がり決死隊の存在です。
彼らは自分たちで、とにかく
仕事し過ぎを防いでますね。
あれは、やれそうでやれないことですよ。
加地 はい。
『アメトーーク!』のいちばんのファンだと
言ってくれている出川哲朗さんが、
まさにそうおっしゃってました。
「『アメトーーク!』が成功したのは
 雨上がりが一歩引いたからだ」
あの人の分析は、
あんまり当たらないんですけど、
それは、当たってます(笑)。

出川哲朗さん
糸井 当たってますね(笑)。
だからみんな、出たくなっちゃう。
いま、『アメトーーク!』と同じような番組が
ほかでもいくつか放送されてると思うんです。
そこでは、芸人さんたちが、番組の中で
ちゃんと助け合ってるのが目につくんですよ。
加地 うん、そうですね。
おもしろいものもある、だけど‥‥
糸井 そうそう、なかには
どこかが違うというか‥‥
それは、何なんだろう。
加地 それはきっと、
ネタや座組みだけパクってる。
本質をきちんと理解せず
仕組みだけ真似てるからではないでしょうか。
糸井 うーん。もしかしたらそれは、
肝心の料理を乗っけてない、
皿だけの状態ということなのかな?
加地 はい。ぼくは、そういうのは
ちょっと違うな、と
思ってるんです。
糸井 加地さんは
「工場を建てて材料を入れると
 石けんができます」
というやり方じゃなくて、
「手作りで」「さーて!」
というタイプなんですね、きっと。
加地 自分でよく例えるんですが、
ぼくは、饅頭職人タイプです。
手作りで一個一個、
ちゃんとやんないと気が済まないんです。
それで儲けようとか、
工場を広げていっぱい売ろうとかいう
気はありません。
視聴率を何%取ったということよりも、
「今日、おもしろかった」
「元気をもらいました」
とBBSで書き込まれてるほうを
どちらかというとめざしている気がします。
糸井 そしてそれは、
うまくいきましたね。
加地 はい、よかったです。
糸井 加地さんご自身も
「いっぱいいっぱい」じゃないかたちで
うまくいったのがよかったね。
こういう番組は
「いっぱいっぱい」が出ちゃったら
きついですよね。
加地 そうですね。
番組を作るときから
そのことは意識しています。
企画会議をする場所は、
最初から、狭い会議室にしたんですよ。
糸井 意識的に?
加地 はい、意識的にです。
狭い会議室で、必ずみんなで
スイーツを食べながら会議します。
ADが「今日はミッドタウンの○○のです」
なんていって、買ってくるんです。
「これ、おいしいね」
「そういえばあれ、おもしろかったね」
なんて言いながら、会議というか雑談というか、
はじめていきます。
例えば「ガンダム芸人」のときの
ツッチー(土田晃之)の話になったとき、誰かが
「そういえばツッチーがこの前
 こんなこと言ってたよ」
なんて言い出します。
そのまま、ツッチーが言った企画の話になって
「あ、1コできちゃったな」
という具合になります。
話がちゃんと流れるように
みんなで和気あいあいやる、
そういう雰囲気作りは大切だと思っています。
糸井 ぼくは、モノポリーというゲームに
夢中になってたことがあるんです。
モノポリーってね、
勝ちたくてしょうがない遊びなんですよ。
加地 はい(笑)。
糸井 モノポリーのプレイ中に
甘いもの食べると「甘くなる」から嫌だ、
用意するなら煎餅とかにしてくれ、って
言ってたの。ホントなんだ(笑)。
だから今、加地さんが
ミーティングにスイーツを、と
おっしゃったのは
ちょっとわかります。
加地 単純にぼくが
甘党だっていうのもあるんですけど(笑)。
糸井 ぼくも甘党なんですけどね(笑)、
甘くなりますよ、ホントに。
甘いものは、生物にとって喜びの塊なんですよ。
甘いものと油を充分に
手に入れられるようになったのって、
ここ30年のことですから。
加地 なるほど、そうですね。
糸井 そんなすごいものが一気に手に入れられたら、
争いごとはやめようじゃない、というふうに
なるでしょ?
加地 そうですね(笑)、かもしんないですね。
糸井 うん。だからそれは
これからもしたほうがいいです。

(続きます)

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2009-10-26-MON

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