糸井 |
もう構図のことは訊かないつもりですが、
それでも「何それ」と言いたくなりますね。
こういうことをよく思いつきますねぇ。 |
横尾 |
構図が好きだね、糸井さんは。
|
糸井 |
この絵は、Y字路も、お風呂も入って、
三島さんも入ってる(笑)。
|
横尾 |
いろいろ、入ってますよ。
全部入ってる。 |
糸井 |
深沢七郎さんも
ギター弾いてますね。
|
横尾 |
だって、石和だから。 |
ほぼ日 |
左奥に「種まく人」までいます。
|
横尾 |
だって、それも山梨だもん。 |
塚田 |
(学芸員の塚田さん)
「種まく人」は山梨県立美術館収蔵作品です。 |
横尾 |
ぼくは、無駄なものは
何ひとつ描いておりません。
無意識はありません。 |
一同 |
(笑) |
糸井 |
三島さんって、いろんなふうに語られるけど、
みんなに好かれてますね。 |
横尾 |
結局、そうでしょう。
冷やかしてる人も含めて、
みんな好きなんですよ。 |
糸井 |
吉本隆明さんもそうだけど、
みんななんだか、
三島さんを丁寧に扱うんですよ。 |
横尾 |
ぼくも丁寧に扱われたいね。
|
糸井 |
川と船の絵は、シリーズで
いくつかありますね。
この絵は、3人の女性の描き方が
すべて違いますよ。
見事だなぁ。
いろんな描法を混ぜるというのは、
本当にたのしいですね。
|
横尾 |
この辺のやつ、ちょっと採点してよ。 |
塚田 |
お近くに寄って、ご覧ください。 |
糸井 |
どれどれ‥‥うはははははは、
「努力を要す」とか、
絵に書いてあります。
「よくできました」
「たいへんよくできました」
|
横尾 |
すでに、やってあるわけよ。 |
糸井 |
どちらかというと「努力を要す」だらけですね。
「努力を要す」だけでなく、
バッテンまでつけられてるところもありますよ。 |
横尾 |
もうね、他人に批評されたくなかったんです。
ここは、どう見ても
中途半端でしょう。
完成はしてないし、投げやりっぽいし、
何が言いたいのか、わかんない。
それが批判の対象になるから、
その前に自分でやっておきました。
まったく、人は余計なこと言うからね。 |
糸井 |
「うるさい」と。 |
横尾 |
わかってんだから。
自分で全部、
ちゃんと自分批評してるんだから。
|
糸井 |
あ、川のY字路もありますね。
‥‥このソフトクリーム、
先がちゃんと穴になってます。
ソフトクリームの看板の先が
穴だと知ってる人は、
そんなにいないでしょうけど、
横尾さんは、ご存知でしたね。
|
横尾 |
実際そうですからね。 |
ほぼ日 |
はじめて知りました。 |
糸井 |
釘で掛けられたりできるように
なってるんですよね。 |
横尾 |
穴が開いてると、イヤリングにもなるし、
ネックレスにもなるし。 |
塚田 |
そろそろ最後のほうの作品に
なってきましたよ。 |
横尾 |
この絵なんて、
どこもすごくないところが
すごいでしょう。 |
塚田 |
私は最初、これをアトリエで見たときに
誰の絵かわかりませんでした。 |
糸井 |
この、付着してる、
キラキラしたものは
何なんですかね。
|
横尾 |
‥‥いま、糸井さんが「付着」って言ったけどさ、
この絵だと、ぼくは
そこが好きなんですよ。 |
糸井 |
ねぇ。だって、そうでしょう。
この絵だと、そうでしょう。 |
横尾 |
それがなきゃ、
この絵、なんてことないんですよ。 |
糸井 |
女の人は、もっと色とりどりに
付着してますね。 |
横尾 |
そういう役割の人なのよ。 |
糸井 |
これは、光とも言い切れないんだよなぁ、
気になりますね。 |
横尾 |
「付着してる」というところを指摘する
鑑賞者って、怖いよね。
こちらを見透かされてる感じがするんだよ。
ふつうだったら、疑問を持たないで
「そういうもんだ」と思って、見ると思うわけ。
「これ何だ?」と言い出すのは、
糸井さんと、ガキだけかも。 |
糸井 |
ガキは言いますね。 |
横尾 |
ガキに「この絵はどこがおもしろい?」
って訊いたら、たぶん、
いま糸井さんが言ったところに、
興味を持つと思うのね。
怖いなぁ、糸井さんは、ホントに。
|
糸井 |
これで、おしまいですね。
いやぁ〜楽しかった!
なんやかんや言って
とばし気味に見ましたけれども、
まともに見たら、すっごい時間かかりますね。 |
塚田 |
急いで見ても、1時間半ですから。 |
糸井 |
本当に、おもしろかったです。
世田谷美術館での会期はあと少しだけど、
みんなに見てほしいです。
ありがとうございました。 |
|
(おしまい)
*
これで「冒険王、横尾忠則。」の連載は終わりです。
ご愛読、ありがとうございました。
ご感想などを、どうぞ
postman@1101.comまでお寄せください。 |