坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第95回 カウンセリング研修に東京に行く。

ほぼにちは。

ミッセイです。

去年、
お坊さんを対象にした、
カウンセラーの養成講座に、行ってみたい!

という、
話を書いたのを、
憶えてますか?

第20回 高野山真言宗スピリチュアルケアワーカー

前回は、

第38回 東京には行けず。

の回で、書いた通り、
人生初の導師としての葬儀が、重なって、
参加することができなかったんですが、
今年は、遂に行ってきましたよっ!

東京は、愛宕の
「真福寺」さんで、開催されました。
オフィス街のビル群の中に、
デーンとおっきい木のトウバが、
建ててありました。



お寺の前で、友達に
携帯で、メールを打っていたら、

「わっ、坊さんが、メールしてる。」

と言われました。

します。

講習会より1日早く、
東京に到着しました。

宮島達男さんの作品を収蔵している、
「東京都現代美術館」
と、
「国会議事堂」
に、行ってみたかったんです。

なぜ、後者に、
行ってみたかったのかは、
自分でも、かなり、謎です。

「ぼうずとかだと、殴られるから、注意しなさい。
 ああいう場所では。」

という、
さらに謎を深める母親のアドバイスと共に、
愛媛を出発しました。

僕は、生まれて何か月かは、
「桜新町」という東京の街に、
住んでいたらしいのですが、
もちろん、記憶にはなくて、
東京に行くのは、すこし、
ワクワクしました。

地下鉄に乗って、
びっくりしたのは、
誰も“しゃべらない”ことです。

僕は、地元でも、

「知らない人にも平気な顔で、話しかける。」

ことで、知られていますが、
電車の中で、
誰も一言も話さないのは、
なんだか、不思議な光景でした。
偶然かな?
別にいいんですが。

「木場駅」という「東京都現代美術館」
の最寄りの駅に向かっている時に、

「話しかけたら、話してくれるのかな?」

と知りたくなった、僕は、
隣のおっちゃんに、話しかけてみました。

江戸っ子弁(とは、言わないか。)
バリバリなイントネーションでした。

「次の次の、駅の名前は、アレ、“きば”って
 読むんですか?」

「ん?
 そー、そー、“きば”ね。」

「おもしろい、地名ですねぇー。
 もともと木材場か、なんかだったのかな。」

「そー、そう、そうだよ。
 今は、違う場所に、移っちゃたけどね。」

「やっぱ、そうなんですか。
 その前の“門前仲町”っていうのも、
 なんか絵が浮かぶ地名ですね。
 なんの“門前”なんだろう?」

「あれはねぇ、八幡さん。
 お祭りの日には、
 屋台が一杯でてね。」

「へー。僕、坊さんなんですけど、
 ウチの寺のルーツは八幡神社なんですよ。
 ふーん。」

「あんた、坊さん?何宗?臨済宗?」

「真言宗ですよ。」

なに真言宗?」

「高野山真言宗。」

「ふ〜ん。
 美術館に行くなら、
 “みつめ通り”を
 駅から、通って行くといいよ。」

「みつめ通り?
 オバケの“三つ目小僧”の?」

「そうだよ、三つ目通り。
 そういや、そうだな。
 はははっ。」

「ははは。おもしろい名前だなぁ。」

と、楽しく話せました。

私語厳禁なのかと、思った。

というわけで、
いよいよ一泊してから、
「カウンセリング研修」に、
参加してきました。

結論から言うと、

「かなり、おもしろいなぁ。」

と、僕は感じました。
いくつかのポイントがあります。

まず、
講習の本筋とは、
関係のない話なのですが、
二人の講師の方(両方、坊さんです。)
の、
“カウンセリング”と“宗教”
のとらえ方が、
けっこう、両極端なんですね。

一人のお坊さんは、
カウンセリングというものを、
バリバリ宗教と結びつけて、
法事の時に、自分はあまり話さずに、
家族の人全員で、亡くなった人について、
話し合う“ワーク”的な事をしたり、
医療の現場で作務衣姿で、
医療チームのミーティングに加わりながら、
実際に患者さんのカウンセリングを、
したりしています。

そして、もう一人のお坊さんは、
カウンセラーとして、
様々な現場に立ち、
かなり、専門的な教育も受けていますが、
“宗教”と“カウンセリング”
を安易に結びつけて考えることの、
危険性みたいなのを、
繰り返し、話されていました。

そして、
その二人がお互いの立場(見解)を、
認めた上で、
はっきりと“相違”を表明し、
笑顔で意見交換している。

これって、
宗教(まぁ、僕は仏教しか行ったことないけれど。)
の“講習会”のような場所では、
すごく貴重だなぁ、って思いました。

なんか、当然のように、
意見が同じであったり、
違う場合は、喧嘩腰みたいな、
ノリ(って言うのもなんですが。)
には、正直、たまに閉口していました。

この雰囲気は、
とてもいいなぁ、と思いました。

で、内容の方も、
音楽療法とか、アロマテラピーとか
お寺に気軽に足を運んでもらえそうな、
カリキュラムもあったりして、
なかなか、いいなぁと思いました。

栄福寺の本堂で、
みんなで、ねっころがって、
音楽、聴いて、
いろんな薬草の匂いをかぐ。
なんて、集まりがあったらいいかもね。

もちろん中心は、
カウンセラーの具体的な、
心構えや、技術の指導なんですが、
こちらも、なかなか、おもしろかったです。

二人でペアになって、
(僕は、おじいさんのお坊さん)
何分も、一切、目を離さない、
で会話をしたり、
グループになって、
実際にみんなの前で、
カウンセリングを体験して、
みんなで批評したりしました。

専門的な“カウンセラー”を、
目指すつもりは、
今はありませんが、
人生の大事な場面に、
触れることの多い、
坊さんの僕にとって、
これからも受講したい、
講座だと思いました。
(単位制になっていて、
 最初の資格を取るのに、
 たしか120単位ぐらい必要なんです。)

そのまま、受け取るんじゃなくて、
自分の物語、価値観にしっかりと、
取り込むのが、重要だと思うけどね。

この講座に参加しているのは、
お坊さんだけではなくて、
普通の大学生とか、
老人ホ−ムの職員さんとか、
看護士さんとか、
それこそ
本職のカンセラーの人とか、
もいて、
その人達と話すのも、楽しかったです。

東京くんだりまで、
「カウンセリング講習」を、
受けにくるんだから、
お坊さんにも、
なかなかおもしろい人が多く、
僕は、ハーレー(バイクですね。)
好きのファンキーなお坊さんと、
(けっこう、歳は、おじいちゃん。
 実は、えらいお坊さんらしい。)
受講生の女の子2人の4人で、
食事会の2次会をキャンセルして、
歩いて東京タワーまで、
“おのぼりさん”
してきました。



目の前一杯に、ひろがる、
たくさんのビルの夜景と、

大晦日に作った、
栄福寺の「光る竹」の、
光景がだぶって見えて、

「両方、宇宙だなー。」

と思いました。

ミッセイ

2003-03-12-WED

BACK
戻る