おとうさんたちの、うちのコじまん。 竹山ジャックと 糸井ブイヨン。 カンニング竹山 × 糸井重里

糸井

竹山さんと僕は、
おなじ場所をうろうろしている
感じがするんですよね。
福島にもよく行っているのを知っているし、
あと、カレーをおつくりになっている。

竹山

お仕事では何度かお目にかかっていますね。
僕のカレーはまあ、本格的じゃないですけど。

糸井

僕は、お笑いの人をわりと知らないんですよ。
あまり知らない中でも、竹山さんとは、
珍しいケースがいくつも重なっているんです。
そして、愛犬家でもあるという。

竹山

愛犬家というか、僕は、バカ親でしょうね。
妻がちゃんとやってくれている感じです。
うちのジャックは今年で５歳で、
来年の２月で６歳になります。

糸井

それまでの竹山さんちには、
犬がいなかったんですか。

竹山

マンションの決まりで飼えなかったんです。
それに、僕が毎日家にいられるわけじゃないんで、
妻にも迷惑がかかる、ということもあって。
今は忙しいしやめとこうかって、
そう言ったんですけど、
でも‥‥、どうしても犬がほしかった。

糸井

そのとき、竹山さんは何歳？

竹山

当時は40歳ぐらいですね。
じつは僕、妻には内緒でこっそり探していました。
僕の髪の毛を切ってくれている美容室のおじさんが、
犬を保護するボランティアをやっているんです。
その美容室には、
メインで飼っているワンちゃんもいるんですが、
店へ行くごとに違うワンちゃんもいたりして。
このコはどんなコですかって訊くと、
「こういうかわいそうなことがあって、
いまは里親探してるんだ」と教えてくれるんです。

糸井

うん、うん。

竹山

そんな話を聞いていたんで、
おじさんから里親としてもらうのもいいなとか、
妻に内緒でいろいろ活動していたんです。
あるときに妻とちょっと犬の話になって、
「じゃあ見に行くだけ、行かないか」と。
飼うつもりじゃないよって言いながら、
妻を連れていきました。

糸井

よくあるパターンです（笑）。

竹山

妻もずっと、実家で犬を飼っていた人なので、
「どうせ私が世話しなきゃいけないでしょう？」
みたいな形で連れていかれていました。
その日はもう、僕も軽い気持ちで、
ペットショップを回っていましたね。
お店をまわって２軒目ぐらいですかね、
うちのコになる、ジャックに出会ったんです。

糸井

おおっ。

竹山

お店の人が抱えて連れてきてくれた子犬を、
妻が抱くとね、いきなり顔をペロペロ舐めだした。
妻の目が変わったのがわかったんですよ。
「もう、決めるしかないんじゃないか、
こういうチャンスはないんじゃないか」って言ったら、
妻も半分うなづいてくれたんで、
その場で決断して飼うことになりました。

糸井

そのコはまだ、ちっちゃいわけですよね？

竹山

４カ月ぐらいの、ちっちゃい子犬でしたね。

糸井

トイレトレーニングは、
ご自分でされたんですか？

竹山

そうですね。
もともと妻も僕も犬を飼っていましたから。
ただ、妻の実家でのやり方と、
うちの実家のやり方が微妙に違ってました。

糸井

家によって違うよねえ。

竹山

トイレトレーニングのやり方は、
妻に譲ることにしました。
僕は大人になってから、
自分で犬を飼うのは初めてなんです。
それまでは親が飼っていたり、
親にせがんで飼ってもらっていたので。
だから、新しい発見もありましたし、
もう、かわいくてしょうがない。
すぐに親バカになりましたね。
僕はついつい、甘やかしてしまいます。
一番厳しいのは、やっぱり妻。

糸井

奥さんは毎日いっしょにいるわけだしね。
竹山さんはテレビの仕事で、
どこかに出かけていることが多いから、
泊まりだったりすると、しばらく会えませんよね。
奥さんがワンちゃんといてくれるから、
自分が仕事に行けるということでもあるし。

竹山

そうです、カミさんが面倒をみてくれるから。
本当は、旅行へ行くときとかも
ジャックを連れて行きたいんですけどね、
うちのコ、異常なぐらいクルマ酔いするんですよ。
もう、かわいそうになるぐらい。

糸井

ああ、そうなんだ。

竹山

ちょっと病院へ行く時とか、
トリミングに連れて行く時にだって、
もう、ハァハァ言っているんです。
クルマに慣れさせようとも思ったけど、
ちょっとかわいそうになってきちゃって。
それと、ちょっと変わっているのが、
散歩も嫌がるんですよね。

