ようやくドリッパーの話になるわけです。 |
|
ええ、ええ、 ドリッパーね。 |
|
ぼくらは基本的にいま、 ペーパードリップ式でコーヒーを淹れている、 ということは以前にもお話ししました。 |
|
いろんな淹れ方があるけれど。 |
|
サイフォン、水出し、ネルドリップに、 ペーパードリップ。 |
|
いろいろ試して、 ペーパードリップに落ち着いた、と。 |
|
いろいろ試しました。 サイフォンを買って割ったこと数回。 ネルドリップに挑戦して めんどうになってやめちゃったこと数十回。 |
|
ネルドリップというのは、 布をつかって淹れるやりかたです。 |
|
おいしいんですよ。 ネルで上手にできると、どっしりとした コーヒーが抽出できて。 |
|
でもお手入れが、ね。 |
|
そうなんです。 毎回、水で洗って、 洗った布を水に浸して保存しなくちゃならない。 |
|
サイフォンもけっこう手間がかかります。 |
|
はい。 ネルとかサイフォンのことを話し出したら、 これはこれでまた長くなるので また別な機会にいたしましょう。 そこでペーパードリップです! |
|
‥‥なんか山下さん、あせってませんか? |
|
いや、だってほら、 もうけっこう長いこと話してるじゃないですか。 福田さん、このあと約束があるんでしょ? とある会社と大切な打ち合わせが。 |
|
あっ! もうこんな時間。 |
|
でしょお? コーヒーを淹れる時間がなくなっちゃいます。 |
|
せっかく道具をもってきたのに。 |
|
続けます。 と、いうわけで、 コーヒーを淹れるのは毎日のことなので、 なるべく手軽な方がいい、と。 そこでぼくらが選んだのが、 |
|
ペーパードリップ! |
|
‥‥なんでぼくといっしょに言ったんですか? |
|
あ、すんません、 なんか、ここはポイントかなと思って。 |
|
いやいや、別にいいんです。 でも急にやるのでびっくりしましたよ。 |
|
ふぉふぉふぉ(笑い声です)。 |
|
声をそろえて言うのって、 なんか、コンビみたいじゃないですか。 |
|
え? コンビじゃないんですか、わしら。 |
|
‥‥福田さんって、ときどき自分のことを 「わし」って言いますよね。 |
|
あ、そうですね、 そういえばときどき言ってまいますね。 |
|
関西では「わし」は一般的なんですか? |
|
はてっ、どうなんやろ? |
|
‥‥‥‥‥‥。 |
|
うーん。 |
|
‥‥‥‥‥‥。 |
|
あっ! もうこんな時間。 |
|
そんな時間。 |
|
コーヒーの話を! ぜひ、コーヒーの話を! |
|
わかりました、話を戻します。 コーヒーを淹れるのは毎日のことなので、 なるべく手軽な方がいい、と。 そこで、選んだのがぁ? ペーパードリップ!! ‥‥今度はいっしょに言わないんですね。 |
|
はい。 さらにペーパードリップにも種類があります。 |
|
そ、そうですね、 メリタ、カリタ、コーノ式。 |
|
ぼくたちは、コーノ式。 |
|
そうなんですよ。 メリタもカリタも何度か使いましたが、 最後はコーノ式にたどりついているんです。 |
|
それはやっぱり、好みの味に淹れられるから? |
|
そうですねえ‥‥ 自分では、そうなんだと思っています。 いちばんネルドリップに近く、 しっかりと抽出できるのではないかと。 ゆっくり淹れると、 長い時間お湯をホールドして、 じっくりとエキスを出してくれる気がして。 そこがネルドリップっぽいのではないでしょうか。 |
|
あとね、かっこいい。 「ツウ」っぽい感じがする。 本格的だと思ってもらえます。 おしゃれだ。 |
|
‥‥福田さんは、いつも正直ですばらしい。 そうなんです。 見た目が、いい。 雑誌で紹介されているのを最初に見て 一目でこれはいいと思ってしまいましたから。 |
|
しょせんわしらは、かたちから。 |
|
かたちから入る、 おおいにけっこうだと思います。 |
|
