糸井 |
これはすごいものを見ちゃった気がするよ。
着物の女性を?
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塚田 |
(世田谷美術館の学芸員の塚田さん)
この写真をもとにポスターを依頼されて、
これができました、というものなんです。
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糸井 |
そういう仕事もあるんですね。 |
ほぼ日 |
この写真を見て、これを‥‥ |
横尾 |
ほらほら、次の部屋に行くよ。
開けゴマ。 |
糸井 |
わぁ、この部屋は、少年探偵団ですね。
ここは‥‥なんだか、
妙に動きがありますね。
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横尾 |
うん。実際、場面的にも、
動きがあるし。
よく見てみると‥‥自分で言うのも変だけど、
スパイラル状の画面を作ってるね。 |
糸井 |
渦巻いてますね。 |
横尾 |
すべての作品が渦巻いてる。
それ、いま、気づきました。 |
糸井 |
ご本人は、そんなこと思わずに、
次々、描いてるんでしょ。 |
横尾 |
いや、構図ですよ。
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一同 |
(笑) |
糸井 |
このときの展示はスパイラルでしたか? |
ほぼ日 |
展示? |
糸井 |
会場。 |
横尾 |
ちがうよ。じゃ、
「あれは、何年の作品だったか!
どこで展示されたか!」
とか言ったりしてさ。 |
ほぼ日 |
クイズ大会ですか? |
塚田 |
ふふふふ。 |
糸井 |
えーっと、これをぼくがはじめて見たのは、
都現美(東京都現代美術館)です。
あ、小さな立体作品にもなってるんですね。
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横尾 |
これね、どこかの会社が製品化したがって、
売り出そうという話があったんだけど、
高くなりすぎてダメだよ。 |
糸井 |
おもしろいのになあ。
みんながこういうものを
買う世の中じゃないんでしょうか。 |
横尾 |
スパイラルになってますから。 |
糸井 |
(笑)なるほど、なるほど。 |
横尾 |
売ろうとしても、数が読めないから
値段が決まんないんじゃないかな。
コレクターとか、クライアントとか、
お客さんを持ってるギャラリーだったら
だいたい読めるでしょうけど、
メーカーは難しいんじゃないのかなぁ。
ところで、そのカメラは
暗いところでも写るの? |
ほぼ日 |
写ります。
見てるよりは、明るく写ります。 |
横尾 |
それ、なんてカメラ? どこのカメラ? |
ほぼ日 |
キャノンのイオス40Eです。 |
横尾 |
ふーん。 |
糸井 |
(横尾さんが遠くに行っているあいだに
ひそひそ話す)
しかし、さっきから何度も言うようだけど、
この人の引き出しは、
どうなっちゃってるんだろう?
いっろんなものが湧いて出てますよ。
きっと、何百年後かに生きてる人間がこれを見たら
びっくりするでしょうね。
そのくらいのタイムスパンで
考えるべき作品群ですね。
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塚田 |
ほんとうに。 |
糸井 |
つい、そばにいるから、
しょうもないこと言っちゃうけど‥‥
横尾さん、申しわけない。
ホントに、申しわけない。 |
塚田 |
私は今回、横尾さんの
グラフィックの調査をコツコツしているうちに
再発見できたものがあって、
「これは大変だ」と思ったんです。 |
糸井 |
きっと、横尾さんの言葉を探していたら
文章全体がよく見えてきた、
ということなんでしょうね。
単語の選び方を示すものや、文法が
デザインの仕事の中にあって、
それが、大作のもとになる言葉であった、と。 |
塚田 |
おっしゃるとおりです。
そして、その言葉の中にこもっているものが
巨大であったこともわかったんです。 |
糸井 |
構図について何にも考えちゃいない、ってのも
おもしろいですよね。 |
塚田 |
今回の展示をするにあたって、
横尾さんの油彩の大作を
パソコンの画面で処理する機会があったんです。
何点も、サムネイルのようなちっちゃい画像で
ばーっと見ていったんですが、
どれもシャープにできてるんで、
びっくりしたんですよ。
絵が大きい状態で見ると、先に
「わーっ」と打ちのめされてしまうんですが、
小さくしても、それぞれが実に見事で
驚きました。 |
糸井 |
概念がないのに、
ものすごく「構図」なんですよね。 |
横尾 |
ちょっと、この絵を見てみてよ。
真似して、これまで真似してる、
っていうやつなの。
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糸井 |
真似の真似ですか。 |
横尾 |
真ん中のものは、もともと
ある作家の現代彫刻なんですよ。
いちばん前のこいつだけが、真似してさ、
なんでもない箱をかぶってるわけよ。
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糸井 |
プッ‥‥なるほど。 |
ほぼ日 |
タイトルは「Welcome Art」って
ついてます。 |
横尾 |
なかなかいいタイトルがついてるじゃないの。 |
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(続きます) |