冒険王、 横尾忠則。   横尾さんの展覧会で、横尾さんにお会いしました。 「‥‥あなたという人は!」と 何度も叫びそうになりました。すごいです。 さぁ、みなさん。ご本人といっしょに 横尾忠則さんのすばらしい冒険の記録を 見て回りましょう。
008 数百年後に必ずいる人。
 
糸井 これはすごいものを見ちゃった気がするよ。
着物の女性を?

塚田 (世田谷美術館の学芸員の塚田さん)
この写真をもとにポスターを依頼されて、
これができました、というものなんです。

糸井 そういう仕事もあるんですね。
ほぼ日 この写真を見て、これを‥‥
横尾 ほらほら、次の部屋に行くよ。
開けゴマ。
糸井 わぁ、この部屋は、少年探偵団ですね。
ここは‥‥なんだか、
妙に動きがありますね。

横尾 うん。実際、場面的にも、
動きがあるし。
よく見てみると‥‥自分で言うのも変だけど、
スパイラル状の画面を作ってるね。
糸井 渦巻いてますね。
横尾 すべての作品が渦巻いてる。
それ、いま、気づきました。
糸井 ご本人は、そんなこと思わずに、
次々、描いてるんでしょ。
横尾 いや、構図ですよ。

一同 (笑)
糸井 このときの展示はスパイラルでしたか?
ほぼ日 展示?
糸井 会場。
横尾 ちがうよ。じゃ、
「あれは、何年の作品だったか!
 どこで展示されたか!」
とか言ったりしてさ。
ほぼ日 クイズ大会ですか?
塚田 ふふふふ。
糸井 えーっと、これをぼくがはじめて見たのは、
都現美(東京都現代美術館)です。
あ、小さな立体作品にもなってるんですね。

横尾 これね、どこかの会社が製品化したがって、
売り出そうという話があったんだけど、
高くなりすぎてダメだよ。
糸井 おもしろいのになあ。
みんながこういうものを
買う世の中じゃないんでしょうか。
横尾 スパイラルになってますから。
糸井 (笑)なるほど、なるほど。
横尾 売ろうとしても、数が読めないから
値段が決まんないんじゃないかな。
コレクターとか、クライアントとか、
お客さんを持ってるギャラリーだったら
だいたい読めるでしょうけど、
メーカーは難しいんじゃないのかなぁ。
ところで、そのカメラは
暗いところでも写るの?
ほぼ日 写ります。
見てるよりは、明るく写ります。
横尾 それ、なんてカメラ? どこのカメラ?
ほぼ日 キャノンのイオス40Eです。
横尾 ふーん。
糸井 (横尾さんが遠くに行っているあいだに
 ひそひそ話す)
しかし、さっきから何度も言うようだけど、
この人の引き出しは、
どうなっちゃってるんだろう?
いっろんなものが湧いて出てますよ。
きっと、何百年後かに生きてる人間がこれを見たら
びっくりするでしょうね。
そのくらいのタイムスパンで
考えるべき作品群ですね。

塚田 ほんとうに。
糸井 つい、そばにいるから、
しょうもないこと言っちゃうけど‥‥
横尾さん、申しわけない。
ホントに、申しわけない。
塚田 私は今回、横尾さんの
グラフィックの調査をコツコツしているうちに
再発見できたものがあって、
「これは大変だ」と思ったんです。
糸井 きっと、横尾さんの言葉を探していたら
文章全体がよく見えてきた、
ということなんでしょうね。
単語の選び方を示すものや、文法が
デザインの仕事の中にあって、
それが、大作のもとになる言葉であった、と。
塚田 おっしゃるとおりです。
そして、その言葉の中にこもっているものが
巨大であったこともわかったんです。
糸井 構図について何にも考えちゃいない、ってのも
おもしろいですよね。
塚田 今回の展示をするにあたって、
横尾さんの油彩の大作を
パソコンの画面で処理する機会があったんです。
何点も、サムネイルのようなちっちゃい画像で
ばーっと見ていったんですが、
どれもシャープにできてるんで、
びっくりしたんですよ。
絵が大きい状態で見ると、先に
「わーっ」と打ちのめされてしまうんですが、
小さくしても、それぞれが実に見事で
驚きました。
糸井 概念がないのに、
ものすごく「構図」なんですよね。
横尾 ちょっと、この絵を見てみてよ。
真似して、これまで真似してる、
っていうやつなの。

糸井 真似の真似ですか。
横尾 真ん中のものは、もともと
ある作家の現代彫刻なんですよ。
いちばん前のこいつだけが、真似してさ、
なんでもない箱をかぶってるわけよ。

糸井 プッ‥‥なるほど。
ほぼ日 タイトルは「Welcome Art」って
ついてます。
横尾 なかなかいいタイトルがついてるじゃないの。
  (続きます)
 
2008-06-05-THU
前へ 最新のページへ 前へ
(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN