マルディ・グラの和知さんの
「ていねいでおいしい野菜」
その4 「卵」「チーズ」「サラミ」を野菜の引き立て役に!

▲くびまきのロケで行った逗子の露店で買った地元の朝どり野菜。あちこちに露店がでている環境は
 うらやましいなあ。東京のスーパーにくらべて安いし元気!

フランス料理の料理人、
マルディ・グラの和知徹さんに教わる野菜のレシピ。
和知さん、じつは今回の取材でじぶんに課したテーマが、
「新鮮な素材、豊かな香り、凝縮された野菜」
ということだったそうです。
凝縮というのはつまり、
「エッセンスを引き出すような調理をすること」。

旅する料理人でもある和知さん、
各国を旅してはその土地の料理を知り、食べ、
そしてご自身の調理にとりいれてきました。
そんななかで「エッセンスを引き出す」というのは、
2000年からスペインや、スペイン語圏の国々を旅をして
考えてきたこと、なんだって!
前に紹介した焼いた野菜や出汁は、
まさしくそういう料理なんですよね。

今回、前半は「野菜だけでこんなに!」というおいしさ。
後半は、「卵」や「チーズ」や「サラミ」などの食材を、
野菜をおいしく食べるための脇役として使うレシピです。
たのしみ、たのしみ!
では、まいりまーす!

▲なんだ、こりゃ? ディップ? ペースト?

「にんにくのスプレッド」です。
和知さん、それにしても使うにんにく、
でっかいですねー。

▲ひとかけが、でかい!

「そうなんです。山梨のにんにくで、
 スガワラブンタさんという方がつくってます」

スガワラブンタさん‥‥。

イラスト にんにく農家の菅原文太の勝手なイメージ。が巨大にんにくをがしっと掴んでこっちに見せてるみたいな

「これを、グツグツ、やわらかくなるまで煮ていきますよ」


【にんにくのスプレッド】

[材料]
・にんにく‥‥まるごと1コ
・牛乳‥‥適量

[つくりかた]
1)にんにくを1片ずつ分けて、それぞれ皮をむきます。
  根元の硬いところは落とします。
2)鍋に入れ、牛乳をひたひたになる量、注ぎます。
3)やわらかくなるまで弱火で煮ます。
  牛乳は、すこし残るくらいです。
4)にんにくをフードプロセッサーにかけて
  とろりとペースト状になればできあがり。
  (あるいは擂鉢で擂ったり、フォークでつぶしても。)

▲牛乳をひたひたに入れます。(工程2)

▲焦さないように注意。このくらいの感じまで煮ます。(工程3)

▲フードプロセッサーは、あると便利!(工程4)

「よく僕たちフレンチの料理人は、
 にんにくは香りが強すぎるということで、
 ミルクで煮てから、ソースに混ぜ込んだり、
 合わせ調味料的に使うことがよくあるんです。
 僕の場合は、にんにくそのものを食べさせる料理も、
 つくったり、しますけれども、
 本来は、そうやって使うことが多いんですよ」

なるほど。イタリアンでも
バーニャカウダなんかは、
にんにくのミルク煮をベースに、
オリーブオイルとアンチョビでととのえますね。
でも、これ、無味。
塩も入れてないですよ。
どういう感じなんだろう‥‥?
と、すこし舐めてみたら、あらまあ、うまい!
にんにくに粘性があるから、
とろりとしていて、ふかみがあって、
塩気がまったくないのに「おいしく」感じました。
和知さん、このスプレッド、
どう使うんでしょう?

「最初につくった『サルササラダ』を使って
 野菜サンドというか、
 野菜ドッグをつくりましょう!」

☆イラスト 赤たまねぎ、トマト、ピーマンを素材のまま

おお、あの、サルササラダ!
トマトと赤たまねぎとピーマンを生のまま
刻んで和えるだけ、塩もなにもなしの、
あのふしぎでおいしいサラダ!
あれを使うんですね。

▲これをつくりまーす!


