冒険王、 横尾忠則。   横尾さんの展覧会で、横尾さんにお会いしました。 「‥‥あなたという人は!」と 何度も叫びそうになりました。すごいです。 さぁ、みなさん。ご本人といっしょに 横尾忠則さんのすばらしい冒険の記録を 見て回りましょう。
011 おふたりで‥‥。
 
横尾 この絵にはもともと
バンザイしている裸の女の人を
描いてたんですけど、
それを消しちゃったんです。

塚田 (学芸員の塚田さん)
きれいに描かれてたんですよ。
いまでも、うっすら見えますけれども。
横尾 「私も、ああして裸になって、
 むこう向いてバンザーイ、とやってみたいな」
って言う女の人がいてさ。消しちゃった。
そんな不埒なこと考えたらいけません。

糸井 ははは。
横尾 でも、なぞれば出てきますよ。
糸井 横尾さんの絵は、いろんな意味で
人に影響を与えられる絵だ、ということですよ。
注目が集まるし、放っておけないんです。
それは、すごいことだし、きっと、
東山魁夷だって、そういうことを
言われたがったかもしれないですよ。
横尾 言われなくったって、
いっぱい人が入るよ、
東山魁夷の展覧会は。

一同 (笑)
横尾 東山魁夷と二人展をやったら
人が入るだろうね。
東山魁夷の絵の上に、
バンザイしてる絵のお姉さんを
ぼくが描いていったりして。
糸井 しかも、あとで消す(笑)。
横尾 そういえば、草津に温泉旅行に行ったとき、
温泉旅館の主人が
東山先生の名の入った芳名録を出してきました。
ぼくにも「書いてくれ」って言うわけ。
その芳名録には、いろんな人が
名前を書いていたんですが、
東山魁夷の隣のページだけが
白いままだったんです。
あとのページはみんな埋まってるのに、
恐れ多くて、誰も東山魁夷の隣に書けないんです。
東山先生のページには
「一本の道 東山魁夷 何年何月何日」
って書いてあるわけ。
ぼくは、その横にね、
「Y字の道 横尾忠則‥‥」

糸井 (笑)やった。
横尾 東山魁夷と同じ書体で書いたの。
ぼく、模写うまいからさ。
糸井 おもしろすぎます。
横尾 たぶん、知らない人は、
そのページを見て
「あ、東山先生と横尾先生、おふたりで‥‥」
糸井 はははは。
横尾 でも、よく見たら
日にちがぜんぜん違うんだけどね。
糸井 ぼくだったら
もっと悪ふざけして、
日付まで揃えちゃったりするかも。

横尾 いやぁ、ぼくは、そこまで
天才じゃないからね。
モラルもあるしねぇ。
  (続きます)
 
2008-06-08-SUN
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