糸井 | お笑いの芸人さんたちだって、 最近は、お笑いの学校出身者たちが 育ってくるようになってきているから、 おんなじ要素があるんじゃないかな? |
加地 | そうですね、発想が 点数のようなことになってきちゃってて。 |
糸井 | 画面に出られるか出られないか、 どこかで余計に点数稼いだな、 みたいなことについては、競争だととらえてる。 |
加地 | いまの若手の芸人さんたちは 多少その面があるでしょうね。 |
糸井 | それなのに、加地さんは その人たちをそうじゃないかたちで 使ってるじゃないですか。 |
加地 | はい。 |
糸井 | 競争で作ってきた筋肉で 「協調しろよ」と言ってるわけでしょう? これは、ぼくは 理想的だと思うんだ。 |
加地 | (笑) |
糸井 | 『アメトーーク!』に出てる芸人さんたちは 他の人を褒める力があるんですよ。 |
加地 | ホントのホントは、 悔しいはずですけどね。 |
糸井 | そうですね、悔しさも 上手に表現しながらやってる。 自分以外のよいところを感じて、 それを潰さないで立てるというのは、 自分がそこから何かを得られるということです。 それは、すごく大変なことだと思います。 |
加地 | そうですね‥‥ やっぱり、チームプレイなんですよね。 |
糸井 | すごいですよ、あの劇団。 |
加地 | ははは、そうだ。 『アメトーーク!』は、劇団ですね。 |
糸井 | 劇団ですよ。 いつも出てるタイプの芸人さんが みんなを補ったり走らせたりしてる。 |
加地 | はい、そうですね。 |
糸井 | そこで、雨上がり決死隊の存在です。 彼らは自分たちで、とにかく 仕事し過ぎを防いでますね。 あれは、やれそうでやれないことですよ。 |
加地 | はい。 『アメトーーク!』のいちばんのファンだと 言ってくれている出川哲朗さんが、 まさにそうおっしゃってました。 「『アメトーーク!』が成功したのは 雨上がりが一歩引いたからだ」 あの人の分析は、 あんまり当たらないんですけど、 それは、当たってます(笑)。 |
糸井 | 当たってますね(笑)。 だからみんな、出たくなっちゃう。 いま、『アメトーーク!』と同じような番組が ほかでもいくつか放送されてると思うんです。 そこでは、芸人さんたちが、番組の中で ちゃんと助け合ってるのが目につくんですよ。 |
加地 | うん、そうですね。 おもしろいものもある、だけど‥‥ |
糸井 | そうそう、なかには どこかが違うというか‥‥ それは、何なんだろう。 |
加地 | それはきっと、 ネタや座組みだけパクってる。 本質をきちんと理解せず 仕組みだけ真似てるからではないでしょうか。 |
糸井 | うーん。もしかしたらそれは、 肝心の料理を乗っけてない、 皿だけの状態ということなのかな? |
加地 | はい。ぼくは、そういうのは ちょっと違うな、と 思ってるんです。 |
糸井 | 加地さんは 「工場を建てて材料を入れると 石けんができます」 というやり方じゃなくて、 「手作りで」「さーて!」 というタイプなんですね、きっと。 |
加地 | 自分でよく例えるんですが、 ぼくは、饅頭職人タイプです。 手作りで一個一個、 ちゃんとやんないと気が済まないんです。 それで儲けようとか、 工場を広げていっぱい売ろうとかいう 気はありません。 視聴率を何%取ったということよりも、 「今日、おもしろかった」 「元気をもらいました」 とBBSで書き込まれてるほうを どちらかというとめざしている気がします。 |
糸井 | そしてそれは、 うまくいきましたね。 |
加地 | はい、よかったです。 |
糸井 | 加地さんご自身も 「いっぱいいっぱい」じゃないかたちで うまくいったのがよかったね。 こういう番組は 「いっぱいっぱい」が出ちゃったら きついですよね。 |
加地 | そうですね。 番組を作るときから そのことは意識しています。 企画会議をする場所は、 最初から、狭い会議室にしたんですよ。 |
糸井 | 意識的に? |
加地 | はい、意識的にです。 狭い会議室で、必ずみんなで スイーツを食べながら会議します。 ADが「今日はミッドタウンの○○のです」 なんていって、買ってくるんです。 「これ、おいしいね」 「そういえばあれ、おもしろかったね」 なんて言いながら、会議というか雑談というか、 はじめていきます。 例えば「ガンダム芸人」のときの ツッチー(土田晃之)の話になったとき、誰かが 「そういえばツッチーがこの前 こんなこと言ってたよ」 なんて言い出します。 そのまま、ツッチーが言った企画の話になって 「あ、1コできちゃったな」 という具合になります。 話がちゃんと流れるように みんなで和気あいあいやる、 そういう雰囲気作りは大切だと思っています。 |
糸井 | ぼくは、モノポリーというゲームに 夢中になってたことがあるんです。 モノポリーってね、 勝ちたくてしょうがない遊びなんですよ。 |
加地 | はい(笑)。 |
糸井 | モノポリーのプレイ中に 甘いもの食べると「甘くなる」から嫌だ、 用意するなら煎餅とかにしてくれ、って 言ってたの。ホントなんだ(笑)。 だから今、加地さんが ミーティングにスイーツを、と おっしゃったのは ちょっとわかります。 |
加地 | 単純にぼくが 甘党だっていうのもあるんですけど(笑)。 |
糸井 | ぼくも甘党なんですけどね(笑)、 甘くなりますよ、ホントに。 甘いものは、生物にとって喜びの塊なんですよ。 甘いものと油を充分に 手に入れられるようになったのって、 ここ30年のことですから。 |
加地 | なるほど、そうですね。 |
糸井 | そんなすごいものが一気に手に入れられたら、 争いごとはやめようじゃない、というふうに なるでしょ? |
加地 | そうですね(笑)、かもしんないですね。 |
糸井 | うん。だからそれは これからもしたほうがいいです。 (続きます) |