糸井

えっ！　散歩が嫌いなの？

竹山

散歩を嫌がりながらも無理やり連れて行くと、
前半はしっぽを振って歩いているんです。
でも、ちょうど真ん中の広場を過ぎたところから、
しっぽを下げて、僕を引っ張るように歩く。
僕のほうなんて１回も見ずに、
勝手に家に帰っていくんですよ。
家でも「散歩行こうか！」ってリードを見せただけで、
自分の小屋みたいところに、パーっと入っちゃう。
いままで僕も、何匹かは飼っていますが、
たいてい自分でリードをくわえて持ってくるぐらい
みんな散歩が好きだったのに。
ウンチとオシッコも、
しばらくは散歩中にはしませんでしたね。

糸井

家でなさるの？

竹山

そうです、家でしています。
これはダメだ、慣れさせるしかないと思って、
無理やり連れて行くようになったら、
やっとウンチをしだしたんです。
でも、明らかに緊張しているような、
ふだんとは違うウンチを出すんですよ。
オシッコも最近外でできるようになりましたけど、
やっぱり、後半は帰りたくてしょうがないみたいです。

糸井

もう、雨の日なんかは絶対出ないですね。

竹山

出ないと思いますね。

糸井

この秋は雨が続いたから、
若い犬は困っているだろうと思ったんです。
竹山さんちのコは、好き嫌いの差がすごいんだね。
ご飯は好きですか？

竹山

ご飯は基本、同じものしかあげていません。
ご飯については妻が徹底していて、
ダイエット用のをあげているんです。
ただ、一度気に入ったものに対しては、
「どうした！？」っていうぐらいの勢いで来るんです。

僕が仲良くさせてもらってる、
もつ鍋屋さんの主人が犬を飼ってるんです。
彼から、犬用に茹でてくれた豚をもらったんですよ。
「塩も何も使ってない、茹でただけの肉があるから、
ワンちゃんに持って帰ったらすごい喜ぶよ」って。
家に帰ってちょっとあげたら、
頭がおかしくなったのかというぐらい食いついた。
暇さえあれば、冷蔵庫の前でジーっとひとりでお座りして
ずっと冷蔵庫を見つめて、豚を待ってるんですよ。
味はついていないものだし、
茹でているから脂も落ちているんですけど、
これが、とにかく好きだったみたいで。

糸井

うちの場合は、竹山さんちのお散歩の逆で、
食欲があまりなかったんですよ。
ひどいときには、
ご飯の用意をしていると小屋に入っちゃったり、
ご飯を持って行くと、逃げたりしたんですよ。
ふつうね、動物ってエサを材料にして
芸を仕込んだりするんだけど、エサで釣れない。
おやつは食べるんだけど、ご飯は好きじゃなかった。
しばらく、そういう犬として生きてきたんですけど、
年をとったら、逆にご飯しか興味がなくなって、
食欲あるあるモードになっちゃった。
いま、うちはヨーグルトで狂喜乱舞ですね。

竹山

へえ、そうなんですか。

糸井

僕のヨーグルトを小さじ３分の１ぐらいあげると、
飛びついて、変な声出していますね。
なんだろう、人生の前半と後半みたいに
性格が変わっているんです。
昔はボール投げばかりしていたんですけど。
おたくはボール投げ、好きですか？

竹山

ボール投げも、すぐ飽きますね。

糸井

文科系の犬だ（笑）。

竹山

ええ、本当にそうだと思います。
ボールを投げて取りに行くんですけど、
まともに持って来ないんです。
くわえてずっと待っているから、
また、口から取りあげて投げるんです。
３回ぐらいすると、取りに行かなくなりますね。

糸井

うちは50回ぐらいやってましたよ！
「死ぬぞ！」って思いました。
遠投しないと、物足りないんで、
僕の肩が痛くなるまで投げてましたね。
でも、嬉しいんです。
うちのコは散歩も好きで、
散歩とご飯だったら散歩を取るっていう
タイプだったんですけど、
いま散歩は、「行くよ」って言うと、
「そう？」みたいな感じになっちゃった。

竹山

疲れちゃうんですかね？
僕は幼いころから犬を飼っていますけど、
ジャックは珍しく食い意地が張ったコですね。
犬用のガムを与えたら夢中で噛みすぎて、
口のまわりが血だらけになっていたんですよ。
蛇腹になっている部分が、
歯茎に当たって擦れていたんでしょうね。

糸井

ダメなことがあるたびに、
好きになっちゃうんですよね。
「なんていいコなんだ」という以上に、
困ったことがあった回数が増えるほど、
愛情を育てていくのかもしれません。

（つづきます）

2017-12-06-WED