糸井 |
宮大工の小川さんのところでは、
棟梁と弟子たちが十年一緒に暮らすんです。
十年経つと年もいっているので
給料も高くなるし家族もできたりするから
同居は無理になるだろうということで、
十年経ったら一人前、と出すそうです。 |
池谷 |
十年が、ちょうどいい時間なのですか。 |
糸井 |
それ以上同居しても、もしかしたら、
ある意味、仕方がないのかもしれません。
宮大工の小川さんが見てきているような
飛鳥時代や奈良時代の建築みたいなものは、
もともと、すごい名人が建てた、
というものではないわけですよね。
つまり、大陸から渡ってきた技術を
自分たちなりにかみくだいた結果、
平城京は四十年間でできあがったんですね。
つまり、熟練工ができるほどの時間は、
その当時ですら経っていないはずなんです。
ある種、素人同然の人たちが
大工という仕事をはじめたわけだから……。 |
池谷 |
法隆寺というのは、
おそらく、ほぼ最初の
重要な大きな建築だったわけですよね。
仕事がルーティンにならないということの
重要性が、そこにはあるかもしれません。
はじめての挑戦ですから、
そこに大工さんが何人いたのか
わからないですけど、
みんな、頭がよく動いていた状況ですね。 |
糸井 |
うん。頭を動かさざるをえない。 |