はい。 |
|
ともかく、カリタでもメリタでもコーノ式でも ペーパードリップの良さは、 なんといっても手軽さではないかと ぼくらは思っています。 |
|
ササッとセットできるんです。 |
|
ちょっと、セットしてみましょうか。 |
|
ササッとお願いします。 |
|
はい。 コーノ式は、 こういう円すい形のペーパーを使います。 |
|
ペーパーの「マチ部分」、 わかります? 紙を合わせている部分です。 ここをぴたっと折ります。 |
|
一度開いて、こうやってたたむと、 ちっちゃい三角形がちょこんと出てきます。 |
|
これはやらなくても大丈夫なんですが、 ここをこんな具合に折ってあげると‥‥。 |
|
ドリッパーにしっくりおさまる気がします。 ‥‥こんな具合で、セッティングオーケー。 |
|
オーケー。 ‥‥ところで山下さんのドリッパーは、 かなり年季が入ってますねえ。 |
|
なんですかね、黒ずんできたんですよ。 ちっちゃいヒビみたいなのも入ってきて。 ‥‥そういう福田さんのは、 下のところが割れていますね。 |
|
あ、そういう言い方をしますか! |
|
ごめんなさい(笑)。 |
|
これは山下さんが割ったんです。 |
|
あれはすまないことをしたと思っています。 |
|
買ったばっかりやったのに。 |
|
伊豆大島で割りました。 |
|
もう3年以上前のことです。 |
|
『Re:S』という雑誌で連載をはじめて、 それの最初の取材でしたよね。 |
|
「ここで飲んでもいいですか?」 というタイトルの連載です。 |
|
いろんなところでコーヒーを飲むんです。 それの最初が、伊豆大島に向かう ちいさな飛行機の中で コーヒーを飲むというものでした。 |
|
あれは怖かった。 |
|
パイロットさんに訊きましたよね。 「ここで飲んでもいいですか?」って。 |
|
はい。 それで、せっかく大島まで行ったので、 大島の港でもコーヒーを淹れたんです。 |
|
おしよせる波しぶきをあびながら。 |
|
あれは豪快だった。 |
|
灯台の下で、豆を挽いて淹れました。 |
|
山下さんは釣りもしました。 |
|
ぜんぜん釣れませんでした。 |
|
そしてそれは、 飲み終わってからの事故でした‥‥。 |
|
ええ。 飲み終わって片付けようとしたぼくの手から、 黄色いドリッパーがするりと落ちて‥‥。 |
|
下はコンクリート。 |
|
ぱっかーん。 |
|
それがこれです。 |
|
すまないことをしたと思っています。 |
|
いや、いいんです。 むしろ、割っていただいてよかったです。 |
|
‥‥どういうことですか? |
|
こうやってカップにセットするとですね。 |
|
ほうほう。 |
|
カップの中が見えるでしょ? これは、便利なんです。 カップにそのままセットして コーヒーを淹れるときに、 「いまどれくらい落ちたかなあ」 というのが一目瞭然なんです。 |
|
なるほどねえっ! |
|
こういう商品を提案したいくらいです。 コーノ式の会社に。 |
|
このドリッパーをつくっている会社に。 |
|
はい。 |
|
行ってみたいですね。 やっぱり「こうのさん」が社長なんでしょうか。 |
|
どうなんやろ? |
|
ねえ福田さん、ほんとに行ってみましょうよ。 |
|
あっ! もうこんな時間。 |
|
えっ! もうそんな時間。 |
|
すみません、もうダメです、無理です。 すぐに行かないと イラストレータ生命にかかわります。 |
|
わかりました。 じゃあ、淹れるのはまた今度ということで。 どうぞ行ってください! |
|
すみません、 ほんまにすみません(どたばた片づける)。 |
|
いえいえいえ、 こちらこそすみません、 すぐにカッパの話をしたりして。 |
|
ほいじゃ、失礼しますー。 (ペタペタペタペタと荷物を抱えて去る) |
|
お疲れ様でしたー。 お皿を割らないようにー! |
|
(つづきまーす!) |