冒険王、 横尾忠則。   横尾さんの展覧会で、横尾さんにお会いしました。 「‥‥あなたという人は!」と 何度も叫びそうになりました。すごいです。 さぁ、みなさん。ご本人といっしょに 横尾忠則さんのすばらしい冒険の記録を 見て回りましょう。
007 構図について、質問を。
 
糸井 この時代の横尾さんの仕事は、
見憶えのあるものばかりですよ。
ぼくは当時、全部見てました。
ところで、ちょっと思ったんですが、
構図という概念は、横尾さんの中で、
どういうふうにあるんですか。
横尾 うーん。

糸井 構図という気持ちはなくて、
手が描いちゃうんでしょうか。
横尾 うーん。
いま、そういう質問をされて
ドキッとしたんだけどね。
糸井 すいません、ぼくも、
はじめて思ったことなんですけど。
横尾 ねぇ?
変な質問する人だなぁと思ってさぁ。
一同 (笑)
糸井 いやぁ、ごめんなさい。
横尾 構図についてはちょっとさ、
「わははぁー」って
言うしかないんじゃないのかねぇ。うん。
糸井 でも、横尾さんの若い時代の絵を見ていると
「どこにカメラ置いてるんだろう」
というくらい、
すごいアングルが出てきますよね。

横尾 それはもう「体質」っていうのかな。
なんなんだろうね。
構図って、あんまり考えたことないよ。
糸井 例えば、こんな重ね方って、ないですよ。
上から見てたり、
とんでもないところから何かが出てきたり。
見せ方とか大きさとかは、
考えなきゃできないことですから。
横尾 うーん。「考えない」。
絵を描かない人には、そう思われる。

一同 (笑)
糸井 いや、そうなんですね。
おっしゃるとおりですよ(笑)。
横尾 そんなこと、考えたことない。
この絵だと、まず健さんを描いて、
ここには、刀を斜めに入れてますけど、
どこにどう入れるかっていうことは、
あんまり考えない。
もう「ここだな」ってだけ。
糸井 いいなぁ、うらやましいです。
横尾 あんまり、練って作ることは
ないんですよ。
でも、たまに
ああでもない、こうでもない、
という七転八倒もありますよ。
ここにはスケッチも展示してあるから
見るとわかるけどね。
ひとつのものを作るために
いろんなことやってるときもあります。
糸井 あ、これなんか、スケッチですね。
横尾 いえいえ、これは色指定紙です。
この状態で印刷屋さんに渡すわけ。
これは、グラデーションを表わしてるの。

糸井 なるほど。手仕事はいいですね。
こうやって残りますから。
なにが残るって、気配が残りますよね。
横尾 そうなんだよ。
コンピュータの時代になってからの作品には
こういうのが、何一つないんですよ。
結果だけしかないわけ。
プロセスは全部消えていくからね、次から次へ。

糸井 色指定のときには、色指定のときの
気持ちがありますもんね。
横尾 ありますね。
糸井 この「オペラ横尾忠則を歌う」って言葉は、
横尾さんの言葉ですか?

横尾 いや、これはたぶん、
一柳慧(いちやなぎ とし)さんの
言葉だと思う。
糸井 これ、新鮮だったんですよ。
横尾 ぼくがオペラを歌うと思ったのかしら。
糸井 言葉が、わからないままに
ぶら下がってるんです。
横尾 うん。いいコピーだよね。
糸井 実は、ぼくに
影響を与えてるコピーです。

横尾 あ、そうなんだ。
糸井 例えば、同じ構造のものとして
ぼくがパクったのは、
「ピアノが愛した女」という
矢野顕子のキャッチフレーズです。
横尾 ああ、「ピアノが愛した」では、
反対だもんね。
糸井 向こう側から見るという視点を
この「オペラ横尾忠則を歌う」を見たときに、
一気につかめちゃったんですよ。
横尾 それは、才能じゃないかな?
つかんだ、糸井重里の。
糸井 ‥‥‥‥お互いよくないね、
この、落語のようなやり取りは。
ほぼ日 あ、また横尾さんが
半笑いで遠ざかってます。

  (続きます!)
 
2008-06-04-WED
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