沸いてますね。 | |
ええ、グラグラとお湯が沸いています。 | |
ぼくらの心も沸いています。 | |
落ち着きましょう。 | |
落ち着きましょう。 | |
落ち着きましたか? | |
落ちすきましたよ。 | |
いまちょっと噛みましたけど、 大丈夫でしょうか。 |
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大丈夫です。 | |
「落ちすきました」って。 | |
落ち着きました。 | |
はい。 では火をとめましょう(コンロの火をとめる)。 ‥‥とはいえ、この100度に沸いたお湯で、 コーヒーを淹れてはいけません。 |
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そうですね、熱すぎます。 お湯を落ち着かせましょう。 |
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熱い方がコーヒーをよく抽出できると 思っている方もいらっしゃるようで、 ぼくらも昔はそう思い込んでいたのですが、 熱すぎると苦みが強い味になっちゃうんです。 |
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ちょっとぬるいんじゃないか? くらいがちょうどいいですよね。 |
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じゃあなんでわざわざ沸騰させたのかというと、 カルキを抜くためです。 |
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沸騰させると抜けるんですか? カルキ。 | |
‥‥なんか、そんな気がします。 本で読んだこともあるし。 なにしろ、沸騰したやかんのお湯を直接そのまま どばどばっと豆に注ぐのはよくない、と。 |
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それはあかんですね。 | |
ぬるくしないと。 | |
ぬるくすると、 とろんとした甘みを感じる味になります。 |
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どのくらいぬるくするかというと、 80度くらいです。 |
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あ、そうなんですか、80度。 ぼくはいっつも感覚でやってるので。 |
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ぼくは温度計で計ったりしてますよ。 75〜80度で淹れています。 |
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細かいことしてますねー。 | |
はい。そこまでやらなくてもいいと思います。 ではどうすればちょうどいい感じの 温度になるかというと‥‥ |
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やかんからポットにお湯を移します。 | |
その仕事は福田さん、お願いします。 あ、ヤケドするのでこのときは、 やかんにふたをしてくださいね。 |
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ほい(やかんにふたをする)。 じゃあ、いきまーす。 |
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このポットに移す作業で、温度が適度に下がって お湯が落ち着くんですよね。 |
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‥‥このくらいでしょうか。 | |
はい、ついでにカップにもお湯を入れて あたためてあげましょう。 |
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ほい(ふたつのカップにお湯を入れる)。 | |
いいですねー、 ここまで何の問題もありません。 |
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順調です。 | |
‥‥さ、ではこの、 カップに入れたお湯も ポットに移しましょう。 |
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その仕事は山下さんがお願いします。 | |
わかりました。 | |
これでだいたい、ポットのお湯の温度は 80度くらいになっているはずです。 |
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‥‥淹れますか。 記念すべき最初のコーヒーですね。 |
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‥‥淹れましょう。 その仕事は福田さんがお願いします。 |
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や! そんな、ここはやっぱり山下さんが。 | |
いえ、最初は福田さんでお願いします。 | |
いやいや、どうぞどうぞ。 | |
いやいやいや。 | |
いやいやいやいや。 | |
ぼくはほら、豆をセットしますから‥‥あれ? | |
どないしました? | |
あれ? あれ?(きょろきょろしている) こ、ここまで順調だったのに‥‥。 |
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なにかやらかしましたか。 | |
コーヒーサーバーを忘れました。 | |
あー、そういえば、ないですね。 | |
これを忘れました。 |
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どうしましょう‥‥。 | |
じゃあ、これを使いましょうか。 | |
コップ。 | |
これも透明なガラスだし。 | |
なるほど。 これにこうやってドリッパーをセットして‥‥ わあ、できたできた。 (なんということでしょう、 忘れ物の代用品にしようと決めたコップの、 その写真を撮ることまでも、忘れていました。 つまり、サーバーがわりのコップの上に ドリッパーを乗せて淹れることになったわけです) |
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さ、こうしてぼくがセッティングしましたので、 ここはひとつ、福田さん、淹れてください。 |
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わ、わかりました‥‥。 (ポットを手に取る) |
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福田さん。 | |
はい。 | |
集中。 | |
はい。 | |
‥‥‥‥‥‥。 | |
‥‥い、いきます。 | |
最初は、一滴ずつ。 | |
はい‥‥‥‥。 | |
