糸井 | 「ほぼ日」にも、いくつか 投稿もののページがあります。 うまくいった話を 募集してもそんなにメールが来ないんだけど、 失敗した話というのは、そうとう来ます。 |
加地 | はい。負の笑いは、 『アメトーーク!』もけっこう好きです。 「泥の97年」もそうでしたが、 負の笑いはやっぱり鉄板です。 負のことは、言っても嫌味に見えないんですね。 タイトルをつけるときも そのことは、意識します。 |
糸井 | そのあたりの加減を 知ってるか知らないかで 番組がけっこう変わっちゃいますよね。 そういう意味で 失敗したケースとか、ありますか? |
加地 | そうですね‥‥ 周りから何か言われたということでも ないんですけれども、 3年くらい前に『アメトーーク!』で 「ブログ芸人」という企画をやりました。 演者はがんばってくれたんですが、 手前味噌の話になってしまって、 いくら笑いにしていても、 どうしても嫌味に聞こえる部分が 出てしまいました。 やるんだったら 「ブログやってるけどアクセス数ほぼない芸人」 とかでやるべきだったかなぁ。 |
糸井 | なるほどねぇ。 ぼくらからすれば、ぜんぶ おもしろいと思えるんだけど、 「あ、いけね」というものは 加地さんの中にはあるんですね。 |
加地 | あります。 なんとなくおもしろくはなってるけど、 収録の現場で「違うな」と。 |
糸井 | 負け犬ぶったり貧乏ぶったりする 必要はないんだけど 嫌味にはならない、という中なら、 きっと大丈夫なんですよね。 そこはものすごい広さがあるんだと思います。 |
加地 | そうなんです。 嫌みにはならないとはいえ、 糸井さんのおっしゃるとおりで、 「ぶらないほうがいい」んです。 特に『アメトーーク!』で話すような 内容のトークは、実際 身についてないとできません。 つまり、ちゃんと実体験があったり、 その趣味にとても精通している人間が きっちりしゃべれる人間だ、 ということになります。 |
糸井 | これまで最多出場の芸人さんは、 どなたですか? |
加地 | 最近はヒデ(ペナルティ)かなぁ。 ヒデか関根(勤)さんか、ツッチーあたり‥‥。 |
糸井 | ヒデさんのよさも あの番組でよくわかります。 とっても、いいよねぇ。 |
加地 | ヒデは、企画ばっかり送ってくるんです。 |
糸井 | ヒデって、目がいいですよ。 正直な顔してますね。 |
加地 | (笑) |
糸井 | スタジオに、役者としているんじゃない。 素の顔です。 素の顔なんだけど、打たれりゃ打ち返すし。 |
加地 | そうですね。すごく一生懸命で、予習型です。 ヒデは『アメトーーク!』に出たいという気持ちを、 あざとくなく純粋に出してくれるんです。 番組に出ることを喜びに思ってくれていて、 でも、出るからにはちゃんと勉強して 結果を出したいという気持ちが強い。 だからぼくらも気持ちを動かされて、 ヒデに声をかけてしまうんです。 |
糸井 | みんながヒデのことを好きなんだね。 出たくて出てるんだということを テレビに出てる人が言っちゃうと ホントはいけないはずです。 だけど、上手にやるとできる。 |
加地 | いまそれは、違うかたちですが、 いろんな人がやっています。 |
糸井 | そういうことについて、芸人さん同士って ものすごく目ざといし、 ちゃんと拾っていきますね。 ハリセンボンが出てきたときも‥‥。 |
加地 | あれはやっぱり 「ふたり揃えてきた」というのがすごいですね。 奇跡のコンビですもん。 |
糸井 | すごい武器です。 |
加地 | あの見た目に、 近藤さんの頭の回転の速さと、 箕輪の大喜利の強さ。 |
糸井 | だけど、ハリセンボンのあの力が出るまでに ずいぶんかかったでしょう? |
加地 | テレビという場で ほんとうの意味でのよさを出すのは 少しかかったかも知れません。 でも、周りの先輩芸人さんたちが、 特に蛍原さんなんかは、 おもしろいのに気づいてたんですよ、やっぱり。 |
糸井 | それはすばらしいですね。 「こいつら、おもしろいんだよ」と。 |
加地 | ほかの芸人でもそうですが、 地上波の大きなところでは そんなに結果を出していなかったとしても、 たとえば「よしもと無限大CS」やルミネなど、 いろんなところでおもしろくからんでる。 そのからみ方を地上波でやる流れです。 そして、それを観て ちゃんとファンも少しずつついてくる。 |
糸井 | なるほどねぇ。 あのね、いま、 「コンテンツのマルチユース」 ってよく言うでしょ? |
加地 | はい。 |
糸井 | だけどそれは逆で、 クリエイティブのマルチクリエイティブ、 つまり、場が違ったら 全部違うクリエイティブがあるわけです。 お笑いではもう既に、 それをまぜこぜにする仕事が できてるんですね。 |
加地 | そうですね。 |
糸井 | 「ここではおもしろい」ということを 誰かが見てて、 そのおもしろさをこっちに使おうとか、 こっちで持った自信をこっちで使おうとか‥‥ これはすごいヒントだね。 |
加地 | おそらく、糸井さんは 既に思ってらっしゃると思いますけど、 いま、おもしろくないと言われているテレビでも、 おもしろいところは、ちゃんとあります。 それはキー局だけじゃなくて、 ローカルにもあります。 |
糸井 | うん、おもしろいとこ、 どんどんまじってきてるようですね。 |
加地 | テレビ東京もTOKYO MXもいいし、 あとは、名古屋に けっこうおもしろい番組が多いんですよ。 ですから、いまはみんなが いろんな場所に行こうとしています。 |
糸井 | 野球だって、シニアリーグも 独立リーグもありますもんね。 それは、言うなれば、 マルチシチュエーションと言うのかなぁ? |
加地 | そうですね、マルチシチュエーション。 そこで鍛錬したことや自信が、 大舞台で披露できます。 あとは、クチコミはデカいということも 言えると思います。 (続きます) |