おとうさんたちの、うちのコじまん。 竹山ジャックと 糸井ブイヨン。 カンニング竹山 × 糸井重里

お笑い芸人のカンニング竹山さんは、
こどもの頃はずっと犬と暮らしていて、
愛犬ジャックとの生活は、5年になるそうです。
「バカ親」と自称するほどデレデレな竹山さんは、
いぬねこと人間が仲良く暮らすためのSNSアプリ
『ドコノコ』にもご登録いただいていました。
ジャックのおとうさんの竹山さんと、
ブイヨンのおとうさんの糸井重里が、
犬と暮らす日常について対談をおこないました。
愛犬のちょっと間抜けで愛らしいエピソードから、
こんな仕組みができたら、というお話もできました。
テレビで見せる「キレ芸」のイメージとは違う、
竹山さんの愛犬家な一面をおたのしみください。

※講談社「おとなスタイル」冬号Vol.10に
掲載された対談を、
ほぼ日編集バージョンでお届けします。

カンニング竹山

1971年生まれ。福岡県出身。
タレント、お笑い芸人。
バラエティ、情報番組のコメンテーター、
ドラマ・映画の出演など、幅広く活動。
単独ライブ「放送禁止」が毎年、
熱い人気を博している。

ジャック

チワワとミニチュアダックスのミックス。
食欲旺盛な5歳の男の子。
テーブルのまわりで竹山さんを
追いかけるのが好きだけど、
お散歩はちょっと苦手。

(2)家族でひとつの群れ

糸井
ワンちゃんには、
なにか芸を覚えさせていますか。
竹山
芸は、教えたことだけですね。
お手、おかわり、おすわり、伏せ、待て。
糸井
ああ、うちも同じです。
竹山
もうひとつ、最近覚えたことがあります。
カミさんは僕のことを、
タケちゃんって呼んでいるんですけど、
最近ね、僕が寝ている時に、
カミさんが「タケちゃん起こして」って言うと、
犬がビューっと起こしにきて、僕の顔を舐めるんです。
その勝率が、この間まで4:6だったのが、
最近は6:4になってきた気がします。
ただそれが、本当にカミさんの指示で
ゴーしているのかは、ちょっとわからなくて。
糸井
僕は、奥さんの指示に従っているんだと思います。
どうも犬には、「仲間だ」という本能があるみたい。
たとえば、僕が家に帰ってきた時には、
「ただいま!」と言っても、言わなくても、
玄関を開けるといつも犬がいてくれます。
カミさんが奥の部屋で何かしていると、
「おとうさん来たよ!」って呼びに行くんです。
それは教えた芸ではなくて、
群れとして「3人じゃん、俺たち」みたいな感じで、
呼びに行っているみたいなんです。
竹山
はあー、なるほど。
糸井
ブイヨンが僕を呼びに来てくれることもありますよ。
宅配便の人がピンポーンって来た時に、
僕がお風呂に入っていると、
浴室のドアを鼻で開けて、
べつに何を言うわけでもなく、また帰って行く。
家族がまとまりとしていることに対して、
なにか本能があるんだと思います。
竹山
たしかに、うちでも同じようなことが‥‥。
カミさんがリビングにいて、
僕が寝室へ先に行ってスマホをいじったり、
本を読んだりしていると、
ジャックも寝室に来るんです。
ひと通りベッドで遊んだあとに、
僕が本を読みはじめたりすると、
リビングにいるカミさんを呼びに行く。
糸井
それ、それ。
竹山
なんで呼びにくるんだろうねって、
カミさんとも話していたんです。
きっと、家族が一緒にいてほしいんですかね。
糸井
僕もそうだと思います。
他の人に話を聞いていると、
どうも猫には、その本能はないみたいです。
猫っていう居候と、みんなが住んでいる感じ。
竹山
ああ、わかります。
糸井
犬には、名字があるんですよね。
うちなら、糸井ブイヨンだし、
竹山家なら、竹山ジャックみたいな。
犬と猫とで、だいぶ違うような気がします。
ご夫婦で散歩に連れて行くことはありますか。
竹山
たまにありますね。
糸井
そのとき、ちょっとはしゃぐでしょう?
竹山
テンション上がってます。
糸井
あれ、おっかしいですよねえ。
家族がみんなでいること以外に、
はしゃぐ理由はないもんね。
竹山
はい、そうですね。
糸井
うちでも、途中まで一緒に行くからって
散歩に出て、途中で分かれる時になると、
ものすごくリードを引っ張るんです。
「群れが解体するじゃないか!」みたいな。