【野菜ドッグ】

[材料]
・にんにくのスプレッド‥‥適量
・マスタード‥‥適量
・サルササラダ‥‥適量
・ドライトマトのオイル漬け‥‥1~2片
 (なければ、なくてもOKです。)
・サニーレタス‥‥1枚
・パン‥‥ホットドッグ用1本
 (小型の角パンを厚切りにして
  切れ目をいれても)

[つくりかた]
1)パンに切り込みを入れ、軽くトーストします。
  オーブンの余熱で温めてもいいですよ。
2)パンの片面ににんにくのスプレッドを塗ります。
  片面全体にひろがるよう、たっぷりと。
3)洗ってよく水を切ったサニーレタスを、
  もう片面(スプレッドをつけていないほう)に
  のせます。
4)マスタード、そして刻んだドライトマトをのせます。
5)サルササラダをはさんでできあがりです。

▲スプレッドをたっぷり塗ります。(工程2)!

▲サニーレタスにマスタード、刻んだドライトマト。(工程3)

▲サルササラダをはさむ!

▲頬張る。おお、これまたうまい!

「スプレッドがすごくコクを出しているでしょう?
 塩をしていないのに、
 あり余るぐらい、ちゃんと深い味わいになって」

そうなのです。塩気は、マスタードと、ドライトマトだけ。
油は、ドライトマトが吸った油だけ。
なのに、なんだこの満足感は!
この野菜ドッグを支えているのは、
野菜のうま味と香りと歯ごたえです。
それが強すぎないにんにくの香りと重なり、
さらにマスタードとドライトマトがアクセントになって、
シャクシャク、うまうまです。
こんな野菜ドッグ、食べたことがない‥‥!
しかも、塩をしないから、「しんなりしない」。
最後までずっとシャクシャク!

この単品だけでの満足度も高いけれど、
お肉料理と合わせてもいいかもしれないですね。
(たんぱく質もとらないとねー。)
たとえば鶏むね肉のグリルとか、
羊のクミン風味とかと、
この野菜ドッグをセットにしたら、
かなり満足感の高いランチになりそうですよ。


☆イラスト まんがのお肉(骨のついたかたまり)とこの野菜ドッグを想像してぽわーんとなっている武井

さて、つづいてもう1品いきましょう。
葉野菜をたっぷり食べるサラダ。
シーザーサラダといえばふつうはロメインレタスですが、
ちょっとだけ「こってり」な食材も使いますよー。

▲和? いいえ、洋なんですよー。


【赤水菜、小松菜、芥子菜のシーザーサラダ風】

[材料]
・卵黄‥‥1コ分
・白ワインビネガー‥‥少々
・マスタード‥‥大さじ1
・オイル(香りのうすい植物油)‥‥適量
・粉チーズ‥‥大さじ1
・黒こしょう‥‥たっぷり
・サラミ‥‥少々
・赤水菜、小松菜、芥子菜など‥‥適量

[つくりかた]
1)卵黄をボウルに入れます。
2)ビネガー、マスタードを足し、かきまぜ、
  オイルを少しずつ注ぎながら、
  全体がとろりと乳化するまで混ぜていきます。
3)粉チーズ、黒こしょうを加えてさっと混ぜます。
4)赤水菜、小松菜、芥子菜を、水洗いし、
  よく水を切ってから、食べやすい大きさに
  手でちぎります。
5)サラミをおろし金で削り、
  野菜にかけてから、ドレッシングとまぶします。
6)皿に盛ったら、
  さらにサラミを削ってかけてできあがりです。

これ、ちょっとポイントが多いので、
写真多めで説明しますね。

▲卵黄にビネガーとマスタードを加えます。

▲かきまぜながら、オイルを足していきます。泡立て器じゃなくてフォークで大丈夫。

▲このくらいとろりとするまで。

▲粉チーズを加えて。

▲最後に黒こしょう。

和知さん、やっぱりサラダの葉っぱは
包丁を使わず、手でちぎるんですね。

「はい、よく僕らはそのことを
 『サラダを摘む(つむ)』といいます」

なんてステキな言い方。メモメモ。マネします。

「(笑)軸は残して、葉だけを摘みます。
 大きい葉は、繊維にそって、
 自然な感じで小さく摘んでいきます。
 最後に残った軸は、包丁で刻みましょう」

▲葉野菜はていねいに扱いましょう。手でね!

