糸井 |
横尾さんには、同じモチーフの
反復の作品がたくさんありますが、
これはあるときから、はじめたんですか。
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横尾 |
いやぁ、これはねぇ、
もう少しうまく描けるんじゃないか、とか
そういうことです。 |
糸井 |
そこも技術面なんですね。 |
横尾 |
だけど、やってる間に、
反復の意味が
だんだんだんだん難解になってきた。
ま、そういうことは、
見る人には関係ないけどね。 |
糸井 |
自分が出したものを繰り返していくと、
自他の区別がなくなってくることがあるから、
それに耐えられるのかなぁ、と
ぼくなんかは思うんです。 |
横尾 |
うーん、そうなんだよね。
だから、自分の模写はできないです。
模写は、ちょっと、耐えられない。
もしもぼくが贋作作家だったら、
そんなもん、耐えられないなんて言ってたら
ダメだけどね。
反復ということでいえば、ぼくは
舞台のことを考えたことがあります。
舞台は毎日が反復でしょ?
でも、そのときの生理や気分などで、
少しずつ変わっていきますから、
まったく同じものはコピーできません。
初日、中日、千秋楽で
「もっとうまくやっていこう」とか、
「いろいろ変えようとか」とか、
いろんな気持ちが出てくると思います。
ぼくの反復は、あれに近いんじゃないかなぁ。
そういう意味では、止められないよ。
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糸井 |
今後も、増えていく可能性は? |
横尾 |
それはおおいにあります。
Y字路なんかも、
ある絵で描いた町並みを
別の絵の中に移植したりして反復します。
そのまま描くっていうのは
なんだか自然主義的で、
ちょっと抵抗したくなるわけ。 |
糸井 |
サビだけ変えて歌う、
みたいなことをやってるんですね。 |
横尾 |
うまいことおっしゃいますね、
言葉の天才は。 |
一同 |
(笑)
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糸井 |
Y字路は、横尾さんのモチーフとしては
いちばん長いんじゃないですか? |
横尾 |
あれは、終生続くかもしれない。
そんなこと、まだ決めたくないけど、
でも、そうかもしれない。
あ、糸井さん、これこれ、
これは日経に連載してる挿絵です。
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糸井 |
瀬戸内寂聴さんの「奇縁まんだら」ですね。 |
横尾 |
いまも継続中だから、
期間中に展示が4点増える予定です。 |
糸井 |
ここの絵はみんな、
実在の人物というわけですね。
どうりでほかの絵とは雰囲気が違うなぁ。 |
横尾 |
文豪とか、文化人とか、
死んだ人たちばかりですけどね。
速いよ、描くのは。
せいぜい長くて30分。 |
塚田 |
(学芸員の塚田さん)
左手で描かれた絵もあるんですよ。 |
横尾 |
たまたま猫に噛まれて
右手を怪我したときね。
その回は、松本清張さんでした。
2週間にわたって、
右手が動かなかったんだけど、
清張さんは左手向きの人だよ。
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糸井 |
ホントだ。清張さんだけ
ちょこっと、タッチが違いますね。
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横尾 |
そうなの。
ちょっと、蟹みたいな顔になっちゃって。 |
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(続きます) |