第3回 たくさんのイベントと風習と。

糸井 『とびだせ どうぶつの森』は
たぬきちにお金を返すだけのゲームじゃない
というところをもう少し説明してもらえますか。
毛呂 簡単にいうと、最初のローンを返し終わると、
次にローンを組むかどうかは
たぬきちに相談できるんです。
京極 家の増築はここまででいい、
というところで、
やめておくことができます。
糸井 ああ、なるほど。
前は有無を言わせず家を増築して
ローンを組むしかなかったもんね。
じゃ、稼いだお金はどうするんですか?
岩田 公共事業に使うことができます。
糸井 つまり、寄付?
岩田 ええ。公共事業は寄付で成り立っています。
村長は村のどうぶつたちに寄付を募るんですけど、
はっきりいって、どうぶつたちからの
寄付だけでは足りないんですよ(笑)。
毛呂 施設を1個建てるのに
数万ベル、十数万ベル
必要だったりするんですけど‥‥。
京極 どうぶつたちの寄付は、数百ベルとか‥‥。
岩田 で、村長がポケットマネーで出すっていう。
一同 (笑)
糸井 ああ、そうですか(笑)。
京極 友だちの村に遊びに行ったときに、
募金箱があったら、寄付して帰ることもできます。
開発中に実際に起こったいい話があって、
ある村でカブがすごく高騰したとき、
その村にカブを売りに行って儲けた人が帰りに、
「ありがとう、お礼に募金して帰るわ」って。
毛呂 儲けをその村に還元して帰るという。
糸井 ああ、それはいい(笑)。
岩田 あと、カブの話が出たので付け足すと、
「ベストフレンド」という
新しい仕組みをつかうことで、
カブ情報のやりとりが
とてもやりやすくなりました。
毛呂 ベストフレンドという特別な関係になった人とは、
直接その人の村に遊びに行かなくても、
インターネットにつながってさえいれば、
メッセージを送ることができるんですよ。
なので、「うち、いまカブ価あがってるよ」
という情報をベストフレンドの誰かが発信すると、
そのメッセージが画面上にポンと表示されます。
糸井 つまり、携帯とかスマホに
メッセージを送らなくても。
毛呂 相手の3DSがネットにつながっていれば、
メッセージを送れます。
もちろん、カブ情報に限りません。
京極 32人までベストフレンド登録できるので、
ぜひ、みなさんでやってください。
糸井 はーー。
いや、これは、いままで以上に
みんなでわいわい遊ぶゲームになりそうですね。
岩田 日々事件が起こりますし、季節のイベントも、
ものすごい量が仕込んであります。
どういうものがありましたっけ?
京極 ええと‥‥小さいところだと、お盆は、
「きゅうりの馬」や「なすびの牛」が登場します。
糸井 ああ、あの、野菜に爪楊枝を刺してあるやつ(笑)。
京極 大きめのイベントでいうと、
9月3日には「くさの日」というイベントがあります。
園芸店のナマケモノの「レイジ」が
「村の雑草を抜いて、きれいにしましょう」と
急に言い出すイベントで、
よその村でも、雑草抜きを手伝うと、
いろいろアイテムがもらえたりします。
糸井 みんなでとにかく草を抜くんだ。
それは、いい企画だなぁ。
京極 草抜きに積極的に取り組んでもらいたくて。
このイベントがあることで、
「久しぶりに『どうぶつの森』をやったら
 村が雑草だらけで‥‥」みたいな人に
もう一度遊びはじめていただけるきっかけに
なったらいいなと。
糸井 夏は、花火大会もあったよね。
京極 はい、花火大会は今回も
8月の毎週日曜日に開催されます。
あと、今回は、マイデザインをつかって、
オリジナルの花火をあげることもできます。
岩田 だから、ほかの村の花火大会を
見物に行くのもたのしいんですよ。
糸井 いいねぇ‥‥なんか、
ずっとうれしいな、今日は。
一同 (笑)
岩田 あと、季節のイベントでいうと、
じつは海外の風習なんかも仕込んであるんです。
1作目の『どうぶつの森』は
海外で発売されることなんてこれっぽっちも
考えずにつくってたんですけど、
いまは海外でも売られているので。
糸井 あ、そうなんだ。
岩田 はい。ただ、国ごとの風習というのが
ほんとうにいろいろありまして。
たとえば、日本では大晦日に
年越しそばを食べますけど、
そういう風習は国によってまったく違っていて。
京極 スペイン語圏だと、年を越すときには
「12粒のぶどう」を食べるんだそうです。
それを現地の任天堂のスタッフに聞いて
つくろうとするんですけど、
ほかの国の風習だからわからないんですよ。
ぶどうといってもどんなぶどうなのか、
むらさき色のなのか、マスカットみたいなのか、
どんなお皿に入れるのか‥‥。
もう、いちいち調べるしかなくて。
岩田 そうやって、1個ずつつくったんですよ。
糸井 それは、日本版には出てこないんですか。
岩田 出てこないんですが、
たとえば外国の友だちの村に遊びに行って、
そこで外国のイベント専用の
アイテムをもらった場合、
自分の村に持って帰ることができます。
京極 たとえば、北米版だったら、
「グランドホッグデー」という
春の訪れを占う日があって、
そのときにもらえるアイテムがあるんです。
糸井 それを北米版の村でもらって
持って帰ることができるんですね。
毛呂 日本版だけでは手に入らないアイテムが、
10とか、20とか‥‥
もう少しあったかもしれません。
岩田 ちなみに持ち帰ったアイテムは、
自分の村でもきちんとつかえます。
たとえば、海外の友だちが
日本版の村にやってきて「恵方巻き」を買えば
ちゃんと恵方も教えてもらえるので、
自分の村に持って帰ってから、
恵方を向いて食べることもできます。
一同 (笑)
糸井 へぇー(笑)。
そうか、インターネットにつながるんだから
外国の村と行き来することも、
ふつうにできるんだね。
岩田 はい。
フレンドコードを入力し合いさえすれば。
これをやってみておもしろいなぁと思ったのは、
ほんとうに海外の人との
文化の相互理解が進むような気がするんですよ。
考えてみると、風習って、
ほかの国から見るとすごくヘンじゃないですか。
糸井 うん。
岩田 その「ヘンなところ」を理解すること、
違いを認め合えることって、
すごく大事なんじゃないかなって思うんです。
糸井 そうですね。
しかも、それを単なる知識として
詰め込むんじゃなくて、
こうやって、好きなゲームのなかで
特別なイベントとして吸収すれば、
たしかにこれまでにない理解の仕方ができますね。
岩田 そう思うんですよ。
(つづきます)
2012-11-26-MON