糸井 |
こっちの部屋もすごいですね。
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横尾 |
この部屋は、あんまり好きじゃないんだよ。
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塚田 |
(学芸員の塚田さん)
ここは、物議を醸す部屋なんです‥‥。 |
横尾 |
この部屋の展示については、
学芸員と対決して、ぼくが負けたの。
「こんなヘタな絵、見せないでちょうだい」
って、ぼくは言ったんですけどね。 |
糸井 |
これはつまり、横尾さんが実際に見た夢を
日記代わりに描いたということでしょうか。
ぼくらは、こういうのは
おもしろいんだけどなぁ(笑)。 |
横尾 |
ウケる理由はさ、
あまりにもヘタクソだから自分でも描ける
という意味で、
親近感を持つからなんじゃないの? |
糸井 |
横尾さんは、
出したくないのかもしれないですけど。 |
横尾 |
これは、絵として成立してないんですよ。
だって、夢のシーンだからさ。
何か別のものを加えたり、
取り除いたりしたいけども、
できるだけ夢に忠実にしようと思ってるから。
だから、自分の作品とは言えないんじゃないかな。
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塚田 |
作品というより記録でしょうか。 |
横尾 |
うーん‥‥。記憶のみかな。 |
糸井 |
とにかくイヤなんですね(笑)。 |
横尾 |
そう、とにかく、この場を逃げる。
この部屋を出るしかしょうがない。 |
糸井 |
たまには学芸員の言うことも
聞くべきですよ。 |
塚田 |
いまでも、文句を言われるんです(笑)。
ここに来るたびに、私は、
文句を言われるんです。 |
糸井 |
でも、今回はこういう展示もあることで、
なんだかすごく親しくなった気がしますよ。 |
横尾 |
あ、そうですか。
こんな長いつきあいの中でやっと、
わかっていただいた。
ありがとうございます。 |
一同 |
(笑) |
糸井 |
いやぁ、何もわかってなかった、ぼくはいつでも。
横尾さんは、本当におもしろい方です。
もしも違う時代に生まれてたら、
何をしてたでしょうね。
こういう人を野放しにしといたら、
きっとどの時代でも困るよね。 |
一同 |
(笑)
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横尾 |
このあたりの絵を描いてから
もう何年経ったのかなぁ。 |
塚田 |
「薔薇のつぼみと薔薇の関係」は
1988年ですから、
ちょうど20年前ですね。 |
糸井 |
横尾さん、まだ、
技術は欲しいですか。
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横尾 |
ぼくはすべて、技術がテーマなんですよ。
もう、技術しかないんです。
イメージなんか、どうでもいいわけ。
やっぱり、絵画は技術です。
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糸井 |
つまり、イメージについては、
やりたいことはすでにあるわけだから。 |
横尾 |
イメージは何でもいい。
もう、そこにあるもの、
出会ったもので、いいんじゃないかな。 |
糸井 |
なるほど。 |
横尾 |
みんな、イメージを問題にするね。
「まずイメージを」なんて、
そんなの言われたって、困るんだよね。
「なんでお堀で泳いでるの」と言われたって、
困るんだよ。
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糸井 |
なんらかのメッセージがあるのか、とか。 |
横尾 |
これ、犬山城なんだよ。
というより、ぼくはこれをずーっと
犬山城だと思ってたんだけど、
先月、犬山城に行ったとき
だいぶ違っていたことがわかりました。 |
糸井 |
だいぶ違う? |
横尾 |
犬山城の下は
お堀じゃなくて、川なのよ。 |
糸井 |
全然違うんですね。 |
一同 |
(笑) |
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(続きます) |