坊さん。 57番札所24歳住職7転8起の日々。 |
こんにちは。 「ほぼ日」の連載、 「坊さん。」からはじまった、 『ボクは坊さん。』が映画化するお話しを 僕が「ほぼ日」で連載しはじめたきっかけなどを 思い出しながら、 今まで書かせて頂きました。 今日の3回目で、一応、最後になります。 映画の撮影が始まる前、 僕はある相談をスタッフから受けました。 「撮影が始まる時、 通常であれば神主さんがお祓いをしたりするのですが、 今回はどのようにすればいいでしょう?」 僕からすれば、 現代の映画や芸能にかかわる人たちも、 そういったことから始めるんだ‥‥、 と少しうれしく思いました。 そして今回は、 僕の住む栄福寺でもかなりの撮影を行うので、 (その他の撮影も多くが地元今治や高野山で行われました) 栄福寺の本堂で僕が仏さまに祈る「ご祈祷」を 行うことになりました。 「原作者が、まずご祈祷」 って、かなり不思議な映画です。 本堂には役を演じる役者さん、 制作スタッフなどが集結。 お堂の中に入りきれないメンバーは外から拝んでいます。 撮影カメラマン、美術担当、衣装担当、 メイク担当、進行担当、多くの人たちでひとつの作品を、 作りあげるのだと思いました。 撮影中は、 僕の役割はそんなにないと思っていたのですが、 撮影開始前から役者さんに「お経」を読む指導から始まり、 お坊さんの動き所作は、 「わかる人」がまったくいないので、 結局、栄福寺に僕がいる時は、 監督のとなりでモニターをみて、 「それは左手でやってください」 などと声をかけながら、 かなりの時間を現場で過ごしました。 そして舞台作り。 一度指示をすれば皆さん、 プロとして仕事をしてくださいますが、 仏前結婚式などの儀式も、 結局、現場の経験があるのが「僕だけ」ということが、 とても多くスタッフと一緒に場面を作っていきました。 (C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会 それだけ、観る人にとっては、 「観たことのないシーン」の多い映画なのかも知れません。 そんなことを考えていると、 糸井さんがほぼ日での「坊さん。」連載開始の時に、 「みたことがないものが、できる限り描かれていると それだけで、うれしいです」 という意味の言葉をかけてくださったのを、 ふと、思い出しました。 (C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会 *** この映画は、 ぷっと笑える「お坊さんの世界」、 例えば、お坊さんの野球チームの話などに包まれて、 僕の経験した人の「生死」というのも、 大きなテーマになっていると僕は思っています。 坊さんである僕が人をおくる儀式の中で、 実際に語った言葉も映画の中でそのまま 引用されている場面もありました。 15年間、お坊さんをやってきて、 おばあさんのお葬式を拝んだこともあれば、 小さな子供のお葬式を拝んだこともあります。 どんな人であっても、 人が亡くなっていくことには、 ぬぐいされない悲しみがあるのだと痛感します。 それでも多くの場合、 人は産まれてきた以上、“死ぬことができるのだな” そして、そのまわりの人たちも、 すぎてゆく時間の中で、それを受け入れて、 抱きしめることが出来るのだな、と感じることが多いです。 そして坊さんでなくても 人は、人を送ることができる。 もちろん、 それと同時に自分自身や家族友人の生死に対して 強い恐怖を持っている自分もいるわけですが‥‥。 普段、大きな出来事がないと感じることの少ない、 そんなことも、 日本の農村の風景の中で、やわらかく一緒に、 この映画の中で一緒に感じてもらえればな、 なんてふと思います。 (C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会 お坊さんという役割の中で、 僕なりに今まで、 「自分の場所」を作ろうとしてきたことは、 最初にも触れた、 「まっさらから自分の頭で考えようとすること」 と、 「ここにいる人。ここという場所。」 がどういう場所なのか必死に耳をすますこと、 正反対にも見えるような、 そのふたつを混ぜ合わすことで、 少しずつ作ってきたし、 これからもそうしたいなと思います。 そして、出来る限り素直に、 「楽しいか」正直に自分に聞くこと。 もう、本当にそれだけなのかな、という気がしています。 *** 最後に、 もう写真でチラチラと登場されていますが、 映画「ボクは坊さん。」の世界を演じるキャストを 何人かご紹介させてください。 主役は伊藤淳史さん。 (C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会 『チーム・バチスタ』、『海猿』等、 様々な作品に出演されていますが、 お坊さん役がかなりはまっています! 「他の役者さんを引き立てることのできる 特殊能力を持っている」という、 プロデューサーの言葉に膝を打ちました。 ヒロインの山本美月さん。 (C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会 彼女はエキストラをお願いした、 たくさんの独身僧侶に圧倒的な人気を誇り、 人集めをすることの多かった僕は助かりました。 今回の映画で登場する花嫁姿、 妊婦さん役もはじめての経験とのことです。 主人公の幼なじみに溝端淳平さん。 (C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会 こんな格好いいバーテンダーは、 なかなか今治にはいないような気もします! (今治のバーテンダーの皆さんごめんっ) 高野山大学の同級生に濱田岳さん。 (C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会 劇中、だんだん元気がなくなってゆく濱田さんに、 個人的には、感情移入しながら映画を観てしまいました。 (僕にもそういう時期があったので) 母親役に、松田美由紀さん。 しばらく現実の母親が、 「こんにちは。松田美由紀です」と言っていたのが、 どうかと思います。 やわらかくキリッとした雰囲気で映画の雰囲気を 作ってくださいました。 檀家の長老役にイッセー尾形さん。 個人的にもとてもうれしかったです! 映画の中に凛としたおかしみと 余裕、風格、ポップさをもたらしてくださったような 気がしました。 (C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会 その他にも、 みうらじゅんさん原作の映画「色即ぜねれいしょん」 で主役を演じた渡辺大知さんや、 僕も大好きな映画「SRサイタマノラッパー」で、 こちらも主役を演じられた駒木根隆介さんが、 ともに「お坊さん役」で登場されています! (C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会 (C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会 *** もちろん、ほぼ日で書いていた時も、 本になった時も、 「この話が映画になる」 なんて、思いもしませんでしたが、 こういうことってあるんですね〜。 そんな出来事を、 「おもしろいね〜」 と楽しみつつ、 「また、なにか、おもしろいことあるかな」 ということを、お坊さんという役割の中で、 お寺という舞台の中で、 1日、1日過ごせればと思っています。 またどこかでお会いすることがあれば、うれしいです! ミッセイ ←その2へ その4へ→
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2015-09-30-WED
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