冒険王、 横尾忠則。   横尾さんの展覧会で、横尾さんにお会いしました。 「‥‥あなたという人は!」と 何度も叫びそうになりました。すごいです。 さぁ、みなさん。ご本人といっしょに 横尾忠則さんのすばらしい冒険の記録を 見て回りましょう。
009 絵画は技術である。
 
糸井 こっちの部屋もすごいですね。

横尾 この部屋は、あんまり好きじゃないんだよ。

塚田 (学芸員の塚田さん)
ここは、物議を醸す部屋なんです‥‥。
横尾 この部屋の展示については、
学芸員と対決して、ぼくが負けたの。
「こんなヘタな絵、見せないでちょうだい」
って、ぼくは言ったんですけどね。
糸井 これはつまり、横尾さんが実際に見た夢を
日記代わりに描いたということでしょうか。
ぼくらは、こういうのは
おもしろいんだけどなぁ(笑)。
横尾 ウケる理由はさ、
あまりにもヘタクソだから自分でも描ける
という意味で、
親近感を持つからなんじゃないの?
糸井 横尾さんは、
出したくないのかもしれないですけど。
横尾 これは、絵として成立してないんですよ。
だって、夢のシーンだからさ。
何か別のものを加えたり、
取り除いたりしたいけども、
できるだけ夢に忠実にしようと思ってるから。
だから、自分の作品とは言えないんじゃないかな。


塚田 作品というより記録でしょうか。
横尾 うーん‥‥。記憶のみかな。
糸井 とにかくイヤなんですね(笑)。
横尾 そう、とにかく、この場を逃げる。
この部屋を出るしかしょうがない。
糸井 たまには学芸員の言うことも
聞くべきですよ。
塚田 いまでも、文句を言われるんです(笑)。
ここに来るたびに、私は、
文句を言われるんです。
糸井 でも、今回はこういう展示もあることで、
なんだかすごく親しくなった気がしますよ。
横尾 あ、そうですか。
こんな長いつきあいの中でやっと、
わかっていただいた。
ありがとうございます。
一同 (笑)
糸井 いやぁ、何もわかってなかった、ぼくはいつでも。
横尾さんは、本当におもしろい方です。
もしも違う時代に生まれてたら、
何をしてたでしょうね。
こういう人を野放しにしといたら、
きっとどの時代でも困るよね。
一同 (笑)

横尾 このあたりの絵を描いてから
もう何年経ったのかなぁ。
塚田 「薔薇のつぼみと薔薇の関係」は
1988年ですから、
ちょうど20年前ですね。
糸井 横尾さん、まだ、
技術は欲しいですか。

横尾 ぼくはすべて、技術がテーマなんですよ。
もう、技術しかないんです。
イメージなんか、どうでもいいわけ。
やっぱり、絵画は技術です。

糸井 つまり、イメージについては、
やりたいことはすでにあるわけだから。
横尾 イメージは何でもいい。
もう、そこにあるもの、
出会ったもので、いいんじゃないかな。
糸井 なるほど。
横尾 みんな、イメージを問題にするね。
「まずイメージを」なんて、
そんなの言われたって、困るんだよね。
「なんでお堀で泳いでるの」と言われたって、
困るんだよ。


糸井 なんらかのメッセージがあるのか、とか。
横尾 これ、犬山城なんだよ。
というより、ぼくはこれをずーっと
犬山城だと思ってたんだけど、
先月、犬山城に行ったとき
だいぶ違っていたことがわかりました。
糸井 だいぶ違う?
横尾 犬山城の下は
お堀じゃなくて、川なのよ。
糸井 全然違うんですね。
一同 (笑)
  (続きます)
 
2008-06-06-FRI
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