犬の群れ本能みたいなものが、
僕は好きだったんだなあ。
竹山さん、猫はお好きですか?
竹山
猫は、飼ったこともなかったんですけど、
一時期、猫といっしょに
ドラマと映画を撮っていたんですよ。
5年ぐらい前になるかな、
『ねこタクシー』っていう作品です。
糸井
いいタイトルですね。
竹山
僕が気の弱いタクシーの運転手役で、
猫をクルマに乗せて走ることによって、
いろんな出会いがあって、
本人も変わっていくという話です。
ドラマを10本ぐらいと映画があって、
2カ月ぐらい毎日撮影していました。
そのあたりから、猫に対する考えが変わりました。
犬のなつき方とは違うけど、
ちゃんとなついてくれるんだとわかったら、
猫もかわいいんだなぁって。
糸井
じつは僕、自分の心が犬に共感していたから、
「猫コノヤロウ!」っていう気持ちで
猫を見ていた時期があったんです。
でも、僕の周りで猫を飼っている人が増えて、
とくに「ドコノコ」をはじめてからは、
猫を見る目がもう、
飼ってもいないのに溺愛モード(笑)。
竹山
あはは(笑)。
糸井
自分で飼ってもいないのに、
猫を飼っている人の気持ちになっちゃう。
そんな気持ち、なかったはずなのになあ。
竹山
僕は、猫と接する機会も、
昔はそんなになかった気がします。
実家にいた時には、
ノラ猫がうちの生ゴミを荒らしていたりして、
猫へのイメージがあまり良くなかったんです。
でも今だったら、
飼ってみたいという願望があります。
糸井
僕もじつはね、猫を飼ってみたいんですよ。
ただね、「自分の年齢+20年」と考えると、
僕にはもう、何も飼う権利はないんです。
竹山
ああ、今から数えると‥‥。
糸井
将来の展望は「預かりさん」になるのかなと。
ブイヨンはいま14歳ですけど、
どんなに頑張っても、
20歳まではいかないだろうと思うんです。
そこから犬のいない生活になるわけで、
考えただけで、どうしようかと思います。
竹山
うちも、ジャックがいなくなると、
夫婦ふたりに戻っちゃいます。
どうするんだろうって考えますね。
将来的には、夫婦ふたりになっちゃう。
糸井
夫婦ふたりって、ちょっと恥ずかしくないですか?
竹山
それ、わかります。
たった5年ぐらい前のことなのに、
夫婦ふたりで暮らしていたことを忘れてます。
ふたりきりに戻ったら、
何をしゃべっていたんだっけな。
糸井
犬にとっての「おとうさん、おかあさん」
というセリフが出ますよね。
実際はおとうさんでも、おかあさんでもないのに、
「ほら、おかあさんのところへ行って」とか。
この言葉があるおかげで、ある種、
対面しない間接話法をやっていると思うんです。
おかげで、すごく楽しい気がするんですよね。
竹山家のご夫婦は、仲はよろしいんですか?
竹山
うちはね、仲いいんです。
世間ではあまり言っていませんけど、
うち、すごく仲がいいんですよ。
妻は、僕の3つ上なんで、仲がいいと言っても、
ベタベタしているとかじゃないですけど。
よくふたりで飲みに行ったりはしています。
糸井
なるほど、なるほど。
竹山
ただ、ふたりきりが恥ずかしいというのは、
僕もよくわかります。
年に何回か旅行に行くんですが、
その時は信頼できるペットホテルに任せています。
そうなると、家よりも狭いホテルにふたりきりで、
何日間かを過ごすことになるじゃないですか。
ふと、しゃべっていない自分に気づく。
糸井
いや、よくわかります。
年をとると、もっとそうなりますよ。
不思議ですよね。
竹山
あと旅行先では、
些細なことで揉めたりしますよね。
きっと東京の家だったら、
ワンクッション、犬を経由して、
揉めなかっただろうなって考えたこともあります。
糸井
人間って、余計なことをいっぱい考えすぎるから、
窮屈になっちゃうこともありますよね。
家の中に、「本当にバカだなー」って言える
相手がいるのは、利口同士がいるよりも楽です。
おバカなことをするような犬がいると、
心が安らいで、だいぶ元気でいられますよね。
竹山
はい、そうですね。
やらなきゃいけないことも増えるから、
面倒なこともあるんだけど、
そういうところがよかったりもしますね。

(つづきます)

2017-12-07-THU