そんな下からアップで撮らんでも‥‥ | |
集中。 | |
はい。 | |
いいですねえ‥‥。 真ん中にぽたぽたと、雨だれのように。 |
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‥‥これは、いい豆みたいです。 | |
よく膨らんできてます。 ぼちぼち「蒸らし」ですね。 |
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はい(お湯をとめる)。 | |
あ、出ました。 蒸らすときに福田さんはそうやって、 ドリッパーの上にポットをのせるんですよね。 |
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この方がよく蒸せる気がします。 | |
福田式。 いや、カッパ式? ‥‥なるほど、そうか。 それはさしずめ、カッパのお皿ですね。 |
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そんなつもりではないです(笑)。 | |
でも頭にお皿をのせてるみたいじゃないですか。 まさに「カッパ式」を象徴する淹れ方です。 |
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20秒ほど蒸らしたら、 再びお湯を注ぎます。 |
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はい、また、集中。 | |
真ん中に、ぽたぽたと。 いきます‥‥。 |
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おお、むくむくと膨らみますねえ。 | |
いい豆です‥‥。 | |
この膨らみは豆の鮮度の証です。 ああー、またいい香りが‥‥。 |
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はい‥‥。 | |
挽いてある豆を買ってきた場合だと、 ちょっと時間が経つと この膨らみが出なくなるんですよねえ。 |
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はい、ぺしゃんこのままだったり、 ぽこんと穴があいてしまったり‥‥。 |
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知らない方には、 ぜひこの「むくむく」を体験してもらいたいです。 |
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そうですね。 | |
なので「ミル」をオススメしたいと。 でも焙煎がよろしくないと、 自分で挽いても膨らまないこともありますよね。 |
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はい‥‥。 | |
あ、ぽたぽたと落ちてきました。 | |
きましたね。 | |
このあたりで少しだけ、 注ぐお湯の量を増やしましょう。 |
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早めの雨だれくらいで、 ぽたぽたぽたぽた‥‥。 |
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いいですねー。 | |
ぽたぽたぽたぽた‥‥。 あ、あかん! |
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ちょっと急ぎましたね。 でも大丈夫、いい感じで泡の玉ができてます。 |
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もう少し、注ぐ量を増やします。 | |
はい、500円玉くらいの範囲で注いでいきます。 | |
‥‥ぼちぼち、ふたり分なのでは? | |
ですね。 さあ、ここが大切なポイントです。 ふたり分入ったら、 サッとドリッパーをはずしてください。 |
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はい(はずす)。 ドリッパーにまだお湯が残っていても、はずす。 |
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そうです、もったいないと思わずにはずします。 ぜんぶ落としきってしまうと、 えぐみとか、わるい味が入ってしまうんです。 |
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ポイントですね。 | |
そうしましたら、 サーバーの中に落ちたコーヒーを 軽くまぜます。 まぜなくてもいいように見えますけど、 案外むらがある状態ですので。 |
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ええと‥‥どないしましょ‥‥。 コップなので‥‥まぜる棒もないし‥‥ 指でまぜます。 |
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な! だめですよ、指を入れちゃ。 なに考えてんですか(笑)。 |
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どないしましょ。 | |
落ち着きましょう! | |
落ち着きましょう! | |
まぜないからといって 味が大きく変わるものでもないですから、 こう、コップを、軽く揺するくらいでいいです。 きょうはもう、それでいいです。 |
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こ、こうですね。 | |
こぼさないように、 ゆらんゆらん、と。 |
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ゆらんゆらん。 | |
ゆらんゆらん、そんなもんでいいでしょう。 | |
ゆらんゆらん。 | |
もういいですよ。 | |
ゆらんゆらん‥‥あっ。 | |
もう‥‥ぜったいにこぼすと思った。 | |
すんません。 | |
飲みましょう! | |
飲みましょう! | |
カップに注いで‥‥。 | |
よいしょ‥‥。 | |
あー、いい色ですねえ。 | |
では。 | |
どうです? | |
うん、おいしい。 | |
では、こちらも。 | |
めがねが曇ってます。 | |
よくあることです。 | |
で、味は? | |
はい。 いいんじゃないでしょうか。 |
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いつもの味ですね。 | |
いつもの味です。 | |
落ち着きますね。 | |
落ち着きます、 ようやくほんとに落ち着きました。 |
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きょうは淹れられて、よかったです。 | |
ついにここまできましたね。 | |
やりましたね。 | |
やりました‥‥。 | |
‥‥‥‥(握手)。 | |
(つづきまーす) |