横尾 |
この絵にはもともと
バンザイしている裸の女の人を
描いてたんですけど、
それを消しちゃったんです。
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塚田 |
(学芸員の塚田さん)
きれいに描かれてたんですよ。
いまでも、うっすら見えますけれども。 |
横尾 |
「私も、ああして裸になって、
むこう向いてバンザーイ、とやってみたいな」
って言う女の人がいてさ。消しちゃった。
そんな不埒なこと考えたらいけません。
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糸井 |
ははは。 |
横尾 |
でも、なぞれば出てきますよ。 |
糸井 |
横尾さんの絵は、いろんな意味で
人に影響を与えられる絵だ、ということですよ。
注目が集まるし、放っておけないんです。
それは、すごいことだし、きっと、
東山魁夷だって、そういうことを
言われたがったかもしれないですよ。 |
横尾 |
言われなくったって、
いっぱい人が入るよ、
東山魁夷の展覧会は。
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一同 |
(笑) |
横尾 |
東山魁夷と二人展をやったら
人が入るだろうね。
東山魁夷の絵の上に、
バンザイしてる絵のお姉さんを
ぼくが描いていったりして。 |
糸井 |
しかも、あとで消す(笑)。 |
横尾 |
そういえば、草津に温泉旅行に行ったとき、
温泉旅館の主人が
東山先生の名の入った芳名録を出してきました。
ぼくにも「書いてくれ」って言うわけ。
その芳名録には、いろんな人が
名前を書いていたんですが、
東山魁夷の隣のページだけが
白いままだったんです。
あとのページはみんな埋まってるのに、
恐れ多くて、誰も東山魁夷の隣に書けないんです。
東山先生のページには
「一本の道 東山魁夷 何年何月何日」
って書いてあるわけ。
ぼくは、その横にね、
「Y字の道 横尾忠則‥‥」
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糸井 |
(笑)やった。 |
横尾 |
東山魁夷と同じ書体で書いたの。
ぼく、模写うまいからさ。 |
糸井 |
おもしろすぎます。 |
横尾 |
たぶん、知らない人は、
そのページを見て
「あ、東山先生と横尾先生、おふたりで‥‥」 |
糸井 |
はははは。 |
横尾 |
でも、よく見たら
日にちがぜんぜん違うんだけどね。 |
糸井 |
ぼくだったら
もっと悪ふざけして、
日付まで揃えちゃったりするかも。
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横尾 |
いやぁ、ぼくは、そこまで
天才じゃないからね。
モラルもあるしねぇ。 |
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(続きます) |