▲軸の部分は包丁で。

そして、野菜とドレッシングの混ぜ方ですが、
ここにプロの技が!

▲ドレッシングをボウルの底に敷いて広げます。。

ボウルに先にドレッシング?
先に野菜かと思っていました!

「そうなんです、野菜にいきなり、
 ドレッシングをかけるんじゃないんです。
 そして、ここに、おろし器で、
 サラミを削って入れます。」

▲サラミを削って使うなんて!! びっくり。

ほんとうのシーザーサラダはカリカリベーコンですが、
このサラダは、サラミを削って使うんですよ。
おもしろいなあ。まるで和惣菜に鰹節をかけるみたいです。

☆イラスト サラミ≒鰹節?

「そうなんですよ、鰹節だと思ってください。
 混ぜるときに少しかけて、
 皿に盛ってからまた少しかけて仕上げます。
 サラミは、冷蔵庫で硬くなっちゃったくらいのほうが
 削るのに、使いやすいですよ。
 それから、粉チーズ。
 塩分をおさえてコクを出すのにいいんです」

そして、手をつかって、やさしく、
野菜とドレッシングをまぜていきます。
なるほど、こうやるのか‥‥たしかに
「ダマ」にならないです。
プロの技おそるべし!

「それから、こうすれば、
 ドレッシングの量を調節し易く、
 少しの量で和えられますよ」

なるほど!!

▲和知さんの手つきの、やさしいこと!

そして盛りつけ。
盛りつけのコツって、なにかありますか?

「サラダは、高く盛りつけると、
 とてもきれいに見えますよ」

▲手を使ってまんなかにこんもりと。

大きいお皿でも、広げずに、真ん中に高く?
ああなるほど、きれいです。
そして最後に、サラミをさらに削ってかけました。

▲仕上げはサラミの粉!

▲うひゃー。しみじみ、うまーい! 感無量! うっとり!

このサラダ、ドレッシングに卵黄や油、
そしてトッピングにサラミまで使っている、
ある意味「ワルい」サラダかも。

「そうですね、いままでどっちかっていうと
 ストイック寄りでしたけどね」

☆イラスト ちょっとワルイ顔でニヤリとするダンディな和知さん

でも、わかりますよ。
あらゆるものは「過ぎたるは及ばざるがごとし」。
食べすぎがいかんのです、食べすぎが。
このくらい満足度の高いものだと、
おなかいっぱい食べるものじゃないですからねー。
前菜にシェアしてちょこっと、
この一皿を数人でシェアして食べる感じですよね。

「しかも、塩味をがんがん足したりせず、
 じんわりコクでひきつけますからね」

▲さっそくつくってみました。野菜は、同じものがなかったので、ふつうの水菜、春菊、白菜です。
 これも、サンドイッチにしたらおいしいんじゃないかなー。

ではまた次回!

いやもう。びっくりですよ。
冒頭の逗子で買ったという朝取り野菜。
「おれは食べて痩せたいのだ」のインスタグラム
ご覧になりました?
ここでは、武井さんのアンチエイジング的食生活を
公開してるんですが、
武井さん、朝取り野菜をこうしちゃってました。

購入した野菜全てを投入したパスタ!量多すぎ!
しかも、トマトはカットせずにまるごと!
せっかくサラダのシリーズを続けてるのに
ここはどう考えてもサラダでしょう!
なんでパスタにしちゃうかなー(涙)
(その空気の読めなさも
 武井さんの魅力のひとつではあるのだが)
ところで、映像は和知さんの
「赤水菜、小松菜、芥子菜のシーザーサラダ風」が
できるまで。ドレッシングもそんなにつかわないんですよ。

2014-10-09-THU